風使い練成術師、防御重視は時代遅れとパーティ追放(10か月ぶり9度目)される~路頭に迷いかけたけど、最強火力をもつ魔女にスカウトされた。守備が崩壊したと言われてももう遅い。今は最高の相棒がいるので~
知らない駅での待ち合わせ・上
テレーザが帰ってから数日後。
「お嬢さんから手紙が来てるぞ」
剣の稽古をして風の行方亭に帰ったら、手紙が届いていた。
白い封筒に赤い蝋で紋章らしきものが押された、如何にも正式な文書って感じの手紙だ。
封を切ってみると、中にはこれまた真っ白な紙に優雅な文字が書きつけられた手紙と、折りたたまれた紙が入っていた。
手紙は、一度こちらに来い、王都を案内してやる、オードリーとメイの新居も見せよう、と言う簡潔な内容だ。
紙は王都ヴァルメーロへの街道汽車の切符らしい。日付が記入されていた。
「行くのか?」
「……まあな」
行ってしまえばあいつの護衛になるルートから逃げられない気がするから何とも言えないが。
ただ、あの言葉を思い出すと、俺は気楽な生活がいいから、と言って無碍にするのも悪い気もする。
そしてオードリーとメイに言及しているあたり……なんというか断りづらい。
分かってやっているならなかなかの策士だ。
◆
街道汽車はここ数年で整備されたもので、都市間を結ぶ大型の路面汽車のようなものだ。
乗るのは初めてだが。
ただ、路面汽車はよく乗るが、街道汽車は飛び乗りや飛び降りができる路面汽車とは違って決まった時間に発車する。
到着は毎時間の時報がの鐘が鳴るころらしい。そしてその日のうちには着く。
かなり昔王都に行ったことが有るが、それ以来だから軽く5年ぶりくらいだろうか。
しかもその時は乗合馬車で二日ほどかけていったはずだ。
それが半日程度で着くんだから速くなったもんだな。
切符に書かれた日付の日。簡単な旅支度を整えてアルフェリズ中央駅に行った。
路面汽車の小さな箱のような車体とは比べ物にならない、がっしりした木組みに鉄の枠をはめた巨大な車体が並んでいた。
先頭にはライフコアの粉を満載した機関牽引車が付いている、
煙突のような筒からはライフコアを魔力に変換したときに出る煙が薄く立ち上っていた。
あらゆる点で路面汽車とは桁が違うな。
「これで乗れるかい?」
汽車の近くにいた黒い制服に身を包んだ駅員に声を掛ける
「……一等客室」
切符を見せると、驚いたような顔で駅員が俺を見た。
切符は確かに上質の紙に綺麗な紋章入りで立派だった。そこらにいる冒険者には似つかわしくないかもしれない
「切符は次の分ですが……」
そう言って駅員がちらりと車内を見た。
「乗って構いません。席は空いています」
「ありがとう」
速く着けるならそれに越したことは無いな
それに次の鐘が鳴るまで待つのも面倒だ。
◆
「こちらをお使いください」
制服に身を固めた車掌が案内してくれた部屋は個室だった。
ちょっとした宿のような大きめソファとテーブル、棚が備え付けられている。
緑色の布が貼られたソファは柔らかい。
大きめの窓には透明なガラスが嵌められて窓枠も凝った彫刻が施されている。
客車の客はまばらなようだが、通路を行きかう人はいかにも身なりがいい商人や貴族風の奴ばかりで、どうも俺は居心地が悪い。
「ランチは部屋までお運びします。ごゆっくりおくつろぎください」
車掌がそう言って、一礼して出て行った。
食事つきとは。風の行方亭より豪華だな
ちなみに、昼ご飯は重たげな器に入った肉とトマトのシチューにパンとサラダがセットで出てきた。
やはり風の行方亭より豪華だ。マスターには悪いが。
◆
街道汽車は路面汽車よりはるかに早いスピードで走る。
一定のリズムで下から突き上げるような感覚があるが、それでも街道を行く馬車よりは快適だ。
麦畑や牧場が馬が全力で掛けるときのように後ろにすっ飛んでいく
貴族。騎士。
それになることを考えたこともなかった……と言えばうそになる。
魔獣の討伐で名をあげて立身出世というのは冒険者ならだれでも夢見るストーリーだ。
練成術師の立場が悪くなってそんな夢も見なくなったが。
王都の暮らしがどんなものか……ずっとアルフェリズに居た身としては想像もつかない。
ただ、オードリーとメイのことを考えれば間違いなく良い話だ。
あの孤児院が悪いわけじゃない。シスターたちへの感謝は忘れていない。
でも、少しでも不自由なく暮らさせてやりたい。
それに、オードリーが本当に魔法使いを目指すならいい環境で訓練させてやりたい。
一般論だが、練成術師は汎用性が高いがゆえに、能力を使いこなすために実戦経験がものを言う。
前衛の剣士は訓練が大事だ。猛特訓で短期間に急成長する奴は珍しくない。
そして魔法使いに大事なのは継続的な教育だ。
自分の魔力の性質を知り適切に伸ばすためには、ある程度良い環境、というか指導者が必要なのだ。
それを考えればいい話なんだよな
◆
半日ほどでヴァルメーロ中央駅についた。
車掌がわざわざ先導してくれて、降りたところでちょうど時報の鐘が鳴る。
夕方まではまだ間がありそうな時間だ。
石畳で舗装された発着所は鉄でできた巨大なひさしで覆われていた。
バカでかい駅だ。
アルフェリズ駅も大きいと思っていたが、こっちは半端じゃないな。
鉄のひさしには天窓のように穴があけられていて、太陽の光が差し込んできている。
客がぞろぞろと出口に向かって歩いていった。
客が下りたからか、暫くして発着所から殆ど人影はなくなってしまった。
駅員が車両に乗り込んで何か作業したり、鉄の車輪を整備し始めている。
「さて、これからどうしたものか」
とりあえずテレーザの姿は見えない。
よく考えれば切符だけ送られてきたが、その後どうするかという話は書かれていなかった。
冒険者同士だと、風の行方亭のような酒場かギルドで合流と言うのが普通なんだが。
「まあ、待つしかないか」
こういう状況は初めてなんだが。
最悪でも宿代くらいは問題なくあるし、結構な名門の家らしいから家に行くくらいはできるかもな。
「お嬢さんから手紙が来てるぞ」
剣の稽古をして風の行方亭に帰ったら、手紙が届いていた。
白い封筒に赤い蝋で紋章らしきものが押された、如何にも正式な文書って感じの手紙だ。
封を切ってみると、中にはこれまた真っ白な紙に優雅な文字が書きつけられた手紙と、折りたたまれた紙が入っていた。
手紙は、一度こちらに来い、王都を案内してやる、オードリーとメイの新居も見せよう、と言う簡潔な内容だ。
紙は王都ヴァルメーロへの街道汽車の切符らしい。日付が記入されていた。
「行くのか?」
「……まあな」
行ってしまえばあいつの護衛になるルートから逃げられない気がするから何とも言えないが。
ただ、あの言葉を思い出すと、俺は気楽な生活がいいから、と言って無碍にするのも悪い気もする。
そしてオードリーとメイに言及しているあたり……なんというか断りづらい。
分かってやっているならなかなかの策士だ。
◆
街道汽車はここ数年で整備されたもので、都市間を結ぶ大型の路面汽車のようなものだ。
乗るのは初めてだが。
ただ、路面汽車はよく乗るが、街道汽車は飛び乗りや飛び降りができる路面汽車とは違って決まった時間に発車する。
到着は毎時間の時報がの鐘が鳴るころらしい。そしてその日のうちには着く。
かなり昔王都に行ったことが有るが、それ以来だから軽く5年ぶりくらいだろうか。
しかもその時は乗合馬車で二日ほどかけていったはずだ。
それが半日程度で着くんだから速くなったもんだな。
切符に書かれた日付の日。簡単な旅支度を整えてアルフェリズ中央駅に行った。
路面汽車の小さな箱のような車体とは比べ物にならない、がっしりした木組みに鉄の枠をはめた巨大な車体が並んでいた。
先頭にはライフコアの粉を満載した機関牽引車が付いている、
煙突のような筒からはライフコアを魔力に変換したときに出る煙が薄く立ち上っていた。
あらゆる点で路面汽車とは桁が違うな。
「これで乗れるかい?」
汽車の近くにいた黒い制服に身を包んだ駅員に声を掛ける
「……一等客室」
切符を見せると、驚いたような顔で駅員が俺を見た。
切符は確かに上質の紙に綺麗な紋章入りで立派だった。そこらにいる冒険者には似つかわしくないかもしれない
「切符は次の分ですが……」
そう言って駅員がちらりと車内を見た。
「乗って構いません。席は空いています」
「ありがとう」
速く着けるならそれに越したことは無いな
それに次の鐘が鳴るまで待つのも面倒だ。
◆
「こちらをお使いください」
制服に身を固めた車掌が案内してくれた部屋は個室だった。
ちょっとした宿のような大きめソファとテーブル、棚が備え付けられている。
緑色の布が貼られたソファは柔らかい。
大きめの窓には透明なガラスが嵌められて窓枠も凝った彫刻が施されている。
客車の客はまばらなようだが、通路を行きかう人はいかにも身なりがいい商人や貴族風の奴ばかりで、どうも俺は居心地が悪い。
「ランチは部屋までお運びします。ごゆっくりおくつろぎください」
車掌がそう言って、一礼して出て行った。
食事つきとは。風の行方亭より豪華だな
ちなみに、昼ご飯は重たげな器に入った肉とトマトのシチューにパンとサラダがセットで出てきた。
やはり風の行方亭より豪華だ。マスターには悪いが。
◆
街道汽車は路面汽車よりはるかに早いスピードで走る。
一定のリズムで下から突き上げるような感覚があるが、それでも街道を行く馬車よりは快適だ。
麦畑や牧場が馬が全力で掛けるときのように後ろにすっ飛んでいく
貴族。騎士。
それになることを考えたこともなかった……と言えばうそになる。
魔獣の討伐で名をあげて立身出世というのは冒険者ならだれでも夢見るストーリーだ。
練成術師の立場が悪くなってそんな夢も見なくなったが。
王都の暮らしがどんなものか……ずっとアルフェリズに居た身としては想像もつかない。
ただ、オードリーとメイのことを考えれば間違いなく良い話だ。
あの孤児院が悪いわけじゃない。シスターたちへの感謝は忘れていない。
でも、少しでも不自由なく暮らさせてやりたい。
それに、オードリーが本当に魔法使いを目指すならいい環境で訓練させてやりたい。
一般論だが、練成術師は汎用性が高いがゆえに、能力を使いこなすために実戦経験がものを言う。
前衛の剣士は訓練が大事だ。猛特訓で短期間に急成長する奴は珍しくない。
そして魔法使いに大事なのは継続的な教育だ。
自分の魔力の性質を知り適切に伸ばすためには、ある程度良い環境、というか指導者が必要なのだ。
それを考えればいい話なんだよな
◆
半日ほどでヴァルメーロ中央駅についた。
車掌がわざわざ先導してくれて、降りたところでちょうど時報の鐘が鳴る。
夕方まではまだ間がありそうな時間だ。
石畳で舗装された発着所は鉄でできた巨大なひさしで覆われていた。
バカでかい駅だ。
アルフェリズ駅も大きいと思っていたが、こっちは半端じゃないな。
鉄のひさしには天窓のように穴があけられていて、太陽の光が差し込んできている。
客がぞろぞろと出口に向かって歩いていった。
客が下りたからか、暫くして発着所から殆ど人影はなくなってしまった。
駅員が車両に乗り込んで何か作業したり、鉄の車輪を整備し始めている。
「さて、これからどうしたものか」
とりあえずテレーザの姿は見えない。
よく考えれば切符だけ送られてきたが、その後どうするかという話は書かれていなかった。
冒険者同士だと、風の行方亭のような酒場かギルドで合流と言うのが普通なんだが。
「まあ、待つしかないか」
こういう状況は初めてなんだが。
最悪でも宿代くらいは問題なくあるし、結構な名門の家らしいから家に行くくらいはできるかもな。
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