元豚王子VS悪役令嬢

黒月白華

第46話 マスクを準備するぞ!

森や荒野を抜け、ようやくアルデン国の国境近くへやってきた。
馬に乗って並走していたフェリクスが、

「殿下!あの橋を渡るとアルデン国ですよ!王都までは橋を渡って少しかかりますが」

俺は馬車窓からその橋の向こうを見た。
すると黒い霧が覆っているのが見えた!
うえっ!何だありゃ!?

「おい、ちょっと止まれ!!」
と馬車や馬を止めて橋の手前で俺は野営の準備をするように言った。

「どうしたのです?ジークヴァルト様?もうアルデン国は目の前だと言うのに?確かに黒い霧は出ておりますが…」
とクラウディアは聞く。

「いやいや、待って?まだ満月じゃないよな?それなのにあんな中に入って病気貰ったらどうするんだ!?エリーゼちゃんもいるのに!」

「ふむ…確かにな…だがどうするんだ?入らないわけにもいかないだろう?」
とローマンが聞く。

「マスクを作る!!」
と俺は言った。

「マスク!?」

「口に当てる布だ!ちょっと待ってろ!」
と俺は兵士から布切れと裁縫道具で簡易なマスクを作った。ちゃんと耳にかけるヤツだ。

それに祈りを捧げて浄化機能をしておいた!

「そう!これを各自作って俺が祈りで浄化する!んで口にはめてアルデン国に入国する!病気にならない対策だな!」

「なるほどーうちの兵士や騎士団が病気にかからないようにするのかあ…満月までまだかかるし王都までも時間かかるもんねー!やるじゃないかジーク!」
とローマンが感心して俺たちは各自のマスク作りを始めた。

「ふふふ!縫い物なら私得意ですわ!!」

「えっ?本当か?クラウディア?」

「ええ!私傷ついた兵士の傷口を焼いて縫ったことは過去たくさんありましてよ!!」
と恐ろしい方の縫い方を得意げに言った!!
そっちかよおおおお!!?

「じゃあこれクラウディアちゃんの分ね」
とローマンが裁縫道具と布切れを渡した。

「ふふっ!簡単ですわよ!!先程ジークヴァルト様のを見ていましたが作り方は四角く縫って耳あての紐糸を通すだけではありませんか!これなら私でもできますわ!!」
とクラウディアは勢いよく布を持ち針でぶっ刺して白い指もろとも赤い血が垂れた。
いきなり指ぶっ刺したーーー!!

「クラウディア!!何やってんだよ!!」
俺はすぐ様クラウディアの指の傷を癒した。

「クラウディアお姉様の分も私が作りますわ」
とエリーゼちゃんは完璧にマスクを作っていた。ローマンも一応器用に作り、何か独自の模様まで入れた。
それを見てクラウディアは絶望した。
馬車の隅っこにしゃがみ込み

「な…何故ですの?兵士の傷口は縫えて何故あんなのが縫えませんの?やり方は頭にあるのに!何故ですの??やはり私は女子ではありませんの?性別を間違えた…」
とブツブツ言い出す始末だ。

「クラウディア!大丈夫だよ!ちょっと勢いあまり過ぎたんだよ!気にするなって!」

「ううっ…マスク…」
と涙目で見るので俺はクラウディアの手を取り丁寧に教えることにした。

「そうそう…気をつけて針通すんだ。ゆっくりでいいから!…ほら通ったじゃないか!もう兵士の傷口塗ってるイメージを頭に入れとけばいいよ!」

「そ…そうですわね…それなら…あの兵士の傷口を縫った時はこうしてこう!こうしてこう!ですわ!!」

そして皆より遅れてできたクラウディアのマスクはちゃんとマスクに見えた。

「できましたわ!!マスク!!」

「よくやったぞ!偉いぞ!クラウディア!!」
その光景を見てローマンとエリーゼは呆れていたがいいんだ!クラウディアが嬉しそうなら!

とりあえず皆のマスクを集めて俺は祈りを捧げる。すると集まったマスクは白く輝き浄化が完了した。

「おおっ!!」
「これでアルデンに入れるな!」
「ジークヴァルト様はやはり凄い!!」

そして皆はマスクをつけて橋を渡ってアルデンへと入った。

そこら中黒い霧でたくさんだ!
途中森を抜ける時も沢山の魔物が襲ってきてクラウディアは馬車の外に出て闘った!
一回魔物がベシャッと馬車の窓に張り付いた時にエリーゼちゃんが恐怖で叫びコテリと気絶した。
確かにホラー映画では絶叫モノだよ!
この野郎!可愛い妹を驚かせやがって!!
そのまま何とか森を抜け小さな村に着く。

イド村と言うそうだ。村で少し休憩をさせてもらった。俺が隣りの国の奇跡の王子だと判ると物凄い歓迎されたが、皆元気はなく、どんよりとしていた。ゴホゴホと咳をする村人も多くいた。

俺は症状の酷い人に祈りを捧げ、とりあえず回復治療を施した。皆感謝をして涙を流した。
イド村だけでなく通り掛かって助けてくれと言う農奴も沢山いた。

「おい、流石に数が多いしお前も休め!」
ローマンが心配した。

「で…でも…」

「ジークヴァルト様!休んでください!肝心な時に貴方が倒れたらこの国を救うことはできませんわ!」

「そうだぞ!クラウディアちゃんの言う通りだ!人間は休まねばならない!」
ローマン…もっともらしいことを言ってるが…お前は何もしてないからな?

そして何とか俺たちはアルデン国の王都の城壁までたどり着いた!
門番に通して貰い、そのまま王宮へ向かう。

「王都も酷い霧だな。インクを零したみたいだ。これでは病気にならない方がおかしい!!」
街にはあまり人もいない。皆寝込んでいるのかもしれない。満月までまだ1日ある…。

王宮に着いて俺はリヒャルト王子と対面した。
リヒャルト王子は気絶したままのエリーゼちゃんを見て驚いた!

「ジークヴァルト様!何故エリーゼを…!」

「お前が心配だからこっそり付いてきたんだ!」

「そ…そうですか…ゲホッ!」
リヒャルト王子は咳き込んでいる。

「申し訳ありません…国に戻るとやはり体調が悪くなってしまって…。うちの兄上も既に起き上がれなく唸ってます」

「…満月は明日だ。気休めだがこれを付けておいてくれ」
と俺はさっきのマスクの余りをいくつか渡した…。

「すみません…」
とリヒャルト王子はマスクをつけ話した。

「ドラグーの事ですが…ようやく判りました。西のアードラー辺境伯の領地にある湖に棲んでいるみたいです。でも湖の水は真っ黒に変色し影響が出ております。時々ドラグーの咆哮が聞こえ大地が揺れるのです…。ドラグーが怒っているのかもしれません…」

「うーむ…」

「とりあえずお部屋を用意していますので皆さん今日は休んでください!…あ、でもコックが倒れて…」

「そうか…よし!なら俺が料理を作ろう!」
と言うと全員呆気に取られた!

「な!何いってるんですか殿下!!」
流石にフェリクスが突っ込んだ。

「でもコック倒れてんだろ?ならいいじゃん俺が作っても」

「でも!ジークヴァルト様も疲れてるでしょう?道すがら病に侵された者を助けて回ってたのに!」

「何と!ジークヴァルト様!我が国の民を!本当にありがとうございます!もう休んでください!何とか動ける者で食事を…」
とリヒャルトが言うので

「クラウディア…こいつうるさいから気絶させとけ」

「ええ!?流石に不敬ですわ!」

「んじゃ俺がやろう!」
とローマンはいつの間にかリヒャルトに手刀をくらわせ気絶させた。

「うぐっ!」
そしてリヒャルトの従者らしき男に任せて彼は引きづられて行った。
それからメイドに厨房に案内され俺は料理を作り始めた。一応うちの兵士にも手伝ってもらい何とか完成した。

料理を広い兵士食堂に全部並べて俺は一応祈っておいた。食材からもなんか淀んだものが見えたしな。
料理は白く輝いて皆を食堂に集めて食事をした。リヒャルト王子や倒れたニコラウスにも料理を運ばせた。

壁にもたれていたコックの口にも料理を運んでやると目を開き

「うごうっ!!!」
と料理をガツガツ食い出した!!
ひいっ!!

「美味い!!そして気持ち悪いのが治ったあああ!!!」
コックはムキムキ筋肉で復活した!
うん、良かった…。
俺は流石に疲れてバタリと倒れた。

「ジークヴァルト様!!」
クラウディアの声が微かに聞こえた。

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