元豚王子VS悪役令嬢

黒月白華

第35話 王子の休日デート

街中はまだ復興途中で所々修理中の建物が目立った。石の材料に木材が所々に置いてあり、荷押し車に物を詰めて運ぶ人も多かった。この国では子供も普通に働いている。

また道には乞食と思われる子供もおり、思わず金を入れると子供は喜んだが、後からそれを奪おうとする輩も多く、クラウディアが刃物を出して守ると恐れて逃げていった。
この国はまだ貧しいということを実感した。

俺は本当に浮かれてる場合ではないなと落ち込んだ。クラウディアはそんな俺を見てベンチで待っていてと言い屋台でスープを買って戻ってきた。

お菓子は貴族などが食べる物だと俺は知った。
庶民は菓子など食えないのだ。

「ジークヴァルト様の言うデートとはどのような
所に行っていたのです?」
クラウディアは聞きたがったので俺はちょっと眉を下げて前世のデートを話出した。

「映画館や水族館…美術館に遊園地…貴族でなくとも庶民が普通に行ける施設だな。文明の発達した世界なんだ。庶民が気軽に行ける食べ物もお菓子屋も飯屋も普通にあった…。服屋やアクセサリー屋も庶民は普通に利用できる。奴隷制度はなく皆が平等に暮らせる世界。そりゃ一部の金持ちはいるよ。皇族もいる。でもこの世界みたいにそんなに貧しくはないね。そりゃ貧乏人も金持ちもいるけど基本自由だ。働かない奴もいる。子供は働かず勉強の為に学校へ行く」

「まぁ…よく解らないですがとても豊かで裕福な世界なのですね!」

「ああ…馬車なんか使わないね。車があるから。うーん、鉄でできた移動できる乗り物がたくさんある」

「まぁ!馬車がいらないのですか!」
キラキラとした瞳でクラウディアは感心した。

「うん…馬車よりずっと揺れないで速いからね。必要がなくなったんだ」
発展した文化を知ると同時にいらなくなったと聞きクラウディアは少ししょげた。馬が競馬や馬肉になったりすることもある…。この世界では馬は貴重で食べたりなんかしないから俺はその部分は黙っておいた。発展しすぎたら役割を終えるものもある。AIなんか特にそう。

「でも全部人の手で作ったのですね?凄いですわ!エーガとやらから教えてください!」
とクラウディアがねだり俺は順番に説明していった。

「私も見てみたかった…」
クラウディアがそういうので

「俺は前世の発展した所から転生してきたけど…技術屋でもないし頭だって悪いから…よくライトノベルで知識チートして成功してる主人公はいるけど俺には無理だわ。スマホで検索すれば速いかもだけど…勉強は苦手だった。ダメな王子だよ」
言ってることはよく解らないだろうけどクラウディアは必死に返した。

「でも…ジークヴァルト様は目覚めてからこの世界で生きようとこの世界のルールに乗っ取ろうと一生懸命努力したのではないですか?それだけで充分でしょう」

「クラウディア…」
君は本当に優しいな…。
すると中央広場からボロンと音が聞こえてきた。

「何の音だ?」

「きっと吟遊詩人が街へ来ているのですわ!エーガとやらではありませんが行ってみましょう!」
とクラウディアは手を差し伸べたので俺はその手を取り見に行った。吟遊詩人か…。よく出てくるよな。その手のは。

中央広場には既に人集りが多い。親子やカップルに子供や老人などが沢山が集まりその中心に楽器を手に民族衣装を着た男が目元を刺繍の布で隠して弾き語っていた。

ボロロン

「今日は貴族と平民の恋の唄をお聞かせしましょう!」
と詩人は唄いだした。貴族と平民の許されがたくも燃えあがる恋を唄い、涙する観客も多い。全て語り終わると大拍手の中お金を投げるものやキスをする男女もいた。目の毒だわ。

人がはけると俺とクラウディアも金を渡した。
吟遊詩人はクラウディアを見ると固まり、目元の布を外した。
その顔はイケメンだ!!

俺は瞬時にレーナ嬢の
(これからクラウディア様の前に現れるイケメンは全てお前のライバルだと思え)
と言う言葉が浮かんだ!

そして案の定そのイケメン詩人はクラウディアの手を取り甲にキスをした。

うおおおおい!人の婚約者に何してくれとるんだ!こいつは!!
クラウディアも驚いていた。

「貴方のような美しいお嬢さんに会ったのは運命でしょうか?貴方を見ていると素敵な歌詞が浮かんで来ました!是非一曲貴方の為の唄を贈りたい!」
ええい辞めろおおお!そして俺のラップ告白の黒歴史を思い出すから辞めてくんないまじでっ!

「是非お名前を教えていただきたいです。お嬢さん!ああ…私の名は…」
言わせるかあああ!俺はクラウディアの手を取り

「もう行こう!」
と路地裏に全力で走った!
何とか詩人から逃れたと思ったら路地裏から柄の悪そうなチンピラ3人組が現れた!
ベタかよ!!
しかもよく見るとその真ん中のリーダーぽいチンピラがイケメンである!!
フラグまた来たあああ!!

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