義弟の赤い糸ならぬ赤い鋼が絶対切れません

黒月白華

第25話 天国生活

天国はこの世のものとは違い、とても美しく綺麗な世界である。
いくつもの色々な扉が空中に浮いている。そこまでふわりと飛ぶ。とある扉が勝手にぐんぐんとラファエルと私の前に現れた。

私は扉を開き、ラファエルと中へ入る。
すると綺麗な泉のほとりに花に囲まれた白いお家がある。

『ここは?』
とラファエルが聞いてきた。

『私達のここでの家よ』
この家は私が死んだ時に神様から与えられたもので、いずれ来るラファエルと二人で住めるようになっていた。

死んだ人間の魂はもちろん食事や排泄はしない。病気にもならない。何故かお酒だけは飲める。何かの果実酒で酔わない。私はラファエルをお部屋に通してソファーに座らせた。テレビが飾られていてリモコンに名前が並んでいる。
私達が生前お世話になった人達でまだ生きてる人の名前だ。当然娘や息子、孫や知り合いがあり、名前を選んで付けるとその人が画面に映されるされるのだ。

『このテレビとかいうので子供達の様子がいつでも見れるのですね!』
若くなったラファエルは喜んだ。

『誤って下界の夜中に点けたら大変なものを見てしまうから注意してね?』
と言うとラファエルは意味を悟り赤くなる。

本棚から私は本を取りラファエルに見せた。中には私達が生前生まれてから死ぬまでの記憶が書かれているのだ。時には挿絵付きで。

私のファーストキスをラファエルに奪われたこともきっちり書かれていて、少し恥ずかしいけど。

『明日は手続きが済んだらサーラさんやラファエルのお母様や後、お父様にお母様達もお祝いにくるわよ』
と久しぶりにラファエルの肩に頭をもたれ甘えた。若い姿のラファエルはカッコいいなぁ。と思いながら。

ラファエルは私の髪を指で梳いて若い頃大好きだった色っぽい微笑みを浮かべて

『では今日は姉様を独り占めできるのですね…』
と言い口付けた。

『まぁ今日だけじゃないけどね。生まれ変わりの順番が来るまでね』

『そうですか…』

『まぁ第二のここでの暮らしを楽しみましょう?天国ではお祭りも何回か開催されるのよ』

『へえ、楽しみですね』
と言ってまた口付けられる。

『ラファエル…別に焦らずともここではゆっくりしていいのよ。私は何処にも行かない』

『はい…。だって、また会えて嬉しいのです。貴方に若い姿のまま触れられることも。もう一度恋をしたようにドキドキします』

『ラファエル…私も生前ずっと貴方の側にいたわ。ラファエルは視えてなかったけど常に』
そして私は指を鳴らすとパッと衣装変化した。ラファエルと結婚したときのウェディングドレスだ。

『わっ!すごい!服も思いのままに?』

『ラファエルも許可証をもらったらできるようになるわ』
とまた元のドレス姿に戻る。

『それって僕が考えてるような姉様に似合うものを着せたりできるのですか?』

『ええ大体できるわ。………ラファエル…変なこと考えてない?あんまり透け透けのは嫌よ?そりゃそう言う人達もいるだろうけど』

『はあ…』

『食べられないけど許可が下りるとラファエルの好きな薬草もここに植えられるわよ。病気にならないから必要は無いだろうけど、貴方薬草が好きだったからね』
というとラファエルは泣いて喜んだ。
黒髪を撫でて私達は抱き合いイチャイチャした。


それからしばらくして僕はアマーリアさんに連れられまた扉を出るとスィーと違う扉が近づき、そこに入ると大神殿が見えてズラリと羽の生えた天使様が左右に並び、僕を見て

『人生お疲れ様でした!!』
とか言ってきた。天使様達は優しい笑みを携えて僕を通した。

それから重厚な絵画の描かれた扉の前でアマーリアさんは立ち止まり

『ここらかはラファエル一人で行って貰ってきてね』

『判りました!直ぐに戻ってきてアマーリアさんを抱きしめます!!』

『ふふふ、ほんの少しよ』
と笑いながら見送られ僕は神様のもとへ行った。


黄金の椅子に座った神様がゆっくり振り向いたけど、あまりに眩しすぎて顔が判らない!!
これが神様か!!

『ラファエルよ、生涯をよく生きた!お前は多くの人を救ってきた。よくやったぞ。感謝状を贈ろう!それから移住許可証な!』
と言われあっさり謁見が終わろうとするから僕は慌てた。

『神様!お願いがあるのです!!』

『何かね?』

『…聖女の子孫達の身体を弱くするのやめてください!!』

『なるほど……それな!…うむ判った!!』
と大変あっさり言われ拍子抜けだ。
それからアマーリアさんのとこに戻り、サーラ達との宴会も始まった!

しかも久しぶりにお義父さまにお義母さまとも再会した。二人ともちょっと若くなっていた。やはりか。想像つくけど。

『ラファエル!久しぶり…と言うのも変だが会えて嬉しい!!いやー、私達が死んだ時はすまなかったね。落石事故は避けられなくてね。ははは!』
明るいな!!お義父さま!!

『ラファエル!また貴方に会えて嬉しいわ!』
と二人とも元気そうだ。

『サーラさんもお久しぶりです』
すると本当の僕のお母様が挨拶した。

『どうも!ラファエルを引き取っていただきありがとうございます!』

『いえいえ!あんないい子を産んでくれた貴方に感謝します!』

『そうだね、弟子のラファエルは立派な薬師になって私も鼻が高いよ!』
と親達が僕を褒め合うから恥ずかしくなった。

『やはりラファエルは愛されているわ!ふふ』

『姉様に1番愛されたい…』
と呟き手を繋ぎ笑った。


ラファエルとイチャつきながら時々子供達たちの様子を見ていたら天国にやってきたエレオノーラ様とアルフォンス王がやってきた。二人ともやはり若返って

『アマーリア!ラファエルじゃないか!!先に死にやがって!!お前達がいないからつまらなかったぞ!俺達もようやく死んだけだな。俺が先でエレオノーラが3日くらい後だ』

『人生お疲れ様です!アルフォンス王!』
とラファエルが挨拶して

『ミカエルが立派に国王の後を継いでくれたしな』
と息子の話を始めた。
私とエレオノーラ様もお疲れ様と言いながら今度一緒に天国の温泉へ行こうと約束した。

天国生活も賑やかになり数十年経つと息子達もこちらへ来て私達は再会して抱き合った。

そしてとうとう私達は生まれ変わりの順番を迎える。先に生まれ変わりの順番で天国を去った親達との別れも辛かったけど彼等の来世もきっと幸せだろう。天国からサーラさんやお母様が生まれ変わるところを見届けたラファエルは涙を流し喜んだ。

『サーラもお母様もまた違う人生の始まりだ。サーラはここを去る前に今度は薬師じゃなくてもっとド派手な踊り子にでもなりたいとか言ってたよ!』
と笑っていた。
そして私の手を取りダンスに誘われた。
今夜で最後だ。

『アマーリアさん…生まれ変わってもきっと見つけ出しますね…』

『ええ!きっとよ!!大丈夫!きっと運命の赤い糸が導いてくれるわ!!』

『はい!信じています!!』
泣きながら最後の夜を過ごして息子達にも二度目の別れを告げて神様の元へと行った。

『では…生まれ変わりの儀に入る』
と神様は私達の頭に手を当てた。

『ここで過ごした記憶と生前の記憶全てを抹消しよう。生まれ変わりの人生に幸あらんことを!』

温かな光に包まれて私とラファエルは眠りに入った。



そこはのどかな田舎町で週末はバーが混み騒音となるが普段は静かで穏やかだ。

スクールが終わると私はカフェの手伝いがあるからさっさと帰らないといけない。
周りの子は彼氏を作っているけど私には気になる子もいないし。スクールバスを待っていると後ろに黒髪の男の子が並んだ。何かジッと見られてる!?
チラッと見たら物凄い鋼の糸が私に迫っていた!!

「きゃあ!!」
思わずびっくりして転げそうになりその男の子が支えてくれて目と目が合った。漆黒の瞳に私のアメジストの瞳と銀の髪が映った。

「だ、大丈夫??怪我はない?もし何処か怪我をしているなら言って?」

「うん…平気だよ…」
何この子…私のことめちゃくちゃ好きみたい…。だって私には…他人には視えない運命の赤い糸が視えるんだからね!!




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