捨てられおっさんと邪神様の異世界開拓生活~スローライフと村造り、時々ぎっくり腰~
雄太の居ない隙に
雄太に置いていかれたセージュは不満そうな表情で、走っていく雄太を見送り……やがて、ゆっくりとフェルフェトゥへ振り返る。
「……夫婦気取りですか、邪神」
「あら、そう見えたのかしら?」
「ケッ、です。あの重い女も相当ですけど、お前が一番油断ならねーのです」
「貴方に言われたくはないわね?」
火花でも散りそうな程な視線を交わすと、フェルフェトゥが口を開く。
「ユータは私のものよ。後から来て余計な真似が出来ると思わない事ね」
フェルフェトゥには、自分が雄太に一番好かれているという自信がある。
誰にも雄太を渡すつもりはないし、雄太が頼るのは自分であるとも思っている。
そしてついでに言えば、雄太が自分に向ける視線が微妙に変化してきている事も理解している。
コロナの影響である事は充分分かっているし、それだけでコロナを受け入れた甲斐がある……とも考えていた。
「先とか後とか関係ないです。私とユータはもう深い絆で結ばれてるですよ」
セージュには、自分が一番雄太の役に立てるという自信があった。
雄太が今後どう生きていくにせよ、世界樹の精霊である自分と契約している以上は決して蔑ろにはされない。
むしろ重宝されるはずであり、精霊術士として修業を積めば最強の精霊術士として名を馳せる事だって充分に可能だ。
金でも女でも……いや、女はセージュが許さないが、好きなように生きる事が出来る。
この村で生きるにせよ、セージュの力は邪神共に対抗する為の重要な手段足り得るだろう。
そんな生き方を雄太に与えられるのは、セージュだけだと。そう考えていた。
「ハッ」
「フン」
睨み合う二人は、互いに互いが気に入らない。
フェルフェトゥは純真ぶっている精霊が嫌いだし、セージュはそもそも神自体が気に入らない。
この辺りは種族差による確執としか言いようが無いが、雄太の前でケンカすると雄太が悲しむと分かっているので、雄太の居ないところでこうやってガス抜きしているのだ。
「……で? エルフの件はキチンと後腐れないようにしてきたんでしょうね?」
「何も問題ないです。他の木っ端精霊共も余計な事言わないように言い含めてきたです」
「そう、ならいいわ」
その一言で話を終わらせるフェルフェトゥを、セージュは胡散臭いものを見る目で眺める。
「随分素直ですね? もっと細かく聞いてくるかと思ったですよ」
セージュのそんな言葉に、フェルフェトゥは至極真面目な口調で「必要ないわよ」と答える。
「ユータに関わる事で手なんか抜かないでしょう?」
言われて、セージュは納得がいってしまう。
なるほど、確かにその通りだ。
雄太に関する事で、手を抜くはずがない。
ソレに関しては、セージュも無条件でフェルフェトゥを信じられるところではある。
ベルフラットやバーンシェルに関してもそれは同じだ。
ガンダインは……少し怪しいだろうか。
そもそもあの男の邪神は、不在にしている時間が多すぎる。
「……フェルフェトゥ。あのガンダインとかいう邪神は信用できるですか?」
「どういう意味かしら」
「あの男は、村に居ない時間が多すぎです。何してるか分かんない奴は一番信用ならねーです」
言われて、フェルフェトゥはクスリと笑う。
なるほど、確かにその通りではある。
何をしているか分からない。猜疑心を生むには充分すぎる怪しさだ。
「いいのよ、アイツはね。元々、一所にいるのが苦手な奴だから」
「は?」
「アイツはね、風の邪神なのよ? 精霊だって風を担当する奴はどいつもこいつも自由に動きたがるでしょうに」
「……まあ、確かに」
風は止まれば淀む。だから確かに風の精霊は自由な者が多い。
世界樹の森にも風の精霊がフワフワと来ることもあるし、何処かに消えていく事もある。
恐らくは10年と同じところに留まる風の精霊は居ないだろう。
それを考えると、エルフ王……もう名前をセージュは忘れてしまったが、あのエルフ王と契約していた先代のシルフィドは自ら淀む事を選んだようなものだ。
セージュに消されて正解だったというものだろう。
「なら、信用出来るですね?」
「さあ?」
確認するように言うセージュに、フェルフェトゥは肩をすくめてみせる。
「おい……せめてそこは肯定しろですよ」
「それは無理よ」
責めるように言うセージュだが、フェルフェトゥの答えは淡白なものだ。
「だって、私は私以外の連中は信用してないもの。私「だけ」がユータの味方だと……そのつもりでやっているわ?」
そう、フェルフェトゥは自分と雄太のこと以外は信用していない。
セージュのことだって雄太絡みで手を抜かないだろうとは言ったが「信用する」とは一言も言っていない。
むしろ、雄太の為だと思えば自分を軽く裏切るだろうと思っている。
そしてそれは真実であるだろう辺りが実に手に負えないのだが……それはさておき。
単純思考のバーンシェルはともかく、ベルフラットに関しては何一つフェルフェトゥは信用していない。
同じ屋根の下にいるのだって、放っておくと何を仕出かすか分からないからだ。
「お前……よくもぬけぬけとそんな事を言うですね?」
「あら」
セージュの視線に、しかしフェルフェトゥは怯まない。
「でも……貴方もそうでしょう?」
「あったりまえですよ?」
……結局のところ、似た者同士なのである。
そしてこの恐ろしい会話は、雄太には絶対に漏れない。
それが幸せか不幸かは、さておいて。
「……夫婦気取りですか、邪神」
「あら、そう見えたのかしら?」
「ケッ、です。あの重い女も相当ですけど、お前が一番油断ならねーのです」
「貴方に言われたくはないわね?」
火花でも散りそうな程な視線を交わすと、フェルフェトゥが口を開く。
「ユータは私のものよ。後から来て余計な真似が出来ると思わない事ね」
フェルフェトゥには、自分が雄太に一番好かれているという自信がある。
誰にも雄太を渡すつもりはないし、雄太が頼るのは自分であるとも思っている。
そしてついでに言えば、雄太が自分に向ける視線が微妙に変化してきている事も理解している。
コロナの影響である事は充分分かっているし、それだけでコロナを受け入れた甲斐がある……とも考えていた。
「先とか後とか関係ないです。私とユータはもう深い絆で結ばれてるですよ」
セージュには、自分が一番雄太の役に立てるという自信があった。
雄太が今後どう生きていくにせよ、世界樹の精霊である自分と契約している以上は決して蔑ろにはされない。
むしろ重宝されるはずであり、精霊術士として修業を積めば最強の精霊術士として名を馳せる事だって充分に可能だ。
金でも女でも……いや、女はセージュが許さないが、好きなように生きる事が出来る。
この村で生きるにせよ、セージュの力は邪神共に対抗する為の重要な手段足り得るだろう。
そんな生き方を雄太に与えられるのは、セージュだけだと。そう考えていた。
「ハッ」
「フン」
睨み合う二人は、互いに互いが気に入らない。
フェルフェトゥは純真ぶっている精霊が嫌いだし、セージュはそもそも神自体が気に入らない。
この辺りは種族差による確執としか言いようが無いが、雄太の前でケンカすると雄太が悲しむと分かっているので、雄太の居ないところでこうやってガス抜きしているのだ。
「……で? エルフの件はキチンと後腐れないようにしてきたんでしょうね?」
「何も問題ないです。他の木っ端精霊共も余計な事言わないように言い含めてきたです」
「そう、ならいいわ」
その一言で話を終わらせるフェルフェトゥを、セージュは胡散臭いものを見る目で眺める。
「随分素直ですね? もっと細かく聞いてくるかと思ったですよ」
セージュのそんな言葉に、フェルフェトゥは至極真面目な口調で「必要ないわよ」と答える。
「ユータに関わる事で手なんか抜かないでしょう?」
言われて、セージュは納得がいってしまう。
なるほど、確かにその通りだ。
雄太に関する事で、手を抜くはずがない。
ソレに関しては、セージュも無条件でフェルフェトゥを信じられるところではある。
ベルフラットやバーンシェルに関してもそれは同じだ。
ガンダインは……少し怪しいだろうか。
そもそもあの男の邪神は、不在にしている時間が多すぎる。
「……フェルフェトゥ。あのガンダインとかいう邪神は信用できるですか?」
「どういう意味かしら」
「あの男は、村に居ない時間が多すぎです。何してるか分かんない奴は一番信用ならねーです」
言われて、フェルフェトゥはクスリと笑う。
なるほど、確かにその通りではある。
何をしているか分からない。猜疑心を生むには充分すぎる怪しさだ。
「いいのよ、アイツはね。元々、一所にいるのが苦手な奴だから」
「は?」
「アイツはね、風の邪神なのよ? 精霊だって風を担当する奴はどいつもこいつも自由に動きたがるでしょうに」
「……まあ、確かに」
風は止まれば淀む。だから確かに風の精霊は自由な者が多い。
世界樹の森にも風の精霊がフワフワと来ることもあるし、何処かに消えていく事もある。
恐らくは10年と同じところに留まる風の精霊は居ないだろう。
それを考えると、エルフ王……もう名前をセージュは忘れてしまったが、あのエルフ王と契約していた先代のシルフィドは自ら淀む事を選んだようなものだ。
セージュに消されて正解だったというものだろう。
「なら、信用出来るですね?」
「さあ?」
確認するように言うセージュに、フェルフェトゥは肩をすくめてみせる。
「おい……せめてそこは肯定しろですよ」
「それは無理よ」
責めるように言うセージュだが、フェルフェトゥの答えは淡白なものだ。
「だって、私は私以外の連中は信用してないもの。私「だけ」がユータの味方だと……そのつもりでやっているわ?」
そう、フェルフェトゥは自分と雄太のこと以外は信用していない。
セージュのことだって雄太絡みで手を抜かないだろうとは言ったが「信用する」とは一言も言っていない。
むしろ、雄太の為だと思えば自分を軽く裏切るだろうと思っている。
そしてそれは真実であるだろう辺りが実に手に負えないのだが……それはさておき。
単純思考のバーンシェルはともかく、ベルフラットに関しては何一つフェルフェトゥは信用していない。
同じ屋根の下にいるのだって、放っておくと何を仕出かすか分からないからだ。
「お前……よくもぬけぬけとそんな事を言うですね?」
「あら」
セージュの視線に、しかしフェルフェトゥは怯まない。
「でも……貴方もそうでしょう?」
「あったりまえですよ?」
……結局のところ、似た者同士なのである。
そしてこの恐ろしい会話は、雄太には絶対に漏れない。
それが幸せか不幸かは、さておいて。
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