捨てられおっさんと邪神様の異世界開拓生活~スローライフと村造り、時々ぎっくり腰~
初めての来訪者4
外に出てみると、まずコロナの目に入ったのは井戸だった。
「これ、は……!」
「井戸ですけど」
まさかと思いながらも近づいて中を覗き込み、コロナは思わず「ううっ」と唸る。
井戸の底で輝く水。その全てが聖水であることに気付き、信じられないと頭を振る。
こんなもの、水の善神アクエリオの大神殿にだってあるかどうか分からない。
「ユータ殿。この井戸の水は……聖水、だな?」
「あー……そう聞いてますね」
「そ、うか……」
先程とは別の意味でクラクラしそうになる頭を押さえ、コロナは井戸から離れる。
というか、先程は気づかなかったが……今自分が出てきた建物も、何らかの神の力を感じる。
そう、まるで……神殿であるかのようだ。しかしまさか、とコロナは自分の考えを振り払う。
「いや、すまないな。行こう」
「ええ」
着替えは持ってきてはいるが、旅の最中に外で脱ぐわけにもいかずほぼ着たきりだったから風呂に入れるのは素直に嬉しい。
何も考えずに温泉を楽しもうと……そんな事を考えながら歩こうとしたコロナは、それが精神集中に繋がったのか気付いてしまう。
そして振り返り、今出てきた家の向こうに生えている木を凝視する。
「ゆ、ユータ殿ぉ!?」
「へ!?」
振り返った雄太の視線の先では、コロナが家の横に生える木を震える手で指している。
「あ、あああ……あの木は一体……?」
「木です」
「そうじゃない! あの木が放つ魔力は普通じゃないぞ!? まさか……まさか神樹なんじゃあるまいな!?」
「ハハハ、マサカ」
そのまさかで神樹エルウッドであるが流石にここまでくれば、なんとなく価値観が違うということくらい雄太も気付く。
よって誤魔化す方向に持っていくが、コロナには通じない。
「棒読みだぞユータ殿! そうか、さっきの果実……あの木に生っているものだな!?」
「何の事だか分かりません。それより行きましょうよ」
「い、いや待てユータ……殿?」
早歩きの雄太を追いかけたコロナは、しかしその足をすぐに止めてしまう。
その視線の先にあるのは、神樹エルウッドとは反対側に生えていた若木。
どうにもそれから、先程の精霊と同じ種類の魔力を感じるのだ。
「さあ、行きますよー」
「い、いやいやいや! ちょっと待ってくれユータ殿! この若木は一体……!?」
「木です」
「ユータ殿ぉ!」
コロナは早歩きの雄太を追いかけ追いつくと問い詰めようとして……そこにあった建物に気付き雄太の肩を掴み足を止める。
「ユータ殿……先程の家でも思ったのだが、この鍛冶場らしき建物からも神の力を感じるのだが……」
「見ての通り鍛冶場ですよ」
「そうか。ちなみに感じる神の力は先程とは別のものなのだが」
「鍛冶場ですしね」
「いや、それはそうなんだが」
「さ、行きましょう」
スタスタと歩いていく雄太を追いかけ、ようやく二人は温泉へと辿り着く。
しかし、その温泉を囲む壁や建物からも神の力をコロナは感じた。
「……ユータ殿」
「女湯はそっちの入り口からです」
「……そうか」
追及を諦めて、コロナは促されるままに脱衣場へと入っていく。
この場所から感じる神の力は、先程の建物から感じたものと同質だが……何処となく、あの食事を運んできてくれたフェルという少女のものとも似ている気がした。
「とんでもない村だ……信じられん」
あんな大精霊がいて、如何なる神は分からないが神の力も溢れている。
まるで世界の全てがこの村を守っているかのようで、自分の常識が覆りそうな気持をコロナは味わっていた。
服を脱ぎ、置いてあった籠に入れて風呂へと向かい……再び、絶句する。
「聖水の……温泉、だと……」
そう、確かに温泉だ。しかし並々と満たされたその湯の全ては……疑いようもなく聖水であった。
こんなもの、水の善神アクエリオの大神殿の神官長だって入れまい。
「いや、アクエリオの魔力は知っている……つまりこれは別の水神の加護によるもの……」
そうだとしても、たとえばコレが善神ではなく邪神や悪神の手によるものだったとしても。
いや、悪神は聖水など作らないから邪神かもしれないが、そうだとしても。
こんな凄まじい加護など、有り得ない。どれだけ神の寵愛を受ければこんなものを授かるのか。
コロナには、想像すらも出来ない。
「……」
恐る恐る、コロナは温泉に手の先を浸す。
ただそれだけで、この温泉の力を実感する。
間違いない。これは癒しの力を持つ温泉なのだ。
「湯に入る前にゃ身体を流せよー」
かけられた声に、ビクリとする。
先程は湯煙で気付かなかったが、温泉の奥の方に一人の赤髪の少女が浸かっているのが見えた。
「こ、これは失礼を。こんな贅沢な温泉など信じられずに確かめてしまった」
「ハハ、確かに大盤振る舞いだよな。気持ちは分かるぜ」
カラカラと笑う少女にコロナも愛想笑いを返し、近くにあった桶を浸しお湯を掬う。
離れた場所でそれを身体にかければ、それだけで身体の汚れが浄化されていくのを感じる。
それを何度か繰り返し、頭からも被って。
お湯に浸かれば、それだけで身体の疲れが全て消えていくようにすら感じた。
「……なんなのだ、此処は。神の世界を切り取りでもしたのか……?」
「面白い事言うな、お前」
コロナの万感の思いが籠った台詞を聞いた赤髪の少女……バーンシェルは、魔力を先程のフェルフェトゥのように人間並みに抑えた上で僅かに魔力の質を変えるとい小技を使いながら、楽しそうに笑う。
「これ、は……!」
「井戸ですけど」
まさかと思いながらも近づいて中を覗き込み、コロナは思わず「ううっ」と唸る。
井戸の底で輝く水。その全てが聖水であることに気付き、信じられないと頭を振る。
こんなもの、水の善神アクエリオの大神殿にだってあるかどうか分からない。
「ユータ殿。この井戸の水は……聖水、だな?」
「あー……そう聞いてますね」
「そ、うか……」
先程とは別の意味でクラクラしそうになる頭を押さえ、コロナは井戸から離れる。
というか、先程は気づかなかったが……今自分が出てきた建物も、何らかの神の力を感じる。
そう、まるで……神殿であるかのようだ。しかしまさか、とコロナは自分の考えを振り払う。
「いや、すまないな。行こう」
「ええ」
着替えは持ってきてはいるが、旅の最中に外で脱ぐわけにもいかずほぼ着たきりだったから風呂に入れるのは素直に嬉しい。
何も考えずに温泉を楽しもうと……そんな事を考えながら歩こうとしたコロナは、それが精神集中に繋がったのか気付いてしまう。
そして振り返り、今出てきた家の向こうに生えている木を凝視する。
「ゆ、ユータ殿ぉ!?」
「へ!?」
振り返った雄太の視線の先では、コロナが家の横に生える木を震える手で指している。
「あ、あああ……あの木は一体……?」
「木です」
「そうじゃない! あの木が放つ魔力は普通じゃないぞ!? まさか……まさか神樹なんじゃあるまいな!?」
「ハハハ、マサカ」
そのまさかで神樹エルウッドであるが流石にここまでくれば、なんとなく価値観が違うということくらい雄太も気付く。
よって誤魔化す方向に持っていくが、コロナには通じない。
「棒読みだぞユータ殿! そうか、さっきの果実……あの木に生っているものだな!?」
「何の事だか分かりません。それより行きましょうよ」
「い、いや待てユータ……殿?」
早歩きの雄太を追いかけたコロナは、しかしその足をすぐに止めてしまう。
その視線の先にあるのは、神樹エルウッドとは反対側に生えていた若木。
どうにもそれから、先程の精霊と同じ種類の魔力を感じるのだ。
「さあ、行きますよー」
「い、いやいやいや! ちょっと待ってくれユータ殿! この若木は一体……!?」
「木です」
「ユータ殿ぉ!」
コロナは早歩きの雄太を追いかけ追いつくと問い詰めようとして……そこにあった建物に気付き雄太の肩を掴み足を止める。
「ユータ殿……先程の家でも思ったのだが、この鍛冶場らしき建物からも神の力を感じるのだが……」
「見ての通り鍛冶場ですよ」
「そうか。ちなみに感じる神の力は先程とは別のものなのだが」
「鍛冶場ですしね」
「いや、それはそうなんだが」
「さ、行きましょう」
スタスタと歩いていく雄太を追いかけ、ようやく二人は温泉へと辿り着く。
しかし、その温泉を囲む壁や建物からも神の力をコロナは感じた。
「……ユータ殿」
「女湯はそっちの入り口からです」
「……そうか」
追及を諦めて、コロナは促されるままに脱衣場へと入っていく。
この場所から感じる神の力は、先程の建物から感じたものと同質だが……何処となく、あの食事を運んできてくれたフェルという少女のものとも似ている気がした。
「とんでもない村だ……信じられん」
あんな大精霊がいて、如何なる神は分からないが神の力も溢れている。
まるで世界の全てがこの村を守っているかのようで、自分の常識が覆りそうな気持をコロナは味わっていた。
服を脱ぎ、置いてあった籠に入れて風呂へと向かい……再び、絶句する。
「聖水の……温泉、だと……」
そう、確かに温泉だ。しかし並々と満たされたその湯の全ては……疑いようもなく聖水であった。
こんなもの、水の善神アクエリオの大神殿の神官長だって入れまい。
「いや、アクエリオの魔力は知っている……つまりこれは別の水神の加護によるもの……」
そうだとしても、たとえばコレが善神ではなく邪神や悪神の手によるものだったとしても。
いや、悪神は聖水など作らないから邪神かもしれないが、そうだとしても。
こんな凄まじい加護など、有り得ない。どれだけ神の寵愛を受ければこんなものを授かるのか。
コロナには、想像すらも出来ない。
「……」
恐る恐る、コロナは温泉に手の先を浸す。
ただそれだけで、この温泉の力を実感する。
間違いない。これは癒しの力を持つ温泉なのだ。
「湯に入る前にゃ身体を流せよー」
かけられた声に、ビクリとする。
先程は湯煙で気付かなかったが、温泉の奥の方に一人の赤髪の少女が浸かっているのが見えた。
「こ、これは失礼を。こんな贅沢な温泉など信じられずに確かめてしまった」
「ハハ、確かに大盤振る舞いだよな。気持ちは分かるぜ」
カラカラと笑う少女にコロナも愛想笑いを返し、近くにあった桶を浸しお湯を掬う。
離れた場所でそれを身体にかければ、それだけで身体の汚れが浄化されていくのを感じる。
それを何度か繰り返し、頭からも被って。
お湯に浸かれば、それだけで身体の疲れが全て消えていくようにすら感じた。
「……なんなのだ、此処は。神の世界を切り取りでもしたのか……?」
「面白い事言うな、お前」
コロナの万感の思いが籠った台詞を聞いた赤髪の少女……バーンシェルは、魔力を先程のフェルフェトゥのように人間並みに抑えた上で僅かに魔力の質を変えるとい小技を使いながら、楽しそうに笑う。
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