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引きこもりの婚約者に会ったら目が死んでいるし前世が女らしいですわ

黒月白華

第13話 婚約者がどこにもいません

朝…目が覚めると…ソファーに婚約者様がいませんでした。
どこに行ったのかしら?お手洗い?

洗面所もバスルームも見たけどいません。
レックスの散歩でしょうか?
しかし廊下から

「きゃんきゃん!」
と尻尾を振って私に飛びついてきました。

「お嬢様…おはようございます?あれ?ケヴィン様は?」
ノイベルトさんが私が1人なのを見て心配した。

「それが…どこにもいなくて…」

「なんと!?」
それから家中を使用人達は探したけどケヴィン様はどこにもいなかったのです。

以前旅に出たいと彼は言っていました。
もしや…旅に?
何で?今頃?
昨日はまた行こうねと優しく笑ってくれたのに!?

「お嬢様……」
ノイベルトさんが声をかけて私はようやく自分が泣いてるのだと気付いた。

「馬が一頭消えてます…ここをお一人で出て行かれたのでしょうか?」
アーベルさんが戻ってきて報告した。
やはり…。

「…………私…レックスと一緒に公爵邸に帰りますわ」
と私は言った。それから馬車に乗りまた泣いた。レックスは心配して

「キュウーン」
とペロペロ舐めた。
悲しみが心を支配した。
ケヴィン様と一緒に過ごした時間は楽しかったしあの死んだ目も何回も見た。
キスをされたこともありましたし、寝ぼけた彼を叩いたりもしました…。

なのに急にいなくなってしまわれるなんて…。
それから私は公爵邸に戻り引き籠った。毎日泣いて食事も喉を通らずに衰弱するばかりで自分はもう死ぬんじゃないかと思った。
お父様もお姉様も心配した。お母様が亡くなりお父様は私達姉妹を必死に育ててくれて辛いのに。

噂でアーベル様とラウラ様の婚約が決まったと聞きました。アーベル様…きっとラウラ様に媚薬を使ったんでしょうね。

ヘルミーネお姉様がお部屋に本を持ってやってきました。

「調子はどう?エル?起きれる?ほんと酷い男ね。うちの妹を捨てて出ていくなんて!!最低だわ!!」
と憤る。

「まだ見つからないのですか?」

「ええっ…あちらのファインハルス侯爵様も必死に探しておられるわ。それこそ血眼になろうとも探し出すので申し訳ないがしばらくお待ち下さいと…だからうちのお父様もね…一応部下を信じて苦い顔で待っているから無理にエルにお見合いなんてさせないわよ」
と言った。でも多分使用人達には私は捨てられた哀れな令嬢という目で見られるし、社交界でもきっと噂になることは予想できた。もちろん出ないけど。

「この本ね、ケヴィン様のお部屋から拝借したものよ?燃やしてやろうかと思ったけど…暇なら読んでみなさい…」
とヘルミーネお姉様は頭を撫でて出て行った。
私は本を見ると何冊かある本はほとんどロマンス小説のようだけど一つだけボロボロの本がありそれを手に取って読み始めた。

主人公は普通のご令嬢でヒロインの方は何の身分もない青年でご令嬢の家の庭師の息子だが、彼はある日令嬢の部屋に侵入してドレスを着たのだ。

何故そんなことをしたのかと問い詰めれば女の子の服が着たかった…と言った。

「女の子の服…」

それから彼はご令嬢に時々こっそりとドレスを着せてもらったりしていた。ご令嬢と青年は友達になったのだ。

「友達…」

しかしある日青年はドレスを着なくなった。優しいご令嬢と一緒にいることで恋をしてしまったと言う。ご令嬢も青年のことを想っていた。
身分違いの恋なのでご令嬢の婚約が決まる前に青年と令嬢は駆け落ちして逃げた先で幸せに暮らしました。

と書いてあった。
幸せに暮らしたのか。

ケヴィン様はどうして私から離れていったのかしら?私が何かしたのかしら?この青年はドレスを着なくなった…ご令嬢に恋をしたから…。

「ドレスを着なくなった」
それは…青年はこのままではいけないと思ったのでしょうか?青年は恋をして男に戻る選択をしたのだ。

でもケヴィン様は…いなくなった。一人で。
私を選ばなかったのだ。そう思うと泣けてきた。

ただのお話じゃない…。

旅に出たケヴィン様はどうしているのだろう?ちゃんと食べたり眠ったりしているのかしら?
媚薬を盛られたりしてないかしら?
それとも全部忘れて新しい女の人か男の人と過ごしているのかしら??

想像したら腹が立ってきました。
私を置いて勝手に旅に出て!一言くらい書き置き残してもよさそうなのに!
私はここ数日で涙が枯れるまで泣き続け衰弱までしたのに!!

そこにレックスがやってきて私に遊んでくれとおもちゃを持ってきたようだ。
気晴らしに庭に出て

「レックスほら、とっておいで」
とおもちゃを投げるけどケヴィン様みたいに遠くに飛ばないから至近距離に落ちてすぐにレックスは加えて持ってくる。
私の目が死んだ。

それからもヘルミーネお姉様はやってきて本を何冊か置いて去る。全部読んで過ごした。ケヴィン様はずっと本を読んでいたと言った。私に会うまでは。男の身体に絶望しながら…。
私に会って初めて秘密を打ち明けて楽になったとも。

振り返り思い出すとまた泣きそうになる。
時間が過ぎて行くばかりでもうひと月経とうとした頃だ…。
お父様もようやく諦めたのか、お見合いの写真を持ってくるようになり、私は死んだ目になった。

「エル…なんだねその目は?いい加減あの男のことは忘れてしまい、新しいいい男の所に嫁げばすぐに忘れるさ!!」
ますます死んだ目をするとお父様が

「エル…まるであの男みたいに目が死んでるぞ!?呪いかっ!?」
とか言い出して医者を呼ぶ始末だった。

それからは部屋に鍵をかけて食事が置かれるまで私は部屋の扉を開けなかった。
心も身体もボロボロだった。

ケヴィン様もこんな思いを?
何故いつも彼を思い出してしまうのか。捨てられたと言うのにいつまでも。
私ももう忘れてしまえば楽なのに。

「うっ…ううっ!!」
私もどうやら彼が好きです。いいえ何度も本当はときめいておりましたし。

あの死んだ目に会いたいな…。
そう思って鼻を擤んでいたら…。

扉が乱暴に叩かれて
バキっと壊されました!驚いて見ると、ゴット様がなんとケヴィン様の首根っこ捕まえてやって参りました!

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