僕は御茶ノ水勤務のサラリーマン。新宿で転職の話をしたら、渋谷で探索者をすることになった。(書籍版・普通のリーマン、異世界渋谷でジョブチェンジ)
突入・上
目白を朝早めに出発した。
ジェレミーさんやオルドネス公、ブレーメンさんやフェイリンさんが神妙な顔で見送ってくれた。威勢のいい出撃、と言う感じじゃないな。
目白通りを通って不忍通りに抜けて、護国寺まで行く。
今回は音を出さないため、ということで車は使っていない。念には念を入れてってことだけど、そもそも今回は20人を超える大所帯だ。路線バスを動かすことも考えたけど、警戒陣形を取る方がいい、というジェラールさんのの言葉でとりやめになった。
言う通り、バスキア公の近衛が僕等を守るように円陣を組むように隊伍を整えて進んでいく。
ただ、警戒しつつも、バスキア公の近衛たちは周りの景色を興味深げに眺めているのが分かった。ガルフブルグとはまったく違う景色だから当然だけど。
不忍通りに入ると建物の高さが低くなって視界が広がった。
東京にいるときはここに来たときはなかったけど、池袋の近くにこんな感じの住宅地があるなんて知らなかったな。
まっすぐな道でなにかがいればすぐわかる。幸いにもレブナントの姿は見えない。
奇襲は受けにくい状況だと思うけど、バスキア公の近衛の警戒はまったく緩む様子はない。周りに建っている低層のアパートとか普通の住宅に油断なく目を走らせている。
初めて来る場所を歩くのは距離感が分からなくて不安を感じる所なんだけど……ちょっとじれったくなるくらいの時間歩いてようやく青看板が見えてきた。
左に行くと池袋、まっすぐ行くと千駄木、その向こうには首都高の高架。道を間違ったなんてことはなかったらしい。
「もう少しです」
そう声を掛けると、ちょっと周りの空気が緩んだ。道が正しいか、という不安感は僕等より彼らの方がよほど大きいわけだし。
◆
首都高の高架をくぐると、景色がまた少し変わった。
道幅が広くなって道の真ん中には植え込みの分離帯が現れる。周りのビルも背が高くなってオフィスビル風だ。
「信じがたい街だな……これほどの高い塔を、しかもこれほどの範囲で」
「パレアの何倍あるのだ?」
近衛の何人かがつぶやく。道を挟むビルは僕でも谷間みたいで圧迫感を感じる時がある。こういうのを見たことがない人からすればもっとその感じは強いだろう。
「油断するな。まだ着いてはいないぞ」
円陣の先頭で斧槍を構えるヴァラハドさんが言って、忌々し気に植え込みを見る。視界を遮って邪魔なんだろう。
ただ周りからは物音ひとつしない。僕等の足音と鎧の触れ合う音くらいだ。
「動くモノは見エナいヨ」
ビルの上からラティナさんの声が降ってくる。ラティナさんはビルの上を行って、高い位置から遠くを見てくれている。
静かなオフィス街って感じで、人気のない光景にもいい加減もう慣れた。
ただ、周囲の建物はそれなりに壊れたりした様子が見える。まだ探索の手はここまで及んでいないから、魔獣が現れて壊したんだろう。でもいまはその気配はない。
池袋からそれなりに離れるているせいか、さすがにレブナントはいない。周辺全域にレブナントを配置することはできないんだろう。
というより、レブナントはおそらく数で押しつぶす戦術が基本だと思うし、薄く広く展開させるのはあまりメリットがないと思う。
視覚を共有するほどの便利さはないようなのは救いだ。
しばらく歩くと、青地に白のロゴマークの入った看板が見えてきた。地下鉄の入り口だ。
地下鉄入り口の真正面には僕でも聞いたことがある出版社の入り口があった。
講談社だ。正面の掲示板のガラスが割れて、本が道に散乱していた。中には見たことがある本や、あの連載はどうなったんだろうか、と気になる作品もある。
講談社の漫画はたくさん買ったけど……こんなところに会社があるなんてしらなかったな。
◆
近衛の一人が生み出した光の玉が先行するように地下鉄の階段を照らした。特になにか動くものは見えない。
ヴァラハドさんが頷いて先行していった。それに続いて、慎重に地下に降りる。
小さな駅だけど、幸いにも静まり返っていて、魔獣もレブナントも気配がなかった。
バスキア公の近衛の人たちが物珍しそうに薄明かりに照らされた周りの壁を見る。
地下へ行っているわけだけど、不安げな気配はまったくない。この辺は流石に歴戦の精鋭って感じだ。
警戒しつつも興味深そうにタイル張りの壁に触れたり、天井を見て何かささやきあったりしている。いわゆるガルフブルグの地下遺跡とはかなり違うものらしいから当然の反応かもしれない。
ホームに降りたところで、ヴァラハドさんが舌打ちして手で合図を送った。近衛の一人がサーベルを構えて前に出てくる。
低い天井と、神殿のように等間隔に並ぶ太い円柱、ベンチや看板、長物を振り回すには向いてない場所ではあるけど。この辺はなんというか抜かりがない
先行した人が問題なし、と言わんばかりに剣を掲げてこっちに合図をしてくる。
「それで、どうするのだ?」
「そこの壁を越えて下に降りてください。あの道を行きます」
暗い闇に包まれたトンネルを指さす。
近衛の人たちがそれぞれが顔を見合わせるけど此処までこれば仕方ない、とばかりにホームドアを乗り越えて線路に下りて行った。
◆
地下鉄で一駅分はすぐだった。さほどの間を置かず東池袋駅にたどり着く。
改札を抜けると、四角い地下通路が左右に伸びていた。闇に包まれていて先が見えない。黄色い点字ブロックと白っぽい壁が長く伸びている。
「ここからはボクが先行するね」
ラティナさんが手にナイフをもって前に出てくる。
東池袋駅。ここまでくればレブナントが居ても不思議じゃない。ただ、レブナントは厄介な相手だし、暗闇は僕ら人間にとっては不利な要素なんだけど、あの目立つ黄色い光は暗闇でひときわ目立つ。
あれが見えないってことはどこかに潜んでいるってことはない。それが分かるのは僕等にとっては少し有利な要素かもしれない。
「管理者、起動、階層地図表示」
ワイヤーフレームで構成されたような地図が目の前に浮かぶ。まっすぐ伸びた地下通路、その先の出口の分岐。
「まっすぐ行って、右の出口のはず」
僕の言葉に黙ってうなづいて、ラティナさんが足音一つ立てずに通路を進んでいく。
近衛の人の一人が出した光の玉がそれに付き従うように飛んで行った。
天井にところどころ取り付けられた黄色い案内板は当たり前だけど今は光ってはいない。
暫く歩くと、地上への出口が見えた。天井が切り取られるように欠けた部分から、太陽の光が差し込んできている。
一度地上に出た。ビルの谷間の様な広場の向こうにはコンビニの看板とサンシャインシティという看板が取り付けられていた。一応地図では見れているけど、道が正しいと分かると安心できる。
ビルの谷間のようなを広場を抜けるとまた暗い通路が現れた。
誰かが深く息を吸う。低い天井と暗闇の通路は何度も通ったけど、えも言われない圧迫感がある。闇に押しつぶされそうな感覚。
「まっすぐで」
時折左右に地上への階段や通路があるけど、ルートはまっすぐだ。先行するラティナさんと近衛の一人に声をかける。
暫く進むと半分開いたガラスの自動ドアを抜けて、光の玉に照らされた壁にサンシャインシティの青いロゴが現れた時には心底ほっとした
止まったままのエスカレーターを上る。そこには、広々としたショッピングモールが広がっていた。
◆
暗いモールにはレブナントの黄色い光が暗闇に浮かんでいる。
階段の前には都合のいいことにフロア案内のパネルが設置されていた。
アルタ、左の奥にはサンシャイン60ビルを示す緑の表示。右には目指すサンシャインホテルが黄色に色分けされている。
間違いなくサンシャインシティの1階。地下から直行の作戦は当たった。
「ポーション、ありますよね」
「十分に持ってきてるぞ」
ここが決戦の場で、僕等の拠点になる。それにこの後、このフロアをあちこち移動することも考えれば、ここは無理する価値がある。
「管理者、起動、電源復旧、フロア全域!」
天井に等間隔に並んだ電灯につぎつぎと光がともる。
見覚えのあるブランドの看板とかはあるけど、店内は荒れ果てて服だの雑貨だのの残骸が転がっていた。白と茶色のタイルに白い電気が反射した。視界が一気に明るくなる。
流石にワンフロアが広いだけあって、いつもより疲労感が酷いけど、セリエがくれたポーションを飲んだら意識が強制的に起こされるかのようにクリアになった。
普段ならあんまり体験したくない感覚だけど今はそんなことを言ってはいられない
明るくなった通路にはレブナントの姿が見える。かなりの数だ。広めの通路をふさぐ壁のようにレブナントの群れがいる。前にも後ろにも。
「全員、構えよ!」
ジェラールさんが言うと、近衛が通路の横列を敷いて、それぞれ武器を構えた。
「疑ってすまなかった、竜殺し殿」
「いえ」
ヴァラハドさんがデカい体を縮めるように頭を下げる
剣を構えてゆっくりした足取りでレブナントがこっちに向かってきた。
「手出しはせず力は温存しろ、スミト。お前らの退路は必ずや我々が守る。皆!わが主の名に恥じぬ戦いをせよ」
「おう!」
ジェラールさんが言うと、バスキア校の従士の人たちがそれぞれの武器を構えて応じる。
「まずはこの階を制圧し外への道を開く!【逆巻け、風】!」
ジェラールさんが大刀を振ると、轟音を立てて竜巻のような風が地面から立ち上がった。風の壁がベンチをなぎ倒し、天井のパネルを削ぎ取るようにして前進する。
まっすぐに進んできたレブナントが風の壁につかまった。レブナントがミキサーにかけられたかのようにねじれて潰されていく。
「務めを果たせ、カザマスミト!」
ジェラールさんが言う。そう、やるべきことをしなくては。
ジェレミーさんやオルドネス公、ブレーメンさんやフェイリンさんが神妙な顔で見送ってくれた。威勢のいい出撃、と言う感じじゃないな。
目白通りを通って不忍通りに抜けて、護国寺まで行く。
今回は音を出さないため、ということで車は使っていない。念には念を入れてってことだけど、そもそも今回は20人を超える大所帯だ。路線バスを動かすことも考えたけど、警戒陣形を取る方がいい、というジェラールさんのの言葉でとりやめになった。
言う通り、バスキア公の近衛が僕等を守るように円陣を組むように隊伍を整えて進んでいく。
ただ、警戒しつつも、バスキア公の近衛たちは周りの景色を興味深げに眺めているのが分かった。ガルフブルグとはまったく違う景色だから当然だけど。
不忍通りに入ると建物の高さが低くなって視界が広がった。
東京にいるときはここに来たときはなかったけど、池袋の近くにこんな感じの住宅地があるなんて知らなかったな。
まっすぐな道でなにかがいればすぐわかる。幸いにもレブナントの姿は見えない。
奇襲は受けにくい状況だと思うけど、バスキア公の近衛の警戒はまったく緩む様子はない。周りに建っている低層のアパートとか普通の住宅に油断なく目を走らせている。
初めて来る場所を歩くのは距離感が分からなくて不安を感じる所なんだけど……ちょっとじれったくなるくらいの時間歩いてようやく青看板が見えてきた。
左に行くと池袋、まっすぐ行くと千駄木、その向こうには首都高の高架。道を間違ったなんてことはなかったらしい。
「もう少しです」
そう声を掛けると、ちょっと周りの空気が緩んだ。道が正しいか、という不安感は僕等より彼らの方がよほど大きいわけだし。
◆
首都高の高架をくぐると、景色がまた少し変わった。
道幅が広くなって道の真ん中には植え込みの分離帯が現れる。周りのビルも背が高くなってオフィスビル風だ。
「信じがたい街だな……これほどの高い塔を、しかもこれほどの範囲で」
「パレアの何倍あるのだ?」
近衛の何人かがつぶやく。道を挟むビルは僕でも谷間みたいで圧迫感を感じる時がある。こういうのを見たことがない人からすればもっとその感じは強いだろう。
「油断するな。まだ着いてはいないぞ」
円陣の先頭で斧槍を構えるヴァラハドさんが言って、忌々し気に植え込みを見る。視界を遮って邪魔なんだろう。
ただ周りからは物音ひとつしない。僕等の足音と鎧の触れ合う音くらいだ。
「動くモノは見エナいヨ」
ビルの上からラティナさんの声が降ってくる。ラティナさんはビルの上を行って、高い位置から遠くを見てくれている。
静かなオフィス街って感じで、人気のない光景にもいい加減もう慣れた。
ただ、周囲の建物はそれなりに壊れたりした様子が見える。まだ探索の手はここまで及んでいないから、魔獣が現れて壊したんだろう。でもいまはその気配はない。
池袋からそれなりに離れるているせいか、さすがにレブナントはいない。周辺全域にレブナントを配置することはできないんだろう。
というより、レブナントはおそらく数で押しつぶす戦術が基本だと思うし、薄く広く展開させるのはあまりメリットがないと思う。
視覚を共有するほどの便利さはないようなのは救いだ。
しばらく歩くと、青地に白のロゴマークの入った看板が見えてきた。地下鉄の入り口だ。
地下鉄入り口の真正面には僕でも聞いたことがある出版社の入り口があった。
講談社だ。正面の掲示板のガラスが割れて、本が道に散乱していた。中には見たことがある本や、あの連載はどうなったんだろうか、と気になる作品もある。
講談社の漫画はたくさん買ったけど……こんなところに会社があるなんてしらなかったな。
◆
近衛の一人が生み出した光の玉が先行するように地下鉄の階段を照らした。特になにか動くものは見えない。
ヴァラハドさんが頷いて先行していった。それに続いて、慎重に地下に降りる。
小さな駅だけど、幸いにも静まり返っていて、魔獣もレブナントも気配がなかった。
バスキア公の近衛の人たちが物珍しそうに薄明かりに照らされた周りの壁を見る。
地下へ行っているわけだけど、不安げな気配はまったくない。この辺は流石に歴戦の精鋭って感じだ。
警戒しつつも興味深そうにタイル張りの壁に触れたり、天井を見て何かささやきあったりしている。いわゆるガルフブルグの地下遺跡とはかなり違うものらしいから当然の反応かもしれない。
ホームに降りたところで、ヴァラハドさんが舌打ちして手で合図を送った。近衛の一人がサーベルを構えて前に出てくる。
低い天井と、神殿のように等間隔に並ぶ太い円柱、ベンチや看板、長物を振り回すには向いてない場所ではあるけど。この辺はなんというか抜かりがない
先行した人が問題なし、と言わんばかりに剣を掲げてこっちに合図をしてくる。
「それで、どうするのだ?」
「そこの壁を越えて下に降りてください。あの道を行きます」
暗い闇に包まれたトンネルを指さす。
近衛の人たちがそれぞれが顔を見合わせるけど此処までこれば仕方ない、とばかりにホームドアを乗り越えて線路に下りて行った。
◆
地下鉄で一駅分はすぐだった。さほどの間を置かず東池袋駅にたどり着く。
改札を抜けると、四角い地下通路が左右に伸びていた。闇に包まれていて先が見えない。黄色い点字ブロックと白っぽい壁が長く伸びている。
「ここからはボクが先行するね」
ラティナさんが手にナイフをもって前に出てくる。
東池袋駅。ここまでくればレブナントが居ても不思議じゃない。ただ、レブナントは厄介な相手だし、暗闇は僕ら人間にとっては不利な要素なんだけど、あの目立つ黄色い光は暗闇でひときわ目立つ。
あれが見えないってことはどこかに潜んでいるってことはない。それが分かるのは僕等にとっては少し有利な要素かもしれない。
「管理者、起動、階層地図表示」
ワイヤーフレームで構成されたような地図が目の前に浮かぶ。まっすぐ伸びた地下通路、その先の出口の分岐。
「まっすぐ行って、右の出口のはず」
僕の言葉に黙ってうなづいて、ラティナさんが足音一つ立てずに通路を進んでいく。
近衛の人の一人が出した光の玉がそれに付き従うように飛んで行った。
天井にところどころ取り付けられた黄色い案内板は当たり前だけど今は光ってはいない。
暫く歩くと、地上への出口が見えた。天井が切り取られるように欠けた部分から、太陽の光が差し込んできている。
一度地上に出た。ビルの谷間の様な広場の向こうにはコンビニの看板とサンシャインシティという看板が取り付けられていた。一応地図では見れているけど、道が正しいと分かると安心できる。
ビルの谷間のようなを広場を抜けるとまた暗い通路が現れた。
誰かが深く息を吸う。低い天井と暗闇の通路は何度も通ったけど、えも言われない圧迫感がある。闇に押しつぶされそうな感覚。
「まっすぐで」
時折左右に地上への階段や通路があるけど、ルートはまっすぐだ。先行するラティナさんと近衛の一人に声をかける。
暫く進むと半分開いたガラスの自動ドアを抜けて、光の玉に照らされた壁にサンシャインシティの青いロゴが現れた時には心底ほっとした
止まったままのエスカレーターを上る。そこには、広々としたショッピングモールが広がっていた。
◆
暗いモールにはレブナントの黄色い光が暗闇に浮かんでいる。
階段の前には都合のいいことにフロア案内のパネルが設置されていた。
アルタ、左の奥にはサンシャイン60ビルを示す緑の表示。右には目指すサンシャインホテルが黄色に色分けされている。
間違いなくサンシャインシティの1階。地下から直行の作戦は当たった。
「ポーション、ありますよね」
「十分に持ってきてるぞ」
ここが決戦の場で、僕等の拠点になる。それにこの後、このフロアをあちこち移動することも考えれば、ここは無理する価値がある。
「管理者、起動、電源復旧、フロア全域!」
天井に等間隔に並んだ電灯につぎつぎと光がともる。
見覚えのあるブランドの看板とかはあるけど、店内は荒れ果てて服だの雑貨だのの残骸が転がっていた。白と茶色のタイルに白い電気が反射した。視界が一気に明るくなる。
流石にワンフロアが広いだけあって、いつもより疲労感が酷いけど、セリエがくれたポーションを飲んだら意識が強制的に起こされるかのようにクリアになった。
普段ならあんまり体験したくない感覚だけど今はそんなことを言ってはいられない
明るくなった通路にはレブナントの姿が見える。かなりの数だ。広めの通路をふさぐ壁のようにレブナントの群れがいる。前にも後ろにも。
「全員、構えよ!」
ジェラールさんが言うと、近衛が通路の横列を敷いて、それぞれ武器を構えた。
「疑ってすまなかった、竜殺し殿」
「いえ」
ヴァラハドさんがデカい体を縮めるように頭を下げる
剣を構えてゆっくりした足取りでレブナントがこっちに向かってきた。
「手出しはせず力は温存しろ、スミト。お前らの退路は必ずや我々が守る。皆!わが主の名に恥じぬ戦いをせよ」
「おう!」
ジェラールさんが言うと、バスキア校の従士の人たちがそれぞれの武器を構えて応じる。
「まずはこの階を制圧し外への道を開く!【逆巻け、風】!」
ジェラールさんが大刀を振ると、轟音を立てて竜巻のような風が地面から立ち上がった。風の壁がベンチをなぎ倒し、天井のパネルを削ぎ取るようにして前進する。
まっすぐに進んできたレブナントが風の壁につかまった。レブナントがミキサーにかけられたかのようにねじれて潰されていく。
「務めを果たせ、カザマスミト!」
ジェラールさんが言う。そう、やるべきことをしなくては。
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