捨てられおっさんと邪神様の異世界開拓生活~スローライフと村造り、時々ぎっくり腰~
階段を作ろう2
「肉体サポート……?」
「そうよ。それはそうと、手が止まってるわよ!」
パンパン、と音を立てて手を叩くフェルフェトゥに促されるようにして、雄太は作業を再開する。
気づけば接合材の壺まで運ばれてきていて、実に便利である。
「えーと……それじゃ、次はこの石を……」
適当な石を選んで、階段の設置予定場所に並べていく。
これはいわゆる土台であり、ここに接合材を塗って次の段を積んでいく予定だ。
その際、壁と設置する面もしっかりと接合材でくっつけていくことを忘れてはならない。
「肉体サポートって、どういうことです?」
しかしセージュに作業は関係ない話で、フェルフェトゥの元へ飛んで行ってそう問いかける。
「ユータにくっついてるスキルについては?」
「見えるですよ。随分難儀なものを持ってるなあとは思ったですけど」
「アレを反転させようとしてるのよ」
「ふむ?」
手を止めると怒られそうなので雄太が必死で動く中、セージュはふよふよと漂いながら顎に手をあてる。
悩む名探偵のポーズとでも呼ぶべきその恰好のまま、しばらくの時間がたち……雄太が接合材を塗って2段目を重ね始めた頃に、セージュはポンと手を叩く。
「なるほど! いつも無茶してるユータがどうして何事もなく翌日動いてるのかと思ったら……そういうことですね!?」
「そういうことよ」
「え、どういうことだ?」
「手が止まったわよ」
思わず振り向いた雄太にフェルフェトゥの言葉が刺さり、雄太は慌てて作業を再開する。
「つまりね。筋トレマニアのシャベルで身体が壊れないように、私の加護で雄太の身体を補強してるの。それで超人になれるほど便利なものではないけれど、身体の酷使で何処かに深刻な不具合が起きる事はなくなるわ」
「えーと……」
石に接合材を塗ってくっつけながら、雄太はフェルフェトゥの言葉を自分の中で反芻する。
「つまり、突然肉離れ起こしたりとか、そういうことがなくなるってことか」
他にもスポーツマンに起こりがちな諸症状が無くなるということだろう。
どれだけ身体を苛め抜いても壊れない。それは、非常に物凄い事であるように雄太には思えた。
「そういうことね。外的な要因はともかく、内的な要因によってユータが壊れる事はないわ」
そのギックリ腰は別だけど、と付け加えてくる。
「別なのか……まあ、なったしな……」
「ていうか、肉体的要因でのギックリ腰にはならないはずよ? 貴方のはスキルによる「ギックリ腰」という特殊効果だもの。そこまでは流石に防ぎきれないわ」
「なるほど……」
それはそれで有難い話ではある。スキルの「ギックリ腰」さえ反転させてしまえば、雄太はギックリ腰に悩まされる事はないという意味でもあるからだ。
「ん? てことは筋肉痛とかもならないのか?」
「なりにくくはあるわね。寝ている間にも修復するもの。食事や温泉も勿論効果的よ?」
なるほど、と雄太は思う。
どれも健康には大事な要素だが、要は「毎日全力で頑張っても壊れない」という頑丈な身体になったということなのだろう。
「言っておくけど、内的な要因だけよ? 外的な要因は対象外だわ」
「外的な要因っつーと……」
「調子に乗ってモンスターに挑んだりしたら、アッサリ食い殺されるって話よ」
「なるほど、分かりやすい」
今のところ、そんな予定は無いから大丈夫だろう。
「でも、そっか……知らないところでフェルフェトゥの加護に助けられてたんだな」
そもそも「加護」が何なのかは分からないのだが、それを聞いたら怒られそうな予感もする。
だがまあ、なんとなく自分を守ってくれる何かなのだろうくらいの想像は出来ている。
「ありがとう、フェルフェトゥ」
「たいしたことじゃないわ」
フェルフェトゥはそう言って微笑むが……そこで、セージュが「あれ?」と再度声をあげる。
「でもそうなると、力の強化ではないってことですよね?」
「それは単純に筋トレマニアのスコップの副次効果だと思うわよ?」
「へ?」
「アレは疲れを認識させなくなる神器だもの。自然と身体はリミッターが外れて全力を出すようになるわ。当然使い続ければ、全力の限界値も上がっていくわよね」
最初からトップスピードかつフルパワー。強化なんていらないわね、と言うフェルフェトゥをセージュはとんでもないものを見る目で見る。
「……うわ、こいつ邪悪です……」
「なによ。私はユータの事を考えてやってるのよ?」
「そんな事したらユータの身体に悪影響確実です!」
「普通のことやってスキルが反転するわけないでしょう!」
ぎゃあぎゃあと言い合うフェルフェトゥとセージュをそのままに、雄太は石を積んでいく。
なるほど、と理解できるところはあった。
つまるところ、今の雄太は「このくらいで大丈夫だろう」という甘やかしが出来ないようになっているのだ。
人間なら誰でもペース配分というものがある。
それは全力ではなく、ある程度余裕をもったものだが……雄太は後先考えずに全力で常に動けるようになっている。
つまりは、そういうことなのだろう。
「ハハッ、俺には丁度いいな」
「でしょう?」
守りではなく、常に攻めを考える。そんなものが出来なくなってきた自分にとっては丁度いいと。
そんな事を考えながら雄太は石を積んでいく。
「納得できないです……」
「これでいいんだよ。俺は、中々自分じゃ踏み出せない性格してるからな」
となると、他の面々の加護はどんな効果があるのだろう。
カッコいい効果の加護とかいいな、と。そんな事を考えながら雄太は石を積んでいく。
「そうよ。それはそうと、手が止まってるわよ!」
パンパン、と音を立てて手を叩くフェルフェトゥに促されるようにして、雄太は作業を再開する。
気づけば接合材の壺まで運ばれてきていて、実に便利である。
「えーと……それじゃ、次はこの石を……」
適当な石を選んで、階段の設置予定場所に並べていく。
これはいわゆる土台であり、ここに接合材を塗って次の段を積んでいく予定だ。
その際、壁と設置する面もしっかりと接合材でくっつけていくことを忘れてはならない。
「肉体サポートって、どういうことです?」
しかしセージュに作業は関係ない話で、フェルフェトゥの元へ飛んで行ってそう問いかける。
「ユータにくっついてるスキルについては?」
「見えるですよ。随分難儀なものを持ってるなあとは思ったですけど」
「アレを反転させようとしてるのよ」
「ふむ?」
手を止めると怒られそうなので雄太が必死で動く中、セージュはふよふよと漂いながら顎に手をあてる。
悩む名探偵のポーズとでも呼ぶべきその恰好のまま、しばらくの時間がたち……雄太が接合材を塗って2段目を重ね始めた頃に、セージュはポンと手を叩く。
「なるほど! いつも無茶してるユータがどうして何事もなく翌日動いてるのかと思ったら……そういうことですね!?」
「そういうことよ」
「え、どういうことだ?」
「手が止まったわよ」
思わず振り向いた雄太にフェルフェトゥの言葉が刺さり、雄太は慌てて作業を再開する。
「つまりね。筋トレマニアのシャベルで身体が壊れないように、私の加護で雄太の身体を補強してるの。それで超人になれるほど便利なものではないけれど、身体の酷使で何処かに深刻な不具合が起きる事はなくなるわ」
「えーと……」
石に接合材を塗ってくっつけながら、雄太はフェルフェトゥの言葉を自分の中で反芻する。
「つまり、突然肉離れ起こしたりとか、そういうことがなくなるってことか」
他にもスポーツマンに起こりがちな諸症状が無くなるということだろう。
どれだけ身体を苛め抜いても壊れない。それは、非常に物凄い事であるように雄太には思えた。
「そういうことね。外的な要因はともかく、内的な要因によってユータが壊れる事はないわ」
そのギックリ腰は別だけど、と付け加えてくる。
「別なのか……まあ、なったしな……」
「ていうか、肉体的要因でのギックリ腰にはならないはずよ? 貴方のはスキルによる「ギックリ腰」という特殊効果だもの。そこまでは流石に防ぎきれないわ」
「なるほど……」
それはそれで有難い話ではある。スキルの「ギックリ腰」さえ反転させてしまえば、雄太はギックリ腰に悩まされる事はないという意味でもあるからだ。
「ん? てことは筋肉痛とかもならないのか?」
「なりにくくはあるわね。寝ている間にも修復するもの。食事や温泉も勿論効果的よ?」
なるほど、と雄太は思う。
どれも健康には大事な要素だが、要は「毎日全力で頑張っても壊れない」という頑丈な身体になったということなのだろう。
「言っておくけど、内的な要因だけよ? 外的な要因は対象外だわ」
「外的な要因っつーと……」
「調子に乗ってモンスターに挑んだりしたら、アッサリ食い殺されるって話よ」
「なるほど、分かりやすい」
今のところ、そんな予定は無いから大丈夫だろう。
「でも、そっか……知らないところでフェルフェトゥの加護に助けられてたんだな」
そもそも「加護」が何なのかは分からないのだが、それを聞いたら怒られそうな予感もする。
だがまあ、なんとなく自分を守ってくれる何かなのだろうくらいの想像は出来ている。
「ありがとう、フェルフェトゥ」
「たいしたことじゃないわ」
フェルフェトゥはそう言って微笑むが……そこで、セージュが「あれ?」と再度声をあげる。
「でもそうなると、力の強化ではないってことですよね?」
「それは単純に筋トレマニアのスコップの副次効果だと思うわよ?」
「へ?」
「アレは疲れを認識させなくなる神器だもの。自然と身体はリミッターが外れて全力を出すようになるわ。当然使い続ければ、全力の限界値も上がっていくわよね」
最初からトップスピードかつフルパワー。強化なんていらないわね、と言うフェルフェトゥをセージュはとんでもないものを見る目で見る。
「……うわ、こいつ邪悪です……」
「なによ。私はユータの事を考えてやってるのよ?」
「そんな事したらユータの身体に悪影響確実です!」
「普通のことやってスキルが反転するわけないでしょう!」
ぎゃあぎゃあと言い合うフェルフェトゥとセージュをそのままに、雄太は石を積んでいく。
なるほど、と理解できるところはあった。
つまるところ、今の雄太は「このくらいで大丈夫だろう」という甘やかしが出来ないようになっているのだ。
人間なら誰でもペース配分というものがある。
それは全力ではなく、ある程度余裕をもったものだが……雄太は後先考えずに全力で常に動けるようになっている。
つまりは、そういうことなのだろう。
「ハハッ、俺には丁度いいな」
「でしょう?」
守りではなく、常に攻めを考える。そんなものが出来なくなってきた自分にとっては丁度いいと。
そんな事を考えながら雄太は石を積んでいく。
「納得できないです……」
「これでいいんだよ。俺は、中々自分じゃ踏み出せない性格してるからな」
となると、他の面々の加護はどんな効果があるのだろう。
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