彼氏が悪の組織の戦闘員Eなんですが…

黒月白華

【閑話】もう一人の正体を知る者

「おい、聞いたか?ラキュラス総帥…3ヶ月海外に出張らしい」
Aが羨ましそうに言う。

「んだ?それ?俺たちが怪人と戦っているっつーのに海外で遊んでんのか?」
Cがキレ気味に言う。

「お前じゃねぇんだからC。なんでも海外でも悪の組織の支部を作るらしい。これからはグローバルな時代なんだよ!狭い日本に留まってても仕方ねぇってな!」
とAが言う。

「それより…なんか最近のEおかしくない?」
とDがチラリとEを見る。

「あ…ああ、どうしちまったんだE?まるで人が変わったような…」
とBもチラリと休憩室に竹刀を持ち殺気を放つEをABCDは見ていた。

「……何見てんだ?てめえら!仕事に集中しろ!この後出番だろうが!!」
その声は確かにEの声だが、以前と違いすぎ!Eってもっと謙虚じゃなかった?

「もしかして彼女と別れてグレちまったとか?E若そうだからな…そういう時期なのかも…」
Bがしみじみ言う。

「それで最近竹刀持ってんの?」

とそこでガアンと竹刀が床に叩きつけららる。

「時間だてめえら!行くぞ!もたもたしてんじゃねぇ!シャキッとしな!」

「「「「は、はい!!」」」」

クソがっ!悪の組織の戦闘員がいくら雑魚集団とは言え、こんなグダグダしてっから毎回負けんだ!
とEの身代わりの舞川枝利香はマスクの下で思った。

私のところに変な爺さんが来たのは最近のことだ。バイトをしないか?とのことだ。

「バイトならもうしてるっつーの!」
私は父が早くに亡くなり、母親はどうしようもないギャンブル好きのクズと再婚し弟2人ができたがそいつがすぐに暴力を振るうので私は強くなる為に鍛えた。
この頃から近所で私にかなう奴はいない。クズ男から母や弟達を何とか守ってきた。
しかし借金してクズ男がキャバ嬢と逃げやがった!
母は私をなんとか女子校に通わせる為に親戚からさらに借金し家計は火の車だ。
私は高校に通いながら学校帰りにはバイトをかけもちしながら毎日働いてた。

そこへ変な執事服の爺さんが現れたのだ。

「少々貴方のことを調べましてね…適任だと思いまして」
と爺さんは言った。

「何の怪しいバイトか知らねえがキャバ嬢系は諦めんだな!キャバ嬢大嫌いだし、この断崖絶壁の胸じゃできないだろ!」

「いえいえ、それが良いのです」

「てめえジジイ殺されてえのかっ!」
ちょっとダンディなジジイだと思って話してやったらこれかよ!

「ご自分でおっしゃったのに…。いえ…申し訳ありません。ところで…バイトの時給ですが一つは時期5000円で、もう一つは時給1万円です」

「おいおい、キャバ嬢じゃなきゃ怪しい薬でも売らせようっての?高額バイトなんて詐欺の常套手段だよ!誰が信じるか!」

「では仕方ありません…貴方の家族や家ごと爆破させていただきます」

「は?」
なんかとんでもないことを言われた。
脅迫かよ?

「てんめえ!ジジイ!老人でも容赦しねえ!」
と私はジジイに向かって拳を振り上げたがジジイは流れるような動きで私の片腕を取り
いつの間にか世界がグルリと回っていつの間にか地面に寝ていた。

……このあたしが…簡単に…こんなジジイに…。

「大丈夫ですか?どこか痛みは?なるべく怪我しないよう背負い投げただけですが…」

「…ジジイ…なんなんだお前!」
ただ者でない。

「…バイトを引き受けていただけるならお話します」

「はっ!しないとうちの家族は死ぬんだろう?だったら選択権なんてねぇよ!」
そして私はジジイからバイトのことやこの所話題のあの事件のことを聞かされ悪の組織のトップの事情まで知り、
要するにその総帥の代わりに戦闘員Eの身代わりバイトをしばらくと女子校に通ってる話題のクラスメイトに接近して
あんまり目立つ行動をしやがる女生徒を牽制する役目を負わされたのだ。

「おい、戦闘員Eの代わりなんて…私は女だぞ?胸はまだしも声とかでバレんだろ!」

「変声器で坊っちゃまの声にできますし、戦闘中はほとんどEしか言いませんし…レッドにさえ注意していただければ」

「レッド?」

「はい、レッドは勘がいいし、女好きです。仲間達は騙せてもレッドに気付かれる危険もありますが」
怪人共と戦っている正義のヒーローか…。確かにレッドはイケメンでクラスの女子もギャアギャア叫んでるが
裏では何股もかけてるクソたらしらしいと聞いたこともある。

「女たらしのクソがヒーローとか笑わせやがる!いいだろう!私がボッコボッコにやってやらあ!」

「いえ、いつも通り適当に負けといていただかないと怪人の出番が」

「あんたんとこの大将は怪人にどういう教育してんだよ!毎回お決まりのごとくやられやがって!勝つ気ないだろ?まぁ程々にバイトはやっておくけどな!」

「ありがとうございます…はっ!」

「ん?」
その時運転を謝ったバイクがこちらにやってきた!ヤバぶつかる!
と思ったらフワリと身体が浮いて私はジジイに抱えられて避けた。

ドクン!

な、何だと?こっ…このジジイ!
やっぱりよく見るとカッコいい!
イケジジイの背後に薔薇の幻が咲いて見える。
私はかなり年上好きなようだ。

「大丈夫ですか?舞川さん」
とジジイが聞いて私は目をハートにさせて

「だ、大丈夫だキュン!」
と言った。自我がぶっ飛んだ。
ジジイに何か汗が浮かぶが

「それではバイトをお願いしますよ?雪見様のこともどうぞよろしくお願いします!できればあの方とお友達になっていただければ坊っちゃまも喜びます!坊っちゃまの総帥の正体の方は隠していただければ…」

「わかったキュン!」
と私はバイトを引き受けたのだ。

ジジイに…鳴島さんに妙な闘いは見せられねえ!ヒーロー達!お前らに罪はねぇがたまにはやられときな!
とレッドに向かって竹刀を振り回すと

「あれー?おかしいな?本物のEくん…じゃないね君?」

「E~!!」
竹刀をバシンと奴に当てようとしてあっさりレッドに止られる。そして腰を引き寄せられて

「その声は機械かな?君みたいな女子が暴れちゃダメだよっ?」
と耳元で甘い声を囁いてくる。
さすが女殺しと言われるだけはある。もう私の正体が女だと気付かれるとは!
聞いてた通り勘がいいみたいだな!
と私はレッドの股間を蹴ろうとしたがレッドは気付いて離れた。

私はその隙に逃げる。レッドは忘れ物だと竹刀を投げて寄越す。

「また会おうね、子猫ちゃん!」
とか言いながら。このクソ野郎め!
他の皆はボコボコにやられているところで

「お前達!下がれ!ヒーロー共め!私の可愛い下っ端共をいじめやがって!覚悟しろ!」
と豚の頭をした怪人が現れたので
私は豚怪人に近づいてこっそりとヒソヒソ喋った。

「おい、クソ豚野郎!てめえ少しはヒーロー痛めつけろよ?出来ないと焼き豚だからな?」
と喝を入れた。

「なっ?何だお前上司に向かってその態度は!」

「五月蝿え豚。幹部様からの御警告だよ。おら、これ強化薬だってよ!開発中らしいけど今日の闘いはデーターを取らせてもらうってよ?せいぜい全力で戦うこった。後、豚なら豚らしく語尾にブヒくらいつけとけ!」

「はっ、はいいブヒ!」
と言い残し私は仲間達と去った。
後は…もう一つのバイトの方もゆるゆる頑張って鳴島のジイさんに褒めてもらうキュン!
とマスクの下でニヤついた。

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