僕は御茶ノ水勤務のサラリーマン。新宿で転職の話をしたら、渋谷で探索者をすることになった。(書籍版・普通のリーマン、異世界渋谷でジョブチェンジ)
救助のため、夜の市ヶ谷に向かう・上
アルドさんの店でのトラブルからまた数日。
この間、ソヴェンスキの兵士からの視線を感じる。今までもそれはあったんだけど、微妙な緊張感の漂う感じになっていた。
まあ皆の前でやりこめたに近い形だから、恨みは買ったかもしれない。でも言わずにはいられなかったんだから、これは仕方ないと思うことにしている。
いつものように朝ご飯を食べている時。
「すみません」
声を掛けてきた人がいた。フラグマ君だ。
よく見る旅支度を整えた探索者って感じで、荷物を入れた大きな皮袋を肩から下げている。
時間は9時ごろ。もうじき、ラポルテ村への門の通行が許可される時間だ。
「どうしたの?ガルフブルグに……」
戻るのかい?と気楽に聞こうと思ったけど、前に見た明るい元気な顔には緊張した表情が浮かんでいた。
「聞いてくれますか、大事な話です」
「何を?」
「俺たち……見たんですよ」
フラグマ君が顔を寄せてくる
「……あのソヴェンスキの連中が……ガルフブルグの探索者を襲っているのを」
「どういうこと?」
周りを窺うようにフラグマ君が酒場を見回した。
僕等は今日は休みにしているからのんびり朝ご飯を食べ終わったって感じだけど、ほとんどの探索者はあちこちに探索に出ているから人は少ない。
最近は中央線沿いに信濃町の向こうと、山手線沿いの南の方の2か所で探索が進んでいるから人手が足りないらしく、探索者は大体は真面目に仕事をしている。
「俺たち、昨日はイチガヤの方まで行ってきたんですけど……戦いの音がしてまして。加勢するかと思ったんです。魔獣かと思って。でも……」
もう一度、フラグマ君が警戒するように周りを見回した。
門の前では旅支度を整えた彼と組んでいる彼の隊長がいる。早く来いと言いたげに門の方とこっちと酒場の入り口を落ち着きなく見ていた。
「探索者の人と……白い鎧のあいつらが戦ってたんです」
セリエが息を飲んだ。
「不意打ちだったらしく……あっという間でした。4対2でしたけど……4人とも。俺たちと一緒に戦った時よりはるかに強かった……あいつら」
不意に都笠さんが手でフラグマ君を制する。
「我々がどうかしましたかな?」
いつの間にか、ソヴェンスキの兵士がすぐそばに来ていた。
◆
その兵士の顔は見たことない相手だった。後ろには貫頭衣の少女を連れている。フラグマ君が口ごもって唇をかんだ。
ソヴェンスキの兵士が探るような眼で僕とフラグマ君を見る。
「いえ、なんでもないですよ。随分皆さん精力的に活動してるなって話をしてたんです」
「正しく試練に挑み、正しき道を行く。我らの当然の務めです」
今の話をどこまで聞いていたのか。聞いていなかったのか。その表情からはうかがえなかった。
フラグマ君がまだ何か言いたげにしている。都笠さんが露骨に邪魔そうな目で兵士を見るけど、意に介さない様にそいつはそこから動かなかった。
「そこまで送るよ」
椅子から立ってフラグマ君と門の方に向かう。
兵士がついてこようとしたけど、一睨みしたら流石に足を止めた。
「なんでギルドに言わないの?」
「………見張られてます、ギルドは。あの貫頭衣の子供たちや兵士が見張ってます」
フラグマ君が声を殺して言う。
「でも……誰かに言わないとヤバいと思ったんです。貴方に言えてよかった」
「竜殺し殿……俺達は一度ガルフブルグに戻ります。昨日も見られたかもしれない」
ちらちらとソヴェンスキの兵士の方を見ながら坊主頭の隊長さんが言う。
兵士の方もこっちを見ていた。フラグマ君が目を逸らす。
「そうですか」
元々は傭兵団の実践訓練って話だし。彼らとしてはちょうどいい潮時なのかもしれない。
「俺なんかが竜殺し殿に言うのも烏滸がましいんですが……ここは危ない。気をつけて下さい」
「ありがとう」
フラグマ君と隊長さんが僕に軽く一礼して、逃げるように門の向こうに消えた。
塔の廃墟は決して平和な場所じゃない。探索の途中で魔獣と戦って怪我をしたとか戻ってこなかった、ということも珍しくはない。だから見かける顔が減ることもある。
まあガルフブルグに戻っている人もいるから単純には言えないんだけど。
でも最近姿が見えない人が多い気がする。まさかとは思うけど。
◆
「遅いわね」
「そうですね」
都笠さんがつぶやいて、セリエが応じる。ユーカはお腹空いたって顔だ。
今日は僕等は探索はお休みにした。ああいう話を聞いた後だとちょっと出かけるのにも躊躇する。
それに、今日は久しぶりにアーロンさん達と夕食を食べようという約束になっていたというのもあるんだけど。
アーロンさん達は市ヶ谷の方を探索しているらしい。でも、そろそろ戻ってきていいはずなのに、姿が見えない。もう時間は5時を回って、空が赤から紫になりつつある。
東京イメージ図だと山手線は丸いけど、実際の地図を見てみると結構縦長の円になっている。
山手線エリアは目黒あたりまで探索が終わって、何ヶ所かに見慣れた天幕つきの詰め所もできている。
山手線の線路を順に辿って探索範囲を広げるのは効率が悪いけど、さりとて細かい道に迷い込むのは不味い、ということらしく。
いまは中央線を軸にして探索範囲を広げて、山手線の探索エリアとつなげようとしているって聞いたけど。
「アーロンさん、戻ってますかね?」
五階層だけど管理者使いが結構見つかって、山手線の各詰め所同士が無線で連絡が取りあえるようになっている。
いずれは探索者にも無線を持たせたいらしいけど、そこまではまだ行っていないらしい。
「まだ戻っていないそうです」
無線で連絡してくれた渋谷の係官が申し訳なさげな顔で言う。
音沙汰がないまま待つのは何とも不安が募る……日がはっきりと陰ってきた。この先の時間は魔獣の時間だ。
そして、フラグマ君から言われたことが思い出された……まさか。
◆
車を動かして信濃町まで来た。
中央線は信濃町までは探索が進んで、お馴染みの天幕を掛けた詰め所があるはずだ。
信濃町はあまり降りたことがない駅だけど、駅前まで来ると、夜の薄闇の中に浮かび上がるような詰め所の明かりが見えてきた。
広々とした駅前のロータリーには、歩道橋や電柱を結ぶように見慣れた天幕が掛けられている。
都心なんだけど、駅前にはあまり高い建物が無くて、不吉な紫色に染まった空が広く見えた。
ジェレミー公の従士らしき人たちや、探索者でここの防衛に当たる人たちが油断なく見張りをしていた。此処は魔獣の領域との境界線だし当然か。
車を寄せると、警戒したように近づいてきたけど僕等の顔を見て安心したような顔で武器を下ろしてくれる。
コアクリスタルのランプで明るく照らされた天幕の下では、探索者が今日の戦利品らしき様々な商品や本を確認し合ったり、簡単な食事をしている。
「どうした、カザマスミト」
天幕の下にはアデルさんがいた。
いつもの衛人くんの革ジャンを引っ掛けて、紋章入りのライダージャケットのようなタイトな衣装を着ている。
多分ここの無線当番なんだろう。
「アーロンさん達は戻っていませんか?」
そう聞くと、アデルさんが首を傾げた。
「誰か、アーロンたちのパーティを見た者はいないか!?」
アデルさんが呼びかける。
食事をしていた探索者たちが顔を見合わせて首を振った。アーロンさんはそれなりに知名度のある探索者だから知っている人も多いけど、でも誰も見ていないのか。
「もう戻っているのではないのか?」
「今日は夕食を一緒に食べる約束だったんですよ。でもまだなんです」
「ここにお戻りになられた記録はありません」
もう一人の係官が答えてくれる。
最近は探索をするときは、この詰め所に登録をしていくようになっているらしい。なんか登山申請書みたいな仕組みだけど、このやり方は都笠さんが教えたんだそうだ。
あちこち移動して別の詰め所に着いたってこともたまにあるとは聞くけど。
「……行こう、風戸君」
都笠さんが言う。
戻っていないってことは……ソヴェンスキの連中のことはさておいても、何らかのトラブルがあった可能性が高い。
アデルさんが訝し気な顔で僕等を見る。
「探索者を助けるためにお前が行くというのか?」
「あの人たちは僕等の恩人なので」
次に俺たちが危なくなったら次はお前の番だぞ、というラクシャス家での言葉を思い出す。
「それに……」
今日、フラグマ君達から聞いた話をアデルさんにかいつまんで伝えた。幸い、周りにはソヴェンスキの兵士はいない。
未確認の情報を話すのは不味いかもしれないけど、僕等だけで止めておくべきじゃないだろう。どう公開するかは任せるとしても。
話を聞いたアデルさんが一瞬驚いた顔をしたけど……
「……あり得ない話ではないな」
小さくつぶやいた。もう一人の従士をと何か言葉を交わしてもう一度僕等を見た。
「行くのか?」
「ええ」
アデルさんが僕等を見てため息をつく。
「そうか……なら私も同行してやろう」
◆
そう言って、アデルさんが革ジャンのジッパーを上げた。
……率直に言うと、かなり意外な申し出だ。ただ、高田馬場でレブナントを蹴散らしたのもそうだけど、かなりこの人は腕が立つ。
夜に、封緘の外の領域を行くことになるんだから、一人でも戦力がある方がいい。
「本当ですか?」
「勘違いするな。お前に何かあれば私の責任になりかねないからだ」
アデルさんがそっけなく言う。
「それでも……ありがとう」
「助かるわ、アデルさん」
都笠さんの言葉にアデルさんが顔を逸らした
「ふん。何度も言わせるな、お前等のためではない」
「というと?」
「お前等が言う事が本当だとして、奴らの尻尾を掴めば私の立場も上がるからだ。分かったか。何かあったら私の武功をジェレミー公にしかと伝えてもらうぞ」
アデルさんがきっぱり言う。
なにもそこまで念を押さなくてもいいと思うんだけど。都笠さんが苦笑いした。
この間、ソヴェンスキの兵士からの視線を感じる。今までもそれはあったんだけど、微妙な緊張感の漂う感じになっていた。
まあ皆の前でやりこめたに近い形だから、恨みは買ったかもしれない。でも言わずにはいられなかったんだから、これは仕方ないと思うことにしている。
いつものように朝ご飯を食べている時。
「すみません」
声を掛けてきた人がいた。フラグマ君だ。
よく見る旅支度を整えた探索者って感じで、荷物を入れた大きな皮袋を肩から下げている。
時間は9時ごろ。もうじき、ラポルテ村への門の通行が許可される時間だ。
「どうしたの?ガルフブルグに……」
戻るのかい?と気楽に聞こうと思ったけど、前に見た明るい元気な顔には緊張した表情が浮かんでいた。
「聞いてくれますか、大事な話です」
「何を?」
「俺たち……見たんですよ」
フラグマ君が顔を寄せてくる
「……あのソヴェンスキの連中が……ガルフブルグの探索者を襲っているのを」
「どういうこと?」
周りを窺うようにフラグマ君が酒場を見回した。
僕等は今日は休みにしているからのんびり朝ご飯を食べ終わったって感じだけど、ほとんどの探索者はあちこちに探索に出ているから人は少ない。
最近は中央線沿いに信濃町の向こうと、山手線沿いの南の方の2か所で探索が進んでいるから人手が足りないらしく、探索者は大体は真面目に仕事をしている。
「俺たち、昨日はイチガヤの方まで行ってきたんですけど……戦いの音がしてまして。加勢するかと思ったんです。魔獣かと思って。でも……」
もう一度、フラグマ君が警戒するように周りを見回した。
門の前では旅支度を整えた彼と組んでいる彼の隊長がいる。早く来いと言いたげに門の方とこっちと酒場の入り口を落ち着きなく見ていた。
「探索者の人と……白い鎧のあいつらが戦ってたんです」
セリエが息を飲んだ。
「不意打ちだったらしく……あっという間でした。4対2でしたけど……4人とも。俺たちと一緒に戦った時よりはるかに強かった……あいつら」
不意に都笠さんが手でフラグマ君を制する。
「我々がどうかしましたかな?」
いつの間にか、ソヴェンスキの兵士がすぐそばに来ていた。
◆
その兵士の顔は見たことない相手だった。後ろには貫頭衣の少女を連れている。フラグマ君が口ごもって唇をかんだ。
ソヴェンスキの兵士が探るような眼で僕とフラグマ君を見る。
「いえ、なんでもないですよ。随分皆さん精力的に活動してるなって話をしてたんです」
「正しく試練に挑み、正しき道を行く。我らの当然の務めです」
今の話をどこまで聞いていたのか。聞いていなかったのか。その表情からはうかがえなかった。
フラグマ君がまだ何か言いたげにしている。都笠さんが露骨に邪魔そうな目で兵士を見るけど、意に介さない様にそいつはそこから動かなかった。
「そこまで送るよ」
椅子から立ってフラグマ君と門の方に向かう。
兵士がついてこようとしたけど、一睨みしたら流石に足を止めた。
「なんでギルドに言わないの?」
「………見張られてます、ギルドは。あの貫頭衣の子供たちや兵士が見張ってます」
フラグマ君が声を殺して言う。
「でも……誰かに言わないとヤバいと思ったんです。貴方に言えてよかった」
「竜殺し殿……俺達は一度ガルフブルグに戻ります。昨日も見られたかもしれない」
ちらちらとソヴェンスキの兵士の方を見ながら坊主頭の隊長さんが言う。
兵士の方もこっちを見ていた。フラグマ君が目を逸らす。
「そうですか」
元々は傭兵団の実践訓練って話だし。彼らとしてはちょうどいい潮時なのかもしれない。
「俺なんかが竜殺し殿に言うのも烏滸がましいんですが……ここは危ない。気をつけて下さい」
「ありがとう」
フラグマ君と隊長さんが僕に軽く一礼して、逃げるように門の向こうに消えた。
塔の廃墟は決して平和な場所じゃない。探索の途中で魔獣と戦って怪我をしたとか戻ってこなかった、ということも珍しくはない。だから見かける顔が減ることもある。
まあガルフブルグに戻っている人もいるから単純には言えないんだけど。
でも最近姿が見えない人が多い気がする。まさかとは思うけど。
◆
「遅いわね」
「そうですね」
都笠さんがつぶやいて、セリエが応じる。ユーカはお腹空いたって顔だ。
今日は僕等は探索はお休みにした。ああいう話を聞いた後だとちょっと出かけるのにも躊躇する。
それに、今日は久しぶりにアーロンさん達と夕食を食べようという約束になっていたというのもあるんだけど。
アーロンさん達は市ヶ谷の方を探索しているらしい。でも、そろそろ戻ってきていいはずなのに、姿が見えない。もう時間は5時を回って、空が赤から紫になりつつある。
東京イメージ図だと山手線は丸いけど、実際の地図を見てみると結構縦長の円になっている。
山手線エリアは目黒あたりまで探索が終わって、何ヶ所かに見慣れた天幕つきの詰め所もできている。
山手線の線路を順に辿って探索範囲を広げるのは効率が悪いけど、さりとて細かい道に迷い込むのは不味い、ということらしく。
いまは中央線を軸にして探索範囲を広げて、山手線の探索エリアとつなげようとしているって聞いたけど。
「アーロンさん、戻ってますかね?」
五階層だけど管理者使いが結構見つかって、山手線の各詰め所同士が無線で連絡が取りあえるようになっている。
いずれは探索者にも無線を持たせたいらしいけど、そこまではまだ行っていないらしい。
「まだ戻っていないそうです」
無線で連絡してくれた渋谷の係官が申し訳なさげな顔で言う。
音沙汰がないまま待つのは何とも不安が募る……日がはっきりと陰ってきた。この先の時間は魔獣の時間だ。
そして、フラグマ君から言われたことが思い出された……まさか。
◆
車を動かして信濃町まで来た。
中央線は信濃町までは探索が進んで、お馴染みの天幕を掛けた詰め所があるはずだ。
信濃町はあまり降りたことがない駅だけど、駅前まで来ると、夜の薄闇の中に浮かび上がるような詰め所の明かりが見えてきた。
広々とした駅前のロータリーには、歩道橋や電柱を結ぶように見慣れた天幕が掛けられている。
都心なんだけど、駅前にはあまり高い建物が無くて、不吉な紫色に染まった空が広く見えた。
ジェレミー公の従士らしき人たちや、探索者でここの防衛に当たる人たちが油断なく見張りをしていた。此処は魔獣の領域との境界線だし当然か。
車を寄せると、警戒したように近づいてきたけど僕等の顔を見て安心したような顔で武器を下ろしてくれる。
コアクリスタルのランプで明るく照らされた天幕の下では、探索者が今日の戦利品らしき様々な商品や本を確認し合ったり、簡単な食事をしている。
「どうした、カザマスミト」
天幕の下にはアデルさんがいた。
いつもの衛人くんの革ジャンを引っ掛けて、紋章入りのライダージャケットのようなタイトな衣装を着ている。
多分ここの無線当番なんだろう。
「アーロンさん達は戻っていませんか?」
そう聞くと、アデルさんが首を傾げた。
「誰か、アーロンたちのパーティを見た者はいないか!?」
アデルさんが呼びかける。
食事をしていた探索者たちが顔を見合わせて首を振った。アーロンさんはそれなりに知名度のある探索者だから知っている人も多いけど、でも誰も見ていないのか。
「もう戻っているのではないのか?」
「今日は夕食を一緒に食べる約束だったんですよ。でもまだなんです」
「ここにお戻りになられた記録はありません」
もう一人の係官が答えてくれる。
最近は探索をするときは、この詰め所に登録をしていくようになっているらしい。なんか登山申請書みたいな仕組みだけど、このやり方は都笠さんが教えたんだそうだ。
あちこち移動して別の詰め所に着いたってこともたまにあるとは聞くけど。
「……行こう、風戸君」
都笠さんが言う。
戻っていないってことは……ソヴェンスキの連中のことはさておいても、何らかのトラブルがあった可能性が高い。
アデルさんが訝し気な顔で僕等を見る。
「探索者を助けるためにお前が行くというのか?」
「あの人たちは僕等の恩人なので」
次に俺たちが危なくなったら次はお前の番だぞ、というラクシャス家での言葉を思い出す。
「それに……」
今日、フラグマ君達から聞いた話をアデルさんにかいつまんで伝えた。幸い、周りにはソヴェンスキの兵士はいない。
未確認の情報を話すのは不味いかもしれないけど、僕等だけで止めておくべきじゃないだろう。どう公開するかは任せるとしても。
話を聞いたアデルさんが一瞬驚いた顔をしたけど……
「……あり得ない話ではないな」
小さくつぶやいた。もう一人の従士をと何か言葉を交わしてもう一度僕等を見た。
「行くのか?」
「ええ」
アデルさんが僕等を見てため息をつく。
「そうか……なら私も同行してやろう」
◆
そう言って、アデルさんが革ジャンのジッパーを上げた。
……率直に言うと、かなり意外な申し出だ。ただ、高田馬場でレブナントを蹴散らしたのもそうだけど、かなりこの人は腕が立つ。
夜に、封緘の外の領域を行くことになるんだから、一人でも戦力がある方がいい。
「本当ですか?」
「勘違いするな。お前に何かあれば私の責任になりかねないからだ」
アデルさんがそっけなく言う。
「それでも……ありがとう」
「助かるわ、アデルさん」
都笠さんの言葉にアデルさんが顔を逸らした
「ふん。何度も言わせるな、お前等のためではない」
「というと?」
「お前等が言う事が本当だとして、奴らの尻尾を掴めば私の立場も上がるからだ。分かったか。何かあったら私の武功をジェレミー公にしかと伝えてもらうぞ」
アデルさんがきっぱり言う。
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