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捨てられおっさんと邪神様の異世界開拓生活~スローライフと村造り、時々ぎっくり腰~

天野ハザマ

アラサーの帰還2

「え、何って……」

 なんかフェルフェトゥの目が怖い。雄太は思わず後退りしそうになるが、何も悪い事はしてないと思い直す。

「えーと……世界樹の精霊?」
「契約してるみたいだけど?」
「ああ、なんかいつの間にかそういうことになったみたいだな」
「……」

 雄太と話しているうちに威圧感が薄れてきたフェルフェトゥは、やがて大きく息を吐き出す。

「……まさか、そっちを持って帰ってくるとは思わなかったわよ」
「そっち……って」
「貴方の事だからテイルウェイを連れ帰ってくるかと思ってたけど」

 テイルウェイ。その名前に雄太は反応……するより先に、肩の上のセージュが「ええっ」と叫ぶ。

「テ、テイルウェイを連れ帰る!? 破滅願望でもあるんですか!?」
「は? 何言ってるのよ。あいつの権能にだって使えるところはあるのよ」
「あんなのをユータには近づけません! ダメダメです! バツです!」

 手で大きくバツを作るセージュにイラッとした表情を見せたフェルフェトゥは雄太に再び視線を向け「めんどくさいの連れ帰って来たわね……」と呟く。

「は、はは……。でも世界樹の精霊なら凄いんじゃないか? ジャガイモくれたし」
「役に立たないとは言わないけど。いいかしら、世界樹の精霊。ユータは私のよ」
「何言ってるんですか、ユータは私のですよ?」
「分かった? こういうところが精霊は面倒なのよ?」
「ん?」

 今のやり取りで分かったかと言われても、雄太としては首を傾げるしかない。
 我の強い2人が火花を散らしているくらいにしか雄太には思えなかったのだ。
 そして雄太が分かっていない事にフェルフェトゥも気付いたのだろう、盛大に溜息をつくと、近寄ってきて雄太の胸板を叩く。

「あのね。精霊ってのは独占欲が超強いのよ。力の強い精霊程その傾向が強いから、世界樹の精霊なんて大物を連れ帰ってきたら……分かるでしょ?」
「あ、なるほど」

 今のやり取りはその実演だったのか、と雄太はようやく理解する。
 理解できた、が……。

「でもまあ、たぶん大丈夫な気もするんだよなあ」
「たぶんって、貴方……」
「セージュ、皆と仲良くできるだろ?」
「はい、ユータが言うなら凄く嫌ですけど見てるところでは仲良くします!」
「いや、見てないところでもな?」

 物凄く不安な返事が返ってきたが、とりあえずセージュから歩み寄る事は出来た……ように見える。
 とりあえず問題はないだろう、たぶん。

「ほら、ベルフラットともなんだかんだで暮らせてるだろ? ならセージュとだってどうにかなるって」
「そういう事言うってことは、まだあの女のヤバさを理解できてないわね……」

 呆れたように言うフェルフェトゥに雄太はあれ以上にまだ何かあるのかと現実逃避しかけるが、すぐに気分を元に戻す。

「まあ、そういうことだから。それより、こっちも何事だよ? この子……えーと、火の邪神だっけ?」
「ああ、こいつ? そろそろ来るかと思ってたら見事に罠に嵌った馬鹿よ。竈にでもしようかと思うのよ」
「てめえ!」

 フェルフェトゥの言葉に邪神少女が火を噴きだそうとするが、やはり兜の中でチラチラと炎が見えるだけだ。
 竈と言われても、雄太としてはこんなものを燃料にした竈は遠慮したい。

「いやあ……どうかな……もっと仲良くした方がいいんじゃないか?」
「あら、流石は世界樹の精霊を口説いた男ね。その甲斐性でこの女もどうにか出来るのかしら」
「なんか刺々しいぞ……」
「そんな事ないわよ」

 いつもよりもチクチクと刺さる台詞を投げてくるフェルフェトゥを視界の隅に置きながら、雄太は邪神少女の近くにしゃがみ込む。

「えーと……そういうわけなんだけど。喧嘩しないつもりってあったりする?」
「何言ってんだテメエ。指図すんじゃねえぞ」

 ヤンキーだ、と雄太はげんなりした顔になる。
 地球に居た頃にこういうタイプと何度か関わったことがあるが、基本的に引くことを知らないので進むか砕けるかの2つしかない。
 関わらないのが正解なのだが……まあ、そういうわけにもいかないだろう。

「そう言わずにさ。仲良くしようよ。な?」

 根気強く雄太がそう話しかけると、邪神少女は何かを考えるように黙り込む。

「……ユータ、だったな」

 そういえば名前をこの場で散々呼ばれていたなと思いながらも「ああ、俺はユータ・ツキバヤシだ」と答える。

「テメエは……いや、お前はなんでそんなにアタシと仲良くしたがる。別にアタシのものになる気はねえんだろ?」
「なんでって。別に理由は無いよ。でも喧嘩するよりは仲良くした方が楽しいと思うんだがなあ」
「理解できねえ……」
「なんでだよ……」

 理解できないというのが理解できない。
 雄太が思わず頭を抱えると、様子を見ていたフェルフェトゥが肩をすくめてみせる。

「ま、仕方ないわよ。そいつ、争いごと担当だもの」
「争いごと担当って……」
「ああ、そうさ。アタシは争いごと担当だ。そりゃ間違ってねえ」

 フェルフェトゥに被せられた陶器の兜の奥から、邪神少女はそう答える。

「仲良くなんてのは、アタシから最も程遠い。それでも「仲良くしろ」って言いてえのか?」
 

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