元豚王子VS悪役令嬢

黒月白華

第26話 どうしたらいいか判らない

俺が女性に面と向かって気持ちを伝えたのはラップ告白を抜きにしても2回目だ。1回目は前世で高校の時の軽音部の女の先輩にした。
物凄い恥ずかしい思いで勇気を出したがあっさり振られた。

「だって…年下だしルックス勘違いしてるし歌下手だし」
俺はその後泣きながら学校を3日休んだ。
イケメンであればたぶんオーケーしてもらえたんだろうな…その証拠にその先輩は歌が上手くてイケメンの同級生と付き合い出した。

…クラウディアは美少女だし中身が偽物の王子の俺に…告られてどう思うだろう。外見はイケメンだけど…。正直俺は中身もダメなんじゃないかと思う。
どうしたらいいのか判らない。



私は今まで恋をしたことが無い。気のない相手からの贈り物や好意は寄せられたことがある。でも皆私の外見からだ。

しかし王子の蒼く澄んだ瞳に見つめられ手にキスをされ告白をされ私は変な声を出し固まった。
やはり王子もこの外見?
いえ、王子なら私の不器用な所ももう判っているはず!あれだけ沢山無礼を働いたのに、いつも大丈夫と言い笑う。
どうしたらいいか判らない。

((こんなに好きなのに!!))



しばらく沈黙が流れたが
俺はクラウディアに

「と…とにかく人形に祈ろう!!俺の部屋はどっちかな?」

「そ…そうですわね!向こうかもしれませんわね!」
と気まずい中歩くと階段が4つ現れた。

「どれだ?たぶん俺と王と王妃の部屋にユリウスにエリーゼかな」

「そうだと思いますわ…王と王妃はご不在でしょうから何とかなるとして…とりあえず行きましょう」
と一つの階段を登り始める。結構長いな。
しかしようやく光りが少し見えてきた。暖炉の口から顔を出すとギラリと冷たい刃が当たる。

「ぎゃっ!!」
その声を聞き

「何だ兄上か…何やってるの?僕の部屋の暖炉で!刺客かと思ったよ」
とナイフを引っ込めたユリウス君がいた。
俺はクラウディアと暖炉から出た。

「わ!クラウディアお姉様までいたの?何してんの?夜会は?隣国の王子が来てるのに何こんなところで逢引してんの?」

「ちちち!違いますわ!ユリウス殿下!逢引などそんなっ!」

「そそそそう!なんかその!庭を歩いていたらこの隠し通路に気付いてさ!でも階段が4つあったし!適当に登ったらユリウスくんの部屋の暖炉に繋がってるとはねぇ!!」
と俺は誤魔化した。

「何で夜会を抜けて庭に?何かあったんでしょ?」
ぐうっ!鋭い子だねユリウスくん!

「ユリウス殿下?賊の気配を察したのはいいですが、本来なら寝ている時間でしょう?夜更かしはいけませんよ?」
とクラウディアが叱ると

「はぁい…、ごめんなさい」
と素直に謝る。

「それではお邪魔しましたわ。ごゆっくりおやすみになるのですよ?」
と子供好きクラウディアはユリウスくんの頭を撫でた。

「はぁい、お姉様も兄上とこれから一緒にお休みになるのですね?お休みなさい!!」
とクールに笑い部屋から追い出され扉を閉められた。
流石に顔が赤くなる。
違うから!ユリウスくん!人形祈りに行くだけだから!!だが、俺の心臓はバクバクしていた。明日決闘だと言うのに!
でも負けたらクラウディアはあの野郎に取られる!そそそその前に……って俺のバカめバカめバカめっ!

ガンガンガンと頭を壁に打ち付ける奇行にクラウディアが驚いた。

「何してるのです王子!お辞めになって!?」

「ハッ!!」
クラウディアが心配そうに覗く…畜生…何をしてるんだ…。今不安なのはクラウディアだ。

「ごめん…部屋に行こう…どうなるか判らないけど…」
もしどうにもならなかったらと思うと辛い。

部屋につき灯を灯して人形を持ってくる。

「まぁ…これが女神ザスキア様…何て変な格好…」
そりゃグレーのスーツ姿の人形なんて違和感半端ないよな?普通の女神っぽい格好させときゃ良かったかな?と俺は思った。

「あはは!じゃあ始めようか…」
と俺は人形に向かい祈り出すと俺と人形が光り始めて眩しい閃光になる!

「きゃっ!」
光りに飲まれそうになるクラウディアを必死に引き寄せると…

目の前にあの例の神殿が!
しかも今回はクラウディアも一緒に来ちゃったよ!!

「ここは…どこですの?私たちはお部屋にいたのに…」

「あー…クラウディア…ここは…あそこだよ女神がいるとこ…」

「ええっ!?」
クラウディアも驚いて神殿を見た!
そこに聞き慣れたカツカツしたヒールの音。
グレーのスーツにメガネをかけた水色の髪をポニーテールにした公務員風のおばさんが現れた。

「おばさんではなーい!お姉さんですはい!私が女神ザスキアですはい!」
とメガネをクイっと上げた。

「めめめめ…女神ザスキア様っ!!」
クラウディアが驚きそして床に額をつけた!
ええええ!何してんのクラウディア!!

「これが当然の反応ですわはい!苦しうない、顔をあげよ!」
あんたどこの殿だよ!!

「あらあらここに女を連れ込むなんて貴方もやらしいわね?1時間3万円ですはい」

「違うしっ!ホテルで休憩とかじゃないから!てか最低だわあんた!!」

「ホテルとは…なんですの?」
キョトンとするクラウディアに女神は

「あらホテルはね?あんなこ…もがもが」
俺は女神の口を押さえた!

「クラウディアはんなこと知らなくていいんだよ!!」

「はあ?」

「お離しなさい!!」
ゴスっと容赦なく女神はイケメンを殴る。
痛くないにしろ扱い酷い。

「貴方達がここに来たことくらいこの女神ザスキアは全て解ってますはい!ヤンデレ王子との決闘に力をくれーと言いたいのでしょう?」

「そうです!」
そういやこいつ前に何でもお見通しとか言ってたな。

「貴方達が通路でイチャコラしてたのも見ていたわ」
ニヤリと笑い

「見るなよそこは!!」
と俺は恥ずかしくなった。

「ところで…力ですが…今の貴方は力不足…。誰がどう見ても負けますねはい!可哀想に婚約者ちゃんはヤンデレに鎖に繋がれ一生あんなこ…」

「だから下品なこと言うな!」

「…一つだけ方法がありますはい。一時的に婚約者ちゃんの髪の力を借りるのです。婚約者ちゃん髪の毛を少しいただけるかしら?」

「は…はいザスキア様…」
とクラウディアは自分の髪の毛を切って渡す。
それに

「んんんんーー!!ほーれんそうー!!」
は?ほうれん草?なんじゃそりゃ?

「昔某アニメで恋人を助ける為にほうれん草を食べてパワーアップする主人公がいたのよ…」
俺は遠い目で

「あっ…ふーん…」
とだけ言った。

「凄くない?ほうれん草よ?」
クラウディアはどう返したらいいのか困って俺の裾を持った。うっ!可愛い!

「まぁそんなわけでこの私のほうれん草女神力をこの髪の毛に込めたわ!ただし!効果は5分間よ!5分でヤンデレをぶっ倒せなければ終わりだからね!これを貴方が使う武器に吸収させるの。髪の毛ドーピングねっ!はい!おっほほほほ!」

「うるせー!ドーピングとか言うなこら!!」

「あっ、あの!よく解りませんがありがとうございます!ザスキア様!!」
とクラウディアは頭を下げた。

「まぁなんと可愛らしいの私の民は!あんたも見習いなさいはい!じゃあねっ!じゃあね!またね!」
と視界は白くなり気付くと…俺とクラウディアは…抱き合っていた。

「うわあっ!!」

「きゃっ!!」
思わず離れたがクラウディアは切れた自分の髪の毛を握りしめていたことに気付き見つめた。

「ジークヴァルト様…私女神ザスキア様にお会いできましたわ…ありがとうございます!」
と微笑んだ。

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