元豚王子VS悪役令嬢

黒月白華

第54話 神殿へ

クラウディアは元気がなく、トラウトナー伯爵邸の一室で相変わらず凹んでいた。
トントンとレーナ嬢とコンチャーン様が食事を持ってやってきた。

「さぁ、食べながら話そう!あんたいろいろ疲れてるしここでいいよね?」

「ごめんなさい…ご迷惑をかけて…」

「気にすんな!んで…神殿に行く方法か…今まではジークヴァルトと手を繋いで意識失ったら行けたんだよなぁ…本にもそれしか書いてなかったし…エロ狐ならどう?神殿に行けそう?裏技的な力で!」

「ふむ…女神のところか…まぁ鏡があるし行けるが……誰か女はいないか?」

「は??」

「我の力は女と●●●●ピーすることで力の維持ができる。さらに●●●ピーに力が溜まり●●ピピと一気に神力が集まるわけだ。だから女が必要だ」
するとレーナ嬢はコンチャーン様の頭を机にぶつけて

「お前真顔で卑猥なこと言ってんじゃねぇよ!!てかこんな空間に女なんてうちのメイドくらいしかいないじゃないか!可哀想だわ!!」

「ならお前とでもクラウディアとでもいいんだぞ?」

「「お断りします」」
と声を合わせてレーナ嬢と私は言った。

「どうしますの?レーナ嬢…これでは女神様に会えませんし、神殿にも行けません!」
レーナ嬢は腕を組み考えた末に

「仕方ない…一応…うちのメイドを集めて聞いてみるが…既婚者や恋人のいる奴は除く…それを抜きにしても可哀想だが…クラウディアの為だ…ちょっと待ってな…」
とレーナ嬢は部屋から出て行き、しばらくすると戻ってきた。一人のメイドを連れて…。
それを見てコンチャーン様が思いっきり白目になった。

「おいどう言うつもりだ?なんだこの枯れた醜女は!」

「は?お前レディになんてこと言うんだ!うちのメイド長は未婚で処女だ!!50代だけど!めっちゃ乙女だぞ!!」
ちょっとおばさんなメイドはコンチャーン様を見て顔を赤らめた。

「我にも好みというものが!!」

「やかましい!さっさと終わらせろ!!汚らわしいケダモノめ!」
とレーナ嬢はコンチャーン様を追い出した。
その30分後になんかグッタリして耳を凹ませたコンチャーン様が戻ってきた。いつもと違いカッサカサだ。

「…………お前…殺す…」
とボヤいたがレーナ嬢は

「そんなことよりさっさと神殿にいくよ!」
とカサカサのコンチャーン様のことを無視してレーナ嬢と私はコンチャーン様の屋敷へと向かった。

「不思議なお屋敷…」
と見ているとレーナ嬢が

「大きい神社みたいだね。懐かしい。日本じゃよく神社・仏閣はパワースポットなんだぜ?いい事が起こるっていうさ。…でもコンの家だしな…」

「失礼なことを!ちゃんとうちだって御利益はあるぞ!?参れば恋愛相手くらい見つかるだろう!この我に頭を下げることになるがな!!」
とコンチャーン様が踏ん反り返る。

「コンって恋愛に特化してんのか。エロ狐なわけだ!」

「うむ!だからこの国は子宝が多いのだ!」
と言った。確かに…ブッシュバウムでは恋愛結婚する国民が多いと聞いたことがある。たまに出席する夜会でだけど。子供が5人もいる子爵夫人と挨拶したこともありましたっけ…。

「畜生…コンに祈るのは釈だけど金持ちのイケメンが現れるようによろしく頼む!!」
と手を合わせてレーナ嬢はコンチャーン様にバシンとお金を投げつけた!
それ無礼ではありませんの?

「うむ、ちと少ないが娼館には行けるな…」
とせっせとお金を拾うコンチャーン様を半目で眺めた。

そして変わった屋敷の内部は変わっていた。

「おう!畳に障子!和風だねぇ!あ、庭には鹿威しもあるな!」
とレーナ嬢はどうやら前世を思い出しているのかしら?これが…ジークヴァルト様の前世に近いものなのかしら?

「何か小さな盛り上がった橋を渡ると部屋に入る。扉も変わっていて襖と言うらしい。鍵はないのね。

その部屋の真ん中に変わった装飾の姿見が置いてあった。

「では行くぞ!フン!!」
とまた尻尾を九つにしてコンチャーン様が鏡に力を送っている。

「よし!繋がった!行くぞ!」
と怪しく光る姿見を見つめるとレーナ嬢や私にコンチャーン様の意識が途切れていった。



「はっ!!?」
目覚めるといつもの神殿だ!

「へー!ここがねぇ…」
レーナ嬢もなるほどとうなづいた。

「クラウディア!!来たのですね、はい!!コンよくやりました!よく連れてきた!!」
するとコンチャーン様がなんと膝をついた!

「女神様…久しくお目にかかります!此度は緊急事態うえ、参上致しました!立ち入り失礼致します!」
と礼儀正しい!!

「うおっ!コンが頭下げてる!まじで??」

「全く!本来ならあんたも下げなさいな!巨乳娘っ!」
とザスキア様が言う。

「ザスキア様!やはりジークヴァルト様がおかしくなったのは!」
ザスキア様は悔しそうに

「ええ…あのレシリアのせいですね、はい!止められなくてすみません!はい!現在はレシリア信仰の方があなた達の世界では多くて私はレシリアに及ばないのです!私の信仰が多ければレシリアにはあの時点で勝っていてジークヴァルトもあんな腑抜けにはならんかったんです、はい!」

「ザスキア様…お腹は大丈夫なのですか?殴られていましたが…」

「まぁ!何ていい子なのクラウディア!!私なら大丈夫よっ!女神ですからね!はい!」
良かった…。

「クラウディア…聖女明日香が不死だとは聞いたでしょう?」

「はいっ…」

「そんなの本に載ってなかった!何よ不死って!」
レーナ嬢がブーブー言う。

「ええ…ですからこれはレシリアが最初から仕組んだこと!転移させた時からね。じゃないと当時10歳の子供が戦争でいくらチート能力を持とうとも生き残る保証はない。そんな能力誰だって怖がりますから、いずれ帝国内部でも力を恐れて明日香を暗殺しようとする輩の為の処置だったのかもしれません。あの子からは何度か殺された記憶が読めました、はい」

「えっっ!?」
私は驚いた!!明日香は不死とは言えどこの世界で何度か暗殺されては生き返りを繰り返している!?そんなっ…だからあんな暗い目をしていたの?

「クラウディア…同情してしまうのも解ります!はい!でもこれはレシリアのしたこと!そう!女神界では人間に不死能力を与えるのは御法度!つまり汚い手口です!本来なら裁かれるところですがレシリア信仰が強いので私が裁判に出ても負けます、はい!揉み消されますね、はい!」

「女神ザスキア様…では…王子が聖女のものになれば…世界はもはや女神レシリアのものになり貴方はこの世界に一切の干渉もできなくなると言うことですか?」
コンチャーン様が言う。

「そうです、はい…コン…別に貴方や神獣達は仕える女神が変わるだけです、はい」

「…ならば私はザスキア様を応援致しましょう…!」

「エロ狐…こんな不利な状況なのにこっちに付くってこと?あっちの女神のがボインでセクシーだぜ?」

「ふ…巨乳は飽きた!それにか弱い女性を泣かせるわけにはいかぬ!」

「よくぞ!言ったコン!あちらも汚い手口を使っているのなら!こちらもそうするまで!クラウディア!貴方に特別な力を授けます!!はい!」

「えっ!?特別な力!?」

「そうです!バレたらまぁ私もやっばーい!ですが、はい!…あの不死の聖女を唯一その髪で殺せる力を!」

「!!」
と言うとザスキア様は私の髪にキスをして私の髪に物凄い力が流れ込んできた!!

「ああっ!!」

「ずるーい!私にもくれよぉ!女神いいい!」
レーナ嬢が言うが無視された。

「…しかし女神様…王子のあの状態を解くことはできないのですか?」

「大丈夫です…今、貴方の髪に力を与えたでしょう!?見えるはずです、今なら貴方にも王子の胸に突き刺さっているピンクのいやらしきハートが!私の力を最大限に与えたその髪なら神獣のコンやハクでも取り除けないその強力なピンクハートを斬れる!」

「おおっ!じゃあ王子正気に戻れるな!」
レーナ嬢が握り拳を作り喜んだ!

「しかし急ぎなさい!王子は既に聖女をブッシュバウムに招こうとしています!明日香も向かっています!次の新月に明日香とジークヴァルトがキスしたらもうブッシュバウムはレシリアのものです!!」

「!!」
そんな…。

「しっかりしなよ!クラウディアちゃん!私もエロ狐も出来るだけ明日香の入国を阻止する!その間に王都に忍び込み王宮まで行くんだよ!」

「ああ!とりあえず我が女とイチャイチャして宝珠を1つクラウディアに使わせる!それを持てば姿を消せるようにしておこう!それなら王都や王宮にも誰にも見られずに侵入できよう!」
それにレーナ嬢と私はうっ…となった。

「あの…コンチャーン様…宝珠はとりあえず袋に入れて渡してくださると助かりますわ…」

「はいはい、話は纏まったわ!お早く戻りなさい!この女神界は時間の流れが遅いのです!長居してはいけません!もう1日過ぎた頃ですよ!」

「!!」
だからジークヴァルト様はいつも長く寝てらっしゃるのね!

「では、上手くやるのですよ!クラウディア!!」

「はい!女神ザスキア様!!」
そして視界が白くなっていく…。

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