僕は御茶ノ水勤務のサラリーマン。新宿で転職の話をしたら、渋谷で探索者をすることになった。(書籍版・普通のリーマン、異世界渋谷でジョブチェンジ)
その問いかけ。
改めてその人の顔を見た。
ベリーショートの都笠さんよりさらに短い赤毛。短いせいか束になった髪がつんつんととんがっていて、額が見えている。
きつい感じの鋭い目とちょっと童顔なこともあって、やんちゃの少年みたいな感じだ。
僕よりは小さいけど、都笠さんと同じくらいの背丈だから170センチくらいだろうか。
まじまじと顔を見て、そのあと胸を見る。どう見てもないんだけど、などと思って、やばい、と思った
「……よほど死にたいようだな、貴様は」
「いや、申し訳ない。間違ったのは悪気はないです。ごめん」
化粧っ気もないし、ジェレミー公のお付きが着てる白いタイトな礼装に銀の短めのマントはどうも性別の区分はないらしく、それだけで性別は分からない。
うかつな発言だったかもしれないけど、別に悪意があったわけじゃない。
「何してんの、風戸君」
「お兄ちゃん、これ美味しいよ……あれ?」
「ご主人様、どうかされましたか?」
セリエ達が戻ってきて、険悪な空気に気付いたらしく、僕等の顔を見る。
都笠さんが僕の顔を見て、その子の顔を見た。
「……へえ、かわいいじゃない。誰、この人?」
「……女の子ってわかる?」
「分かるわよ。宝塚って感じよね」
都笠さんにはわかったらしいけど、僕にはわからない。
というか、従者の制服には男女差をつけてほしい。紛らわしいことこの上ない。
「抜け。
貴様は知らぬかもしれんが、ガルフブルグの決闘ではスロット武器は使わない。短剣で行うのが作法だ」
決闘、と聞いて都笠さんが少し緊張した顔になる。セリエの顔が強張った。
ちょっと周りがざわついた雰囲気になって僕等に注目が集まる
スロット武器での切り合いならそうは負けない、と思うけど。
そういう問題じゃなくて。こんなところで、しかも命を懸けて決闘をするにはあまりに理由がくだらなすぎる、少なくとも僕にとっては。
「どうした」
突き付けられた短剣を見る。
改めて見ても、どうやら大真面目らしい。なんとか怒りを解かないと。
「ちょっと……」
「おいおい、ちょっと待ちなって」
僕が口を開いたその時。声を掛けてきたのは、片手にビールの細い瓶を持った背の高い男だった。
◆
年は僕と同じくらいだろうか。
癖のある明るい色の茶髪を肩位まで伸ばしている。癖っ気のお陰でなんというか、ぼさぼさな無造作な感じだ。
着ている黒の革のジャケットにはどこかのスポーツチームっぽいロゴが入っている。
上背があるのと面長な顔だからひょろっとした感じに見えるけど、Tシャツから覗く胸元は鍛えた感じがある。
明らかに男性の者なので、此処は勘違いはなさそうだ。間違いなく男性。
下はジーンズに革のブーツと、上から下まで徹底した日本式、というか現代式、いわゆる放浪願望者スタイルだ。
ファッションだけなら普通に渋谷を歩いていてもおかしくない
「なあ、アデル様、やめときなって」
「止める気か?」
女の子が男を険悪な目で睨む。
というかこの女の人はアデルというらしい。決闘を申し込むならまずは名前くらい名乗ってほしい所だ。
「アデル様。
男の立場から言わせてもらうけど、そんな格好してるんだから勘違いされてもしょうがないって。
こういう場くらいはドレスでも着てくれよ」
なれなれしい感じで男が女に話しかける。まったく同感だ。
しかし、この男の人はアデルさんのお付きの人なんだろうか。
親し気ではあるけど恋人という感じではないし、砕けすぎてて臣下にも見えない。
「なんだと、貴様」
「それに腹が立つのはわかるんだけどさ。
こんな祝いの場で、竜殺し相手にトラブル起こすのはお家の名前的にどうなのかなぁ?あまり良くないんじゃないのかい?」
男が、やれやれという仕草で首を振る。
「……貴様、どっちの味方だ。まさかとは思うが、庇おうとしているのではないだろうな」
「そんなわけないでしょ。俺には何の義理もないからねぇ。
俺はわが尊敬すべき主であるあなたのために言ってるだけだぜ」
「くっ……」
「……ここでトラブルは不味い。ああ、マズい。ホントにまずい、なあ、そうだろう?」
男がちょっと大げさに、諭すような口調で言う。
アデルさんが男を睨み、僕を睨み、もう一度男を睨むと、ぷいと向きなおった
「ちっ、いくぞ」
アデルさんが短剣を懐に仕舞うと身をひるがえしていってしまった。
なんというか、唐突な話だったけど、結果的には何事もなくてよかった。
「俺の主が失礼したね。まだ若いから勘弁してあげて」
男がぼさぼさの頭をかきながらちょっと会釈する。
誰だか知らないけど、助けられたな。
「いえ、ありがとうございます」
「気にしなくていいよ」
主が行ってしまったのに、男は立ち去ろうとせず、何か言いたげな顔で僕等を見ている。どうかしたのかな。
都笠さんがその顔をじっと見つめた。
「あなた……」
「どうかした?」
「どこかで見たことある気がするんだけど……」
都笠さんが言う。
「そう?いやー、でも初対面のはずなんだがなぁ」
といいつつ、男がちょっと嬉しそうな、含み笑いを浮かべた。
僕は全く覚えがない。どこかで会っただろうか。都笠さんが会っているなら僕も会っている可能性はあるけど。
「そうだ、あんた……でも、そんなことあり得るのかしら……?」
「ん?」
「確か……エクストリームバイクの選手じゃなかったかしら、そのボサボサ頭、テレビで見たわ、でも……?」
「おお!!」
男が嬉しそうに手を叩いてガッツポーズをする。
「俺のこと知っててくれたとは!いやー嬉しいねぇ」
バイクの選手……てことは、この人も僕等と同類か?
「でも名前までは覚えてないのよね……」
「衛人だ。
衛人・中邑=ハーベイ・クレメンス。22歳。日米ハーフだ。よろしく頼むよ
知っていてくれたってことは、俺のファンなのかな?サインしようか?」
「いや、いいわ、ファンじゃないし」
「なんだ、つれないじゃないか」
都笠さんが素気無い口調で切り返して、男、衛人さんが肩を落とす
「知ってるの?」
「直接面識なんてないけどね。
アメリカのダブルエクスっていうエクストリームスポーツのバイク部門の去年のチャンピオン……だったかしら」
「惜しい。2連覇中だ」
僕は全然知らないけど、スポーツ選手っぽいというのは分かった。
「それなりに向こうじゃ有名だったんだがね。こっちじゃ君らの方が有名人だよな。
というか、日本人がいるのは知ってたけどさ、なんか英雄扱いの天上人だったからね」
「はあ……」
「ともあれ、会えてうれしいよ」
なれなれしい、というか、昔からの友達って感じで手を握ってくる。
でも人懐っこい感じの笑顔で、感じの悪さはなかった。
◆
とりあえずテーブルを確保して皆で座った。
「ため口でいいかい?」
「いいけど。なんで?」
「あんたらは英雄。俺はシガナイお姫様の付き人だからねぇ」
「全然気にしなくていいよ」
せっかくの同郷の者同士、堅苦しくしても仕方ない。
「じゃあ改めて乾杯だ。東京スタイルで行こうぜ」
衛人君がアメリカの細いビールの瓶を、僕のワイングラスと都笠さんのビアマグにぶつけた
「ほら、そっちも、お嬢さん」
衛人君がちょっと強引に、セリエのワイングラスとユーカのジュースのコップにビールの瓶を触れさせて乾杯する。
仕草が堂々としているというかものおじしない感じがする。この辺はトップアスリートの自信なのかな。
セリエはちょっと控えめに。ユーカは嬉しそうに笑ってグラスを触れ合わせる。
「これに付き合ってくれる奴はこっちにはいないからさ
やっぱ、こっちの方が落ち着くと思わないか?」
「それは同感」
一本を一気に飲み干して、もう一本の栓を開ける。
「そういえば、いつこっちへ?」
「確か3月ほど前かな?」
3カ月前。
この人がこっちに来たのは、多分ベル君たちが自転車を作っていて、僕等が少し暇しているときのことだろうか、
その時はガルフブルグに居たので、知らなかった。
「新宿の近くをチームの車で移動している時さ。対向車線からトラックが飛び出しててね。
こりゃ死んだ、と思ったんだが……気づいたらバイクと一緒に一人で道路に立ってたんだよ」
ビールを飲んで、ハムを一枚手で取って口に入れる。
しかしこっちに来るにもいろんなケースがあるもんだ。
「で、なにがなんだかわからないがとりあえず新宿まで辿り着いたら、あの有様だろう?」
新宿駅周辺は、南口は天幕が貼られて酒場になってるし、駅周辺は大体どこでも探索者が歩き回っている。
しかもそれが、獣人だの、鎧を着た戦士だの、魔法使いだのそんなのなんだから、そりゃさぞかし驚いただろうな
「なにがおこった?ヤバいクスリはやった覚えはないんだがな、とか思ってたら、ギルドの係官とやらにつかまってね。
渋谷まで連れてこられておもてなしを受けて、二日後には何人かの偉そうな連中が押しかけてきて、自分に仕えるようにって言ってきたわけさ」
なんというか、随分対応が速い。
衛人君が一息ついてまたビールを一口飲む。
「ま、どうもどうも俺達みたいな、こっちの世界の人間で新しいのが来たらすぐに言うようにギルドに手回ししていたそうだね」
「準備がいいことだね」
「まあ、もはやこっちからきている人間がいるなんて公然の秘密だ。
あれだけスミト先生達が派手に活躍してれば当然だろう?」
自分ではあまり実感できてない部分もあるけど、相応に有名になっているのはなんとなくわかる。
「そういえば、なんであのお姫様にしたわけ?」
今の話を聞く限り、仕官の口は一つじゃなかったようだけど。
正直アデルさんのさっきの印象は控えめに言っても感じ悪い。
僕としては、ほかに選択肢があるならあの人に仕えるのはできればご勘弁って感じだ。
「ああ、高飛車だって?
まあ許してやってくれよ。あの子は準騎士志望なんだ。先生がうらやましいのさ」
なるほど。それであの険悪な感じも納得がいった。
「それと、お家の事情ってやつが色々あってさ、触る者、皆傷つけたくなる年頃なんだよ。
慣れれば突っ張ったところもちょっとかわいいぜ」
楽し気に笑いながら衛人君がいうけど。そうなのか?これについては、あまり想像がつかない。
「そういえば、セリエ、一つ聞いていい?」
「なんなりと」
あまり普段は飲まないセリエだけど、今日はワインを飲んでいる。
ほんのり赤く染まった頬といつもよりぺたんと寝た犬耳が可愛い。
「準騎士ってのはそんなに大したもんなわけ?」
さっきのアデルさんも物腰からすればそれなりに高い地位にいる貴族っぽいし、準騎士っていっても所詮は騎士の下にしか思えない。なのになぜあんなにむきになる必要があったのか。
字面からみれば貴族よりも準騎士の方が身分が低そうなんだけど。
今は興味がない、と言った時、アデルさんの顔色が変わったってことは。単純に身分差がどうというものではないのかもしれない。
「地位としては準騎士は貴族や騎士に及びません。ですが」
「うん」
「準騎士に迎えられるということは、従来の身分の序列を覆しても直接旗下に召抱えたい者であり、相応の能力を備えているとみなされます。実際に出世するものも多いと聞きますし。
それが、オルドネス公やブルフレーニュの姫君の準騎士となれば」
「……トップチームからのヘッドハンティングみたいなもんだな。しかもゼネラルマネージャー直々の」
プロスポーツ選手らしい例えを衛人君がした。そういわれると確かにイメージしていたよりもすごいのかもしれない。
前にリチャードが並の貴族より扱いが上、と言っていたのはそういうことか。
「まあ、話を戻すと。あのお姫様に仕えたのはさ、あの方の条件が一番よかったんだよ」
「条件って?」
「金が。
俺はプロだから金がなきゃ動かねぇよ、って言ったら目の前に金貨の山を積まれたよ。
いい契約、いい環境。これが大事」
異世界まで来てもプロ根性たくましい。オルミナさんと気が合いそうだ。
「スロット武器とかは?」
エールのジョッキを傾けながら都笠さんが聞く。
「俺はアスリートだぜ?スロットだかなんだかしなんが、魔法なんかに頼るなんて俺の主義じゃないな。
一応……えーとなんだっけ?魔法の箱、ってスキルは取ってる。バイクのガレージ変わりだな」
「ああ……便利よね」
魔法の箱は、確かものを収納する亜空間を作るスキルだったかな。
確か兵器工廠もその系統、という話だし、あの便利さは僕も間近で見ているからわかる。
「でも、こっちの世界で良いなって思うのは回復と防御だよなぁ。
クラッシュしても怪我しにくい、練習で怪我しても治せるって、まったくアスリートに取っちゃ夢のような環境だぜ。魔法万歳だよ」
さっきと言ってることが違う気もするけど、確かにこの二種類は現代でも再現することはできない。
エクストリームスポーツっていったらバイクとかスケボーとかで飛んだり跳ねたるするスポーツだったはずだし、怪我もしやすいだろう。防御をかけて練習して、怪我をしても、回復で治せるわけだから、そりゃ便利だと思う。
「そういえば、ここでは何かしてるわけ?」
「お姫様に付き添って東京のガイドとか、現代知識を教えたり。あとバイクのコーチだな」
「あの子、バイク乗るんだ?」
都笠さんが驚いたように言う。
車は動かせなかったけど、管理者が使えるならバイクは動かせても不思議じゃない。
「中々筋がいいぜ。乗馬の経験も生きてるんだろうが、ガッツがある。
まあ俺に出来ることと言えばバイクのことくらいだからなぁ。
こんなだけど、契約した以上、その分の仕事はするぜ」
バイクに限らず、乗り物を動かせると多分とても役に立つだろうと思う。移動速度、距離、どっちをとっても馬車と車、馬とバイクでは比較にならない。
管理者で動かす分にはガス欠も心配しなくていいところも便利だ……魔力切れはあるけれど。
「ああ、それと一番大事なのは、契約で、俺が元の世界に戻る方法を探す、それができそうなら協力するってことをいれてくれたことだね。
他の連中はやれ準騎士になれだの、永遠に忠誠を誓えだのでよ。俺を縛ろうなんて冗談じゃねえよ」
「戻りたいの?」
都笠さんが聞く。
「あったりまえだろ?俺には野望がある。
ダブルイクスで前人未到の6連覇。オリンピックに出場して金メダル。レジェンドライダーになることよ。
アスリートの最高の時期ってのは短いんだぜ。無駄にはできない」
「……オリンピックにバイクなんてあったっけ?」
とりあえずそんな競技は覚えがない。まあオリンピックはニュースハイライトを見る程度ではあるんだけど。
「痛いところを突くねぇ……今はないけどいずれ入るだろうよ」
オリンピックの協議もだんだん増えていってるし、いずれバイクとかも入る日も来るんだろうか。
「ということで、だ。塔の廃墟の英雄、スミト先生。なにか帰る方法しらないかい?」
「……残念ながら」
真剣な顔で聞いてきてくれたところを申し訳ないんだけど、今のところこの手の話の情報は全くない。
あきらめ気味だからあまり熱心に探してない、というのもあるけど。それ以前に手掛かりが無さすぎる。
検索エンジンにキーワードを入力すればいいっていう世界じゃないし、巨大な図書館があって本が読み放題、という世界でもない。情報を得るのもけっこう難儀なのだ
衛人君ががっくりと肩を落とす。
「困ったもんだ。
こんな何が何だかわからない所でお嬢ちゃんのお守をしてる暇はないんだがなぁ」
「……貴様、いつまでたっても来ないと思えば」
いつの間にかアデルさんが衛人君の後ろに立っていた。
「おっと失礼、わが主」
衛人君が体を逸らして挨拶する。
アデルさんが怖い目で睨むけど本人は意に介してない。
「……主に対する口の利き方をいうものをわかっておるのか?」
「気にすんなよ。いつものことだろ」
あきらめたようにアデルさんが首を振った。
「……ジェレミー公がお呼びだ。伴をせよ」
アデルさんが衛人君に顎で立つように促して僕を睨む。
「貴様が望まぬなら、私が準騎士の座、頂くぞ」
「お好きにどうぞ」
アデルさんがそれを目指すのは勝手だけど、この件で僕に対抗意識を燃やされても困る。
僕の反応が薄いのがお気に召さないのか、また舌打ちした。
「覚えておけ、我が名は``鉄騎の乗り手``アデルハート・ジェルジア・フォルトナ。
この名はいずれガルフブルグに轟くだろう。貴様などに負けはせぬぞ」
僕を指さしながら言う。
高慢、というか確かに上昇志向が強い人っぽいな。
勝手に名乗ってくるりと身をひるがえすとアデルさんが行ってしまった。
「……鉄騎の乗り手って?」
「自称なんだな、これが」
衛人君が苦笑いする。自分の二つ名を自分で決めるとは。痛い中二病患者か。
都笠さんが噴き出した。
「……あたし、ちょっとあの子好きになったわ」
「まあそうかもね」
なんというか、天然で面白そうではある。
「私は好きになれません!ご主人様に失礼です!」
「……あのお姉ちゃん、ちょっと怖い」
セリエが珍しくはっきり言う。酒のせいかな。
「エイト!何をしている!」
「さて、御姫様がマジギレのご様子だし。そろそろ行かないとな」
遠くの方から呼ぶ声が聞こえて、衛人君が立ち上がった。
テーブルの上に置いたビールを一気に飲み干す。
「なぁ。でも、スミト先生……なんかえらく反応薄いけど」
「うん」
革のジャケットを羽織りながら僕らを見た。
「……帰りたいって思わないのかい?」
ベリーショートの都笠さんよりさらに短い赤毛。短いせいか束になった髪がつんつんととんがっていて、額が見えている。
きつい感じの鋭い目とちょっと童顔なこともあって、やんちゃの少年みたいな感じだ。
僕よりは小さいけど、都笠さんと同じくらいの背丈だから170センチくらいだろうか。
まじまじと顔を見て、そのあと胸を見る。どう見てもないんだけど、などと思って、やばい、と思った
「……よほど死にたいようだな、貴様は」
「いや、申し訳ない。間違ったのは悪気はないです。ごめん」
化粧っ気もないし、ジェレミー公のお付きが着てる白いタイトな礼装に銀の短めのマントはどうも性別の区分はないらしく、それだけで性別は分からない。
うかつな発言だったかもしれないけど、別に悪意があったわけじゃない。
「何してんの、風戸君」
「お兄ちゃん、これ美味しいよ……あれ?」
「ご主人様、どうかされましたか?」
セリエ達が戻ってきて、険悪な空気に気付いたらしく、僕等の顔を見る。
都笠さんが僕の顔を見て、その子の顔を見た。
「……へえ、かわいいじゃない。誰、この人?」
「……女の子ってわかる?」
「分かるわよ。宝塚って感じよね」
都笠さんにはわかったらしいけど、僕にはわからない。
というか、従者の制服には男女差をつけてほしい。紛らわしいことこの上ない。
「抜け。
貴様は知らぬかもしれんが、ガルフブルグの決闘ではスロット武器は使わない。短剣で行うのが作法だ」
決闘、と聞いて都笠さんが少し緊張した顔になる。セリエの顔が強張った。
ちょっと周りがざわついた雰囲気になって僕等に注目が集まる
スロット武器での切り合いならそうは負けない、と思うけど。
そういう問題じゃなくて。こんなところで、しかも命を懸けて決闘をするにはあまりに理由がくだらなすぎる、少なくとも僕にとっては。
「どうした」
突き付けられた短剣を見る。
改めて見ても、どうやら大真面目らしい。なんとか怒りを解かないと。
「ちょっと……」
「おいおい、ちょっと待ちなって」
僕が口を開いたその時。声を掛けてきたのは、片手にビールの細い瓶を持った背の高い男だった。
◆
年は僕と同じくらいだろうか。
癖のある明るい色の茶髪を肩位まで伸ばしている。癖っ気のお陰でなんというか、ぼさぼさな無造作な感じだ。
着ている黒の革のジャケットにはどこかのスポーツチームっぽいロゴが入っている。
上背があるのと面長な顔だからひょろっとした感じに見えるけど、Tシャツから覗く胸元は鍛えた感じがある。
明らかに男性の者なので、此処は勘違いはなさそうだ。間違いなく男性。
下はジーンズに革のブーツと、上から下まで徹底した日本式、というか現代式、いわゆる放浪願望者スタイルだ。
ファッションだけなら普通に渋谷を歩いていてもおかしくない
「なあ、アデル様、やめときなって」
「止める気か?」
女の子が男を険悪な目で睨む。
というかこの女の人はアデルというらしい。決闘を申し込むならまずは名前くらい名乗ってほしい所だ。
「アデル様。
男の立場から言わせてもらうけど、そんな格好してるんだから勘違いされてもしょうがないって。
こういう場くらいはドレスでも着てくれよ」
なれなれしい感じで男が女に話しかける。まったく同感だ。
しかし、この男の人はアデルさんのお付きの人なんだろうか。
親し気ではあるけど恋人という感じではないし、砕けすぎてて臣下にも見えない。
「なんだと、貴様」
「それに腹が立つのはわかるんだけどさ。
こんな祝いの場で、竜殺し相手にトラブル起こすのはお家の名前的にどうなのかなぁ?あまり良くないんじゃないのかい?」
男が、やれやれという仕草で首を振る。
「……貴様、どっちの味方だ。まさかとは思うが、庇おうとしているのではないだろうな」
「そんなわけないでしょ。俺には何の義理もないからねぇ。
俺はわが尊敬すべき主であるあなたのために言ってるだけだぜ」
「くっ……」
「……ここでトラブルは不味い。ああ、マズい。ホントにまずい、なあ、そうだろう?」
男がちょっと大げさに、諭すような口調で言う。
アデルさんが男を睨み、僕を睨み、もう一度男を睨むと、ぷいと向きなおった
「ちっ、いくぞ」
アデルさんが短剣を懐に仕舞うと身をひるがえしていってしまった。
なんというか、唐突な話だったけど、結果的には何事もなくてよかった。
「俺の主が失礼したね。まだ若いから勘弁してあげて」
男がぼさぼさの頭をかきながらちょっと会釈する。
誰だか知らないけど、助けられたな。
「いえ、ありがとうございます」
「気にしなくていいよ」
主が行ってしまったのに、男は立ち去ろうとせず、何か言いたげな顔で僕等を見ている。どうかしたのかな。
都笠さんがその顔をじっと見つめた。
「あなた……」
「どうかした?」
「どこかで見たことある気がするんだけど……」
都笠さんが言う。
「そう?いやー、でも初対面のはずなんだがなぁ」
といいつつ、男がちょっと嬉しそうな、含み笑いを浮かべた。
僕は全く覚えがない。どこかで会っただろうか。都笠さんが会っているなら僕も会っている可能性はあるけど。
「そうだ、あんた……でも、そんなことあり得るのかしら……?」
「ん?」
「確か……エクストリームバイクの選手じゃなかったかしら、そのボサボサ頭、テレビで見たわ、でも……?」
「おお!!」
男が嬉しそうに手を叩いてガッツポーズをする。
「俺のこと知っててくれたとは!いやー嬉しいねぇ」
バイクの選手……てことは、この人も僕等と同類か?
「でも名前までは覚えてないのよね……」
「衛人だ。
衛人・中邑=ハーベイ・クレメンス。22歳。日米ハーフだ。よろしく頼むよ
知っていてくれたってことは、俺のファンなのかな?サインしようか?」
「いや、いいわ、ファンじゃないし」
「なんだ、つれないじゃないか」
都笠さんが素気無い口調で切り返して、男、衛人さんが肩を落とす
「知ってるの?」
「直接面識なんてないけどね。
アメリカのダブルエクスっていうエクストリームスポーツのバイク部門の去年のチャンピオン……だったかしら」
「惜しい。2連覇中だ」
僕は全然知らないけど、スポーツ選手っぽいというのは分かった。
「それなりに向こうじゃ有名だったんだがね。こっちじゃ君らの方が有名人だよな。
というか、日本人がいるのは知ってたけどさ、なんか英雄扱いの天上人だったからね」
「はあ……」
「ともあれ、会えてうれしいよ」
なれなれしい、というか、昔からの友達って感じで手を握ってくる。
でも人懐っこい感じの笑顔で、感じの悪さはなかった。
◆
とりあえずテーブルを確保して皆で座った。
「ため口でいいかい?」
「いいけど。なんで?」
「あんたらは英雄。俺はシガナイお姫様の付き人だからねぇ」
「全然気にしなくていいよ」
せっかくの同郷の者同士、堅苦しくしても仕方ない。
「じゃあ改めて乾杯だ。東京スタイルで行こうぜ」
衛人君がアメリカの細いビールの瓶を、僕のワイングラスと都笠さんのビアマグにぶつけた
「ほら、そっちも、お嬢さん」
衛人君がちょっと強引に、セリエのワイングラスとユーカのジュースのコップにビールの瓶を触れさせて乾杯する。
仕草が堂々としているというかものおじしない感じがする。この辺はトップアスリートの自信なのかな。
セリエはちょっと控えめに。ユーカは嬉しそうに笑ってグラスを触れ合わせる。
「これに付き合ってくれる奴はこっちにはいないからさ
やっぱ、こっちの方が落ち着くと思わないか?」
「それは同感」
一本を一気に飲み干して、もう一本の栓を開ける。
「そういえば、いつこっちへ?」
「確か3月ほど前かな?」
3カ月前。
この人がこっちに来たのは、多分ベル君たちが自転車を作っていて、僕等が少し暇しているときのことだろうか、
その時はガルフブルグに居たので、知らなかった。
「新宿の近くをチームの車で移動している時さ。対向車線からトラックが飛び出しててね。
こりゃ死んだ、と思ったんだが……気づいたらバイクと一緒に一人で道路に立ってたんだよ」
ビールを飲んで、ハムを一枚手で取って口に入れる。
しかしこっちに来るにもいろんなケースがあるもんだ。
「で、なにがなんだかわからないがとりあえず新宿まで辿り着いたら、あの有様だろう?」
新宿駅周辺は、南口は天幕が貼られて酒場になってるし、駅周辺は大体どこでも探索者が歩き回っている。
しかもそれが、獣人だの、鎧を着た戦士だの、魔法使いだのそんなのなんだから、そりゃさぞかし驚いただろうな
「なにがおこった?ヤバいクスリはやった覚えはないんだがな、とか思ってたら、ギルドの係官とやらにつかまってね。
渋谷まで連れてこられておもてなしを受けて、二日後には何人かの偉そうな連中が押しかけてきて、自分に仕えるようにって言ってきたわけさ」
なんというか、随分対応が速い。
衛人君が一息ついてまたビールを一口飲む。
「ま、どうもどうも俺達みたいな、こっちの世界の人間で新しいのが来たらすぐに言うようにギルドに手回ししていたそうだね」
「準備がいいことだね」
「まあ、もはやこっちからきている人間がいるなんて公然の秘密だ。
あれだけスミト先生達が派手に活躍してれば当然だろう?」
自分ではあまり実感できてない部分もあるけど、相応に有名になっているのはなんとなくわかる。
「そういえば、なんであのお姫様にしたわけ?」
今の話を聞く限り、仕官の口は一つじゃなかったようだけど。
正直アデルさんのさっきの印象は控えめに言っても感じ悪い。
僕としては、ほかに選択肢があるならあの人に仕えるのはできればご勘弁って感じだ。
「ああ、高飛車だって?
まあ許してやってくれよ。あの子は準騎士志望なんだ。先生がうらやましいのさ」
なるほど。それであの険悪な感じも納得がいった。
「それと、お家の事情ってやつが色々あってさ、触る者、皆傷つけたくなる年頃なんだよ。
慣れれば突っ張ったところもちょっとかわいいぜ」
楽し気に笑いながら衛人君がいうけど。そうなのか?これについては、あまり想像がつかない。
「そういえば、セリエ、一つ聞いていい?」
「なんなりと」
あまり普段は飲まないセリエだけど、今日はワインを飲んでいる。
ほんのり赤く染まった頬といつもよりぺたんと寝た犬耳が可愛い。
「準騎士ってのはそんなに大したもんなわけ?」
さっきのアデルさんも物腰からすればそれなりに高い地位にいる貴族っぽいし、準騎士っていっても所詮は騎士の下にしか思えない。なのになぜあんなにむきになる必要があったのか。
字面からみれば貴族よりも準騎士の方が身分が低そうなんだけど。
今は興味がない、と言った時、アデルさんの顔色が変わったってことは。単純に身分差がどうというものではないのかもしれない。
「地位としては準騎士は貴族や騎士に及びません。ですが」
「うん」
「準騎士に迎えられるということは、従来の身分の序列を覆しても直接旗下に召抱えたい者であり、相応の能力を備えているとみなされます。実際に出世するものも多いと聞きますし。
それが、オルドネス公やブルフレーニュの姫君の準騎士となれば」
「……トップチームからのヘッドハンティングみたいなもんだな。しかもゼネラルマネージャー直々の」
プロスポーツ選手らしい例えを衛人君がした。そういわれると確かにイメージしていたよりもすごいのかもしれない。
前にリチャードが並の貴族より扱いが上、と言っていたのはそういうことか。
「まあ、話を戻すと。あのお姫様に仕えたのはさ、あの方の条件が一番よかったんだよ」
「条件って?」
「金が。
俺はプロだから金がなきゃ動かねぇよ、って言ったら目の前に金貨の山を積まれたよ。
いい契約、いい環境。これが大事」
異世界まで来てもプロ根性たくましい。オルミナさんと気が合いそうだ。
「スロット武器とかは?」
エールのジョッキを傾けながら都笠さんが聞く。
「俺はアスリートだぜ?スロットだかなんだかしなんが、魔法なんかに頼るなんて俺の主義じゃないな。
一応……えーとなんだっけ?魔法の箱、ってスキルは取ってる。バイクのガレージ変わりだな」
「ああ……便利よね」
魔法の箱は、確かものを収納する亜空間を作るスキルだったかな。
確か兵器工廠もその系統、という話だし、あの便利さは僕も間近で見ているからわかる。
「でも、こっちの世界で良いなって思うのは回復と防御だよなぁ。
クラッシュしても怪我しにくい、練習で怪我しても治せるって、まったくアスリートに取っちゃ夢のような環境だぜ。魔法万歳だよ」
さっきと言ってることが違う気もするけど、確かにこの二種類は現代でも再現することはできない。
エクストリームスポーツっていったらバイクとかスケボーとかで飛んだり跳ねたるするスポーツだったはずだし、怪我もしやすいだろう。防御をかけて練習して、怪我をしても、回復で治せるわけだから、そりゃ便利だと思う。
「そういえば、ここでは何かしてるわけ?」
「お姫様に付き添って東京のガイドとか、現代知識を教えたり。あとバイクのコーチだな」
「あの子、バイク乗るんだ?」
都笠さんが驚いたように言う。
車は動かせなかったけど、管理者が使えるならバイクは動かせても不思議じゃない。
「中々筋がいいぜ。乗馬の経験も生きてるんだろうが、ガッツがある。
まあ俺に出来ることと言えばバイクのことくらいだからなぁ。
こんなだけど、契約した以上、その分の仕事はするぜ」
バイクに限らず、乗り物を動かせると多分とても役に立つだろうと思う。移動速度、距離、どっちをとっても馬車と車、馬とバイクでは比較にならない。
管理者で動かす分にはガス欠も心配しなくていいところも便利だ……魔力切れはあるけれど。
「ああ、それと一番大事なのは、契約で、俺が元の世界に戻る方法を探す、それができそうなら協力するってことをいれてくれたことだね。
他の連中はやれ準騎士になれだの、永遠に忠誠を誓えだのでよ。俺を縛ろうなんて冗談じゃねえよ」
「戻りたいの?」
都笠さんが聞く。
「あったりまえだろ?俺には野望がある。
ダブルイクスで前人未到の6連覇。オリンピックに出場して金メダル。レジェンドライダーになることよ。
アスリートの最高の時期ってのは短いんだぜ。無駄にはできない」
「……オリンピックにバイクなんてあったっけ?」
とりあえずそんな競技は覚えがない。まあオリンピックはニュースハイライトを見る程度ではあるんだけど。
「痛いところを突くねぇ……今はないけどいずれ入るだろうよ」
オリンピックの協議もだんだん増えていってるし、いずれバイクとかも入る日も来るんだろうか。
「ということで、だ。塔の廃墟の英雄、スミト先生。なにか帰る方法しらないかい?」
「……残念ながら」
真剣な顔で聞いてきてくれたところを申し訳ないんだけど、今のところこの手の話の情報は全くない。
あきらめ気味だからあまり熱心に探してない、というのもあるけど。それ以前に手掛かりが無さすぎる。
検索エンジンにキーワードを入力すればいいっていう世界じゃないし、巨大な図書館があって本が読み放題、という世界でもない。情報を得るのもけっこう難儀なのだ
衛人君ががっくりと肩を落とす。
「困ったもんだ。
こんな何が何だかわからない所でお嬢ちゃんのお守をしてる暇はないんだがなぁ」
「……貴様、いつまでたっても来ないと思えば」
いつの間にかアデルさんが衛人君の後ろに立っていた。
「おっと失礼、わが主」
衛人君が体を逸らして挨拶する。
アデルさんが怖い目で睨むけど本人は意に介してない。
「……主に対する口の利き方をいうものをわかっておるのか?」
「気にすんなよ。いつものことだろ」
あきらめたようにアデルさんが首を振った。
「……ジェレミー公がお呼びだ。伴をせよ」
アデルさんが衛人君に顎で立つように促して僕を睨む。
「貴様が望まぬなら、私が準騎士の座、頂くぞ」
「お好きにどうぞ」
アデルさんがそれを目指すのは勝手だけど、この件で僕に対抗意識を燃やされても困る。
僕の反応が薄いのがお気に召さないのか、また舌打ちした。
「覚えておけ、我が名は``鉄騎の乗り手``アデルハート・ジェルジア・フォルトナ。
この名はいずれガルフブルグに轟くだろう。貴様などに負けはせぬぞ」
僕を指さしながら言う。
高慢、というか確かに上昇志向が強い人っぽいな。
勝手に名乗ってくるりと身をひるがえすとアデルさんが行ってしまった。
「……鉄騎の乗り手って?」
「自称なんだな、これが」
衛人君が苦笑いする。自分の二つ名を自分で決めるとは。痛い中二病患者か。
都笠さんが噴き出した。
「……あたし、ちょっとあの子好きになったわ」
「まあそうかもね」
なんというか、天然で面白そうではある。
「私は好きになれません!ご主人様に失礼です!」
「……あのお姉ちゃん、ちょっと怖い」
セリエが珍しくはっきり言う。酒のせいかな。
「エイト!何をしている!」
「さて、御姫様がマジギレのご様子だし。そろそろ行かないとな」
遠くの方から呼ぶ声が聞こえて、衛人君が立ち上がった。
テーブルの上に置いたビールを一気に飲み干す。
「なぁ。でも、スミト先生……なんかえらく反応薄いけど」
「うん」
革のジャケットを羽織りながら僕らを見た。
「……帰りたいって思わないのかい?」
「僕は御茶ノ水勤務のサラリーマン。新宿で転職の話をしたら、渋谷で探索者をすることになった。(書籍版・普通のリーマン、異世界渋谷でジョブチェンジ)」を読んでいる人はこの作品も読んでいます
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