元豚王子VS悪役令嬢

黒月白華

第78話 ローゼちゃんの正体

私はレーナ嬢とコンチャーン様とハクチャーン様…転生の件はともかく事情を知っている数名を王宮の会議室に集めた!

そしてジークヴァルト様の人形を持ち、先程の出来事を語った。

「なるほど…そんなことが起きておったのか!」
とハクチャーン様が言う。

「良かった!とりあえずは女神界でジーク無事なんだな!!」
ローマン様もホッとした。この半年で魔物やダモン達討伐にイチャイチャしてる暇はほとんどなく新婚であった2人、特にハクチャーン様はイラついていた!
イチャイチャ時間が減った!とかで。

コンチャーン様も短時間で宝珠を作りに行ったり闘ったりした。テオも我が一族の指揮をしている。バルシュミーデ家を含めたブッシュバウムの四大侯爵家が団結し東西南北を固める闘いを日夜頑張り、王宮や貴族の屋敷などは騎士団が頑張っている。

他国も同じような日々を過ごしている。明日香様もたまに転移魔法で報告に来るけど、

「毎日毎日大変なの…あまりに魔物やダモンが産まれるからうちの食糧庫も底を尽きそうよ…おのれ」
と言うので

「いえ、それはアスカ様が半分は消費してません?」
と言っておいた。

「とにかく次の満月は丁度10日後だね…どうする?コン…女神だか邪神だか知らねーけど倒せるの?神獣くらいしか無理じゃね?」
とレーナ嬢が言うとコンチャーン様もハクチャーン様も

「「無理」」
と言った!

「ええっ!?」

「いやいや…曲がりなりにも我等神獣は女神より作られし生き物なのだ!そんな親殺しみたいなことは出来んし、圧倒的な神力を持つ神を倒すとか殺すなどもっての他だ!」
とハクチャーン様が言い、コンチャーン様も

「人間など足元にも及ばない!絶対的な存在!その気になれば我等の存在ごと消去できよう!」

「そ、そんな…でもジークヴァルト様は何とかすると言っておりましたわ!」
と私が言うとレーナ嬢が

「まぁ、あいつがそう言うなら信じるしか今は手がないわけだね!10日後までにいつでも行けるよう人形を離さず持っていた方がいいよ、クラウディア様」
とレーナ嬢は泣きそうな私の背中を撫でた。

「それにしても兄上はほんとよく狙われるね!いつもいつも!まるでお姫様ですね!」
とユリウス王子が言う。

「そうそう、あいつがヒロインかもなー?くくく!」
とレーナ嬢が笑った。

「あ…でも、魂の状態であちらに行くとは言えジークヴァルト様と半年ぶりにお会いできますわ!向こうはひと月と言っていましたが…どうしましょう…私…ちゃんと喋れるかしら?」

「いや、人形通して話してたんだろ?それにまずは捕まってるの助けないとあたしらの世界に戻ってこれねーじゃん」
とレーナ嬢が言う。

「うむ!囚われのお姫様ジークヴァルトを救いに我等は動かねばならぬな!」
とハクチャーン様が言うと

「ブハッ!!」
とローマン様が吹きだした!
絶対ジークヴァルト様がいたら怒りますわよ!?


それから10日後…準備の整った私達は夜まで闘い今かとその時を待つ。
ここはジークヴァルト様の部屋である。
既に鏡を用意して、私にレーナ嬢にコンチャーン様・ハクチャーン様・ローマン様・ユリウス王子・エリーゼちゃん・ローゼちゃん・テオが集まっていた。

「テオ…後のことは頼みます…」
と弟のテオに言う。

「お姉様たちのいる部屋には誰にも近寄らせません!必ず王子をお連れ帰って寝た分きっちり働いてもらわねば!」
と言う。

「レーナのことは任せよ!」
と言い、コンチャーン様とテオが睨み合う。

「やめて!私のことで喧嘩なんて!テオドール様!無事に戻りますわ!」
とレーナ嬢が猫撫で声を出すと

「レーナ嬢……」
それ以上言わずテオは少しだけ心配そうな顔をしていた。この子は…私の時と違いどうしてこう奥手なのかしら??

「ローマン…この部屋に一応魔の物が入らぬ様結界を強めた。ここにちゃんといてくれ!」
とハクチャーン様はローマン様に言う。

「何日かかるか判らないが…必ず戻ってこいよハク!」
と言うとハクチャーン様はローマン様に熱烈にキスをした。全員後ろを向いた!

「んんんんーー!!」
ブハッと離れると

「だからそう言うのはやめんかい!」
とピシリとお叱りを受けるハクチャーン様。羨ましいですわ…。
眠っているジークヴァルト様の顔を見て切なくなる…。
もう少しで会える…半年もかかりようやく…。

すると人形が微かに光り出した!
なんと女神ザスキア人形も一緒に光りだした。
かなり弱くだけど!

「クラウディア!そこにいるか?」
とジークヴァルト人形から声がし、皆は

「おおっ!本当にジークだ!!すげえ!」
とローマン様が応えた。

「ジークヴァルト様!私たちは全員ここに!」
と言うと女神ザスキア人形が喋る。

「クラウディアに可愛い私の子達よ!今から女神界への門を開きます!すぐに閉じるので取り急ぎこちらへ来なさい!はい!」
とザスキア様の声にテオは

「これが女神様のお声!本当にいるのですね…」
と驚く。
ザスキア様は続けて

「女神界に入ったら…ローゼに案内してもらいなさい!」
と言う。
えっ!!?と皆ローゼちゃんを見た!
ユリウス王子が驚いてローゼちゃんを見た!

「ローゼは天使で神の使いでその世界に送り込んだ監視役です、はい!緊急事態…今がその時ですね…こういう時の為にその世界に派遣しているのです!はい!」
とザスキア様が言い、ユリウス王子が驚いた!!

「なっなななな!!てて天使!?そんなっ!ローゼ…君はそりゃ!本当に天使みたいだと思っていたけどまさか!本当に本当に天使なんてっ!!」
と言うとローゼちゃんはなんと喋った!!

「ユリウス王子…今まで騙していてすみません…。そう言う設定で今まで隠れて棲んでいました。奴隷のフリをして自らに傷をつけたり…貴方は私に優しくしてくれて…罪悪感でいっぱいでした。でも私の正体を知られるわけにもいかず口を閉じていました…」
とローゼちゃんは綺麗な声で言う。

「ローゼ…さま?」

「様はいらない…今まで通りでいいです…」
ユリウス王子は震えて

「まさかっ!このまま戻ってこないの?女神界に行ったまま!?」
ユリウス王子がそう言うとローゼちゃんは

「判りません…」
とだけ言った。

「そんな!…僕は…僕は…ローゼ!君が好きだ!君との婚約を考えていた!!うっ…」
と苦しそうな顔をするユリウス王子にローゼちゃんは近づきキスをした…。
ちょっとビックリしたユリウス王子は

「ローゼ…」
と言い抱きしめると泣いた。

「帰ってこれるか判りません…貴方が待っていてくれるなら……」
と言う。ローマン様は

「なんか知らんけど大丈夫だよ!ユリウス!俺とハクなんか見てみろ!神獣と人間だし!天使と人間でもいいんじゃね?」
とケロリと言う。
それを無視してユリウス王子は

「ローゼ!待っているよ!!き、君に似合うドレスもまた用意するし!僕のとこに戻ってきて!!判らないなんて曖昧なことは言わないで!」
と言うとローゼちゃんはボロボロ泣き…コクリとうなづいた。
ジークヴァルト人形が

「えっ!?ローゼちゃんってほんとに天使だったのかよ!なんつー隠れキャラだよっ!!教えとけよザスキア!」

「教えたら監視にならんだろ!バカめっ!はい!…では門を開きますよ!!辛いですがローゼ!頼みます!」
とザスキア人形が言いハクチャーン様が鏡に力を入れると鏡は光った。
そこへコンチャーン様やハクチャーン様、ローゼちゃん、私にレーナが続いて意識が遠のき倒れた。

ユリウス王子はローゼちゃんを抱きしめて泣いた。

「ローゼ…」
ローマン様もハクチャーン様のところに行き

「はあ…ま、大丈夫だよね…」
と心配な顔をした。

テオドールはレーナのところに行き無言でコンチャーン様と引き離していた。

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