風使い練成術師、防御重視は時代遅れとパーティ追放(10か月ぶり9度目)される~路頭に迷いかけたけど、最強火力をもつ魔女にスカウトされた。守備が崩壊したと言われてももう遅い。今は最高の相棒がいるので~
そこにいた何か
路面汽車のドアを開けると白い靄が車内に入ってきて、それに遅れて魚の腐ったようなにおいが鼻を突いた。
テレーザが顔をしかめる。
「なんだ、この匂いは」
「いや……匂いはむしろどうでもいいだろ」
そう言うとテレーザが頷いた。
靄はまるで海の上で出る霧のようだ。重々しくて、肌にまとわり着くような湿気を感じる。
砂浜に踏み出すと得体のしれない圧迫感が感じられた。
深い森の中で魔獣に囲まれているかのようだ。まだ夕方前だっていうのに、太陽の光も薄暗くしか見えない。
遠くから聞こえる戦いの音の方向にしばらく進むと硬いものが触れあう音が近づいてきた。テレーザに合図して足を止める。
見ていると、靄の中からぼろをまとった人影が現れた骸骨が現れた。
◆
スケルトンか?と思ったが、こっちに切りかかってくる様子はない。
そいつの後ろから次々とスケルトンが姿を現した。酔っぱらいの様によろめきながらまっすぐ進んでくる。
「なんだ……コイツは」
剣を抜いて切り伏せる。骨がバラバラになって砂浜に崩れた。
それでも何事もなかったかのようにスケルトンがまっすぐ進んでくるだけだ。
「なんなんだ?」
「ライエル!」
なんなんだか分らなかったが、テレーザが警告を発した。地面に散らばった骨がふわりと浮いて骨組みが元に戻っていく。
まるで崩れる姿を逆にしたようにスケルトンが元に通りの姿になった。
ただのスケルトンじゃない。というか魔族なのか?
「こいつの相手をしている場合ではないぞ」
「そうだな」
スケルトンは何かを目指すかのようにふらふらと列を組んで歩いているだけで、こっちに攻撃してくる気配はない。
そんなことより。
靄の向こうから戦っている音がはっきり聞こえる。
音はこだまのように遠くから聞こえていて、方向が絞りにくいが。音を聞くまでもなく進むべき方向は分かった。
音の方と思しき方向から寒気のような気配が漂って来ている。
俺に分かるくらいだから、魔法使いのテレーザにはもっとはっきりわかっているだろう。
その気配が、敵がただの魔獣じゃないことを告げていた。
地獄の門なんてものがあってその前に立ったならこんな感じだろうと思うほどだ。
「行くか?」
「当然だ」
テレーザが答える。
足を進めるにつれて重たい気配は増していって靄が濃くなり、音が近づいてきた。
足元をいつの間にか黒い水のようなものが浸している。水音が足元からしてブーツに水が染みてくる。
そして、不意に靄が薄れた。
●
靄が薄れたそこはまるで丸い球のような空間になっていた。
「なんだ、あれは?」
一目で魔族と分かったが……見たこともない奴だ。
背が低い。俺の腰より少し上ってくらいだろうか。
ランタンをつりさげたネジくれた杖を持つ、ボロボロのローブ姿の魔法使い、というのが一番近いか。
だがローブの奥には赤い暗い光が見えるだけで顔は見えない。ローブの裾が地面と一体化していて周りが海のように波打っている。
ローブも水面のように蠢いていて腐った魚の様なにおいを周りにまき散らしていた。
杖で水面を突くと地面というか水面から次々とスケルトンが立ち上がる。
さっきと同じように、こっちには関心を示すことなく、大量のスケルトンの群れがぞろぞろと折れぞれ方向に向かっていく。
「なんなんだよ、こいつ!」
「全然攻撃が聞かねぇ!」
3人組の剣士がローブ姿の何かに次々と切りかかっている。
が、まったく通じていない。切っても切っても水の塊を切るように、波打つように傷がふさがっていく……バフォメットと同じだ。
「აუზში დახრჩობა」
そいつが不意に何か言葉を発した。杖を軽く打ち付ける。
不意にローブの裾が伸びて、足もとが水に浸される。水柱が立ち上がって冒険者たちを包んだ。
◆
冒険者たちが水を引き剥がそうとするが、スライムがまとわりついているように剥がせない。
黒い水の中に取り込まれた冒険者が苦悶の表情を浮かべるのが見えた。
不味い……が、俺の風でどうにかできるのか?
「私に任せろ【書架は北東・理性の五列・参拾弐頁八節。私は口述する】」
テレーザが詠唱に入る。冒険者たちが苦し気にもがくが……俺は何もできない。
そのローブ姿の魔族は全く興味がなさそうに佇んだままだ。
「【風が巻き波濤は港に打ち寄せる。魔力の流れは水に似たり。なれば力よ鎮まれ、静謐なる水面のごとく】術式解放」
詠唱が終わると水に一瞬光の波紋が走って冒険者の顔についていた水の塊が消えた。
解呪か
「大丈夫か?」
冒険者たちがうずくまってせき込みながら水を吐き出す。どうにか無事らしい。
そのローブ姿の何かとしか言いようがない何かがこっちを向いた。
「……助かりました」
「お前らは何位だ?あいつの討伐か?」
「いえ、違います。近くの村に住んでるんです。ここであいつと会ったのは偶然です」
「ランクはC1」
「おれはC2です」
3人が口々に言う。勇気は買うが……
「勝てる相手じゃない、逃げろ。近くに住んでいる人がいるなら避難させろ。アルフェリズにも伝令を出すように連絡してくれ」
「私はB1、こいつはA3だ。我々が止める」
そういうと三人が頷いて走っていった。
姿がすぐに靄の中に消える。
この辺りには小さな村が点在している。何だか知らんがこいつを野放しにはできない
「覚悟はいいか?」
「無論だ。我々が止めるしかないだろう、冒険者とはそういうものだ。違うか?」
テレーザが毅然とした顔で言う。
「そうだな」
「それに、見ろ。あいつを討伐できればかなりの評価点が期待できるぞ」
テレーザがそう言って杖を構えた。
テレーザが顔をしかめる。
「なんだ、この匂いは」
「いや……匂いはむしろどうでもいいだろ」
そう言うとテレーザが頷いた。
靄はまるで海の上で出る霧のようだ。重々しくて、肌にまとわり着くような湿気を感じる。
砂浜に踏み出すと得体のしれない圧迫感が感じられた。
深い森の中で魔獣に囲まれているかのようだ。まだ夕方前だっていうのに、太陽の光も薄暗くしか見えない。
遠くから聞こえる戦いの音の方向にしばらく進むと硬いものが触れあう音が近づいてきた。テレーザに合図して足を止める。
見ていると、靄の中からぼろをまとった人影が現れた骸骨が現れた。
◆
スケルトンか?と思ったが、こっちに切りかかってくる様子はない。
そいつの後ろから次々とスケルトンが姿を現した。酔っぱらいの様によろめきながらまっすぐ進んでくる。
「なんだ……コイツは」
剣を抜いて切り伏せる。骨がバラバラになって砂浜に崩れた。
それでも何事もなかったかのようにスケルトンがまっすぐ進んでくるだけだ。
「なんなんだ?」
「ライエル!」
なんなんだか分らなかったが、テレーザが警告を発した。地面に散らばった骨がふわりと浮いて骨組みが元に戻っていく。
まるで崩れる姿を逆にしたようにスケルトンが元に通りの姿になった。
ただのスケルトンじゃない。というか魔族なのか?
「こいつの相手をしている場合ではないぞ」
「そうだな」
スケルトンは何かを目指すかのようにふらふらと列を組んで歩いているだけで、こっちに攻撃してくる気配はない。
そんなことより。
靄の向こうから戦っている音がはっきり聞こえる。
音はこだまのように遠くから聞こえていて、方向が絞りにくいが。音を聞くまでもなく進むべき方向は分かった。
音の方と思しき方向から寒気のような気配が漂って来ている。
俺に分かるくらいだから、魔法使いのテレーザにはもっとはっきりわかっているだろう。
その気配が、敵がただの魔獣じゃないことを告げていた。
地獄の門なんてものがあってその前に立ったならこんな感じだろうと思うほどだ。
「行くか?」
「当然だ」
テレーザが答える。
足を進めるにつれて重たい気配は増していって靄が濃くなり、音が近づいてきた。
足元をいつの間にか黒い水のようなものが浸している。水音が足元からしてブーツに水が染みてくる。
そして、不意に靄が薄れた。
●
靄が薄れたそこはまるで丸い球のような空間になっていた。
「なんだ、あれは?」
一目で魔族と分かったが……見たこともない奴だ。
背が低い。俺の腰より少し上ってくらいだろうか。
ランタンをつりさげたネジくれた杖を持つ、ボロボロのローブ姿の魔法使い、というのが一番近いか。
だがローブの奥には赤い暗い光が見えるだけで顔は見えない。ローブの裾が地面と一体化していて周りが海のように波打っている。
ローブも水面のように蠢いていて腐った魚の様なにおいを周りにまき散らしていた。
杖で水面を突くと地面というか水面から次々とスケルトンが立ち上がる。
さっきと同じように、こっちには関心を示すことなく、大量のスケルトンの群れがぞろぞろと折れぞれ方向に向かっていく。
「なんなんだよ、こいつ!」
「全然攻撃が聞かねぇ!」
3人組の剣士がローブ姿の何かに次々と切りかかっている。
が、まったく通じていない。切っても切っても水の塊を切るように、波打つように傷がふさがっていく……バフォメットと同じだ。
「აუზში დახრჩობა」
そいつが不意に何か言葉を発した。杖を軽く打ち付ける。
不意にローブの裾が伸びて、足もとが水に浸される。水柱が立ち上がって冒険者たちを包んだ。
◆
冒険者たちが水を引き剥がそうとするが、スライムがまとわりついているように剥がせない。
黒い水の中に取り込まれた冒険者が苦悶の表情を浮かべるのが見えた。
不味い……が、俺の風でどうにかできるのか?
「私に任せろ【書架は北東・理性の五列・参拾弐頁八節。私は口述する】」
テレーザが詠唱に入る。冒険者たちが苦し気にもがくが……俺は何もできない。
そのローブ姿の魔族は全く興味がなさそうに佇んだままだ。
「【風が巻き波濤は港に打ち寄せる。魔力の流れは水に似たり。なれば力よ鎮まれ、静謐なる水面のごとく】術式解放」
詠唱が終わると水に一瞬光の波紋が走って冒険者の顔についていた水の塊が消えた。
解呪か
「大丈夫か?」
冒険者たちがうずくまってせき込みながら水を吐き出す。どうにか無事らしい。
そのローブ姿の何かとしか言いようがない何かがこっちを向いた。
「……助かりました」
「お前らは何位だ?あいつの討伐か?」
「いえ、違います。近くの村に住んでるんです。ここであいつと会ったのは偶然です」
「ランクはC1」
「おれはC2です」
3人が口々に言う。勇気は買うが……
「勝てる相手じゃない、逃げろ。近くに住んでいる人がいるなら避難させろ。アルフェリズにも伝令を出すように連絡してくれ」
「私はB1、こいつはA3だ。我々が止める」
そういうと三人が頷いて走っていった。
姿がすぐに靄の中に消える。
この辺りには小さな村が点在している。何だか知らんがこいつを野放しにはできない
「覚悟はいいか?」
「無論だ。我々が止めるしかないだろう、冒険者とはそういうものだ。違うか?」
テレーザが毅然とした顔で言う。
「そうだな」
「それに、見ろ。あいつを討伐できればかなりの評価点が期待できるぞ」
テレーザがそう言って杖を構えた。
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