捨てられおっさんと邪神様の異世界開拓生活~スローライフと村造り、時々ぎっくり腰~
階段を作ろう
「どうしたものかな……」
「何がです?」
疑問符を浮かべるセージュに、雄太は集会場を指差してみせる。
「あの集会場。出来上がってるだろ?」
「そうですね?」
「ガンダインは、あそこに二階部分と鐘楼を作れって言うんだよ」
「ふむふむ?」
「……分かるか?」
雄太の問いにセージュはしばらく唸ると「分かんないです!」と元気よく答える。
「作ればいいんじゃないです? 何の問題があるですか?」
「あー、うん。いや、な。つまりだ。中から二階に上がる構造は作りにくいんだよ」
雄太の造る建物の基本構造は四方の壁を積み上げ、そこに縦長の大きな石を橋渡しのように置き、並べて屋根の形を作っていく形式だ。
この方式はやりやすい反面、細かい変更がききにくいという弱点がある。
たとえば中に階段を作ろうとする場合、穴を開けるとその部分が不安定になってしまうのだ。
階段の構造を工夫して支え直すということも出来るのだろうが、正直自信はない。
「ふーん? じゃあどうするですか?」
「んー……外階段でいこうかなあ、と思ってるんだけどな」
梯子というのも考えたが、それを造るとなると結構緻密な計算が必要になってくる気もしていた。
何より、石造りの梯子というのはどうなのだろうか?
「うん、やっぱり外階段だよな……なんとなく分かるし」
雄太は壁用の石を積み上げる時に、階段状に積み上げる事で梯子要らずの……度胸は結構いるが、そういう風な作り方をしている。
ならば本当に階段を作るとあれば、石をその要領で積み上げていけばいいだけだ。
大きな石を使わずとも、小さな石を無数に積み上げ接合材を使う事で形は整うだろう。
「あ、待てよ。上手く切り出せなかった石もこの際持ってきて階段に使っちゃえばいいんじゃないか?」
今でこそ手慣れてきたが、切り出し始めた最初は不格好になって失敗した石や石の残りくずのようなものもたくさんある。
そういうものも、土台として使う分には全く問題が無い。
「よし、セージュ。運ぶの手伝って……」
「持ってきたわよ?」
聞こえてきた声に振り返ると、そこには大量の石や石くず、そしてフェルフェトゥの姿がある。
「あ、あれ。いつの間に」
「ユータが話してる間によ?」
山のように積まれた石を前に、フェルフェトゥは笑う。
「あ、ありがとう。いつも悪いな」
「いいのよ。運搬に時間をかけてたら、いつまでたっても終わらないもの」
そんな事を言うと、フェルフェトゥは大きめの石を自分の椅子代わりにして座り込む。
見学するつもりなのだろうと理解した雄太は、早速石の山の中から特に大きな石を見つけると、それを引きずり出す。
「よいしょ……っと」
「うわ、大きな石ですね」
そう、雄太が引きずり出したのは大人2人分くらいはありそうな石だ。
天井用の石を作る時に失敗したものだが……短いうえに分厚い為、色んな意味で失敗作だったものだ。
「まあな。もう少し薄く切り出せばよかったのに失敗したし、長さも足りないしで……後々小さく切って壁用にでもしようと思ってたんだけどな」
言いながら、雄太は石を引きずっていく。
まあ、実際には屋根もフェルフェトゥに手伝って貰わなければ上手く載せられなかったりしたのだが……そんな試行錯誤の結果でもある。
「とにかく……よいしょっと。こうして階段の土台に役立つなら……ふんっ!」
言いながら石を集会場の横へと引きずっていく雄太を見て、セージュは首を傾げる。
「……ユータってば、身体強化してるわけじゃないですよね?」
「ん?」
聞いていなかったのかセージュへと視線を向けてくる雄太を、セージュはじっと見つめる。
「……」
「な、なんだよ」
雄太の目の前にやってきたセージュに雄太が思わず後退ると、セージュはそのまま雄太の頭をわしゃわしゃとし始める。
「んー?」
「おい、人の髪あんまり弄るなよ」
「なんでしょうね、何かおかしいですけど……」
髪を触りながらおかしいとか言われると何やらデリケートな意味が含まれている気がして恐ろしいのだが、雄太はとりあえずセージュを頭に乗せたまま石を引きずっていく。
「とりあえず、ここでいいか……」
大きな石を集会場の横の壁の真ん中辺りに置くと、雄太はふうと息を吐く。
あとはこれを起点にどんどん石を積んでいけばいいわけだが……。
「あ、やべ。接合材の壺持ってこないと」
ただ積んでいくだけでは意味が無い。適宜接合材で固めていかないと、あっさり崩れてしまう。
慌てて家の方向へと向かおうとする雄太の上で、セージュが「あっ」と声をあげる。
「分かったですよ!」
「え? 何がだよ」
「加護です。フェルフェトゥの加護が、雄太の身体の中に絡みついてるです!」
「はあ?」
訳が分からない。そう言いたげな顔をすると、雄太は頭の上のセージュを摘まみあげる。
「もっと俺に分かるように言ってくれよ」
「むー。つまりですね、本来加護ってのは対象を覆うように存在するです」
「へー」
まずそこが分からないのだが、雄太はとりあえず流す。
「時間と共に体内に吸収されてはいくですが、基本は変わらないです」
「うん?」
「なのに、フェルフェトゥの加護は覆うんじゃなくて絡みついてるです。なんでしょう、この絡み方って、まるで……」
「そうよ。私の加護の力は雄太の肉体サポートに振り分けられているわ」
「何がです?」
疑問符を浮かべるセージュに、雄太は集会場を指差してみせる。
「あの集会場。出来上がってるだろ?」
「そうですね?」
「ガンダインは、あそこに二階部分と鐘楼を作れって言うんだよ」
「ふむふむ?」
「……分かるか?」
雄太の問いにセージュはしばらく唸ると「分かんないです!」と元気よく答える。
「作ればいいんじゃないです? 何の問題があるですか?」
「あー、うん。いや、な。つまりだ。中から二階に上がる構造は作りにくいんだよ」
雄太の造る建物の基本構造は四方の壁を積み上げ、そこに縦長の大きな石を橋渡しのように置き、並べて屋根の形を作っていく形式だ。
この方式はやりやすい反面、細かい変更がききにくいという弱点がある。
たとえば中に階段を作ろうとする場合、穴を開けるとその部分が不安定になってしまうのだ。
階段の構造を工夫して支え直すということも出来るのだろうが、正直自信はない。
「ふーん? じゃあどうするですか?」
「んー……外階段でいこうかなあ、と思ってるんだけどな」
梯子というのも考えたが、それを造るとなると結構緻密な計算が必要になってくる気もしていた。
何より、石造りの梯子というのはどうなのだろうか?
「うん、やっぱり外階段だよな……なんとなく分かるし」
雄太は壁用の石を積み上げる時に、階段状に積み上げる事で梯子要らずの……度胸は結構いるが、そういう風な作り方をしている。
ならば本当に階段を作るとあれば、石をその要領で積み上げていけばいいだけだ。
大きな石を使わずとも、小さな石を無数に積み上げ接合材を使う事で形は整うだろう。
「あ、待てよ。上手く切り出せなかった石もこの際持ってきて階段に使っちゃえばいいんじゃないか?」
今でこそ手慣れてきたが、切り出し始めた最初は不格好になって失敗した石や石の残りくずのようなものもたくさんある。
そういうものも、土台として使う分には全く問題が無い。
「よし、セージュ。運ぶの手伝って……」
「持ってきたわよ?」
聞こえてきた声に振り返ると、そこには大量の石や石くず、そしてフェルフェトゥの姿がある。
「あ、あれ。いつの間に」
「ユータが話してる間によ?」
山のように積まれた石を前に、フェルフェトゥは笑う。
「あ、ありがとう。いつも悪いな」
「いいのよ。運搬に時間をかけてたら、いつまでたっても終わらないもの」
そんな事を言うと、フェルフェトゥは大きめの石を自分の椅子代わりにして座り込む。
見学するつもりなのだろうと理解した雄太は、早速石の山の中から特に大きな石を見つけると、それを引きずり出す。
「よいしょ……っと」
「うわ、大きな石ですね」
そう、雄太が引きずり出したのは大人2人分くらいはありそうな石だ。
天井用の石を作る時に失敗したものだが……短いうえに分厚い為、色んな意味で失敗作だったものだ。
「まあな。もう少し薄く切り出せばよかったのに失敗したし、長さも足りないしで……後々小さく切って壁用にでもしようと思ってたんだけどな」
言いながら、雄太は石を引きずっていく。
まあ、実際には屋根もフェルフェトゥに手伝って貰わなければ上手く載せられなかったりしたのだが……そんな試行錯誤の結果でもある。
「とにかく……よいしょっと。こうして階段の土台に役立つなら……ふんっ!」
言いながら石を集会場の横へと引きずっていく雄太を見て、セージュは首を傾げる。
「……ユータってば、身体強化してるわけじゃないですよね?」
「ん?」
聞いていなかったのかセージュへと視線を向けてくる雄太を、セージュはじっと見つめる。
「……」
「な、なんだよ」
雄太の目の前にやってきたセージュに雄太が思わず後退ると、セージュはそのまま雄太の頭をわしゃわしゃとし始める。
「んー?」
「おい、人の髪あんまり弄るなよ」
「なんでしょうね、何かおかしいですけど……」
髪を触りながらおかしいとか言われると何やらデリケートな意味が含まれている気がして恐ろしいのだが、雄太はとりあえずセージュを頭に乗せたまま石を引きずっていく。
「とりあえず、ここでいいか……」
大きな石を集会場の横の壁の真ん中辺りに置くと、雄太はふうと息を吐く。
あとはこれを起点にどんどん石を積んでいけばいいわけだが……。
「あ、やべ。接合材の壺持ってこないと」
ただ積んでいくだけでは意味が無い。適宜接合材で固めていかないと、あっさり崩れてしまう。
慌てて家の方向へと向かおうとする雄太の上で、セージュが「あっ」と声をあげる。
「分かったですよ!」
「え? 何がだよ」
「加護です。フェルフェトゥの加護が、雄太の身体の中に絡みついてるです!」
「はあ?」
訳が分からない。そう言いたげな顔をすると、雄太は頭の上のセージュを摘まみあげる。
「もっと俺に分かるように言ってくれよ」
「むー。つまりですね、本来加護ってのは対象を覆うように存在するです」
「へー」
まずそこが分からないのだが、雄太はとりあえず流す。
「時間と共に体内に吸収されてはいくですが、基本は変わらないです」
「うん?」
「なのに、フェルフェトゥの加護は覆うんじゃなくて絡みついてるです。なんでしょう、この絡み方って、まるで……」
「そうよ。私の加護の力は雄太の肉体サポートに振り分けられているわ」
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