元豚王子VS悪役令嬢

黒月白華

第70話 上位精霊がキレた

「何っ!?光りの精霊がスケスケの魔法を持っているだと!?しかも人間の服が透けてしまうとは!なんと便利な!我の友になってくれぬかな?」
コンちゃんが鼻血を垂らしながら言った!
それにレーナがメシャアとコンちゃんの頭を床に叩きつけた。

「このエロ狐が!!」
それを見てテオドールくんが

「お姉様…あんな野蛮な令嬢との付き合いはやめた方がいいかと」
と耳打ちしていた。

「違いますのぉ!テオドール様あああ!」
と泣くレーナ。

「兄上!アルデン国の騎士団がブッシュバウムに向けて出立したとのことです。4日くらいで到着予定だとニコラウス王子から鷹便でお返事が来ました」
ユリウスくんが腕に大きな鷹を止まらせていた。こいつが手紙を運んで来たのか…。

「おいおい、俺も参加していいかな?クラウディアちゃん」
と部屋にクラウディアの師のダニエルさんが現れた。戦力としては有り難いが。

「大丈夫…敵のダモンを殿下だと思って日頃の恨み…いえ、ともかくストレス解消にぶっ飛ばします!」
今完全に俺への怒りをダモンにぶつけるとか言ってた!!

「なるほどそれなら僕も同胞達と思う存分暴れさせて頂きます!敵を殿下だと思えばいいのですから!」
とテオドールくん。こっちははっきり言ったよ!お前ら俺への恨み凄いな!!

「ジークヴァルト…私の裸が見たいなら貴方だけに見えるようにしてあげましょうか?チートだから私」
と明日香が微かに頰を染めているのをクラウディアとカミルが睨んだ。

「ハクちゃん頼むよ?幻影頑張ってね?もうハクちゃんしか頼れる神獣いないよ!」
と言うとハクちゃんは

「うむ…ならばもっと力を溜めねばな!ローマン行こう!時間までニャンニャン修行じゃ!」
何がニャンニャン修行だよ!!

「ひいいいっ!!ジークのバカ野郎!余計なお願いすんな!!…あ、これ宝珠…」
とローマンは袋に入れた宝珠を恥ずかしげに渡した。乙女かっ。

レーナとクラウディアとダニエル師匠と騎士団を交えて新月まで訓練に勤しむことになって、訓練場から聞こえて来る物凄い破壊音に大丈夫かと心配する。たまに傷だらけになって帰ってくるから俺は治療を施す。

明日香は相変わらず食いまくり食糧庫が悲鳴を上げつつある。しかし、ハクちゃんの影響か、減っても他国からの輸入食料が絶えなかった。

さらにこの度の闘いに参加したいという他国からの猛者がぞろぞろ集まってきた。

準備は着々と進みついに新月の日が来た!とりあえず夜中の闘いになるので昼間は皆体力を温存する為寝ることにした。

シェフは明日香に弁当を持たせる為昼間から厨房でご飯を作っていた。明日香…闘いの最中にも食う気か?


夕方になりようやく皆起き出してぞろぞろと王宮の広間が埋まって行く。

それから月が昇り始めたので俺は部屋に篭って5時間レベル上げの為に祈り続けてレベルをかなり上げた!ザスキアの言ってた何か手から聖なる塩が出るやつも習得した。手汗とか言いたくないから【セントソルト】とでも言っとこ!
捻りがないけど別に考えてる時間もないしいいわもうなんでも。

俺が準備して下に降りると父と母にユリウスくんにローゼちゃん、エリーゼが見送りに来た。
ローマンもハクちゃんに

「一応気をつけてねー?ハク…」
と言おうとして唇を奪われて

「んんんん!もっ…んん!」
と熱烈キスされてようやく離れるとペシンとハクちゃんの頭を叩いた!

「だからやめんかい!こんな大勢いるのに!!」

「お前が我がエルネスタに言ってる隙に変な女に浮気されんようにしたまでだ」
といつものバカップルぶりを無視して父上が

「ジークヴァルトよ…エルネスタ公国をお前の奇跡の力で救ってくるのだぞ!」

「はい!父上!必ずやエルネスタ公国にいるダモン軍を全て浄化してみせます!俺だけじゃなく集まってきた皆の為にも負けるわけにはいきません!!」

「ジーク!気を付けてね!本当に無事で帰ってきて!」
と母のカタリーナ王妃に抱きしめられた。
…前世では俺は母より先に死んでしまったからとても親不孝で悲しい思いをさせた。カタリーナ王妃にはそんな思いしてほしくない!今の俺の母のカタリーナ王妃に俺は誓った!

「必ずや!生きて戻りますのでご心配なく!母上!」
ユリウスくんとエリーゼにも頭を撫でて俺はアルデンから来た騎士団や集まってくれた勇敢な者達にも礼を言いつつ明日香に言った。

「明日香…これで準備は整った!」

「ゲフっ!私もかなり食べたわ…ちょっと吐きそうよ…」

「吐くな!!」
しかし弁当を山程抱えた明日香は

「さあ!皆!行くわよ!こんなに沢山の人を転移するのは初めてね!」
と床が光り始め、クラウディアが密かに俺の手を繋いだ。

「ジークヴァルト様…私達ならきっとエルネスタ公国を救えます!」

「うんクラウディア!行こう!」
とギュッと手を握り広間にいた全員は消えた。

「兄上…ご武運を…」
とユリウスくんが祈った。



俺たちは明日香の転移魔法で一瞬でエルネスタ公国のメルト村に着いた。

「おお!本当に一瞬で移動したぞ!凄いな!」
とダニエル師匠がキョロキョロ見渡した。

明日香の合金魔法で覆われたドームの外からドコンドコンと音が聞こえた!

「ダモンが攻撃しているようね…」

「よく破られなかったな…」
流石チート魔女。
するとそこへ

「カミル!アスカ様!よく戻りましたね!!」
と綺麗な女性が駆け寄った。

「母上!」
あれが公妃フロレンティーナ様か!

「僕は大丈夫です!奇跡の王子ジークヴァルト様が治してくださったし、こんなに頼もしい味方を沢山連れて参りました!!これからダモンを撃ち、我が公国に光りの奇跡を約束してくれました!!」

「まああ!カミル!よくやりました!!」
とフロレンティーナ様はカミルを抱きしめた。

するとドームの外の攻撃音が止まった。

「うん?この気配は…」
するとハクちゃんが

「言ってなかったがうちの親戚にも声をかけておいたんだ…もう外のダモンは生きておらんだろう…アスカ…魔法を解いてみよ」
とハクちゃんに言われ、明日香はドームの魔法を解くとそこには色とりどりのドラグー達がいた!!

「わ!!わ!!神獣ドラグーがあんなにいるううう!!」
カミルが驚いた!!

ドラグー達は村に静かに降りてきてハクちゃんに

「外にいたダモンは全部焼き殺しておいたぞ!」
と赤いドラグーが言うと

「ありがとう!セキ叔父ちゃん!!」
とハクちゃんが手を振る。

「何の何の!まるで祭りだな!空のダモン軍は私達に任せなさい!」
と心強く言う赤いドラグー!

「そうた!人間たち!私達の背に乗り闘うがいい!」
と背中まで貸してくれた!
カミルは感激して

「ジークヴァルト様!神獣様!アスカ様!ありがとうございます!!」
と頭を下げた。

「カミル公子!まだこれからです!公都では沢山のダモン軍やダモンの王子がいるでしょう?まだこれからです!……そうだ、そろそろウィルを出そう!」
と俺は指輪を掲げて祈るとウィルが光りと共に出てきた。

「なっ!?何で指輪から!!?」

「これは俺の光りの精霊だ!」
それにしても…ウィルの奴がおかしい!前はあんなスパンコールギラギラだったのに今はまるで通夜かと思うくらい真っ黒な喪服に身を包み何か沢山の品まで持っていた。

「お…おいウィル…どうしたんだお前…?光りの精霊のくせにその服は?」

「主様が眩しいと仰られたのでこちらに変更しました!!そしてこの間のお詫びに皆様に粗品を配ろうと思いまして…精霊界の光り饅頭でして…」
とソッと俺に粗品を渡してくる。
えええええ!!こいつこの状況で何してんだーー!!粗品配ってる場合じゃないし誰ももう気にしていないぞ??

しかしそこで仕留め損なったのか一匹の首だけのダモンが飛んできてウィルが持ってきた粗品を口からドロリと何か液体を吐き溶かしてしまった!!

「あああっ!!折角精霊界人気のお饅頭が!!高かったのに!!…ななな!何すんじゃーいいい!」
とウィルがいきなりキレて頭が静電気で爆発し筋肉ムキムキの男になり喪服は破けギンギラギンのパンツ一枚になり首だけのダモンを睨みつけ

「光輪殲滅旋風刃ーーーっ!!!」
と叫び光りの輪の刃が首だけダモンを細切れに切り刻みさらにそれを光りのボウルが受け止めてウィルがムキムキな手でコネ回し丸めて何か光りの円盤の上に置いてジュウジユウと焼き始めた!!

ウィルはようやく元の体付きに戻り髪もスラリと戻ってイケメンスマイルで言った。

「主様ー!ハンバーグができましたー!!」
と!

俺はそれに

「いるかあああああ!!」
と思いっきり突っ込んだ!!

その後ウィルはまた落ち込み着替えてきますと一旦戻ってまた喪服に着替えて饅頭をさらに持ってきて几帳面に配りまくっていた。

30分くらい超無駄な時間が流れてしまった。

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