美形執事(仮)に監禁されましたが変態で困っています!

黒月白華

第6話 ダイエットと変態執事に女の影あり

薄暗い森のような場所でノアさんが静かに口を開いた。側には鏡のような湖がある。

「お嬢様……すみません…。最近の貴方は…己を磨くことも怠り、かつての社交界での呼び名、【黒蝶の月】とはかけ離れてしまいました…。なんてことでしょう?醜く肥えて、肌も脂ぎってって年老いて…」

「えっ?ノアさん?何言ってるのよ?私はまだピチピチの女で…」
しかしそこで湖面の中の私を覗いて見るとそこには汚らしい脂ぎった肥えた臭い息を吐く魔物オーク!?いや、私か!!??これ!!?

ノアさんは冷たい目で私を見て

「これから貴方を奴隷市場に売り渡しに行きましょう。たぶん値段は付かないままでしょうが、ただ同然でどこかの農民に引き取ってこき使われ死んでいってください…。私は新しい美しい妻となる方と幸せになりますので。…」

「えっ!?ちょっと!!ま、待ってよ!ノアさん!あんた私のことあんなに尽くしてたんじゃないのおお!?辞めてよ!拐って監禁までしたくせにいいい!」

「間違いでした…。蓋を開けてみれば貴方には何の魅力もない!家事はおろか、骨折までさせられ…体臭はきついし女として終わっている…もう限界です!耐えられない!!」

付き合ってるみたいな言い方辞めてよ!!

「…さようなら…薄汚い豚!」
と彼は私を置いて隣のなんか綺麗な女と去っていく。

いやっ!!待ってよ!!そんなのあんまりだわ!!私はどうすればいいの!!



「いやああああ!!!!」
夜中に汗ビッショリで飛び起きた!黒髪がベタベタになるくらい汗かいてる!!

ミラが起きて

「なんにゃ!?」
と驚き、隣からバタバタと音がしてノックされた。

「お嬢様!?ヴィオラお嬢様!?どうされました!?何かありましたか!?開けてもよろしいですか!?」

えっ!!?い、いやっ!!待って!

そういう間に魔力でカチャリと開ける音がして急いで私は寝巻きの上にカーディガンを羽織った。

「お嬢様!!」
血相変えてこちらも寝巻きの美形が現れて私の全身ビッショリの汗をかいた姿を見て赤くなる。
…いや、何で?

「あ、あの!ち、違うの!ちょっと悪夢を見たので…ごめんなさい!さ、騒がせたわ!!」

「そうですか…大丈夫ですか?」
とこちらに来ようとしたから

「ひっ!!待ってよ!動かないで!!」

「?」
キョトンとしているノアさん。

いやだってお前!!近くに来られたら寝汗の臭さが!!さっきの夢でも体臭きついとか言ってたし!夢でも傷つくわ!!

「あ、汗をかいたしちょっとお風呂に入ってくるわ…大丈夫私がやるからノアさん寝てていいわよ?夜中なんだから!!」

「……いえ、私が!」
とノアさんはさっさと風呂の支度をしに行った!夜中なのに…。

………私は姿見を見た…さ、最近グウタラしてて何か…ふ、太ったような!?
さっきの夢で見た自分が浮かんだ。脂ぎって肥えた臭い息を吐くオーク!!

い、いやよ!そんなの!!
そもそも毎日本とか読んで運動をしていないからだわ!!お庭があれば散歩できるのに!!監禁生活じゃーーーーい!!!

そんでもって、毎日美味すぎる手料理食って満足じゃーーーーい!!!

そら太るわ!!肥えるわ!!
ウエストもなんか…。ヤバイ!!これは!!
痩せないと!!何かしらピンチを感じた!!

「お嬢様…お風呂が出来ましたよ」
と外から声がかかり、

「ありがとうノアさん、後は私1人で平気だから貴方はもう休んでちょうだい、明日もお仕事でしょう?」
と言うと

「ああ、お嬢様…お優しい、私などの為に!!」
とすすり泣く声が聞こえる。いいから早く寝ろおおおおおお!!

「それではお嬢様…ごゆっくり…」
と隣の部屋の扉が閉まる音がして私はささっと替えの寝巻きや下着を持ち風呂場に向かった。

洗面所で着替えていてふと、溜まってる洗濯物が目についた。ノアさんは数日毎に貯めてから洗濯してるみたいね。ノアさんのシャッツね…。そろりと見てみると…ん!?
ちょっと待て?

えっっ!!?

な、何これ?襟元に赤い紅を擦った様な後がある!!!心なしか甘い香り!!ぎゃっ!!

こ、これは!!まさかの!!私と言うものがありながらの浮気!!!

………………って別にあの美形変態執事は私の恋人じゃなくねーーーー!?むしろ監禁されてるし私。というか、ノアさんが外で恋人作っても別にいいいいいい!?私関係なくないいいいいい!?

………くっ!
私はボスンと洗濯籠にシャッツを放り込むと風呂に入ってガシガシ身体を洗い流した!
バシャンと湯につかり沸沸と怒りを募らせた!!

何がお嬢様だけだ!馬鹿野郎!変態野郎!!
こっちが外に出れないことをいい事に自分は新しい恋人とよろしくやってんじゃないの!!?
ふ、所詮奴も男!私みたいに手を出せない女に飽きて他の女で満足しているのかもしれないわー!!

バカにしてんじゃないわよおおおおお!!
流石あの元婚約者のヤリ●●野郎の従者だけあるし、女にもモテる容姿だしそりゃ、女に困ることなんてないわよね!!私には人形みたいな扱いをして大事にケースにしまっておく感じなのね。そのうち埃が被ったら忘れられる存在なのよ!よぉく解ったわよ!!

それにしてもどんな女なのかしら?あの美形を誘惑したんだから私以上の女ということか?そういうことよね?ふっふっふっ!
【黒蝶の月】と言われた私の実力を発揮させていただこうかしらね!!



次の朝…。

「あれ?お嬢様?朝食が残っておりますよ?」

「ノアさん…私…痩せようと思って…。だから少し食事制限するわ!食費が浮いていいでしょ?」
と言うと

「そっ、そんな!お嬢様!?何を?お嬢様が痩せて倒れられたらどうするのですか?少しくらいぽっちゃりされた方が…」
と言うノアさんに私はテーブルをバンと叩いた!!

「ノアさんは女じゃないから解らないのよ!!女はいつだって綺麗でいなきゃいけないの!!体型をキープしないといけないの!!ここに来て栄養満点の食事を過剰に摂取してしまったわ!!これからは肉抜き魚メイン、野菜多めの生活に切り替えるわ!!」

と物凄い剣幕で言いまくり、ノアさんはたじろいだ。

「あ…わ、分かりました。では…倒れない様にきちんと配分を考えたメニューにしますね…」
と言ってくれた。
よし!飯問題はこれでいい!

それからノアさんは仕事に行く支度をして

「では行ってきます」
と爽やかな笑みを浮かべたが私は思い切り睨みつけ

「行ってらっしゃい…」
と低い声で行った。
一瞬ビクリとしたノアさんはそのまま魔法陣と共に転移した。

けっ!行ってこいよ!!女が待ってる所にな!!

それから私は彼がいない間に狭い小屋中を全力で駆け回り暖炉にくべる薪の束の量を調節して

「フンー!フン!フン!」
と上下に振り下ろしたり頑張った!!


「贅肉は敵だ…脂肪燃焼…」
と狂ったようにブツブツ言ってトレーニングに勤しんだ。



私は昨日夜中から少し様子のおかしいお嬢様を心配していた。夜中に突然叫び声が聞こえ慌てて起きて扉を開くと…汗に濡れたお嬢様が色気ムンムンで私の心臓を貫き……、いや、これは違う、どうやら悪夢を見ていたらしかった。お風呂の用意をさっと済ませて私はこんな夜中にお風呂を使われるなんてもはや誘ってるんですか!?という考えを横に振り、お嬢様のベッドのシーツを新しいものに変えて汚れたものはとりあえず私の部屋に持ち帰り戻って抱きしめて寝た。

朝になるとお嬢様は痩せるからと言い出して朝食をお残しになった!身体は心配したが私はお嬢様の食べ残しをこっそりと片付けるフリをしてキッチンで隠れて食したことは内緒だ。

お嬢様は運動不足を気にされているのだろうか?まぁその辺りは女性だから気になるのかもしれません。

ともかく仕事に出掛けようとして挨拶すると何故かめちゃくちゃ睨まれた!?何だろう?睨むお嬢様も可愛いのですけどね?
私はともかく転移魔法で今日も主人のヤリ●●野郎に仕えています。

アクセル・ラーシュ・ルンドステーン様は侯爵家の後継なので元婚約者のお嬢様と結婚していれば私はもう首を吊る覚悟であった。それが嫌で私がお嬢様をお連れして隠したすぐ後の騒動極まる中、今度はお嬢様のお母様が浮気をして資金を持ち出し使用人と逃げたことでお嬢様の実家のハーグストランド家の信用はがた落ちになりアクセル様は失望したようだ。兼ねてより私が差し向けた女共ともまだ遊んでいたのでアクセル様にとってはお嬢様は見目が良ければそれで良かったのだろう。

だが、私は違う。お嬢様を何年も見続け恋をしてきたのだから、その性格が面白く案外気取っていても照れ屋で可愛いらしい性格も含めて全て大好きですのに…。

今日も新しく入った若いメイドがアクセル様に挨拶に行くとそのまま数時間戻って来ず、ああ、食われたね。としか思えなかった。
使用人の間ではもはやアクセル様の女好きは有名になっていた。

今日も男の使用人達で集まって昼食を取っている時だ。
シェフのパウルさんが

「おい、また新人メイドがアクセル様に食われてるじゃねぇか。ここのメイドの処女無事な奴後何人いる?」

「知らね…全員じゃないっスか?」
と庭師の弟子のマウリッツが応えた。

「たまに反抗して着崩して泣いて飛び出してアクセル様ほっぺたに手形できてた時はそのメイド首になりましたよね?」
と私が言うと、うんうんと皆うなづいた。
年配の執事長のエドガーさんは

「侯爵様の怒りを買ったんだから仕方ない。我々は給金の為に其れ等を見過ごさなくてはならない。例え部屋から抵抗の声が漏れても消して部屋に踏み入ることはできないのだ!」

マウリッツは

「まぁね…流石にそんな最中に入っていく勇気は無いですし、俺も首になりたくない。最後は恍惚になって出てくるからな女達も」

「侯爵家で働く以上は主人の妾や愛人とかには手を出さないようにしましょう我々男は」
と男の結束が誓われた所で、パウルさんが

「まぁよー…それにしてもノアさんはモテんだろ?何人か女達が声をかけたそうにしているじゃないか?…っと!!こら!マウリッツ!!お前食べ方きたねーな!!ジャムが襟元に着いたじゃねーか!!お前っ!これのせいでカミさんが俺のこと浮気してるって勘繰られたぞ!?」

「すんません」
とマウリッツは謝るが汚い食べ方は変わらない。先日私の襟元にもジャムが飛んで擦り落としたのだがどうしても落ちないから紅が着いたように見えますもんね。休日になったらちゃんと洗濯しよう。

「で、何だっけ?ああ、ノアさんがモテるって話」

「恋人いるのか?」
とパウルとマウリッツはノリノリである。

「好きな人ならいますけど、困ってます」

「何が!?」

「最近…アクセル様が自分がお手付きしたご令嬢を私に見合いしないかと紹介してくるんですよ」

それにエドガーさんが

「なんと…不幸な!それ、一度ノアくんが相手方から紹介を取り次いでアクセル様に渡したお相手だろう?アクセル様は見合いの度にお手付きをしていらないと思ったら今度は君に渡すのかい?酷いな」

「ええ…私はそんなご令嬢は嫌ですよ。それに好きな人いますから」

「ふーん?結婚はするの?ノアさん…」

「どうでしょう?身分違いの恋なので無理かと…でも見てるだけで私は幸せです!」
と言うと全員変な顔をした。

「えええ?ノアさん程の顔ならいけるんじゃね?ていうか断る女っているのかよ!!?どんな女なんだよそれ!!俺がノアさんの顔ならもうグイグイ行くよ!」
とマウリッツが言います。
エドガーさんは

「マウリッツはまずその汚い食べ方を辞めた方がいいでしょう!ほらまた!ノアくんにも飛びましたよ!!?」

と赤いシミがまた出来た。…はぁ。


いつものようにノアさんが帰ってきたのか床が光り美形変態執事が鞄を携え帰ってきた。

「お帰りなさ…」
と言葉が詰まった!!

襟元!!また赤いじゃねーかよおおおお!!!
ぎゃあああ!!仕事中に何やってんだこの色情魔!!!

私はドス黒いオーラで睨んだ。あまりの威圧にビクリとノアさんが鞄を落とし中身が落ちる。するとなんといくつかの女の令嬢の姿絵がバラバラと散らばった!!

「あ…」
とノアさんは急いで拾った。

「そ…それ何?」
するとノアさんは困ったという顔でどう言おうか悩んでいた。

私をこんな所に閉じ込めて置いて!!さっきチラッと見た令嬢のどれも私より劣るわね!!(凄い自惚れ)そんなのと昼間からイチャイチャしてきたのかと思うと腹が立って仕方ない。

くっそーーー!!
この野郎おおおおお!!!
何て奴なの!?私は氷のように冷たい目をして

「夕飯は今日から別に取るから…野菜中心でお願いします!!」
とだけ言ってフン!と部屋の扉をバンと閉めた。

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