風使い練成術師、防御重視は時代遅れとパーティ追放(10か月ぶり9度目)される~路頭に迷いかけたけど、最強火力をもつ魔女にスカウトされた。守備が崩壊したと言われてももう遅い。今は最高の相棒がいるので~
討伐一戦目の顛末・下
アグアリオ団長が冷たい目でノルベルトを一瞥する。
「いえいえ、そんなこと御座いません、団長殿」
ノルベルトが姿勢を正して答えた。
アグアリオ団長の後ろには師団の騎士や魔法使いたちが続いている。
暫く待っているとアリオス達も合流してきた。
人数が欠けているなんてことは無い。
どうやら誰も犠牲は出ていないらしいが、みんな疲れ切ったって顔をしていた。
アレを相手にしていたなら仕方ないな。
「よくやった。さすがだな」
アグアリオ団長が表情を変えないままでねぎらいの言葉をくれる。
「いえ」
「どんな相手だったか、あとでルーヴェンに報告しろ。あと、ライフコアは可能な限り回収せよ、とのことだ。研究に使うそうだ」
アグアリオ団長が言う。
魔族の残したライフコアを拾い上げた。
こいつの能力は正確には何だったのか分からんが、トロールやオーグルを強化する能力だったんだろか
ヴェパルはスケルトンを従える能力を持っていたらしいが、トロールとかの方がデカい分だけ脅威としては厄介だ。
「しかし、これでも火力不足だな。対策を考えねばならんが……まあいい。全員帰投する」
アグアリオ団長が言って、皆が町に向けて歩き出した。
◆
「おい」
森の中を皆と歩いている所で、横からテレーザが声をかけて来た。
「なんだ?」
「何か忘れていないか、ライエル」
「何がだ?」
「私には何もないのか?」
テレーザがじろりと俺を見上げる。
「ああ……そうだな。さすがの威力だったよ。あの魔法はあんなふうになるんだな」
ヴェパルはあの霧で炎を散らしてしまったが、決まるとあんなふうに魔族を一瞬で焼き尽くせるらしい。
魔族を一撃で仕留められる魔法を持っているのはやはり頼れる。
相手が魔族にせよ魔獣にせよ、戦いは長引けば基本的には人間にとって不利だ。
根本的に肉体的な耐久力や攻撃力が違いすぎる。
魔獣と違って人間は傷を負えば動きが鈍るしあまりにも脆い。
魔獣の一撃で圧倒的優位がひっくり返るなんてことは珍しくもない。
人間の強みは知恵があって力押しだけではなく知恵を働かせて戦えることだ。
それがあるからこそ、連携し自分より力のある魔獣に対峙できる。
だが。一方で知性があるからこそ、傷を負ったり敵に圧倒されて恐怖心に囚われてしまうこともある。
いずれにせよ倒せるときに、速やかに倒す、は討伐の基礎だ。
「ふむ……そうだな」
テレーザが俯いた。
なんとなくまだ不満そうな雰囲気が伝わってくる。まだ何か言えってことだろうな。
歩きながら、さっきの戦いのことを思い出す。
「ああ……あと、すぐに詠唱に入ったのは良かったぞ」
魔法解除の後に、状況を把握して即座に次の魔法の詠唱に入ったのは良い判断だった。
詠唱が長いという欠点は簡単に解消できないが、少しでも早く詠唱を始めれば、その分早く魔法が発動させられる。
これは恩恵の強さとは関係ない。
強い能力をうまく使いこなすのか、それとも宝の持ち腐れにするのか、それは本人の経験と使い方次第だ。
「うむ、流石だな。よく見ていてくれた」
テレーザの顔に一瞬嬉しそうな笑みが浮かんでまた澄ました顔に戻った。
「私も成長しているのだぞ」
「ああ、その調子で頼むぜ」
「いえいえ、そんなこと御座いません、団長殿」
ノルベルトが姿勢を正して答えた。
アグアリオ団長の後ろには師団の騎士や魔法使いたちが続いている。
暫く待っているとアリオス達も合流してきた。
人数が欠けているなんてことは無い。
どうやら誰も犠牲は出ていないらしいが、みんな疲れ切ったって顔をしていた。
アレを相手にしていたなら仕方ないな。
「よくやった。さすがだな」
アグアリオ団長が表情を変えないままでねぎらいの言葉をくれる。
「いえ」
「どんな相手だったか、あとでルーヴェンに報告しろ。あと、ライフコアは可能な限り回収せよ、とのことだ。研究に使うそうだ」
アグアリオ団長が言う。
魔族の残したライフコアを拾い上げた。
こいつの能力は正確には何だったのか分からんが、トロールやオーグルを強化する能力だったんだろか
ヴェパルはスケルトンを従える能力を持っていたらしいが、トロールとかの方がデカい分だけ脅威としては厄介だ。
「しかし、これでも火力不足だな。対策を考えねばならんが……まあいい。全員帰投する」
アグアリオ団長が言って、皆が町に向けて歩き出した。
◆
「おい」
森の中を皆と歩いている所で、横からテレーザが声をかけて来た。
「なんだ?」
「何か忘れていないか、ライエル」
「何がだ?」
「私には何もないのか?」
テレーザがじろりと俺を見上げる。
「ああ……そうだな。さすがの威力だったよ。あの魔法はあんなふうになるんだな」
ヴェパルはあの霧で炎を散らしてしまったが、決まるとあんなふうに魔族を一瞬で焼き尽くせるらしい。
魔族を一撃で仕留められる魔法を持っているのはやはり頼れる。
相手が魔族にせよ魔獣にせよ、戦いは長引けば基本的には人間にとって不利だ。
根本的に肉体的な耐久力や攻撃力が違いすぎる。
魔獣と違って人間は傷を負えば動きが鈍るしあまりにも脆い。
魔獣の一撃で圧倒的優位がひっくり返るなんてことは珍しくもない。
人間の強みは知恵があって力押しだけではなく知恵を働かせて戦えることだ。
それがあるからこそ、連携し自分より力のある魔獣に対峙できる。
だが。一方で知性があるからこそ、傷を負ったり敵に圧倒されて恐怖心に囚われてしまうこともある。
いずれにせよ倒せるときに、速やかに倒す、は討伐の基礎だ。
「ふむ……そうだな」
テレーザが俯いた。
なんとなくまだ不満そうな雰囲気が伝わってくる。まだ何か言えってことだろうな。
歩きながら、さっきの戦いのことを思い出す。
「ああ……あと、すぐに詠唱に入ったのは良かったぞ」
魔法解除の後に、状況を把握して即座に次の魔法の詠唱に入ったのは良い判断だった。
詠唱が長いという欠点は簡単に解消できないが、少しでも早く詠唱を始めれば、その分早く魔法が発動させられる。
これは恩恵の強さとは関係ない。
強い能力をうまく使いこなすのか、それとも宝の持ち腐れにするのか、それは本人の経験と使い方次第だ。
「うむ、流石だな。よく見ていてくれた」
テレーザの顔に一瞬嬉しそうな笑みが浮かんでまた澄ました顔に戻った。
「私も成長しているのだぞ」
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