捨てられおっさんと邪神様の異世界開拓生活~スローライフと村造り、時々ぎっくり腰~
初めての来訪者12
シェルの言葉が本気のものだと、コロナはようやく気付く。
悪い人間ではない。それが充分に分かっていたからこそ、コロナは怒りを消し冷静さを取り戻す。
だが納得したわけではない。何かの勘違いだろう。そんな想いを抱いたまま、コロナはゆっくりと座り直す。
「……呪いの鎧と言ったな」
「おう」
「どの辺りが呪いの鎧なのか聞こうか」
「どの辺りも何もよぉ、鍛冶場で確認したけどよ。ありとあらゆる呪いが染みついてんぞアレ。ミスリルで封じ込めて色んな魔法かける事で誤魔化してっけど、あの赤色って塗ってんじゃなくて呪いの赤だったぞ」
シェルの説明がコロナは理解できず、そのまま固まってしまう。
「鎧としちゃ最高の能力だと思うぜ。確認できた限りじゃ『物理的、魔法的ダメージを大きく低減、鎧に染みついた呪いよりも弱い呪いを全て吸収』ってところか。着てりゃほぼ無敵の戦士が出来上がるな」
「た、確かに怪我はしなくなったが……」
「で、鎧にかかってる魔法についてだが……ほとんどは鎧の呪いを抑える魔法だな。すげえぞ、弱体化に各種の毒、衰弱に呪殺、崩壊、狂化に血の茨、混乱に思考力低下……ああ、毒の中でも腐毒なんてのもあったぞ。全部発動したらお前、一息のうちに砂になるな。アンデッドになる暇すらねえよ」
「な……っ」
腐毒はその名の通り身体を腐らせる毒、血の茨は死ぬような激しい痛みと引き換えに高い攻撃力を得る呪い、崩壊はその名の通り身体が崩れる呪いだ。他の呪いも合わせれば、一瞬で精神崩壊して死ぬ。シェルの言う通り「砂になる」ような死に方になるのは明らかだった。
「だ、だが……そうだ。鎧の呪いは抑えられているんだろう?」
「おう。まあ、もって……あと2日ってとこだな。しかもあの鎧の呪い、完全にお前を「見て」んぞ。たぶん引き離したくらいじゃ追いかけてくるな」
「馬鹿な、それではまるで……」
「おう、まるでお前を殺す為に出来てるように見える。だから聞いてんだろ? 「嫌われてんのか」ってな」
信じられない、とコロナは首を横に振る。
呪いの鎧。確かに青や白、緑などを好むエルフにしては珍しい配色だとは思った。
しかし、過剰なくらいにかけられた守護の魔法は期待の現れだと思ったし、そう考えると赤い色も特別な配慮と信じ込めた。
モンスターの討伐に何度も向かうのも、自分が頼りにされているからだと思っていた。
「……そうだ。まさか、私をからかっているのでは」
「そんな事してアタシに何の得がある。あの鎧がどうこうってんなら、別に要らねえから此処に持ってきてやってもいいぞ?」
「だが。何故、そんな……私は国の為に尽くしている。そんな呪いの鎧を授かる理由が無い! 貴殿の勘違いではないのか!?」
「勘違いねえ……」
馬鹿にしたように哂った後、シェルは何かに気付いたかのように何処かへと視線を向ける。
「お、気付きやがったな。つーか、こりゃ……ククッ」
「なんだ? 一体何、を……」
疑問符を浮かべていたコロナは、突如沸き上がった悪寒に身を震わせる。
ろくでもない何かに視られているような、そんなおぞましい感覚。
思わず周囲を見回しても、其処にはシェルしか居ない。
「人工精霊ときたか。ありゃエルフの間で禁呪扱いだったと思ったけどな」
「なっ……馬鹿な! あれは遥か昔に封印されたはずだ!」
「アタシに言うんじゃねえよ。つーか行くぞ。放置するとアタシがあいつに文句言われるからな」
あいつ、というのが誰であるかはコロナには分からなかったが、慌てたようにコロナは立ち上がり……しかし、剣も雄太の家に置いてきてしまっている事に気付き舌打ちをする。
呪いの鎧、人工精霊。それが真実であるならば、その答えは。
「……あっ」
ガチャリ、ガチャリと。中身のない鎧が歩いてくる。
足りない部分を薄く輝く靄のようなもので補完し、その手にコロナの剣を握って。
その鎧もまた、コロナの赤い鎧。その赤を強くしたソレが、ガチャリと音を鳴らして歩いてくる。
リビングアーマー。ゴーレムの一種であり、遥か昔に魔族に利用されたが故に禁呪となった「人工精霊」を宿らせた鎧。
そんなものが、全身から呪いを噴き出しながら歩いてくる。
その姿は、シェルの言う事全てが真実だと示していて。
「な、何故だ! 何故こんな……!」
これはエルフの王より賜りし鎧。そんなものに、こんなことがあっていいはずがない。
裏切りだ。エルフの王に対する、明確な裏切り。
すぐにでも報告せねばとコロナは使命感を新たにして。
「オオ……悍マシキ混血……穢レシ魔族ノ血……断罪ノ、時デアル……」
「何、だと……?」
「あー、なるほどなあ。ホワイトエルフにしちゃ体力あんなと思ってたんだよ」
リビングアーマーの吐き出す「戯言」を、シェルがアッサリと肯定した。
「シェル殿……?」
「いや、おかしいとは思ってたんだよな。お前、たぶん親のどっちかが魔族なんだろ。つーか魔人か?」
「ま、待て! 私の父も母も純粋な……!」
「実の親かどうか分かんねえぞお?」
「呪ワレシ母ヨリ生マレタ罪、清算セヨ……!」
話している間にも、リビングアーマーは近づいてくる。
剣を振り上げ、呪いを纏ったその剣をシェル達へと振り下ろそうとして。
「ん? ああ、もうお前消えていいぞ?」
シェルが指を鳴らしたその瞬間に上がった火柱が、リビングアーマーを一瞬のうちに溶かし尽くした。
悪い人間ではない。それが充分に分かっていたからこそ、コロナは怒りを消し冷静さを取り戻す。
だが納得したわけではない。何かの勘違いだろう。そんな想いを抱いたまま、コロナはゆっくりと座り直す。
「……呪いの鎧と言ったな」
「おう」
「どの辺りが呪いの鎧なのか聞こうか」
「どの辺りも何もよぉ、鍛冶場で確認したけどよ。ありとあらゆる呪いが染みついてんぞアレ。ミスリルで封じ込めて色んな魔法かける事で誤魔化してっけど、あの赤色って塗ってんじゃなくて呪いの赤だったぞ」
シェルの説明がコロナは理解できず、そのまま固まってしまう。
「鎧としちゃ最高の能力だと思うぜ。確認できた限りじゃ『物理的、魔法的ダメージを大きく低減、鎧に染みついた呪いよりも弱い呪いを全て吸収』ってところか。着てりゃほぼ無敵の戦士が出来上がるな」
「た、確かに怪我はしなくなったが……」
「で、鎧にかかってる魔法についてだが……ほとんどは鎧の呪いを抑える魔法だな。すげえぞ、弱体化に各種の毒、衰弱に呪殺、崩壊、狂化に血の茨、混乱に思考力低下……ああ、毒の中でも腐毒なんてのもあったぞ。全部発動したらお前、一息のうちに砂になるな。アンデッドになる暇すらねえよ」
「な……っ」
腐毒はその名の通り身体を腐らせる毒、血の茨は死ぬような激しい痛みと引き換えに高い攻撃力を得る呪い、崩壊はその名の通り身体が崩れる呪いだ。他の呪いも合わせれば、一瞬で精神崩壊して死ぬ。シェルの言う通り「砂になる」ような死に方になるのは明らかだった。
「だ、だが……そうだ。鎧の呪いは抑えられているんだろう?」
「おう。まあ、もって……あと2日ってとこだな。しかもあの鎧の呪い、完全にお前を「見て」んぞ。たぶん引き離したくらいじゃ追いかけてくるな」
「馬鹿な、それではまるで……」
「おう、まるでお前を殺す為に出来てるように見える。だから聞いてんだろ? 「嫌われてんのか」ってな」
信じられない、とコロナは首を横に振る。
呪いの鎧。確かに青や白、緑などを好むエルフにしては珍しい配色だとは思った。
しかし、過剰なくらいにかけられた守護の魔法は期待の現れだと思ったし、そう考えると赤い色も特別な配慮と信じ込めた。
モンスターの討伐に何度も向かうのも、自分が頼りにされているからだと思っていた。
「……そうだ。まさか、私をからかっているのでは」
「そんな事してアタシに何の得がある。あの鎧がどうこうってんなら、別に要らねえから此処に持ってきてやってもいいぞ?」
「だが。何故、そんな……私は国の為に尽くしている。そんな呪いの鎧を授かる理由が無い! 貴殿の勘違いではないのか!?」
「勘違いねえ……」
馬鹿にしたように哂った後、シェルは何かに気付いたかのように何処かへと視線を向ける。
「お、気付きやがったな。つーか、こりゃ……ククッ」
「なんだ? 一体何、を……」
疑問符を浮かべていたコロナは、突如沸き上がった悪寒に身を震わせる。
ろくでもない何かに視られているような、そんなおぞましい感覚。
思わず周囲を見回しても、其処にはシェルしか居ない。
「人工精霊ときたか。ありゃエルフの間で禁呪扱いだったと思ったけどな」
「なっ……馬鹿な! あれは遥か昔に封印されたはずだ!」
「アタシに言うんじゃねえよ。つーか行くぞ。放置するとアタシがあいつに文句言われるからな」
あいつ、というのが誰であるかはコロナには分からなかったが、慌てたようにコロナは立ち上がり……しかし、剣も雄太の家に置いてきてしまっている事に気付き舌打ちをする。
呪いの鎧、人工精霊。それが真実であるならば、その答えは。
「……あっ」
ガチャリ、ガチャリと。中身のない鎧が歩いてくる。
足りない部分を薄く輝く靄のようなもので補完し、その手にコロナの剣を握って。
その鎧もまた、コロナの赤い鎧。その赤を強くしたソレが、ガチャリと音を鳴らして歩いてくる。
リビングアーマー。ゴーレムの一種であり、遥か昔に魔族に利用されたが故に禁呪となった「人工精霊」を宿らせた鎧。
そんなものが、全身から呪いを噴き出しながら歩いてくる。
その姿は、シェルの言う事全てが真実だと示していて。
「な、何故だ! 何故こんな……!」
これはエルフの王より賜りし鎧。そんなものに、こんなことがあっていいはずがない。
裏切りだ。エルフの王に対する、明確な裏切り。
すぐにでも報告せねばとコロナは使命感を新たにして。
「オオ……悍マシキ混血……穢レシ魔族ノ血……断罪ノ、時デアル……」
「何、だと……?」
「あー、なるほどなあ。ホワイトエルフにしちゃ体力あんなと思ってたんだよ」
リビングアーマーの吐き出す「戯言」を、シェルがアッサリと肯定した。
「シェル殿……?」
「いや、おかしいとは思ってたんだよな。お前、たぶん親のどっちかが魔族なんだろ。つーか魔人か?」
「ま、待て! 私の父も母も純粋な……!」
「実の親かどうか分かんねえぞお?」
「呪ワレシ母ヨリ生マレタ罪、清算セヨ……!」
話している間にも、リビングアーマーは近づいてくる。
剣を振り上げ、呪いを纏ったその剣をシェル達へと振り下ろそうとして。
「ん? ああ、もうお前消えていいぞ?」
シェルが指を鳴らしたその瞬間に上がった火柱が、リビングアーマーを一瞬のうちに溶かし尽くした。
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