捨てられおっさんと邪神様の異世界開拓生活~スローライフと村造り、時々ぎっくり腰~
初めての来訪者10
「……で、あそこの御仁は?」
流石にベルフラットの視線に気付いたのだろう、コロナは雄太に問いかけてくるが……フェルフェトゥがどうやらフェルと名乗っているらしいこともあって、どう紹介するべきかと雄太は一瞬迷う。
「あー……畑の管理してくれてるんだ」
「畑か……ヴァルヘイムに畑などと、余所で話せば正気を疑われるだろうな」
誰も信じないだろう。世界樹の森という実例があっても、それはその場所だけの奇跡だといわれている程なのだ。
「一体何を育てているんだ?」
「え? あー……見る?」
「是非」
そう答えるコロナを連れて雄太は畑の方へと足を進めるが……そうすると、倉庫の裏から見ていたベルフラットが音もなく近寄ってきて雄太の腕に自分の腕を絡める。
「あー……ユータ殿。そちらの方は?」
「ベルよ。別に覚えなくてもいいわ……」
「そ、そうか」
本気で「どうでもいい」と思っている風のベルフラットにコロナはそうとだけ答える。
自分への無関心……いや、どちらかというと敵意に近いものを感じるのだが、それは自分と雄太の距離感を測っているが故にもコロナには思えた。
むしろコロナよりもセージュに対する敵意の方が強い気がするし、セージュも雄太の頭の上からベルフラットに敵意を向けている。
一体この村でどんな人間関係が築かれているのか少しばかり気にはなるが、コロナはとりあえず気にしないことにする。
「で、畑なんだけど。ベル……が世話してくれてるんだ」
「ユータの為よ」
即答するベルフラットに雄太は「ありがとう」などと答えているが……コロナの視線は、すでに畑に釘付けだ。
「畑……これが、か……?」
「ん、まあ……」
一言で言えば、それは無茶苦茶な光景だった。
芋の蔓と思わしきものが伸びている畑。
麦の穂が揺れている畑。
キャベツやレタスやらが生えている畑。
その向こうに生えているのは人参だろうか。
何やら綿花の畑と思わしきものまである。
どれも収穫直前といった風ではあるが……正直に言って、有り得ない。
収穫時期の異なる様々なものが、収穫直前の状態で其処に在る。
一体何をどうやったらこんな事になるのか。
混沌を通り越して、神の奇跡じみたものを……いや、実際に何らかの神の力を強く感じる。
雄太もそれが普通ではないと分かっているのか、コロナが視線を向けるとサッと目を逸らす。
「ユータ殿……これは……軽々しく他人に見せるものではないぞ……?」
「いや、分かってたんだけど……そろそろベルの視線も怖かったし……」
いつになく強い視線をぶつけてきていたベルフラットの圧力に、雄太のハートが悲鳴をあげていたのだ。
それに、今更という感じもしたのだ。水がこれだけ潤沢なところを見せておいて、畑だけ隠す理由もない。
「まあ、育ってるものは普通だし?」
「普通じゃないぞ……さては、あの麦粥もこの畑の麦だな……?」
「ん、まあ」
「あの麦と同じものは、恐らくヒューマンの貴族でも食えんぞ。まあ、ヒューマンは魔力に鈍いから気付かんかもしれんが……」
基本的にエルフ以外の種族はエルフと違って魔力に対する感覚が恐ろしく鈍い。
この村に溢れる神の力でさえ感じ取れるか微妙なところだろう。
そう考えると、然程問題ないようにもコロナには思えてくるのだが……。
「……まあ、なんだ。ユータ殿は神々に愛されているようだな」
「勿論よ……」
「ベル殿もそう思うか。しかし、まあ……」
同じエルフにですら、この村の事は話せないだろうとコロナは思う。
神々に愛され、精霊にも好かれる男の作った村。
そんなものがあると知られれば、放っておくなどという話になるはずがない。
間違いなく何らかの行動に出るだろうが……それは、間違いなく雄太の平穏を壊すことになる。
「自己防衛だけはしっかりな、ユータ殿。何も乗っ取りは暴力的な手段ばかりとは限らんぞ」
美女の類を送り込んで篭絡するというのは、古今東西で行われてきた手段ではある。
フェルに、あのシェルと呼ばれた赤髪の少女。そしてベルと名乗る雄太に好意を持っているらしい美女。
これだけ揃っていれば簡単に篭絡はされないだろうが……。
「……ん?」
ユータ、フェル、シェル、ベル。精霊のセージュをさておいても、異様に女性比率が高い事にコロナは気付く。
「ユータ殿、この村に他に男は居ないのか?」
「え? いや、1人いるけど……そういえば今日見かけないな?」
姿を見せないガンダインの事を思い出し、雄太は首を傾げる。
見た目の存在感の割にはあまり他の面々と比べてガンダインは自己主張をしない。
本当に村に居ついているのかと思う事さえあるが……。
「アイツは自分勝手だから……気にしなくていいわ……」
「お前が言うなですよ……」
セージュがベルフラットにツッコミを入れるが、ベルフラットは全く聞いていない。
「そうか。いや、いいんだがな……てっきり一夫多妻でも敷いているのかと邪推してしまった」
「え、そういう制度あんの?」
「無いわけではない。経済力が問われるから、やっている者は少ないがな」
すげえな異世界、と。
雄太は妙な感心をするが……コロナに冷たい目で見られて、思わず咳払いをして誤魔化した。
流石にベルフラットの視線に気付いたのだろう、コロナは雄太に問いかけてくるが……フェルフェトゥがどうやらフェルと名乗っているらしいこともあって、どう紹介するべきかと雄太は一瞬迷う。
「あー……畑の管理してくれてるんだ」
「畑か……ヴァルヘイムに畑などと、余所で話せば正気を疑われるだろうな」
誰も信じないだろう。世界樹の森という実例があっても、それはその場所だけの奇跡だといわれている程なのだ。
「一体何を育てているんだ?」
「え? あー……見る?」
「是非」
そう答えるコロナを連れて雄太は畑の方へと足を進めるが……そうすると、倉庫の裏から見ていたベルフラットが音もなく近寄ってきて雄太の腕に自分の腕を絡める。
「あー……ユータ殿。そちらの方は?」
「ベルよ。別に覚えなくてもいいわ……」
「そ、そうか」
本気で「どうでもいい」と思っている風のベルフラットにコロナはそうとだけ答える。
自分への無関心……いや、どちらかというと敵意に近いものを感じるのだが、それは自分と雄太の距離感を測っているが故にもコロナには思えた。
むしろコロナよりもセージュに対する敵意の方が強い気がするし、セージュも雄太の頭の上からベルフラットに敵意を向けている。
一体この村でどんな人間関係が築かれているのか少しばかり気にはなるが、コロナはとりあえず気にしないことにする。
「で、畑なんだけど。ベル……が世話してくれてるんだ」
「ユータの為よ」
即答するベルフラットに雄太は「ありがとう」などと答えているが……コロナの視線は、すでに畑に釘付けだ。
「畑……これが、か……?」
「ん、まあ……」
一言で言えば、それは無茶苦茶な光景だった。
芋の蔓と思わしきものが伸びている畑。
麦の穂が揺れている畑。
キャベツやレタスやらが生えている畑。
その向こうに生えているのは人参だろうか。
何やら綿花の畑と思わしきものまである。
どれも収穫直前といった風ではあるが……正直に言って、有り得ない。
収穫時期の異なる様々なものが、収穫直前の状態で其処に在る。
一体何をどうやったらこんな事になるのか。
混沌を通り越して、神の奇跡じみたものを……いや、実際に何らかの神の力を強く感じる。
雄太もそれが普通ではないと分かっているのか、コロナが視線を向けるとサッと目を逸らす。
「ユータ殿……これは……軽々しく他人に見せるものではないぞ……?」
「いや、分かってたんだけど……そろそろベルの視線も怖かったし……」
いつになく強い視線をぶつけてきていたベルフラットの圧力に、雄太のハートが悲鳴をあげていたのだ。
それに、今更という感じもしたのだ。水がこれだけ潤沢なところを見せておいて、畑だけ隠す理由もない。
「まあ、育ってるものは普通だし?」
「普通じゃないぞ……さては、あの麦粥もこの畑の麦だな……?」
「ん、まあ」
「あの麦と同じものは、恐らくヒューマンの貴族でも食えんぞ。まあ、ヒューマンは魔力に鈍いから気付かんかもしれんが……」
基本的にエルフ以外の種族はエルフと違って魔力に対する感覚が恐ろしく鈍い。
この村に溢れる神の力でさえ感じ取れるか微妙なところだろう。
そう考えると、然程問題ないようにもコロナには思えてくるのだが……。
「……まあ、なんだ。ユータ殿は神々に愛されているようだな」
「勿論よ……」
「ベル殿もそう思うか。しかし、まあ……」
同じエルフにですら、この村の事は話せないだろうとコロナは思う。
神々に愛され、精霊にも好かれる男の作った村。
そんなものがあると知られれば、放っておくなどという話になるはずがない。
間違いなく何らかの行動に出るだろうが……それは、間違いなく雄太の平穏を壊すことになる。
「自己防衛だけはしっかりな、ユータ殿。何も乗っ取りは暴力的な手段ばかりとは限らんぞ」
美女の類を送り込んで篭絡するというのは、古今東西で行われてきた手段ではある。
フェルに、あのシェルと呼ばれた赤髪の少女。そしてベルと名乗る雄太に好意を持っているらしい美女。
これだけ揃っていれば簡単に篭絡はされないだろうが……。
「……ん?」
ユータ、フェル、シェル、ベル。精霊のセージュをさておいても、異様に女性比率が高い事にコロナは気付く。
「ユータ殿、この村に他に男は居ないのか?」
「え? いや、1人いるけど……そういえば今日見かけないな?」
姿を見せないガンダインの事を思い出し、雄太は首を傾げる。
見た目の存在感の割にはあまり他の面々と比べてガンダインは自己主張をしない。
本当に村に居ついているのかと思う事さえあるが……。
「アイツは自分勝手だから……気にしなくていいわ……」
「お前が言うなですよ……」
セージュがベルフラットにツッコミを入れるが、ベルフラットは全く聞いていない。
「そうか。いや、いいんだがな……てっきり一夫多妻でも敷いているのかと邪推してしまった」
「え、そういう制度あんの?」
「無いわけではない。経済力が問われるから、やっている者は少ないがな」
すげえな異世界、と。
雄太は妙な感心をするが……コロナに冷たい目で見られて、思わず咳払いをして誤魔化した。
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