捨てられおっさんと邪神様の異世界開拓生活~スローライフと村造り、時々ぎっくり腰~
雄太、危機感を覚える
さらに数日が経過して、集会場の二階と……さらにその上の鐘楼は完成した。
雄太の思いつきにより、以前断念したギリシャ神殿の柱風の作り方をしようとしたのが日数を伸ばした原因であったわけだが……具体的に言うと、積み重ねた上下の大きさが異なると歪さが際立つのだ。
おかげでバーンシェルに貰った細工道具が早速活躍するという場面もあったが……それはさておき。
「これで一応完成だな」
「まあな」
地上から鐘楼を見上げる雄太とガンダインだが……その鐘楼には、肝心の鐘が無い。
「鐘はもう少し時間かかるからな。お疲れ様だな、ユータ」
「あー……だな」
納得いく素材を探す為にバーンシェルは付近の山に採掘の旅に出てしまっているが、その間の鍛冶場の掃除の担当は雄太であったりする。
「しかし、こんなもんが出来るといよいよ村だなあ……って感じがするけど」
雄太の後ろを、ピヨピヨと鳴きながら巨大なヒヨコが通り過ぎていく。
連れ帰ってきたヒヨコやニワトリ達だが、世話は雄太とフェルフェトゥで共同だ。
むしろ、建築関連で倒れている雄太よりもフェルフェトゥに懐いているかもしれない。
畑はベルフラットが担当であり、いつの間にか野菜も育て始めている。
雄太には気付かなかった事だが、食事を普段フェルフェトゥが用意している分気付きが遅れたのかもしれない。
そして鍛冶はバーンシェルが担当。各種家事はフェルフェトゥが担当となると……。
「こういうのがひと段落したら、俺は何すればいいんだろうな」
「ん?」
「いやほら、思い返すと俺、家事ってロクにやってないだろ? 村の拡張工事やってる間はいいけど、それが終わったら俺の存在価値が……」
「なるほどなあ」
雄太の言いたい事が理解できたのか、ガンダインは頷いてみせる。
「お前、意外と気が小さいっつーか細かいっつーか……」
「うぐっ」
自覚出来ているだけに、ガンダインの言葉は雄太によく刺さる。
しかし、実際気になってしまうのだ。
邪神であり適材適所とはいえ、女の子に働かせて安穏としているような男というのは実に良くない。
というか、そんなのではいつまでたってもぎっくり腰だって「反転」しないだろう。
「とにかく、今また必要な施設があるかっていうと……ないだろ? となると、俺は今後の事も考えて村の中での仕事を確立しないといけないと思うんだ」
「村長っつーのは仕事じゃねえのか?」
「仕事かもしれないけど、今の状況で村長なんて無くてもいいようなもんだろ」
何しろ雄太以外は邪神と精霊だ。隣人トラブルだって発生しない。
「やっぱり村の壁造りをいよいよ始めるべきか……? いや、そんなんじゃダメだ。もっと恒常的な仕事になるようなものを……」
「まあ、よく分かんねえが……見つかるといいな」
「ああ」
とりあえず壁を作るとしたらどの範囲かと考えながら、雄太は村の端へと歩いていく。
「あ、ユータです。何してるですかー?」
「んー、仕事探してる?」
「意味わかんないです」
飛んできたセージュを肩に載せて、雄太は村の中を歩く。
雄太の家、畑、井戸、温泉、鍛冶場、集会場。
必要なものはもう充分に出来た気がするが、そうなったら雄太は何をすればいいのか。
ガンダインは村長と言っていたが……。
「もっと身体を動かさないとダメな気がするんだよなあ」
「それって、ユータのスキルの話です?」
「ああ」
不健康、そしてギックリ腰。
未だ反転しないこれ等をどうにかする為には肉体労働がいいと思うのだが……。
「それだったら、狩りをすればいいんじゃないです?」
「狩り……」
なるほど、肉に魚。
麦や野菜をベルフラットが育てているといっても、肉や魚はフェルフェトゥが町で買ってきている状況が続いている。
やがてはこれ等も自己供給できるようにならなければ片手落ちだろう。
ちなみにニワトリ達は別枠である。彼等は村の住人のようなものであって、お肉ではないというのが全員の統一見解だ。
「狩り、かあ」
雄太は武器らしい武器は持っていない。
唯一あるのは筋トレマニアのシャベルだが、これは武器に数えていいのか不明だ。
そして何よりも、この近辺で狩りをするとなると世界樹の森になるのだろうが……。
「なんていうか、セージュはいいのか?」
「何がです?」
「いや、ほら。狩りをするってことは世界樹の森で生き物を殺すってことであって……こう、仲間とか」
「別に仲間じゃないですけど」
「あ、そうなのか」
「ユータは私をなんだと思ってるですか……」
別に森の仲間とかそういうアレじゃないんだな、と雄太は何か納得してしまうが……難点は「遠い」ことくらいだろうか?
流石に往復で三日というのは、狩りに使う日程としてはどうなのだろうか?
「うーん……」
「ピヨ」
やってきたヒヨコに軽く頭を噛まれて、雄太は「ぐっ」と唸る。
そして同時に気付く。
「あ、そうか。お前等がいるじゃん」
「へ?」
「ピヨ?」
そう、ヒヨコだ。ニワトリのほうでもいいが、彼等はとにかく早い。
騎乗できる程に大きいし、雄太が走るより遥かに速いのだ。
彼等に乗せて貰えれば、世界樹の森との往復は現実的な範囲に充分に収まる。
「そうだ、それだよ! なあ、手伝って……」
「ピヨ」
カプリとヒヨコに甘噛みされて、雄太はまずは相互理解だと充分すぎる程に理解した。
雄太の思いつきにより、以前断念したギリシャ神殿の柱風の作り方をしようとしたのが日数を伸ばした原因であったわけだが……具体的に言うと、積み重ねた上下の大きさが異なると歪さが際立つのだ。
おかげでバーンシェルに貰った細工道具が早速活躍するという場面もあったが……それはさておき。
「これで一応完成だな」
「まあな」
地上から鐘楼を見上げる雄太とガンダインだが……その鐘楼には、肝心の鐘が無い。
「鐘はもう少し時間かかるからな。お疲れ様だな、ユータ」
「あー……だな」
納得いく素材を探す為にバーンシェルは付近の山に採掘の旅に出てしまっているが、その間の鍛冶場の掃除の担当は雄太であったりする。
「しかし、こんなもんが出来るといよいよ村だなあ……って感じがするけど」
雄太の後ろを、ピヨピヨと鳴きながら巨大なヒヨコが通り過ぎていく。
連れ帰ってきたヒヨコやニワトリ達だが、世話は雄太とフェルフェトゥで共同だ。
むしろ、建築関連で倒れている雄太よりもフェルフェトゥに懐いているかもしれない。
畑はベルフラットが担当であり、いつの間にか野菜も育て始めている。
雄太には気付かなかった事だが、食事を普段フェルフェトゥが用意している分気付きが遅れたのかもしれない。
そして鍛冶はバーンシェルが担当。各種家事はフェルフェトゥが担当となると……。
「こういうのがひと段落したら、俺は何すればいいんだろうな」
「ん?」
「いやほら、思い返すと俺、家事ってロクにやってないだろ? 村の拡張工事やってる間はいいけど、それが終わったら俺の存在価値が……」
「なるほどなあ」
雄太の言いたい事が理解できたのか、ガンダインは頷いてみせる。
「お前、意外と気が小さいっつーか細かいっつーか……」
「うぐっ」
自覚出来ているだけに、ガンダインの言葉は雄太によく刺さる。
しかし、実際気になってしまうのだ。
邪神であり適材適所とはいえ、女の子に働かせて安穏としているような男というのは実に良くない。
というか、そんなのではいつまでたってもぎっくり腰だって「反転」しないだろう。
「とにかく、今また必要な施設があるかっていうと……ないだろ? となると、俺は今後の事も考えて村の中での仕事を確立しないといけないと思うんだ」
「村長っつーのは仕事じゃねえのか?」
「仕事かもしれないけど、今の状況で村長なんて無くてもいいようなもんだろ」
何しろ雄太以外は邪神と精霊だ。隣人トラブルだって発生しない。
「やっぱり村の壁造りをいよいよ始めるべきか……? いや、そんなんじゃダメだ。もっと恒常的な仕事になるようなものを……」
「まあ、よく分かんねえが……見つかるといいな」
「ああ」
とりあえず壁を作るとしたらどの範囲かと考えながら、雄太は村の端へと歩いていく。
「あ、ユータです。何してるですかー?」
「んー、仕事探してる?」
「意味わかんないです」
飛んできたセージュを肩に載せて、雄太は村の中を歩く。
雄太の家、畑、井戸、温泉、鍛冶場、集会場。
必要なものはもう充分に出来た気がするが、そうなったら雄太は何をすればいいのか。
ガンダインは村長と言っていたが……。
「もっと身体を動かさないとダメな気がするんだよなあ」
「それって、ユータのスキルの話です?」
「ああ」
不健康、そしてギックリ腰。
未だ反転しないこれ等をどうにかする為には肉体労働がいいと思うのだが……。
「それだったら、狩りをすればいいんじゃないです?」
「狩り……」
なるほど、肉に魚。
麦や野菜をベルフラットが育てているといっても、肉や魚はフェルフェトゥが町で買ってきている状況が続いている。
やがてはこれ等も自己供給できるようにならなければ片手落ちだろう。
ちなみにニワトリ達は別枠である。彼等は村の住人のようなものであって、お肉ではないというのが全員の統一見解だ。
「狩り、かあ」
雄太は武器らしい武器は持っていない。
唯一あるのは筋トレマニアのシャベルだが、これは武器に数えていいのか不明だ。
そして何よりも、この近辺で狩りをするとなると世界樹の森になるのだろうが……。
「なんていうか、セージュはいいのか?」
「何がです?」
「いや、ほら。狩りをするってことは世界樹の森で生き物を殺すってことであって……こう、仲間とか」
「別に仲間じゃないですけど」
「あ、そうなのか」
「ユータは私をなんだと思ってるですか……」
別に森の仲間とかそういうアレじゃないんだな、と雄太は何か納得してしまうが……難点は「遠い」ことくらいだろうか?
流石に往復で三日というのは、狩りに使う日程としてはどうなのだろうか?
「うーん……」
「ピヨ」
やってきたヒヨコに軽く頭を噛まれて、雄太は「ぐっ」と唸る。
そして同時に気付く。
「あ、そうか。お前等がいるじゃん」
「へ?」
「ピヨ?」
そう、ヒヨコだ。ニワトリのほうでもいいが、彼等はとにかく早い。
騎乗できる程に大きいし、雄太が走るより遥かに速いのだ。
彼等に乗せて貰えれば、世界樹の森との往復は現実的な範囲に充分に収まる。
「そうだ、それだよ! なあ、手伝って……」
「ピヨ」
カプリとヒヨコに甘噛みされて、雄太はまずは相互理解だと充分すぎる程に理解した。
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