美形執事(仮)に監禁されましたが変態で困っています!

黒月白華

第2話 ノアさんの部屋がヤッベェことになっていた

食事が終わり私は自分に用意された部屋で寛ぐ。
そう言えばノアさんが買ってくれた服やらを開けていなかったな。侍女いないし、下着とかは流石に恥ずかしいから私が開けることにした。

神さま!変な趣味の下着が入っていませんように!!!
と願いとりあえず下着を確認してみる。

ちょっとレースの着いた普通の下着だ。よ、良かった。ショーツは紐で止めるタイプが一般的だからまぁこれもいいか。引き出しにそれらを収めて次は服やらを確認した。ドレスと言うか部屋着用の簡素なワンピースドレスだからこの家では寛げるだろう。どうせどこも行けないからかね?

でも色はちゃんと考えてあるしサイズもピッタリでゾワっとしたわ。私は派手な色より落ち着いた色の方が好みだから。しかも…律儀なのか店主に聞いたのか知らないけど流行っぽいデザインできちんと上品さを保っている。それを熟知している奴はヤバイ。見られていたんだから仕方ない。

後、可愛いネックレスやリボンに香水も入っていた。お化粧道具も嗜む程度にはある。どれもこれも私の好みのやつだった。ゾワリとした。

奴のあのヤベエ性格を知らなかったら私もまだ素直に喜んだよ?だが現実と理想は違うのさ。
寝巻きも普通ので助かった。
意外と紳士なのかな。

そう言えばご飯も美味しい。
あれ奴が作ってるんだよね?相当な料理の腕じゃない!?何なら執事やめて料理人になれるレベルじゃないか!!?

ヤバイな、あいつ変態なのにいろいろ出来過ぎてる!!
私の嫌いなモノはもちろん把握しているのか絶対に食卓に出ない!
私が食事を一緒にと言ったから明日の朝は奴と一緒に食べる。

ふっ!これこそが狙い!とにかく一緒に食事を取ったりして奴を油断させ、いつか酒を盛り奴をベロベロに酔わせて逃げるのだ!

魔力は眠っていても一定に維持されるから結界を破るには奴が寝ている時にも無理だ!
だが、酒なら人に差があれど、泥酔するので魔力にも乱れが出て弱くなる!そこなのだ!ちなみに酒に酔って寝てしまうと魔力が乱れたまま眠るから上手く行けばあっさり脱出できる!!その時のチャンスまで根気よく待たねばならない!

問題は外の吹雪だけどね。
流石に私が防寒具を揃えてくれと奴に言うことができるか!?無理だ!!逃げる計画をバラすようなものである!!
結界が敗れた所で外に出て凍死などやはりごめんだ。一年中吹雪いてるんじゃないかという外の雪…。

ともかくおいおい防寒具のことは考えるとして…奴を油断させないとな。その為にはある程度私を信用させていかねばならないのだ!
信用させて裏切る…そんな悪女みたいな考え方だが、こちとら人質であるのだ。しのごの言ってられない。

その時コンコンとノック音がして、ノアさんが

「お嬢様…湯浴みの準備が整ってございます」
と声が執事っぽくかかった。

「判りました…」
と答えて寝巻きやら下着を持ち風呂場に駆け込むことにした。

お風呂はほのかにいい香りがして疲れが取れる湯を使っているそうだ。しかもお湯の色がキラキラと数分ごとに変わっていく。

げ、幻想的だ…。何この演出!?
いらんだろ、こんなさっと入ってさっと上がるだけなのに。私はいい香りの石鹸を泡立て身体を洗いお風呂に浸かりピカピカ色を変える湯をなんかうざいな…と思いつつ見ていた。

とりあえず私は魔法で髪を乾かした。
このくらいのことなら私の微魔力でもできる。髪を乾かす程度の弱いものだ。うーん、魔力を上げる本でも頼んだらどうだろうか?無理かな?ギリギリかなあ?

ガチャリと洗面所の扉を開けると…正座して顔を赤くしたノアさんがいて

「ひっっ!!」
とビビった!!
な、何してる!?まさか!人の入浴音聞いてたの!!?いやああああ!!この変態いいいい!

「あ…の…」

「お湯加減どうでした?熱くありませんでしたか?今日の湯加減で大丈夫なら明日から同じ温度にできますから!!」

「ああ…はい…別に丁度良かったですけど…」

するとノアさんはホッとして

「そうですか!良かったです!!その寝巻きも素敵です!お嬢様によくお似合いです!!」
と言うから

「あ、ありがとう…私じゃあ、そろそろ寝ます…お休みなさい…」
とゾワリとして私はさっさと階段を駆け上がり部屋に逃げた!しっかり鍵をかけた!!

「うえーっ、もうやだ!風呂場の近くで待機とかやめてもらおう!!」
とばさりと布団を被り何も考えたくなくて眠る。何このベッド!フワフワじゃん!!
………私の為にあいついくら使ってんだよ!!



その頃…風呂に入ってるノアは

「お嬢様の入ったお湯…まず…味見を…」
と手で湯を啜っていたりしたことをヴィオラは知らなかった。



翌朝…朝食を運び終えたノアさんはまた赤くなり座るか座らないか数分考えていた。

「あの…冷めますから早くお座りになったら?」

「はっはい!!」
とノアさんは座った!!床に!!

「椅子に座ってくださいね…」
もはやツッコミに疲れ果てた私はさっさと座れと威圧すると嬉しそうに座った!
そして私ばかり見つめてくるのに流石に私は照れた。だって見た目だけ美形なんだもんよ!ノアさん!

「あの…私ばかり見ないでください…」
と言うとノアさんは心臓を押さえて

「うぐうううう!!」
とか言いながら椅子ごと後ろにバタンと倒れた!!

えええええええ!!!
なんだこいつはよーー!!
やめてよおおお!!

「す、すみません…お嬢様の照れ顔可愛すぎて死ぬの持病が出てしまいました…私の事は気にせずお食事を」

何だその持病は!!

「いや、しっかりしてください!!人が目の前で倒れてるのに美味しくご飯食べられない!!」

「ああ…私お嬢様のお食事を邪魔してしまいました!すみません!すみません!鞭で打ってくださ…」

「打ちませんからっ!」
と睨み…ようやく咳について静かに食べ始めた。綺麗な所作でこの人が元貴族と言うのは本当なのだろうと感じた。こんな美形なら嫁の貰い手もすぐ着くのにね。何で私かねー?

彼は朝食を済ませて支度すると

「で、では行ってきますね。夕方には戻ります。沢山本も手芸も出来るようにしていますから…」
と言う。

「あの…うちの家族どうなってるんですか?」
と言うと流石に顔は曇った。しかし

「必死で探されてるようです…。ごめんなさい…」
とポツリと隠しもせず言った。

「………そうですか、行ってらっしゃい、人でなし!」
と私は背を向けた。

悲しそうな気配がしたが

「行ってきます…」
と言い彼は転移した。

両親達が必死で探しても…恐らく魔法省が探してもここは発見不可能かと思われる。見つかったらたぶんノアさんは死罪だろうし。

「それにしてもどうしようかな…お昼はマジックポケットに入れといてくれたらしいけど」
ふと本棚を見ると恋愛小説がビッシリと並んでいた!!

何いいいい!!なんでこのジャンルううううー?

これしか揃ってないし!後、微妙に抜けてる巻あるじゃない!!逆に気になる!!この抜けてる巻なんなの!?

とりあえずどこかに無いかと探したけど棚の下に私が蹴った短剣が落ちてるだけだった。

後探していないのは…

「奴の…部屋…」

私は階段を上り、奴の部屋のノブを回したが当然鍵は掛かっている。だが、家の外に結界はあってもこの部屋には張っていない。
私を舐めてるの?この程度の軽い鍵なら魔力で開けられるわ!

とガチャリと鍵穴から魔力を注ぎ鍵を回した。
カチャリと回り私はノブを回した。ギイと扉が開き、中が明らかになる。

その部屋を一目見て私は固まった!!

壁、天井ビッシリに貼り付けられた絵だ。

私のーーーーーーーーーー!!!
何て精密に描かれているの!?
そこには幼い頃から窓辺で佇む私の絵が色々な角度で描かれ、どんどんと成長していく私や私の家の私の部屋の中の様子も描かれていた!!

つ、つうか上手い!!何この絵!上手いよ!
いや気持ち悪いけど絵が上手い!!
あいつ天才だな!!

もはや私の絵画展か何かのようだ。
後は部屋にベッドがポツリとあった。それは隣の私のより質素だし、机もボロいと言うか絵具とかで汚れていた。私の絵には色も着いているのが多かった。

ここで、何年も私を描き続けていた。

そして…机の下に抜けていた小説が落ちていた。

しおりが挟んであり、そこを開くと……
私は一気に戦慄した!!

「ヴィオラお嬢様…この本を発見したと言う事は私の部屋に入りましたね?見ましたね?入った事を誤魔化しても無駄です…貴方の残り香を私は嗅ぎ分けられます…」
というメモが挟まっていたのだ!!

すると魔法が発動され、壁の絵が光り、全部私からノアさんの顔に変わって行った!!

「ぎゃあーーー!!」
私は雄叫びを上げた!!
そりゃこんな仕掛け怖い!!

そこには私と違って幼少期の美少年の彼から成長期を迎えた彼に、今の彼に近い絵に変わった。部屋の真ん中にいる私を食い入るように絵の中の彼が見つめていた。

そして扉がバンと締まり、一斉に絵の中の彼と言う彼が口を開いた!!

「好きだよ」

「好きです」

「愛してる」

「お慕いしています」

「貴方だけを」

「お嬢様しかいらない」

「他の人間などいらない」

「お嬢様僕を…好きに」

「私をどうか見て…」

「苦しい…こんなに好きなのに」

口々に私に向けた想いの魔法が発動した。

「いーやーー!!やめてよ!!何なのよ!!」
怖いし気持ち悪い!!

すると一人の少年の絵の彼が涙を流した。

「え?」

「有難う…ずっと貴方が来てくれるって僕の所に来てくれると信じて…いた…」

「来るっていうか…誘拐されたんだけど…」
私は絵に向かって喋った。
彼は嬉しそうに泣いていた。

「嫌いになった?怖い?気持ち悪い?」
子供の声でそう囁かれた。

「貴方がヤバイってことは判るわ」

「僕は嫌われても貴方に尽くすよ…」

「何故そこまで…他にも可愛い子は沢山いるし私そんなに?性格だってお姫様みたいに良い子じゃないわ!?」

「貴方がいい」

「お嬢様だけ」

「お嬢様…好きです…」

「一生お側に…」

ひいいいいいっ!、とにかくここから出よう!!と急いで扉をガチャガチャしていると…

床が光り魔法陣から転移してきたノアさんが現れた。

「あっ!!」
しまった!!何で?帰るの早い!
あや、私がこの部屋に入るのが判るようになっていたんだろう!お昼なのに帰ってきた。

ノアさんは私を見ると

「入っちゃいましたか…」
とポツリと言う。

「私は小説を探しにきたの…」

「…………」

「何よ!私に触らないでよ!!私に乱暴する気!?」

「いえ、そんなことはしませんよ…私がヴィオラお嬢様の許しも得ずに触れることなんてあり得ません!貴方は私にとって至高な存在!!神にも等しいのです!!」

すると壁のノアさん絵達が一斉に

「そう!お嬢様は女神!」

「美しい!!」

「閉じ込めたい!私の元で」

「許しが得られるまで触らない!」

「私の宝石!宝物!!」

と騒ぎ出した!!
段々とこの部屋にいるのが気持ち悪くなってきた。

「この部屋は…私がどれだけお嬢様を想っているかいつかうっかり入られた時に気付くかなと思いましたが、案外早かったです…」

………安心して下さい…。
もはや昨日から全然変態だと思っています!!

「お嬢様が私の部屋に居るなんて幸せ過ぎて死にそうです!!ようこそ!私の部屋へ!!」
と嬉しそうに両手を広げたノアさんだが無視して

「勝手に入ったことは謝るわ。ごめんなさい!もう二度とこの部屋に近付かない」
と私は部屋を出て行こうとして…

「お嬢様!本です!」
とさっきの本を渡して

「それでは私は仕事に戻りますね?お昼ちゃんと食べてくださいね!!ではまた夕方」

「ええ…行ってらっしゃい…」
そして私はその気持ちの悪い部屋から出て自分の部屋でどっと疲れたように昼寝したのでお昼を食べ損なった。
そう言えば…ノアさんのベッドはこのベッドより質素だったし、あの気持ち悪い絵に圧倒されていたけど他は絵具塗れの机とかだったし服とかはマジックポケットにしまってあるのかもしれない。他は余計なもの何一つなくて…奴は私にいろいろ貢いでくる。
関係ないけど…食事はともかくもっと自分の為に金を使って欲しい。

まぁっ…あんなヤバイ部屋に入ってしまった私も悪かった…。

その後、仕事を終えて帰ってきたノアさんに私がお昼を取ってないことがバレて(マジックポケットにそのまま残ってたから)

「ちゃんと食べないと私は心配で夜も眠れませんお嬢様…」
と切なそうに言うから仕方なしに明日からきちんと食べることにした。
一体いつになったらこの変態から逃げ出せるだろうか!?それともやはり無理なんだろうか?
思わず

「はあぁ…」
とため息が漏れる私だった。

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