彼氏が悪の組織の戦闘員Eなんですが…

黒月白華

第95話 酔ってるトッキー

「はっ…」
お酒の匂い…。
彼女からの口付けが滅多にないのでしばし思考が停止しかかるがこれは間違いなく飲酒!
誰だ!酒を飲ませたバカは!

「このジュースとってもおいひいのよあはっ」
と彼女はまたジュースと勘違いしたものを口にしようとするので僕は慌てて取り上げる。

「ダメだよ時奈さん…これは」

「なんれ?独り占め?ううっ…」
と彼女はむくれて、ポカポカ叩く。全く痛くない。しかしこんなとこを四宮先生にもし見られたら飲酒したことで停学くらいくらうか?それは正気に戻った彼女がショックを受けるだろう。

「らいたい…吉城くんなんれ…もん…」
ん?

「どうしたの?時奈さん?」

「時奈や!トッキーらもん!トッキー!トッキー!トッキー!」
どうやらこの状態の時はトッキーと呼ばないといけないらしいな。

「わ、解ったよトッキー…落ち着いて?お水飲む?」
しかし彼女はにへらと笑うと

「よくできました!」
と舌で僕の頰をペロペロ舐め始める!
ええ!?理解が追いつかない!!
嬉しいけど何でだ!?こんなのこの先もし時奈さんが大学生や社会人になって酒の席で飲まされたら誰かにこんなことするっての??これはまずいでしょ!!

「トッキーは吉城くんのー猫なの!キナコ羨ましいのっ」
あああっーー!キナコ!キナコに対抗していたのかっ!理解が追いついた!

「ああ…そうトッキーは猫なのかあ…」
すると彼女は僕を椅子に座らせると自分から膝にのって甘え出した。グリグリ胸に頭を押し付け本当に猫みたいになった。
くそっ!理性が持つか!?
とりあえず頭をよしよしと撫でる。
この子は今猫だ!
何とかそう思わないと…。
しかし彼女はピタリと止まり今度は泣き始めた。
ええっ!どうした?

「どうしたの?何が悲しいの?」

「ふぐっ!トッキーは無いのです!!」

「何が無いの?何か無くしたの?一緒に探そうか?」

「ふわん……」
クリクリ首を振り違うという彼女にどうしたものかと思っていると彼女は僕の右手を掴んで自分の胸に当てがった!
うっ!!

「トッキーないのおおおおおお…もがっ!!」
慌てて左手で彼女の口を塞ぐ。

「大丈夫!あるからねー?そんなこと気にしなくていいんだよー?」

「だって…吉城くん大きいの好きれしょ?」

「いやいや大きさとか気にしてないよ?だから離して」

「ふぐっ!!やっぱりトッキーのは嫌なのね」

「そそそそんなことはないよ?僕はトッキーなら全部大好きだからね?」
とニコリと微笑むとトッキーがふにゃりと力が抜けた隙をつきようやく左手から逃れる。
はあっ!恐るべしトッキー!早く目を醒させないと!

このままではいろいろやばい!もし先生達が上がってきたらっ!!
しかし手荒なことはしたくないし。手刀で眠らせることは出来そうだけどさすがに彼女にむかってそんなことは出来ない!
これが酔っ払った隆さんなら遠慮なくやってただろう!

トッキーがまた甘えて身を寄せてくるし!こんなクソ可愛い猫がいるかあ!!
思わず額にキスすると

「にゃっ…」
と言う。もはや猫!
ダメだ…僕の理性が破壊される前に水を飲ませないと…。と水差しを探す。
離れたテーブルに置いてあるのを発見し、トッキーを抱えて何とか近づいてグラスに水を注がなければならないな!

と頭の中でシュミレーションしているとトッキーが今度は服のボタンを外し始めるので慌てて手を止めさせる。こんなとこを見られたらまた四宮先生が不順異性交友だなんだと言われかねないぞ!後見えた下着可愛いね!!

「暑いの…」
僕はたらりと汗をかく。
そしてザザッとボタンを止めると

「そうか!暑いね!トッキーお水を飲もうね!」
とトッキーを抱えて水差しへ向かった。グラスに注いでどうぞと差し出すとトッキーが熱い視線で僕を見ていた。
うぐっ!!どんだけ僕の心を乱す気?
仕方なく…僕は水を含み口移しでトッキーに飲ませる。

何度か飲ませるとようやくトッキーが目を擦り始めた。眠くなったのかそのままくたりと寝息を立てて寝始めた!よしっ!セーフ!!

トッキーをソファーまで運び寝かせる。僕は上着を脱いで彼女にかけるとささっと彼女が飲んでいたジュース…いや酒を海に投げ捨てて置いた!証拠隠滅だ。高い酒だろうがもう知るか!

そして上から真っ赤な顔した四宮先生が駆け出してきて

「あ、あら?雪見さん寝ているの?」

「そ!そうなんです!天気もいいし昼寝です!」

「あら…そう…変なことしてないわよね?」

「してません!先生こそ顔が赤いですけど何かされました?」
絶対なんかされてるわ!

「ままま…まさか!先生は何もされて…ませんからっっ!!」
とだーっとデッキの端まで走って風に当りに行った。
僕はチラッと船室を覗いてみると、イケメンの頰に手形がクッキリと映っていた。
でも今日一幸せそうにニヤニヤしている暁雄さんがいた。

「おい…この色魔…」

「あっ…吉城…その呼び方はやめなさい!でもちょっと押し倒してキスしただけなんだけどね」

「アホか!そんなことはどっか他でやれ!」

「吉城こそ…大福ちゃんとイチャイチャしてたんじゃない?あ、そう言えば俺のワインどこだっけ?」

「…さあ…」
海の藻屑だよ!



しばらくして私は心地良い海風と共に目を覚ますとすっかり夕方だ。
側に吉城くんがいて頭を撫でている。

「あ…起きた?トッキー?」

「は?トッキーって?」
彼はしまったというような顔をして

「何でもないよはは!それよりディナーの用意が出来たし食べて帰ろうって話だよ?」

「そうなの?私いつの間に寝ちゃったのかな?何も覚えてないの…?何かあった?」
すると彼は赤くなりゲホンと咳をすると

「うん、何もなかったよ?」
と誤魔化した!絶対何かあった!!何をしたの?いやされたの??

「時奈さん…ほらディナーに行こう?」
と彼に連れられ四宮先生や暁雄さん達と共に豪華な夕食を食べた。
四宮先生は豪華料理に感動している。
暁雄さんがまた指輪を出すけど四宮先生は赤くなり

「生徒の前で変なことしないでください!!」
と一括していた。

「それは二人きりならオッケーってこと?」

「そういう問題では!!」
と愚痴る先生を他所にシェフが年代物のワインはどうかと持ってきた。

ガタンと吉城くんが席を立ち

「いやいや!アルコールなんて未成年の前で出してはいけません!!他のものを!!」
シェフが気迫に青ざめ

「すみません!すぐに違うものを!!」
と走った。

「流石栗生院くん!そうです!お酒は成人してからですしね!」

「そうですよ先生!全くその通り!先生を酔わして襲おうとする色魔もいそうですし!」

「おい吉城いい加減にしろよ?はーん?お前まさか…」
とそこでブスリとダーツ矢を暁雄さんの額に刺した。
てめえ余計な勘ぐりしてんじゃねぇと睨む。
時奈さんは不思議な顔をしているがクルーザーを降りてようやく帰路に着く。
四宮先生は

「今日は予定外なことが多かったけどこれからも先生は先生をやっていけそうだわ!栗生院くんありがとう!」

「いえ、辰巳さんのとこにいつでも訪ねてやってください」

「判ってるわ!それではまた学校でね!」
と四宮先生は帰ろうとして

「凛子さん!送ります!」
と暁雄さんが後を追う。

「僕達も帰ろうか?」

「うん、あ…キナコにお土産買って帰ろうよ」
と言われてドキリとした。

「そ、そうだね!キナコの喜ぶオモチャでも買って帰ろうね!」
と二人でペットショップへと向かった。

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