元豚王子VS悪役令嬢
第5話 ダンスなんてしたくないのに
「ダンスの練習をしましょうか殿下」
フェリクスが講師のモーニカ・ゴッチャル夫人を呼んだ。化粧の濃いおばさんだ。
けっ!何がダンスだ!
もうすぐこの国の建国記念日とかで貴族やらを呼んだパーティーが開かれ、こともあろうに第一王子の俺は婚約者のあのクソ女クラウディアとファーストダンスとやらを皆の前で恥晒しのように最初に踊らなくてはならないのだ!
もちろんダンスなどしたことない!俺は日々痩せることに尽力していたし!
そのおかげであの女と会って3ヶ月過ぎた今、多少の肉は見た目でも分かるくらい痩せてきてる!努力はするもんだわ!
もうちょっと頑張ればスレンダー美形だ!
だがあの女とのダンスなんてほんと腹が立つ!
それより婚約破棄する絶好の機会!
「殿下…言っておきますが建国記念日に婚約破棄の発表などしないでくださいね?おめでたい日なのに一気に国民が沈みます」
「うっ…」
考えを見透かされ俺は渋々ダンスの練習を夫人と始めるが靴を何度か踏みつけ夫人に睨まれた。
「すみません…」
一応謝るが夫人は厳しく言う。
「殿下…記憶を失ったと聞きましたが、以前からの殿下もダンスは出来なかったのでお構いなく!まずエスコートの際は女性の手を下から取るのです!上から取ってはいけません!それから必ず左回りで踊ってください!これはルールです!」
「え…はい…」
社交ダンスなんて知らねぇし!ルールとかめんどくせえな…
「それから殿下は汗をかきやすい体型なので匂いに注意してください!でもキツイ香水は使わないように!パートナーに失礼ですからダンス前に着替えを一度しておいた方がいいでしょう!」
「踊る前からそんなに気にせんといかんのか!」
「マナーです!当たり前なんです!!体臭や口臭に気をつけてください!」
なんだよめんどくせえなっ!いちいち着替えに行く時間のが疲れるわ!俺が臭いってんなら踊るなよ!
*
「はぁ…ダンス…婚約破棄はできないしダンス…。屈辱だわ…あんな豚とファーストダンスだなんて!そうだわ!わざと靴を踏んでやるわ!それにドレスはあれでいいわ!!ヘンリック!例のパイを投げられたドレスにして!」
「お嬢様!?新しいドレスを新調なさらないのですか?」
ヘンリックが驚く。
「この国は貧しいわ、ドレスの新調など必要なくってよ!私は笑われに行くんじゃないわ!あのドレスをあの豚に見せつけて本当に記憶がないのか確かめてやるわ!」
おーほほほほほほ!とクラウディアは赤い髪を揺らし笑った。
*
ブッシュバウム王国建国記念日…。とうとうその日がやってきた。
俺は金髪を綺麗にセットされ少しだけサイズがダウンした式典用の正装を用意された。新調したので金かかって悪いけど仕方ない。
「なるべく汗かかないようにしよ」
しかし会場には人が多い。熱気でやられそう。
出会いを求めてくる男女も多いと聞くし…。
料理も今日は高そうなものが並んでる。
俺は食べないようにしよ。食べてもサラダ。
俺を見てどっかの貴族がヘコヘコ挨拶してくる。皆俺を見て
「殿下!お痩せになられましたな!」
「ああ…少しね…今痩せる為に頑張ってるところ。中間くらいにはなっただろ?」
「ええ!なんだか凛凛しくもなられてますよ!応援いたします!」
「ありがとう頑張るよ」
誰か知らんけど俺は凛凛しくと言われ嬉しくなる。良かった。ちゃんと成果は出てるもんな。
「そう言えば殿下…クラウディア様にドレス等はお贈りしたのですか?」
「は?何で?」
「えっっ!?何でって婚約者でしょう?」
「知らん…お前が贈ったんじゃないの?恋仲なんだろ?」
「だーかーらー!あれはあの花のせいだと何度言えばいいのです!誤解ですよ!クラウディア様には私などとても釣り合えません!」
ふん!そんな誤魔化してもダメだぞフェリクス!
とそこでザワッとホールが騒がしくなる。
人集りの中現れたのは数ヶ月ぶりに見る赤い髪の威圧的な美少女だ。ドレスは薄いブルーグレー色で胸元にキラキラした石や刺繍が付き首には派手すぎない落ち着いたアクセサリーが付いている。どこから見ても美少女。
彼女に声をかける男性の数は多い。
一方俺はどっかの貴族のお父さんと一緒に挨拶に来る娘がちらほらいるくらいだ。
「あら…ジークヴァルト王子ご機嫌よう!見ない間にまたすこーしお痩せになられたのかしら?お腹が少し引っ込んで良かったですわね!」
なんて奴だ!嫌味たっぷりだなおい!
「日々頑張ってるから…」
と言うとクラウディアは
「あら私との約束かしら?律儀なことね」
「違うわ!自分の為だわ!お前の為じゃない!」
「それより…このドレスどうですの?」
と彼女はドレスを広げて見せた。
「どうって…似合ってらっしゃいますよ?赤い髪が際立つというか。いいんじゃないですかね?変な色の組み合わせだと逆に浮くし…」
と言うと彼女は驚いた顔をした。
「……覚えてない?…」
「は?何のこと?俺が褒めたのが気にくわないならもう言わんよ…」
「貴方…このドレスを覚えてませんの?」
「は?そんなドレス初めて見るよ!何?」
「……これは貴方があの日パイを投げたドレスです」
と聞いて俺は驚いてドレスを見る。綺麗にされてるから新品かと思ったが
「えっっ…!?そうなのか?」
「………演技?」
「は?」
こいつ…まだ俺が記憶無いの疑ってたのか!全く信用されてないってことかよ!!
その時後ろから軽薄そうな美形男子が話しかけて来た。
「やあやあ!クラウディア嬢に我が従兄弟のジーク!久しぶりだねぇ!!」
「ローマン・エーレンフェスト様っ!!」
クラウディアはドレスの裾を摘み淑女の礼を取る。
誰だこいつ?従兄弟だって?
確かに俺と似たような金髪に青い目だな。血統だな。
「…ジークお前記憶無くしたって聞いたけど本当だったのか?それに痩せてる…何があったんだ?」
「ローマンって言ったな?俺は記憶がないからお前とは初めて見ることになる…従兄弟なんていたんだな…まぁそりゃいるよな。よろしく」
と手を差し出すと恐ろしいモノでも見たかのようにローマンは
「ジークが俺に握手しようとしてるっ!怖っ!!毒針でも仕込んでんの?」
「ああっ?何でだよ!!」
どいつもこいつも誰一人信じないんでやんの!
すると父と母の挨拶が始まったようだ。
「皆、よく集まってくれた!この国は5年前東の国に敗戦したが皆が頑張ってここまで復興を果たしたこと感謝する!今日を忘れず過去を忘れず、そして未来へと受け継ごう!そして女神ザスキア様に祈りを捧げよう!!」
ん?女神ザスキアって俺をこの世界に送ったあの忙しい人の名前じゃん!なんかスーツっぽい服着てネームプレートに女神ザスキアって書いてあったの見た。
……まじかよ…。
「女神ザスキアとこの国に祝福あらんことを!!」
とその場の全員が暫し手を組んで目を瞑って祈り始めた!!
まじかよ!おい!女神何もしてねえじゃん!
この国敗戦したじゃん!!
女神に頼るのやめたらいいのに…って思った。
そうこうしてたら音楽が鳴り始めた。
よし、汗はかいてない!
臭くないな?口臭も大丈夫だろうし。
「クラウディア嬢…俺とファーストダンスを」
さっさと終わらせたくて俺は手を差し出した。
フェリクスが講師のモーニカ・ゴッチャル夫人を呼んだ。化粧の濃いおばさんだ。
けっ!何がダンスだ!
もうすぐこの国の建国記念日とかで貴族やらを呼んだパーティーが開かれ、こともあろうに第一王子の俺は婚約者のあのクソ女クラウディアとファーストダンスとやらを皆の前で恥晒しのように最初に踊らなくてはならないのだ!
もちろんダンスなどしたことない!俺は日々痩せることに尽力していたし!
そのおかげであの女と会って3ヶ月過ぎた今、多少の肉は見た目でも分かるくらい痩せてきてる!努力はするもんだわ!
もうちょっと頑張ればスレンダー美形だ!
だがあの女とのダンスなんてほんと腹が立つ!
それより婚約破棄する絶好の機会!
「殿下…言っておきますが建国記念日に婚約破棄の発表などしないでくださいね?おめでたい日なのに一気に国民が沈みます」
「うっ…」
考えを見透かされ俺は渋々ダンスの練習を夫人と始めるが靴を何度か踏みつけ夫人に睨まれた。
「すみません…」
一応謝るが夫人は厳しく言う。
「殿下…記憶を失ったと聞きましたが、以前からの殿下もダンスは出来なかったのでお構いなく!まずエスコートの際は女性の手を下から取るのです!上から取ってはいけません!それから必ず左回りで踊ってください!これはルールです!」
「え…はい…」
社交ダンスなんて知らねぇし!ルールとかめんどくせえな…
「それから殿下は汗をかきやすい体型なので匂いに注意してください!でもキツイ香水は使わないように!パートナーに失礼ですからダンス前に着替えを一度しておいた方がいいでしょう!」
「踊る前からそんなに気にせんといかんのか!」
「マナーです!当たり前なんです!!体臭や口臭に気をつけてください!」
なんだよめんどくせえなっ!いちいち着替えに行く時間のが疲れるわ!俺が臭いってんなら踊るなよ!
*
「はぁ…ダンス…婚約破棄はできないしダンス…。屈辱だわ…あんな豚とファーストダンスだなんて!そうだわ!わざと靴を踏んでやるわ!それにドレスはあれでいいわ!!ヘンリック!例のパイを投げられたドレスにして!」
「お嬢様!?新しいドレスを新調なさらないのですか?」
ヘンリックが驚く。
「この国は貧しいわ、ドレスの新調など必要なくってよ!私は笑われに行くんじゃないわ!あのドレスをあの豚に見せつけて本当に記憶がないのか確かめてやるわ!」
おーほほほほほほ!とクラウディアは赤い髪を揺らし笑った。
*
ブッシュバウム王国建国記念日…。とうとうその日がやってきた。
俺は金髪を綺麗にセットされ少しだけサイズがダウンした式典用の正装を用意された。新調したので金かかって悪いけど仕方ない。
「なるべく汗かかないようにしよ」
しかし会場には人が多い。熱気でやられそう。
出会いを求めてくる男女も多いと聞くし…。
料理も今日は高そうなものが並んでる。
俺は食べないようにしよ。食べてもサラダ。
俺を見てどっかの貴族がヘコヘコ挨拶してくる。皆俺を見て
「殿下!お痩せになられましたな!」
「ああ…少しね…今痩せる為に頑張ってるところ。中間くらいにはなっただろ?」
「ええ!なんだか凛凛しくもなられてますよ!応援いたします!」
「ありがとう頑張るよ」
誰か知らんけど俺は凛凛しくと言われ嬉しくなる。良かった。ちゃんと成果は出てるもんな。
「そう言えば殿下…クラウディア様にドレス等はお贈りしたのですか?」
「は?何で?」
「えっっ!?何でって婚約者でしょう?」
「知らん…お前が贈ったんじゃないの?恋仲なんだろ?」
「だーかーらー!あれはあの花のせいだと何度言えばいいのです!誤解ですよ!クラウディア様には私などとても釣り合えません!」
ふん!そんな誤魔化してもダメだぞフェリクス!
とそこでザワッとホールが騒がしくなる。
人集りの中現れたのは数ヶ月ぶりに見る赤い髪の威圧的な美少女だ。ドレスは薄いブルーグレー色で胸元にキラキラした石や刺繍が付き首には派手すぎない落ち着いたアクセサリーが付いている。どこから見ても美少女。
彼女に声をかける男性の数は多い。
一方俺はどっかの貴族のお父さんと一緒に挨拶に来る娘がちらほらいるくらいだ。
「あら…ジークヴァルト王子ご機嫌よう!見ない間にまたすこーしお痩せになられたのかしら?お腹が少し引っ込んで良かったですわね!」
なんて奴だ!嫌味たっぷりだなおい!
「日々頑張ってるから…」
と言うとクラウディアは
「あら私との約束かしら?律儀なことね」
「違うわ!自分の為だわ!お前の為じゃない!」
「それより…このドレスどうですの?」
と彼女はドレスを広げて見せた。
「どうって…似合ってらっしゃいますよ?赤い髪が際立つというか。いいんじゃないですかね?変な色の組み合わせだと逆に浮くし…」
と言うと彼女は驚いた顔をした。
「……覚えてない?…」
「は?何のこと?俺が褒めたのが気にくわないならもう言わんよ…」
「貴方…このドレスを覚えてませんの?」
「は?そんなドレス初めて見るよ!何?」
「……これは貴方があの日パイを投げたドレスです」
と聞いて俺は驚いてドレスを見る。綺麗にされてるから新品かと思ったが
「えっっ…!?そうなのか?」
「………演技?」
「は?」
こいつ…まだ俺が記憶無いの疑ってたのか!全く信用されてないってことかよ!!
その時後ろから軽薄そうな美形男子が話しかけて来た。
「やあやあ!クラウディア嬢に我が従兄弟のジーク!久しぶりだねぇ!!」
「ローマン・エーレンフェスト様っ!!」
クラウディアはドレスの裾を摘み淑女の礼を取る。
誰だこいつ?従兄弟だって?
確かに俺と似たような金髪に青い目だな。血統だな。
「…ジークお前記憶無くしたって聞いたけど本当だったのか?それに痩せてる…何があったんだ?」
「ローマンって言ったな?俺は記憶がないからお前とは初めて見ることになる…従兄弟なんていたんだな…まぁそりゃいるよな。よろしく」
と手を差し出すと恐ろしいモノでも見たかのようにローマンは
「ジークが俺に握手しようとしてるっ!怖っ!!毒針でも仕込んでんの?」
「ああっ?何でだよ!!」
どいつもこいつも誰一人信じないんでやんの!
すると父と母の挨拶が始まったようだ。
「皆、よく集まってくれた!この国は5年前東の国に敗戦したが皆が頑張ってここまで復興を果たしたこと感謝する!今日を忘れず過去を忘れず、そして未来へと受け継ごう!そして女神ザスキア様に祈りを捧げよう!!」
ん?女神ザスキアって俺をこの世界に送ったあの忙しい人の名前じゃん!なんかスーツっぽい服着てネームプレートに女神ザスキアって書いてあったの見た。
……まじかよ…。
「女神ザスキアとこの国に祝福あらんことを!!」
とその場の全員が暫し手を組んで目を瞑って祈り始めた!!
まじかよ!おい!女神何もしてねえじゃん!
この国敗戦したじゃん!!
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