僕は御茶ノ水勤務のサラリーマン。新宿で転職の話をしたら、渋谷で探索者をすることになった。(書籍版・普通のリーマン、異世界渋谷でジョブチェンジ)
ユーカの本当の能力を知る
「すまん、それには参加できん」
「え?マジですか?」
朝ご飯の麦の粥に胡椒を振りかけたものを食べながらアーロンさんに話しかけたら、返ってきた返事は予想外のものだった。
原宿と同じように、新宿でのゲート封印業務もアーロンさん達に同行してもらうつもりだったのに。まさかの展開だった。
ちなみにこの麦の粥はガルフブルグの定番朝食らしいけど、変な匂いがする歯ごたえがないペーストを食べているようで、正直言っておいしくない。
シリアルかヨーグルトか、トーストが欲しい。
「ガルフブルグから一度戻ってほしいという連絡が来たんだ。
それがなければもちろん同行するんだがな」
……アーロンさん達が抜ける、というのは正直言ってかなりショックだ。
リチャードと僕で前衛。アーロンさんがそれを補助してくれて、セリエとレインさんが後衛から魔法で支援してくれてるという構成はバランスが取れていて申し分なかった。
僕とセリエだけだと前衛一人、後衛一人の編成になってしまう。
RPGのイベントで強力なパーティメンバーが離脱した状態である。
近場ならともかく、まだ未踏域に近い新宿まで遠征するのだ。たぶん1日では終わるまい。2人では心もとない。
しかも今回はもう一人封緘を使う人を借りることになる。前のように戦闘力の無い学者みたいな人だったら、僕一人で守り切れるだろうか。
「どうしようか、セリエ?」
「私としては、昨日申し上げました通り、無理な依頼は受けない方がいいとは思います。
でも、ご主人様がどうしてもというなら、ギルドから誰か斡旋してもらうか、アルドに頼んで前衛を借りるか、が現実的だと思います」
「それがいいと思うぜ。お前は強いけどよ、単独の前衛はおっかねぇよ」
リチャードがスクランブルエッグのような卵料理をスプーンで掬いながら言う。
まあそうするのが妥当だろうな。
僕が一人で前衛をやって、一撃くらって動けなくなったら、セリエはほぼ無防備になってしまう。最低でも前衛はあと一枚欲しい。
「じゃあ、あたしが行く!」
ポタージュのようなスープを飲んでいたユーカが突然声を上げた。
「え?」
「ユーカちゃん、探索は危ないのよ。無理はしちゃだめよ」
レインさんがユーカをなだめる。
「わかってるよ。
でも、今までだって我慢してたんだよ。
ただ待ってるのなんてヤダ。
あたしの知らないところでお兄ちゃんやセリエが死ぬかもしれないなんて絶対ヤダ。
私だって戦えるもん、絶対一緒に行くんだから!」
「え?戦えるの?」
「うん。でもセリエが戦っちゃだめって。秘密にしなさいって」
ユーカがスロットを持っているのは知っていたが、戦えるのは初耳だった。
いわゆるスロットの設定をしてない状態かと思っていたのだけど。セリエの顔をみるとふいっと顔をそらす。
「ふーん。じゃあ試してみようか?」
「えっと、ご主人様あの……」
「セリエ、どうかした?」
「あの……お嬢様のスロット能力をお試しになるならですね、広い場所でやるほうが」
ユーカのスロット武器や能力がどういうものかを勿論セリエは知っているんだろう。
隠していたのも意図があるはずだ、たぶん。単なる過保護の産物かもしれんけど。
「本気か、スミト?」
「うーん、こうなったら試さないってわけにはいかないでしょう。
連れていくかどうかは別として、知っておくこと自体は悪くないと思いますし」
「まあそうかもな」
アーロンさんがうなづいた。レインさんはやめた方がいいって顔をしているけど。
まあ知っておくことは悪くないだろう。
◆
ユーカのスロット能力がどんなものなのか。
広い場所、と聞いてまず連れて行ったのは渋谷のスクランブルから少し歩いた交差点だった。けど、そこはセリエに却下された。
もっと開けたところがいい、らしい。
十字路もそれなりに開けているとおもうけど、それでもダメとは。いったいどうゆう能力なんだ?
結局、宮益坂上まで上ったところでようやくOKが出た。
「じゃあまずは武器を出してみて?」
「うん。わかった。
いくよ!発現!」
唱えると、ユーカの後ろに5メートル近い火柱が吹き上がった。
あっけにとられてみていると炎が渦巻きながら長細い形を取る。
炎が薄れて宙に浮いていたのは、波打った刀身を持つ巨大な剣だった。時折刀身から火のようなものが噴き出す。
フランベルジュっていうんだっけ、これ。どっかのゲームでみたな。
身長より長い剣を構える女の子、というのは相当にシュールな絵だ。
そもそもこんなのどうやって振り回すんだ、と思ったけど。よく考えればスロット能力で発現させた武器はあまり重さは感じない。
僕の銃剣も普通に鉄製ならかなりの重量になるはずで、鍛えてない僕が振り回すのは無理なはずだけど、自分で使う分には適度な重さだ。
「なら、どのくらい強いか試してみよう。ユーカ、一回僕を攻撃してみて」
「うん!」
ユーカがフランベルジュを後ろに引くようにして構える。
「あの、ご主人様、それは……」
「何?」
「いえ、あの……お気を付けください」
セリエが真顔だ。うーん。
多分結構強いんだろう、というのはわかった。気を取り直して僕も銃剣を構える。
まあそれでも子供だし、僕のスピードなら避けるくらいは問題ないだろう。
「いくよ、お兄ちゃん!」
「いつでも来な」
「えいっ!」
ユーカが全身を使うような動きで長大なフランベルジュを振りまわす。赤い火の粉が散った。
その切っ先が……速かった。ヤバい。予想より速い。普段の敵の攻撃が1/4倍速感覚だとしたら、1/2倍速の感じだ。
回避動作が遅れた。避けられない。
炎を吹きながら迫るフランベルジュを銃身で受け止める。
強烈な衝撃と金属音が響き、軽々と体が後ろに吹き飛ばされた。体が硬いコンクリ路面に落ちて息が詰まる。
勢いのまま転がってそのまま角のカフェのガラスに突っ込みそうになったところで止まった。
デュラハンの大剣なみとはいわんけどかなりの威力だ。コンクリで擦った体のあちこちが痛む。
「痛ぇ……」
「ご主人様、避けて!」
セリエの声にあわてて顔をあげる。目の前には真っ赤な炎の塊が迫っていた。
「うわっ」
痛む体に鞭打ってかろうじて横に飛びのく。炎が僕がいた場所にぶち当たり爆発した。炎が吹き上がって熱風が吹き付けてくる。
何なんだこれは。恐ろしすぎる。
「大丈夫?お兄ちゃん?」
「ご無事ですか?ご主人様」
「ああ、大丈夫」
固まっていたら、駆け寄ってきたセリエが手を貸してくれた。その手を取って立ち上がる。
ユーカはなんかほめてほしいような、ちょっと自慢げな顔をしている。
「あの炎はなんなの?」
「ええとですね、お嬢様のスロットは攻防と特殊に偏った前衛タイプです。魔法はお使いになれません」
今まで何人かの探索者の武器を見たけど、あんな派手な攻撃は見たことがない。
「ご覧になればお分かりかもしれませんが、お嬢様の武器には火の属性がついています。
それに加えて、特殊スロットに精霊の追撃をセットしておりまして。あの炎はその能力によるものです」
言われてみると、新宿の地下で攻防スロットをセットしたとき、エレメントとかいうのもあった気がする。
僕の銃剣には結局つけなかったけど、こんな見栄えのする攻撃ができるんならつけておけばよかったかな。
「奴隷であったときに隠していたのは火力が高くて前衛で戦わされるのを避けるためです。
といいますのは、お嬢様はスロットの力は強いのですが……戦い方とかをお分かりではないので。
……ご主人様と同じですね」
隠す理由はもっともだ。ただ、一言多い。
「どう、お兄ちゃん。あたしも強いでしょ。お兄ちゃんと一緒に行っていいよね」
「ダメっていったら?」
「絶対にヤダ!!」
頬を膨らまして僕を睨みつけてくる。
これはダメと言っても引き下がってくれる感じではないか。
というか、断るなら最初からノーというべきだったわけで、今更ダメといっても聞きはしないだろう。
ただ、強いというか火力は高そうだし、これなら二人で前衛はできなくはなさそうである。
不安は感じるけど、僕だって探索者としては駆け出しだし、人のことを言っていられる立場じゃないか。
「しゃあない。セリエ。いいね?」
「私としては……ご主人様とお嬢様に従います」
こうして一応前衛二人の編成にはなった。
あとはギルドで封緘の能力持ちの探索者を斡旋してもらうか。
◆
スタバビルの探索者ギルドで依頼を受けることを告げると、すぐに封緘の能力持ちの探索者を紹介してもらえた。
フェイリンさんが紹介してくれたのは、前の原宿のゲート封印の時の学者風の男性とは全然違ってた。
「よろしくね、スミト君。噂は聞いてるわ」
「こちらは探索者のオルミナ・エステファニアさんですぅ」
紹介されたのは、女性だった。飛び切り美人の。
「前の人とはずいぶん違いますね」
「あの方は今は別の仕事をしてましてぇ。
オルミナさんはフリーの探索者さんで、封緘を使えるので今回はお願いしましたぁ」
改めてオルミナさんをを見る。
青みがかって輝く腰位まである長い銀髪、切れ長の青い瞳。たぶん薄く化粧しているっぽい。口紅を引いたであろう唇が鮮やかに赤い。
銀髪からはとがった耳が飛び出している。ハーフエルフか、エルフだろうか。
見た目は20代後半、という感じだけど、エルフだったら実年齢はわからない。
身長は僕と同じくらいか、ちょっと高いくらいだ。
目をひくのはその胸。月並みな表現だけど、まさにスイカかなにかのような巨乳だ。そして細い腰。
体のラインが出た黒っぽい革の鎧に身を包んでいるが、これが黒のタイトなドレスにしか見えない。
バランスが取れた感じのセリエと違ってまさにセクシー&グラマー。
なんというかミラノコレクションのスーパーモデルとか、アメリカのチアリーダーとかがいきなり目の前に現れました、という感じだ。
エルフって映画とかではすらりとした細身というイメージなんだけど、ガルフブルグのエルフはそうじゃないのだろうか。
なんというか、ぽかーんと見とれてしまう。
「ご主人様、私たち以外の人をそんな目で見るのはやめてください!」
「ああ、ごめん。オルミナさん、失礼しました」
「遠慮なく見ていいのに。減るもんじゃないんだしね」
セリエに怒られて、慌てて目をそらす。
確かにガン見するのも失礼だ。
「かわいい子を二人もつれてるのね。
これならお姉さんが夜のお相手はしなくてもいいかしら?」
オルミナさんが妖艶としか言いようのない笑みを浮かべる。
正直言って、一瞬くらっと来た。
「余計なお気遣いです!!」
「そうだよ、お兄ちゃんにはセリエがいるんだから!」
「ん?今なんて?」
「お兄ちゃんにはセリエがいるって」
「そりゃどういう意味?」
と、聞いてから、しまった、と思った……がもう遅かった。
「うん。だって、セリエ、夜に時々お兄ちゃんのお部屋に行ってるでしょ。知ってるよ」
ばれてた……まあそれはバレてても仕方ない。
が、3人だけでいるときはいいけど、その話は此処ではやめてほしい。
「あのね、ユーカ……」
「お兄ちゃん、知ってる?
セリエ、部屋に帰ってきたとき、凄くうれしそうなんだよ」
自分から振っておいてなんだけど、なんか要らない方向に話が流れつつある。
セリエが顔を真っ赤にしてうつむいている。
「セリエはずっとあたしのために辛い顔してた。
だからセリエが幸せそうなの、凄くうれしいの。だからほかの女の人をそんな目で見ないで!」
それはうれしいけど、今はそれ以上言うのはやめて。
「あ……でもお兄ちゃん、いつかあたしにもちゅってしてね」
……全部見られてたか。ああああああ。もう。
フェイリンさんがこちらを面白そうな顔で見てる。なんだ、この羞恥プレイは。
セリエは向こうを向いてしまい、ユーカはがなんだか分からない、という顔で僕を見ている。
まあ悪気はないんだろう、勿論。
「面白い子たちね。楽しみになってきたわ。
スミト、夜のことは置いておいて、あらためてよろしくね。
出発は明日でいいかしら?」
「……ええ、よろしくお願いします」
意味ありげな笑みを浮かべてオルミナさんが手を差し出してきたのでその手を握り、早々にギルドから退散した。
◆
ギルドから逃げ帰り宿に戻ったその夜。
「ご主人様……よろしいでしょうか」
今日は来るだろうな、と思ってまだ寝ていなかったが案の定。
セリエが僕の部屋に来た。そこまでは予測済みだったけど、一緒にユーカがいたのはちょっと予想外だった。
「一緒に寝かせてね、お兄ちゃん」
ユーカが僕の前の方に、セリエが僕の背中の方にそれぞれ潜り込んでくる。
ユーカとセリエに挟まれて、ああ、これぞまさにハーレム状態。
「あのね、お兄ちゃん……」
「どうかした?」
ユーカが僕を見つめて、意を決したように口を開いた。
「今日はあたしにもちゅってしてほしいの」
そうきたか。なんとなく予想できた流れではあるけど。
「セリエ、いいの?」
ユーカは見た目は12~13才。
この年の子にキスなんてした日には、日本じゃ逮捕案件になりかねない。
「お嬢様のお望みですから」
止めてほしかったような気もするし、止めてほしくなかった気もする、何とも微妙な感じだけど。あっさりとOKが出た。
「そっか、じゃあこっちおいで」
ユーカが布団の中でこちらによってくる。
間近に迫られると、なんかすごく後ろめたいというかヤバいことをしている気分になる。でも、ここでやっぱり拒否るのもそれはそれでマズイ感じだ。
「初めてだからお兄ちゃんにしてほしいの」
これだけ可愛いのにキスも初めてとは。
奴隷の時によく何もされなかったもんだ。というかセリエが守り通したんだろう。
肩を抱きよせると、ぴったり体を寄せてきた。体温が感じられてちょっとこっちもドキドキする。
「うれしいよ、お兄ちゃん……お願いします」
ユーカが目をつむる。その唇に軽くキスした。
さすがにファーストキスの相手にセリエみたいなキスはちょっと出来かねる。
すぐに唇を離した僕を、ユーカが息がかかりそうなほど近い距離で睨んでくる。
「……今の……ちゅって感じでしょ。
そうじゃなくて、セリエにするみたいにして。セリエにだけなんてずるいよ」
セリエにするみたいにっていってもなぁ……さすがにちょっと気がひけるんだけど。
「ほんとにいいの?」
僕の言葉にユーカが小さくうなづく。
これは役得といっていいのだろうか。
「……あのね、お兄ちゃん、ぎゅってして。あたしが怖くなっても逃げられないように」
いわれるままにちょっと強めに抱き寄せると、ユーカが緊張した面持ちでもう一度目を閉じる
薄明かりでも輝くような金髪と小さな桜色の唇がかわいい。いつもほんのり赤い頬がますます赤く染まっている。
唇を近づけると、ため息が顔にかかる。そのまま唇を重ねた。
キスすると、ユーカの舌が僕の口におずおずと入ってくる。舌を触れさせると驚いたように体が強張るのが分かった。
怖がらせないようにできるだけゆっくりと舌を触れ合わせる。
「……んっ」
口元からあえぐような声が漏れて首に回された手に力がこもる。
長いキスをして、しばらくしてどちらからともなく唇を離した。ユーカが大きく深呼吸する。
「……セリエはずるいね」
「なにが?」
「お兄ちゃんにいつもこんなことしてもらってたんだね」
「いつもじゃないけどね」
「……セリエが幸せそうにしてる気持ちがわかったよ。
唇から伝わってくるの。お兄ちゃんがあたしのこと、大事に思ってくれてるって……」
そういうもんかはよくわからないけど、幸せそうなのを見てると僕も嬉しい
「あの、ご主人様、私にも……」
うしろからシャツを引っ張られた。
振り向くとセリエが不満げな顔で僕を見ている。
寝返りを打ってセリエを抱き寄せようとしたら、ユーカに頬をむぎゅっとはさまれてユーカの方を向かされた。
「ダメ!」
「え?」
「セリエは今日はダメ。今日だけはお兄ちゃんは私のものにして。
なんどもキスしてもらってたんでしょ」
「えっ、そんな、お嬢様……」
セリエがすがるような目で僕を見る。
……前にはブロンドのロリ少女、後ろには犬耳メイド。二人に囲まれて両手の花のハーレム状態、と思っていたけど。
「お兄ちゃん……」
「……ご主人様」
ハーレムっていうよりどっちかというとこれは、板挟み、というんじゃなかろうか。
さてどっちの肩を持つのが角が立たないのか……と思ったけど、どっちにしても角は立つか。
「今日は……まあ諦めて」
今日はセリエに我慢してもらうことにした。というかそうするしかないよな。
「……そんな……ひどいです」
不満げなセリエに、目で、仕方ないでしょ、と訴えてみる。
セリエが恨みがまし気な目で僕を見つめると、首筋にかるく噛みついてきた。いいたいことは分かるけど、僕に当たらないでほしい。僕のせいじゃないと思う、多分。
「あの……ご主人様、じゃあせめて指を」
「指?」
セリエが僕の手を取ると、かぷっと指を唇に含んだ。人差し指と中指があったかい感触に包まれる。
やわらかい舌が指に絡みついてきた。
「シンジュクから帰ったら今日の分までいっぱいいっぱい口づけしてくださいね」
不満げな上目遣いでセリエが僕を見る
「お兄ちゃん、今日だけはあたしの方むいててくれなきゃやだよ。
もう一度、ぎゅってして」
ユーカが首筋に手を回してくる。もう一度キスされた。
どっちかというと受け身なセリエと違ってユーカの方が何か積極的だ。背中に片手を回して抱き寄せてあげると満足げにしがみついてくる。
結局、その日はユーカは僕に抱き着いたまま寝てしまい、セリエには片手を抱えられたままで、今一つ寝ることができなかった。
明日新宿へ行くってのに、こんなことでいいのだろうか。
「え?マジですか?」
朝ご飯の麦の粥に胡椒を振りかけたものを食べながらアーロンさんに話しかけたら、返ってきた返事は予想外のものだった。
原宿と同じように、新宿でのゲート封印業務もアーロンさん達に同行してもらうつもりだったのに。まさかの展開だった。
ちなみにこの麦の粥はガルフブルグの定番朝食らしいけど、変な匂いがする歯ごたえがないペーストを食べているようで、正直言っておいしくない。
シリアルかヨーグルトか、トーストが欲しい。
「ガルフブルグから一度戻ってほしいという連絡が来たんだ。
それがなければもちろん同行するんだがな」
……アーロンさん達が抜ける、というのは正直言ってかなりショックだ。
リチャードと僕で前衛。アーロンさんがそれを補助してくれて、セリエとレインさんが後衛から魔法で支援してくれてるという構成はバランスが取れていて申し分なかった。
僕とセリエだけだと前衛一人、後衛一人の編成になってしまう。
RPGのイベントで強力なパーティメンバーが離脱した状態である。
近場ならともかく、まだ未踏域に近い新宿まで遠征するのだ。たぶん1日では終わるまい。2人では心もとない。
しかも今回はもう一人封緘を使う人を借りることになる。前のように戦闘力の無い学者みたいな人だったら、僕一人で守り切れるだろうか。
「どうしようか、セリエ?」
「私としては、昨日申し上げました通り、無理な依頼は受けない方がいいとは思います。
でも、ご主人様がどうしてもというなら、ギルドから誰か斡旋してもらうか、アルドに頼んで前衛を借りるか、が現実的だと思います」
「それがいいと思うぜ。お前は強いけどよ、単独の前衛はおっかねぇよ」
リチャードがスクランブルエッグのような卵料理をスプーンで掬いながら言う。
まあそうするのが妥当だろうな。
僕が一人で前衛をやって、一撃くらって動けなくなったら、セリエはほぼ無防備になってしまう。最低でも前衛はあと一枚欲しい。
「じゃあ、あたしが行く!」
ポタージュのようなスープを飲んでいたユーカが突然声を上げた。
「え?」
「ユーカちゃん、探索は危ないのよ。無理はしちゃだめよ」
レインさんがユーカをなだめる。
「わかってるよ。
でも、今までだって我慢してたんだよ。
ただ待ってるのなんてヤダ。
あたしの知らないところでお兄ちゃんやセリエが死ぬかもしれないなんて絶対ヤダ。
私だって戦えるもん、絶対一緒に行くんだから!」
「え?戦えるの?」
「うん。でもセリエが戦っちゃだめって。秘密にしなさいって」
ユーカがスロットを持っているのは知っていたが、戦えるのは初耳だった。
いわゆるスロットの設定をしてない状態かと思っていたのだけど。セリエの顔をみるとふいっと顔をそらす。
「ふーん。じゃあ試してみようか?」
「えっと、ご主人様あの……」
「セリエ、どうかした?」
「あの……お嬢様のスロット能力をお試しになるならですね、広い場所でやるほうが」
ユーカのスロット武器や能力がどういうものかを勿論セリエは知っているんだろう。
隠していたのも意図があるはずだ、たぶん。単なる過保護の産物かもしれんけど。
「本気か、スミト?」
「うーん、こうなったら試さないってわけにはいかないでしょう。
連れていくかどうかは別として、知っておくこと自体は悪くないと思いますし」
「まあそうかもな」
アーロンさんがうなづいた。レインさんはやめた方がいいって顔をしているけど。
まあ知っておくことは悪くないだろう。
◆
ユーカのスロット能力がどんなものなのか。
広い場所、と聞いてまず連れて行ったのは渋谷のスクランブルから少し歩いた交差点だった。けど、そこはセリエに却下された。
もっと開けたところがいい、らしい。
十字路もそれなりに開けているとおもうけど、それでもダメとは。いったいどうゆう能力なんだ?
結局、宮益坂上まで上ったところでようやくOKが出た。
「じゃあまずは武器を出してみて?」
「うん。わかった。
いくよ!発現!」
唱えると、ユーカの後ろに5メートル近い火柱が吹き上がった。
あっけにとられてみていると炎が渦巻きながら長細い形を取る。
炎が薄れて宙に浮いていたのは、波打った刀身を持つ巨大な剣だった。時折刀身から火のようなものが噴き出す。
フランベルジュっていうんだっけ、これ。どっかのゲームでみたな。
身長より長い剣を構える女の子、というのは相当にシュールな絵だ。
そもそもこんなのどうやって振り回すんだ、と思ったけど。よく考えればスロット能力で発現させた武器はあまり重さは感じない。
僕の銃剣も普通に鉄製ならかなりの重量になるはずで、鍛えてない僕が振り回すのは無理なはずだけど、自分で使う分には適度な重さだ。
「なら、どのくらい強いか試してみよう。ユーカ、一回僕を攻撃してみて」
「うん!」
ユーカがフランベルジュを後ろに引くようにして構える。
「あの、ご主人様、それは……」
「何?」
「いえ、あの……お気を付けください」
セリエが真顔だ。うーん。
多分結構強いんだろう、というのはわかった。気を取り直して僕も銃剣を構える。
まあそれでも子供だし、僕のスピードなら避けるくらいは問題ないだろう。
「いくよ、お兄ちゃん!」
「いつでも来な」
「えいっ!」
ユーカが全身を使うような動きで長大なフランベルジュを振りまわす。赤い火の粉が散った。
その切っ先が……速かった。ヤバい。予想より速い。普段の敵の攻撃が1/4倍速感覚だとしたら、1/2倍速の感じだ。
回避動作が遅れた。避けられない。
炎を吹きながら迫るフランベルジュを銃身で受け止める。
強烈な衝撃と金属音が響き、軽々と体が後ろに吹き飛ばされた。体が硬いコンクリ路面に落ちて息が詰まる。
勢いのまま転がってそのまま角のカフェのガラスに突っ込みそうになったところで止まった。
デュラハンの大剣なみとはいわんけどかなりの威力だ。コンクリで擦った体のあちこちが痛む。
「痛ぇ……」
「ご主人様、避けて!」
セリエの声にあわてて顔をあげる。目の前には真っ赤な炎の塊が迫っていた。
「うわっ」
痛む体に鞭打ってかろうじて横に飛びのく。炎が僕がいた場所にぶち当たり爆発した。炎が吹き上がって熱風が吹き付けてくる。
何なんだこれは。恐ろしすぎる。
「大丈夫?お兄ちゃん?」
「ご無事ですか?ご主人様」
「ああ、大丈夫」
固まっていたら、駆け寄ってきたセリエが手を貸してくれた。その手を取って立ち上がる。
ユーカはなんかほめてほしいような、ちょっと自慢げな顔をしている。
「あの炎はなんなの?」
「ええとですね、お嬢様のスロットは攻防と特殊に偏った前衛タイプです。魔法はお使いになれません」
今まで何人かの探索者の武器を見たけど、あんな派手な攻撃は見たことがない。
「ご覧になればお分かりかもしれませんが、お嬢様の武器には火の属性がついています。
それに加えて、特殊スロットに精霊の追撃をセットしておりまして。あの炎はその能力によるものです」
言われてみると、新宿の地下で攻防スロットをセットしたとき、エレメントとかいうのもあった気がする。
僕の銃剣には結局つけなかったけど、こんな見栄えのする攻撃ができるんならつけておけばよかったかな。
「奴隷であったときに隠していたのは火力が高くて前衛で戦わされるのを避けるためです。
といいますのは、お嬢様はスロットの力は強いのですが……戦い方とかをお分かりではないので。
……ご主人様と同じですね」
隠す理由はもっともだ。ただ、一言多い。
「どう、お兄ちゃん。あたしも強いでしょ。お兄ちゃんと一緒に行っていいよね」
「ダメっていったら?」
「絶対にヤダ!!」
頬を膨らまして僕を睨みつけてくる。
これはダメと言っても引き下がってくれる感じではないか。
というか、断るなら最初からノーというべきだったわけで、今更ダメといっても聞きはしないだろう。
ただ、強いというか火力は高そうだし、これなら二人で前衛はできなくはなさそうである。
不安は感じるけど、僕だって探索者としては駆け出しだし、人のことを言っていられる立場じゃないか。
「しゃあない。セリエ。いいね?」
「私としては……ご主人様とお嬢様に従います」
こうして一応前衛二人の編成にはなった。
あとはギルドで封緘の能力持ちの探索者を斡旋してもらうか。
◆
スタバビルの探索者ギルドで依頼を受けることを告げると、すぐに封緘の能力持ちの探索者を紹介してもらえた。
フェイリンさんが紹介してくれたのは、前の原宿のゲート封印の時の学者風の男性とは全然違ってた。
「よろしくね、スミト君。噂は聞いてるわ」
「こちらは探索者のオルミナ・エステファニアさんですぅ」
紹介されたのは、女性だった。飛び切り美人の。
「前の人とはずいぶん違いますね」
「あの方は今は別の仕事をしてましてぇ。
オルミナさんはフリーの探索者さんで、封緘を使えるので今回はお願いしましたぁ」
改めてオルミナさんをを見る。
青みがかって輝く腰位まである長い銀髪、切れ長の青い瞳。たぶん薄く化粧しているっぽい。口紅を引いたであろう唇が鮮やかに赤い。
銀髪からはとがった耳が飛び出している。ハーフエルフか、エルフだろうか。
見た目は20代後半、という感じだけど、エルフだったら実年齢はわからない。
身長は僕と同じくらいか、ちょっと高いくらいだ。
目をひくのはその胸。月並みな表現だけど、まさにスイカかなにかのような巨乳だ。そして細い腰。
体のラインが出た黒っぽい革の鎧に身を包んでいるが、これが黒のタイトなドレスにしか見えない。
バランスが取れた感じのセリエと違ってまさにセクシー&グラマー。
なんというかミラノコレクションのスーパーモデルとか、アメリカのチアリーダーとかがいきなり目の前に現れました、という感じだ。
エルフって映画とかではすらりとした細身というイメージなんだけど、ガルフブルグのエルフはそうじゃないのだろうか。
なんというか、ぽかーんと見とれてしまう。
「ご主人様、私たち以外の人をそんな目で見るのはやめてください!」
「ああ、ごめん。オルミナさん、失礼しました」
「遠慮なく見ていいのに。減るもんじゃないんだしね」
セリエに怒られて、慌てて目をそらす。
確かにガン見するのも失礼だ。
「かわいい子を二人もつれてるのね。
これならお姉さんが夜のお相手はしなくてもいいかしら?」
オルミナさんが妖艶としか言いようのない笑みを浮かべる。
正直言って、一瞬くらっと来た。
「余計なお気遣いです!!」
「そうだよ、お兄ちゃんにはセリエがいるんだから!」
「ん?今なんて?」
「お兄ちゃんにはセリエがいるって」
「そりゃどういう意味?」
と、聞いてから、しまった、と思った……がもう遅かった。
「うん。だって、セリエ、夜に時々お兄ちゃんのお部屋に行ってるでしょ。知ってるよ」
ばれてた……まあそれはバレてても仕方ない。
が、3人だけでいるときはいいけど、その話は此処ではやめてほしい。
「あのね、ユーカ……」
「お兄ちゃん、知ってる?
セリエ、部屋に帰ってきたとき、凄くうれしそうなんだよ」
自分から振っておいてなんだけど、なんか要らない方向に話が流れつつある。
セリエが顔を真っ赤にしてうつむいている。
「セリエはずっとあたしのために辛い顔してた。
だからセリエが幸せそうなの、凄くうれしいの。だからほかの女の人をそんな目で見ないで!」
それはうれしいけど、今はそれ以上言うのはやめて。
「あ……でもお兄ちゃん、いつかあたしにもちゅってしてね」
……全部見られてたか。ああああああ。もう。
フェイリンさんがこちらを面白そうな顔で見てる。なんだ、この羞恥プレイは。
セリエは向こうを向いてしまい、ユーカはがなんだか分からない、という顔で僕を見ている。
まあ悪気はないんだろう、勿論。
「面白い子たちね。楽しみになってきたわ。
スミト、夜のことは置いておいて、あらためてよろしくね。
出発は明日でいいかしら?」
「……ええ、よろしくお願いします」
意味ありげな笑みを浮かべてオルミナさんが手を差し出してきたのでその手を握り、早々にギルドから退散した。
◆
ギルドから逃げ帰り宿に戻ったその夜。
「ご主人様……よろしいでしょうか」
今日は来るだろうな、と思ってまだ寝ていなかったが案の定。
セリエが僕の部屋に来た。そこまでは予測済みだったけど、一緒にユーカがいたのはちょっと予想外だった。
「一緒に寝かせてね、お兄ちゃん」
ユーカが僕の前の方に、セリエが僕の背中の方にそれぞれ潜り込んでくる。
ユーカとセリエに挟まれて、ああ、これぞまさにハーレム状態。
「あのね、お兄ちゃん……」
「どうかした?」
ユーカが僕を見つめて、意を決したように口を開いた。
「今日はあたしにもちゅってしてほしいの」
そうきたか。なんとなく予想できた流れではあるけど。
「セリエ、いいの?」
ユーカは見た目は12~13才。
この年の子にキスなんてした日には、日本じゃ逮捕案件になりかねない。
「お嬢様のお望みですから」
止めてほしかったような気もするし、止めてほしくなかった気もする、何とも微妙な感じだけど。あっさりとOKが出た。
「そっか、じゃあこっちおいで」
ユーカが布団の中でこちらによってくる。
間近に迫られると、なんかすごく後ろめたいというかヤバいことをしている気分になる。でも、ここでやっぱり拒否るのもそれはそれでマズイ感じだ。
「初めてだからお兄ちゃんにしてほしいの」
これだけ可愛いのにキスも初めてとは。
奴隷の時によく何もされなかったもんだ。というかセリエが守り通したんだろう。
肩を抱きよせると、ぴったり体を寄せてきた。体温が感じられてちょっとこっちもドキドキする。
「うれしいよ、お兄ちゃん……お願いします」
ユーカが目をつむる。その唇に軽くキスした。
さすがにファーストキスの相手にセリエみたいなキスはちょっと出来かねる。
すぐに唇を離した僕を、ユーカが息がかかりそうなほど近い距離で睨んでくる。
「……今の……ちゅって感じでしょ。
そうじゃなくて、セリエにするみたいにして。セリエにだけなんてずるいよ」
セリエにするみたいにっていってもなぁ……さすがにちょっと気がひけるんだけど。
「ほんとにいいの?」
僕の言葉にユーカが小さくうなづく。
これは役得といっていいのだろうか。
「……あのね、お兄ちゃん、ぎゅってして。あたしが怖くなっても逃げられないように」
いわれるままにちょっと強めに抱き寄せると、ユーカが緊張した面持ちでもう一度目を閉じる
薄明かりでも輝くような金髪と小さな桜色の唇がかわいい。いつもほんのり赤い頬がますます赤く染まっている。
唇を近づけると、ため息が顔にかかる。そのまま唇を重ねた。
キスすると、ユーカの舌が僕の口におずおずと入ってくる。舌を触れさせると驚いたように体が強張るのが分かった。
怖がらせないようにできるだけゆっくりと舌を触れ合わせる。
「……んっ」
口元からあえぐような声が漏れて首に回された手に力がこもる。
長いキスをして、しばらくしてどちらからともなく唇を離した。ユーカが大きく深呼吸する。
「……セリエはずるいね」
「なにが?」
「お兄ちゃんにいつもこんなことしてもらってたんだね」
「いつもじゃないけどね」
「……セリエが幸せそうにしてる気持ちがわかったよ。
唇から伝わってくるの。お兄ちゃんがあたしのこと、大事に思ってくれてるって……」
そういうもんかはよくわからないけど、幸せそうなのを見てると僕も嬉しい
「あの、ご主人様、私にも……」
うしろからシャツを引っ張られた。
振り向くとセリエが不満げな顔で僕を見ている。
寝返りを打ってセリエを抱き寄せようとしたら、ユーカに頬をむぎゅっとはさまれてユーカの方を向かされた。
「ダメ!」
「え?」
「セリエは今日はダメ。今日だけはお兄ちゃんは私のものにして。
なんどもキスしてもらってたんでしょ」
「えっ、そんな、お嬢様……」
セリエがすがるような目で僕を見る。
……前にはブロンドのロリ少女、後ろには犬耳メイド。二人に囲まれて両手の花のハーレム状態、と思っていたけど。
「お兄ちゃん……」
「……ご主人様」
ハーレムっていうよりどっちかというとこれは、板挟み、というんじゃなかろうか。
さてどっちの肩を持つのが角が立たないのか……と思ったけど、どっちにしても角は立つか。
「今日は……まあ諦めて」
今日はセリエに我慢してもらうことにした。というかそうするしかないよな。
「……そんな……ひどいです」
不満げなセリエに、目で、仕方ないでしょ、と訴えてみる。
セリエが恨みがまし気な目で僕を見つめると、首筋にかるく噛みついてきた。いいたいことは分かるけど、僕に当たらないでほしい。僕のせいじゃないと思う、多分。
「あの……ご主人様、じゃあせめて指を」
「指?」
セリエが僕の手を取ると、かぷっと指を唇に含んだ。人差し指と中指があったかい感触に包まれる。
やわらかい舌が指に絡みついてきた。
「シンジュクから帰ったら今日の分までいっぱいいっぱい口づけしてくださいね」
不満げな上目遣いでセリエが僕を見る
「お兄ちゃん、今日だけはあたしの方むいててくれなきゃやだよ。
もう一度、ぎゅってして」
ユーカが首筋に手を回してくる。もう一度キスされた。
どっちかというと受け身なセリエと違ってユーカの方が何か積極的だ。背中に片手を回して抱き寄せてあげると満足げにしがみついてくる。
結局、その日はユーカは僕に抱き着いたまま寝てしまい、セリエには片手を抱えられたままで、今一つ寝ることができなかった。
明日新宿へ行くってのに、こんなことでいいのだろうか。
「僕は御茶ノ水勤務のサラリーマン。新宿で転職の話をしたら、渋谷で探索者をすることになった。(書籍版・普通のリーマン、異世界渋谷でジョブチェンジ)」を読んでいる人はこの作品も読んでいます
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