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捨てられおっさんと邪神様の異世界開拓生活~スローライフと村造り、時々ぎっくり腰~

天野ハザマ

何を育てようか

 雄太が建てた「家らしきもの」。
 らしきもの、と呼んでいるのには当然理由がある。

「いや、実際頑張ったと思うんだよ俺は」
「そうね」
「窓も……まあ、ガラスとかないから風がすっげえ吹き込むけどつけたしさ?」

 言いながら雄太が視線を送るのは、窓……というよりは壁に空いた四角い穴だ。
 石を積む過程で穴の開いた四角の石枠を嵌め込む事により完成した、のだが。
 当然そこに嵌め込むガラスが無いので風が物凄く吹き込む。

「まあ、ドアも……うん、頑張ったと思う」
「そうね?」

 そう、ドアは作った。
 和式の引き戸は作り方が分からなかった。
 引いて開ける事は分かっても、どうすればスムーズにそうなるのかが想像できなかったのだ。
 故に、洋式のドアもどきになっている。
 石をドアの形に削って、片側を固定し回るようにしたのだ。
 扉が一枚しかない回転扉のストッパー付きといえば、なんとなく想像して貰えるかもしれない。

 だがこれが失敗だった。
 回るには回る。回るのだが、重いし回す度にゴリリッと不安な音を立てるのだ。
 挙句の果てに破壊音をたて壊れてしまった。
 その為、現在は寝床用の藁を束ねて造った、巻き上げ式のすだれのようなものをドア代わりにしている。

 ちなみに床は、ツルツルした石を探してきて石畳のように敷いている。
 なのに、雄太のテンションは微妙に下がり気味であった。

「なんだろうな……全体的にショボいのは何故なんだろうな。俺頑張ったはずなんだけど……」
「そりゃまあ……足元のそれのせいでしょうね」

 言いながら、フェルフェトゥは藁を指差す。
 そう、家が出来ても寝具は藁のまま。石造りの建物に敷かれた藁が、侘しさを加速させてしまうのだろう。
 しかし、藁が無ければ寒い。無くすわけにもいかないのだ。

「自分がどれだけ文明的な生活をしてきたか思い知らされるなあ……」
「よかったわね。中々そういうのを学ぶ機会はないと思うわよ?」

 クスクスと笑うフェルフェトゥの恰好こそ、この家には似合わないものに見えるのだが……そんな彼女が手元で作っているものに、雄太はじっと視線を向ける。

「そういえばさ。さっきから作ってるそれって……」
「敷物よ?」

 そう、円状に藁を編んで作っていたそれは間違いなく藁の座布団。
 綺麗に編まれたそれをフェルフェトゥは軽く手で叩くと、自分のお尻の下に敷く。
 その具合を確かめると、フェルフェトゥは雄太へと向き直る。

「分かるかしら? 改善なんてものはアイデア次第なのよ?」
「……返す言葉もございません」

 雄太は土下座の態勢に移行すると、そのままフェルフェトゥをちらりと見上げる。

「ところでソレ、俺の分も作ってくれたりとか」
「やーよ」

 ぷいっと顔を背けるフェルフェトゥの様子を見るに望みなし。そう諦めると、雄太は藁の上に座り直す。

「まあ、これで家は出来たんだよな。となると次はいよいよ食料確保ってことになるけど……」

 スローライフ、農業ライフ。そんな言葉が思い浮かぶが、具体的にどうすればいいかとなると迷ってしまう。

「やっぱり、畑かなあ」

 幸いにも水はある。ならば畑を作ってもどうにかなるはずだが、何を育てたものか。
 米は……あるかどうかをさておいても、素人に田んぼで稲作は難しそうだ。
 となると麦? いやいや、芋も救荒作物だと聞いたことがある。
 となると芋だろうか。そう結論づけて雄太が頷いていると、フェルフェトゥの冷たい視線が突き刺さる。

「また自分の世界に入って……」
「あ、ごめん。芋がいいかなあって思ってたんだけど」
「別になんでもいいけど。何処を探すかは決めたのかしら?」
「うっ」

 やはり町で買ってくるというのは無しなのだろう。
 しかし、当てもなく探すというのは如何にも難しそうだ。

「いや、それ以前に畑そのものだよなあ……」

 当たり前の話なのだが、此処は荒野だ。
 死の荒野という言葉が相応しいんじゃないかというくらいに荒野だ。
 そんな場所に畑を作るにしても、土に栄養がないのではないかと思うのだ。

「なあ、フェルフェトゥの加護とかそういうので土に栄養とか齎せないのか?」
「土は専門外ねえ」

 アッサリと答えるフェルフェトゥに、当てが外れた雄太は肩を落とす。
 となると土の改善から始めないといけないわけだが、上手くいくだろうか?
 確か色々混ぜ込めばいいと聞いたような記憶はある。

「……でもまあ、その辺りは当てがないわけではないのよ」
「当て?」
「そうよ、ユータ。なんで私が「井戸」と「家」の二つを優先させたか分かる?」
「ん? んん……」

 分からない。確かに井戸とも家も必要なものだが、井戸はともかく家は後回しでも良かったように思う。
 むしろ井戸の次は畑であったようにも思うし、本来はそうあるべきだったのかもしれない。
 なのに、その二つを優先させた理由となると……雄太は首を傾げてしまう。

「フェルフェトゥの趣味、とか?」
「違うわよ」

 手元で再び何かを編んでいたフェルフェトゥは、それを鞭のようにしてぶつけてくる。
 いや、鞭ではない。縄だ。荒縄である。

「井戸と家。それが「拠点」の基本だからよ。此処は今、間違いなく私の縄張りだわ。そして……それが気に入らない奴っていうのも、当然存在するのよ」

 その言葉に、雄太は思わず唾をゴクリと呑み込んで。

「……その通り……だわ。ズルいわ」
「うおおおおおおおっ!?」

 窓から覗いている何者かに気付き、雄太は思わず飛び上がった。

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