風使い練成術師、防御重視は時代遅れとパーティ追放(10か月ぶり9度目)される~路頭に迷いかけたけど、最強火力をもつ魔女にスカウトされた。守備が崩壊したと言われてももう遅い。今は最高の相棒がいるので~
その後の彼等・2
「イブリースは大丈夫か?」
「なんとか」
支援魔導士のエレミアがグラスをいじりながら物憂げに答える。
今回の任務は鬼巨人の群れの討伐だったが、突出したロイドをかばって前衛の一角イブリースがかなりの怪我を負ってしまった。
俺自身も怪我をしているが彼女よりは軽い。
ギルドのサポートがあるから治癒術はかけてもらえたので命に別状はない。
それでもしばらくは動けないだろう。
「ロイドは?」
「いつも通りね。今日は飲んで騒いで、明日はまた訓練所じゃないかしら」
良くも悪くもいつも通りだ。
今回も先陣を切って戦って怪我をしたが、イブリースが動けなくなったあとは獅子奮迅の働きでどうにかパーティを勝ちに導いてくれた。
それに日々の訓練も欠かさない。
思い上がったところもあるが、それは若さと言うことで仕方ないだろう。
ただ、こっちから見ても胆が冷える場面が何度もあった。
あれは勇敢と言うんじゃなくて命知らずとかそういう風に呼ばれるものだ。いずれ酷いことになる気がする。
「彼がいればね」
「……いうな」
最近は1年ほど一緒に戦ったライエルのことを思い出す。
前衛が攻撃、後衛が支援という役割分担が進んで両者をサポートする中衛が軽んじられるようになった。
ライエルはまさにその典型的な存在だった。
ただ、世間的に軽んじられていることと、有用性は全く別だとここ最近は思い知らされている。
ロイドが、取り分を増やすためにあいつを外そうと言った時、居なくても何とかなると思ったところは正直言ってある。
勿論影響がないとは思わなかったが……
前衛の俺たちへの防御の風や突撃の時の的確な支援、敵の分断。
後衛のエレミアと距離が出来た時にはサポートに回って、俺たちが攻撃に専念できるお膳立てをしてくれていた。
分かってはいたが。いなくなってみるとその存在感は想像以上に大きかった。
もし初めからいなければ、こうは思わないだろう。
守備を担ってくれる奴の有難味は恐らく体験しないと分からない。
今は極めて危ない橋を渡っていることは分かっている。
今回もたまたま運が味方してくれたが、一歩間違えば死人が出る。状況によっては全滅も見えてしまう。
取り分が増えるのは勿論悪いことじゃない。だが命には代えられない。
名声も金も命あっての物種だ
「ライエルはどうしてるのか、知ってるか?」
「魔法使いと組んだって話は……聞いた」
「魔法使いとライエルの組み合わせか?」
普通じゃない。というか正気とは思えない組み合わせだ。採集や護衛なら別かもしれないが。
そういうとエレミアも肩をすくめた。同じ意見なんだろう
「なんとか戻る様に説得できないもんかね」
「それは……いくらなんでも」
エレミアがテーブルの上のワインを飲みつつ言葉を濁した。
確かに、あの時のことを思い出すと……まあ無理だろうなと思う
「それに我がエース殿が納得すると思う?」
「そうだな」
ロイドが現状をどう考えているのか分からないが、あいつが納得するとは思えない。
ロイドがもう少し周りをみてくれれば状況は改善するんだが……あいつは恐らく何も考えていない。
目の前の敵に火力を叩きつけるだけだ。
ただ、良くも悪くもその思い切りの良さが結果を生んでいる。
若くてすべてが上手く行っている自信満々なやつに内省を求めても無駄だ。自分自身がそうだったし。
だが、もはやそんなことを言っている場合じゃない。
「おお、ヴァレンの旦那にエレミア姉さん、何をしけた顔してんだよ」
何となくお互い黙ってしまったところで酔っぱらったロイドが酒場の戸を開けて戻ってきた。隣に二人の女の子を従えている。
こっちの心配を全く分かっていなさそうな気楽な顔だ。
「反省会だ」
「今回も上手く行って十分稼いだ。犠牲者も出なかった。何を反省することがあるんだ?」
「ロイド、明日はイブの見舞いに行きなさい」
エレミアが棘のある口調で言う。
面倒くさそうにロイドが手を振って、女の子たちと一緒に寝室に入って行った。
聞いているのかいないのか分からないな。
「あの能天気さにはイラッと来るわ」
いつもは温和なエレミアが静かに言う。
「とにかく、今は俺たちで何とかするしかない。魔法での支援を頼む」
「防御面は殆どライエルに任せっきりだったから、上手く行くか自信無い……」
エレミアが困ったような顔で言う。
彼女も当世の魔法使いに違わず後衛からの攻撃魔法で火力牽制するのが得意だ。すぐにスタイルを変えるのは難しいだろう。
ただ、どうにかするしかない。犠牲者が出る前に。
「なんとか」
支援魔導士のエレミアがグラスをいじりながら物憂げに答える。
今回の任務は鬼巨人の群れの討伐だったが、突出したロイドをかばって前衛の一角イブリースがかなりの怪我を負ってしまった。
俺自身も怪我をしているが彼女よりは軽い。
ギルドのサポートがあるから治癒術はかけてもらえたので命に別状はない。
それでもしばらくは動けないだろう。
「ロイドは?」
「いつも通りね。今日は飲んで騒いで、明日はまた訓練所じゃないかしら」
良くも悪くもいつも通りだ。
今回も先陣を切って戦って怪我をしたが、イブリースが動けなくなったあとは獅子奮迅の働きでどうにかパーティを勝ちに導いてくれた。
それに日々の訓練も欠かさない。
思い上がったところもあるが、それは若さと言うことで仕方ないだろう。
ただ、こっちから見ても胆が冷える場面が何度もあった。
あれは勇敢と言うんじゃなくて命知らずとかそういう風に呼ばれるものだ。いずれ酷いことになる気がする。
「彼がいればね」
「……いうな」
最近は1年ほど一緒に戦ったライエルのことを思い出す。
前衛が攻撃、後衛が支援という役割分担が進んで両者をサポートする中衛が軽んじられるようになった。
ライエルはまさにその典型的な存在だった。
ただ、世間的に軽んじられていることと、有用性は全く別だとここ最近は思い知らされている。
ロイドが、取り分を増やすためにあいつを外そうと言った時、居なくても何とかなると思ったところは正直言ってある。
勿論影響がないとは思わなかったが……
前衛の俺たちへの防御の風や突撃の時の的確な支援、敵の分断。
後衛のエレミアと距離が出来た時にはサポートに回って、俺たちが攻撃に専念できるお膳立てをしてくれていた。
分かってはいたが。いなくなってみるとその存在感は想像以上に大きかった。
もし初めからいなければ、こうは思わないだろう。
守備を担ってくれる奴の有難味は恐らく体験しないと分からない。
今は極めて危ない橋を渡っていることは分かっている。
今回もたまたま運が味方してくれたが、一歩間違えば死人が出る。状況によっては全滅も見えてしまう。
取り分が増えるのは勿論悪いことじゃない。だが命には代えられない。
名声も金も命あっての物種だ
「ライエルはどうしてるのか、知ってるか?」
「魔法使いと組んだって話は……聞いた」
「魔法使いとライエルの組み合わせか?」
普通じゃない。というか正気とは思えない組み合わせだ。採集や護衛なら別かもしれないが。
そういうとエレミアも肩をすくめた。同じ意見なんだろう
「なんとか戻る様に説得できないもんかね」
「それは……いくらなんでも」
エレミアがテーブルの上のワインを飲みつつ言葉を濁した。
確かに、あの時のことを思い出すと……まあ無理だろうなと思う
「それに我がエース殿が納得すると思う?」
「そうだな」
ロイドが現状をどう考えているのか分からないが、あいつが納得するとは思えない。
ロイドがもう少し周りをみてくれれば状況は改善するんだが……あいつは恐らく何も考えていない。
目の前の敵に火力を叩きつけるだけだ。
ただ、良くも悪くもその思い切りの良さが結果を生んでいる。
若くてすべてが上手く行っている自信満々なやつに内省を求めても無駄だ。自分自身がそうだったし。
だが、もはやそんなことを言っている場合じゃない。
「おお、ヴァレンの旦那にエレミア姉さん、何をしけた顔してんだよ」
何となくお互い黙ってしまったところで酔っぱらったロイドが酒場の戸を開けて戻ってきた。隣に二人の女の子を従えている。
こっちの心配を全く分かっていなさそうな気楽な顔だ。
「反省会だ」
「今回も上手く行って十分稼いだ。犠牲者も出なかった。何を反省することがあるんだ?」
「ロイド、明日はイブの見舞いに行きなさい」
エレミアが棘のある口調で言う。
面倒くさそうにロイドが手を振って、女の子たちと一緒に寝室に入って行った。
聞いているのかいないのか分からないな。
「あの能天気さにはイラッと来るわ」
いつもは温和なエレミアが静かに言う。
「とにかく、今は俺たちで何とかするしかない。魔法での支援を頼む」
「防御面は殆どライエルに任せっきりだったから、上手く行くか自信無い……」
エレミアが困ったような顔で言う。
彼女も当世の魔法使いに違わず後衛からの攻撃魔法で火力牽制するのが得意だ。すぐにスタイルを変えるのは難しいだろう。
ただ、どうにかするしかない。犠牲者が出る前に。
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