高校二年生、魔討士乙類7位、風使い。令和の街角に現れるダンジョンに挑む~例えば夕刻の竹下通りにダンジョンが現れる。そんな日常について~
現れた敵・下
三階から足音が聞こえてきて、何人かの生徒が階段を下りて行った。
その後ろから大剣をもった三田ケ谷とヴーリを従えたルーファさんが姿を見せる。
「おお、片岡!」
「無事だった?三階は?」
三田ケ谷もルーファさんもあちこちに小さな傷はあるけど、大丈夫なようだ。
「もう誰もいねえよ。こっちはどうだ?」
「片付いた。大丈夫だ」
片付けたのは僕ではないんだけど。
アプリのマップを見る限り2階にはもう敵はいない。3階も問題なさそうだな。
一階の光点もだいぶ減っている。イズクラさん達が頑張ってくれているらしい。
時折何か重いものがぶつかる音と振動が伝わってくる。
「ところで……こちらはどちら様だ?」
三田ケ谷がシューフェンたちを横目で見つつ聞いてくる。
八王子ダンジョンの向こうにある世界を事を知っているから三田ケ谷への説明はまだやりやすいけど。
「あの獣耳、本物か?コスプレじゃないよな」
「まあその辺は後で。コスプレではない。あと、少なくとも敵じゃない、多分」
味方とも言い難いんだけど、まあ今はいいか。
下ではエルマルとそのお父さんが戦っていると知ったらさぞかし驚くだろうな。
シューフェンが値踏みするように三田ケ谷を見て、その後ろに寄り添うルーファさんに目をやった。
仮面のような顔に驚いたような表情が浮かぶ。
ルーファさんの顔色も変わった。構えるように半歩下がる。
「そこの娘……奇妙な格好だが……北夷の部族の戦士か」
「ソルヴェリアの白狼衙?……なぜここに?」
「……それはむしろこちらの聞くことだ。北夷共、お前らもこやつらと同盟を画策しているのなら止めておけ。無為だ」
ルーファさんがキツイ目でシューフェンを睨んで、シューフェンが見下すように視線を返す。
お互いに直接面識は無くても勢力という意味では知っていても不思議じゃない。というか当然だろう。
あまり友好的な関係ではなさそうだな。どうもダンジョンの向こうの世界はあまり平和ではないらしい。
「片岡君、不味いぞ。校庭にまた虫が現れた」
檜村さんが声をかけてくる。
こんな事している場合じゃなかった。光点が大量に増えている。どれだけいるんだ。
でも校庭の方ではすでに何人かほかの魔討士らしき人が戦い始めている。
斎会君たちの姿も見えた。
さっき戦った感じ、単体ではさほど手ごわい相手じゃない。でも数が多い。
赤く光るダンジョンの地面から次々と虫のような魔獣が湧くように立ち上がって魔討士たちに殺到する。
篠生さんのものらしき魔法が飛んで群れがわずかに下がるけど、波のように押してくる。
「押されてる……ヤベぇぞ」
三田ケ谷が言った時、校門からエンジン音を響かせてジープが一台飛び込んできた
◆
二人の人がジープから飛び降りるのが見えた。
後ろの人が手を掲げると、空中から矢のような細いものが降って虫を刺し貫いていく。魔法か。
文字通り雨の様に矢が降り注いで、前にいた蜘蛛のような虫に突き刺さった。
新手が突進してくるけどお構いなしだ。矢の数が桁外れに多い。まったく途切れる気配がない
瞬く間に蜘蛛の死体の山が積み重なって、それが次々とライフコアに変わっていった。
「打っ倒しちゃるぜ!」
虫たちがひるんで体勢が崩れたところに、掛け声とともにもう一人が切りこんだ。
長い棒で虫たちが次々と潰されていく。
一振りごとに虫の体の破片と体液が飛んで、まるで海が割れるかのように虫たちの群れに裂け目が入っていった。
「おんしら!運がいいぞ!あたしらが近くにいたんじゃからのう!」
よく通る強い声と独特の方言が聞こえる。
……聞き覚えがある声だと思ったけど。あれは確か風鞍さんだ。
ということは、後ろの人はあの人の相棒の魔法使いさんか。まさか2位コンビが来てくれるとは思わなかった。
「ほれ!全員、気張りんさい!評価の稼ぎ時ぞ!あたしらの力を見せる時じゃ!叩き潰しちゃろうや!」
風鞍さんが号令をかけて皆が武器を掲げて応じた。
風鞍さんの後ろを追うように、校庭に集まった魔討士達が虫たちの群れに切り込んでいく。
絵麻と朱音はあそこにいるんだろうか。無茶してなければいいんだけど。
「あれは女か……なかなかに勇ましい。カタオカ、お前の国はなかなか興味深い国のようだ」
シューフェンが小さくつぶやく。
ただ、光点がまた一階と校庭で増えた。きりがない。
これが野良ダンジョンだとしたら、ダンジョンマスターを倒さないと終わらないぞ。
普段の野良ダンジョンなら出てきてもいいはずなんだけど……それとももうどこかにいるのか。
マップを広げようとスマホに触れたその時、耳を劈くような甲高い警告音が鳴った。
◆
[第一種警告!第一種警告!]
シューフェンとレイフォンが顔をしかめて耳を畳むように伏せた。
「耳障りだ。なんだそれは」
音量を下げる。初めて聞いた警告だ。
[……を禁止します。速やかに退避してください。6位以上の魔討士も単独での接敵は避け、交戦する際は自衛を最優先としてください!繰り返します……]
三田ケ谷が警告を見て顔色を変えた。
見たことのない警告メッセージがスマホに流れる。マップの中庭に大きな光点が現れた。
窓から中庭を見下す。
赤い岩肌のような地面から一体の蜘蛛が立ち上がった。一階で戦ったのより一回り大きな蜘蛛。
ただ、さっきのとは明らかに違っていた。
上半身が人間のように見える。そいつが足を踏み鳴らして周りを見回した。
そいつがこちらを見上げた。遠目だけど、タトゥのような黒い隈取りが入った顔だ。
この表現が正しいか分からないけど、見た目は女性っぽい。
目が合ってそいつが笑うように大きく裂けた口をゆがませる。
一瞬で体温が下がった。鳥肌が立つ。
あの銀座で戦った奴は強烈な圧迫感を伝えてきたけど……こいつは違う。冷凍庫に放り込まれたような寒気。
[きわめて強力な個体の接近を確認しました。7位以下の交戦を禁止します。速やかに退避してください。6位以上の魔討士も……]
アプリが繰り返し警告を発し続けていた。
あれがダンジョンマスターか
その後ろから大剣をもった三田ケ谷とヴーリを従えたルーファさんが姿を見せる。
「おお、片岡!」
「無事だった?三階は?」
三田ケ谷もルーファさんもあちこちに小さな傷はあるけど、大丈夫なようだ。
「もう誰もいねえよ。こっちはどうだ?」
「片付いた。大丈夫だ」
片付けたのは僕ではないんだけど。
アプリのマップを見る限り2階にはもう敵はいない。3階も問題なさそうだな。
一階の光点もだいぶ減っている。イズクラさん達が頑張ってくれているらしい。
時折何か重いものがぶつかる音と振動が伝わってくる。
「ところで……こちらはどちら様だ?」
三田ケ谷がシューフェンたちを横目で見つつ聞いてくる。
八王子ダンジョンの向こうにある世界を事を知っているから三田ケ谷への説明はまだやりやすいけど。
「あの獣耳、本物か?コスプレじゃないよな」
「まあその辺は後で。コスプレではない。あと、少なくとも敵じゃない、多分」
味方とも言い難いんだけど、まあ今はいいか。
下ではエルマルとそのお父さんが戦っていると知ったらさぞかし驚くだろうな。
シューフェンが値踏みするように三田ケ谷を見て、その後ろに寄り添うルーファさんに目をやった。
仮面のような顔に驚いたような表情が浮かぶ。
ルーファさんの顔色も変わった。構えるように半歩下がる。
「そこの娘……奇妙な格好だが……北夷の部族の戦士か」
「ソルヴェリアの白狼衙?……なぜここに?」
「……それはむしろこちらの聞くことだ。北夷共、お前らもこやつらと同盟を画策しているのなら止めておけ。無為だ」
ルーファさんがキツイ目でシューフェンを睨んで、シューフェンが見下すように視線を返す。
お互いに直接面識は無くても勢力という意味では知っていても不思議じゃない。というか当然だろう。
あまり友好的な関係ではなさそうだな。どうもダンジョンの向こうの世界はあまり平和ではないらしい。
「片岡君、不味いぞ。校庭にまた虫が現れた」
檜村さんが声をかけてくる。
こんな事している場合じゃなかった。光点が大量に増えている。どれだけいるんだ。
でも校庭の方ではすでに何人かほかの魔討士らしき人が戦い始めている。
斎会君たちの姿も見えた。
さっき戦った感じ、単体ではさほど手ごわい相手じゃない。でも数が多い。
赤く光るダンジョンの地面から次々と虫のような魔獣が湧くように立ち上がって魔討士たちに殺到する。
篠生さんのものらしき魔法が飛んで群れがわずかに下がるけど、波のように押してくる。
「押されてる……ヤベぇぞ」
三田ケ谷が言った時、校門からエンジン音を響かせてジープが一台飛び込んできた
◆
二人の人がジープから飛び降りるのが見えた。
後ろの人が手を掲げると、空中から矢のような細いものが降って虫を刺し貫いていく。魔法か。
文字通り雨の様に矢が降り注いで、前にいた蜘蛛のような虫に突き刺さった。
新手が突進してくるけどお構いなしだ。矢の数が桁外れに多い。まったく途切れる気配がない
瞬く間に蜘蛛の死体の山が積み重なって、それが次々とライフコアに変わっていった。
「打っ倒しちゃるぜ!」
虫たちがひるんで体勢が崩れたところに、掛け声とともにもう一人が切りこんだ。
長い棒で虫たちが次々と潰されていく。
一振りごとに虫の体の破片と体液が飛んで、まるで海が割れるかのように虫たちの群れに裂け目が入っていった。
「おんしら!運がいいぞ!あたしらが近くにいたんじゃからのう!」
よく通る強い声と独特の方言が聞こえる。
……聞き覚えがある声だと思ったけど。あれは確か風鞍さんだ。
ということは、後ろの人はあの人の相棒の魔法使いさんか。まさか2位コンビが来てくれるとは思わなかった。
「ほれ!全員、気張りんさい!評価の稼ぎ時ぞ!あたしらの力を見せる時じゃ!叩き潰しちゃろうや!」
風鞍さんが号令をかけて皆が武器を掲げて応じた。
風鞍さんの後ろを追うように、校庭に集まった魔討士達が虫たちの群れに切り込んでいく。
絵麻と朱音はあそこにいるんだろうか。無茶してなければいいんだけど。
「あれは女か……なかなかに勇ましい。カタオカ、お前の国はなかなか興味深い国のようだ」
シューフェンが小さくつぶやく。
ただ、光点がまた一階と校庭で増えた。きりがない。
これが野良ダンジョンだとしたら、ダンジョンマスターを倒さないと終わらないぞ。
普段の野良ダンジョンなら出てきてもいいはずなんだけど……それとももうどこかにいるのか。
マップを広げようとスマホに触れたその時、耳を劈くような甲高い警告音が鳴った。
◆
[第一種警告!第一種警告!]
シューフェンとレイフォンが顔をしかめて耳を畳むように伏せた。
「耳障りだ。なんだそれは」
音量を下げる。初めて聞いた警告だ。
[……を禁止します。速やかに退避してください。6位以上の魔討士も単独での接敵は避け、交戦する際は自衛を最優先としてください!繰り返します……]
三田ケ谷が警告を見て顔色を変えた。
見たことのない警告メッセージがスマホに流れる。マップの中庭に大きな光点が現れた。
窓から中庭を見下す。
赤い岩肌のような地面から一体の蜘蛛が立ち上がった。一階で戦ったのより一回り大きな蜘蛛。
ただ、さっきのとは明らかに違っていた。
上半身が人間のように見える。そいつが足を踏み鳴らして周りを見回した。
そいつがこちらを見上げた。遠目だけど、タトゥのような黒い隈取りが入った顔だ。
この表現が正しいか分からないけど、見た目は女性っぽい。
目が合ってそいつが笑うように大きく裂けた口をゆがませる。
一瞬で体温が下がった。鳥肌が立つ。
あの銀座で戦った奴は強烈な圧迫感を伝えてきたけど……こいつは違う。冷凍庫に放り込まれたような寒気。
[きわめて強力な個体の接近を確認しました。7位以下の交戦を禁止します。速やかに退避してください。6位以上の魔討士も……]
アプリが繰り返し警告を発し続けていた。
あれがダンジョンマスターか
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