義弟の赤い糸ならぬ赤い鋼が絶対切れません

黒月白華

第14話 義弟の施し

すっかりラファエルがクズな父親との決着が着き、落ち着いた日常が戻った頃、ラファエルは王宮で仕事に復帰していていない間、私はボーッとしていて公爵邸ご自慢の庭を歩いて花を眺めて和んだ。

今度エレオノーラ様をお呼びしてお茶会をしてもいいわ。今やアルフォンス王子の婚約者となったエレオノーラ様は未来の王妃となられる方で今から王妃教育の為、王宮にいて物凄い怖い女官の教育係にしごかれていた。

そういや私も王子の婚約者だった時散々しごかれた。あいつ怖いよね。鬼ババア。エレオノーラ様と愚痴りたいわ。

と考えながら歩いていて池の前まで来た。近頃藻が濁り始めたし大掃除をしなくてはならないので【近寄るな】の看板が建てられている。

そしていきなりバシャンと魚が跳ねた。
おお!元気元気!そう言えば昔、魚が欲しいってお父様にねだったら甘々なお父様はすぐに飼ってくれたわね。あの時の…あれ?名前なんだったかしら?ヤバイ。ど忘れ。

でもそいつが跳ねたに違いない。
私は看板を潜り抜けて池を覗いてみた。濁ってるから見えにくいが魚の影が過った。
おお。

名前忘れたけど元気みたいね。
とりあえず戻るかと立ち上がろうとしてヌルリと泥に手が触れて滑って頭から池に突っ込んでしまった!!
顔だけ池に突っ込んだ間抜けな体制の私はすぐに顔を上げて周囲に誰もいないのを確認して

「ぶへっ!」
と水を吐き出した。
ぎゃあ!くっさ!!

そりゃ臭いわ。
するとそこへ掃除の人がドヤドヤ現れて頭に藻をつけた私を思い切り見られた。

「アマーリアお嬢様様でねえですか?何やってるんです?」

「え?ええと…魚が跳ねたから…滑って…その…ともかくお願い誰にも言わないで…」
と言うと多いに笑われた。
くっそー。

「今から綺麗にするとこでさ。それからこいつも持ってきやした」
と木桶の中に1匹の綺麗な模様の魚がいた。雌らしく、今いる魚が寂しそうだからと連れてきたみたいだ。
私はタオルをもらい、掃除を眺めていた。

「私も手伝っていい?暇だし」

「ダメに決まってますよ。お嬢様にそんなことさせちまったらラファエル様に毒殺されますわ」
何でラファエル!?

ともあれ私は掃除が終わるまで見ていて綺麗になったところで魚を放つので側に行き見た。魚を放つとスルリと2匹が挨拶するかのように寄って…なんと!尻尾から赤い糸が現れくっ付いた!!おお!魚のまで視える!!
犬猫とかも視たことあるけど魚は初めて。
上機嫌で私は部屋に戻ろうとして侍女に見つかり

「お嬢様頭やお顔が濡れてます!お風邪を引きます!!そしてラファエル様に殺されるのですぐにお風呂を支度します!!」
と侍女は飛んで行った。
またラファエルに殺される発言だ。どんだけよ。

しかし私はその後風邪引いた。
1週間後に戻ってくる筈のラファエルはすぐにすっ飛んで帰ってきた!!嘘おおお!!

「アマーリアさん!!風邪を引いたって!?」
と大袈裟に扉を開け入ってきた!

「い、いやラファエル、ただの風邪よ?軽いやつ!しかも私の不注意なの。心配しなくても寝たらすぐ治るから!」
と言うがラファエルは顔を青くしている。
どんだけ心配なの?

「風邪でも甘くみていたら肺炎になるよ!ああ、ダメだ!心配で仕事なんかしていられないよ!」

「いやそこはしてよ!!」

「アマーリアさん!大人しくしておいて!!」
ラファエルの赤い鋼が手の形になり私を押さえつけようとしていた。
実際は優しくベッドに横にされた。

「今シェフに病人食を用意させて栄養のつくものを作る。それから風邪薬に熱覚ましも。医者は呼んだ?もしも風邪じゃない場合違った薬を処方しないとだから」
とラファエルはせかせかと行ってしまい、直ぐに医師がやってきてやっぱり

「いや、思い切り軽い風邪ですな」
と言われた。そりゃそうよ。
しかしラファエルは

「本当ですか?ただの風邪!?間違いないんですね?別の病気じゃないんですね?」
公爵家お抱えの医師マルコ先生はビクリとして、

「は、はい!ラファエル様!本当でございます!めっちゃくちゃ軽いです!!寝たら治るくらいですから!!」
と言われてラファエルはやっとホッとして薬を飲ませてくれた。

「良かった…いや良くない。少しでも熱があったりするなんて…」

「それでは私は帰りますね」
と医師は頭を下げてやれやれと帰った。すみませんとしか言えない。

「アマーリアさん、喉は乾く?今日はずっと側にいるよ」

「重病でもないのに大袈裟よ。仕事に戻っていいわよ?」

「もう休みを出した。とても心配だよ!」
と私の手を握りその手にキスして頬擦りした。
どんだけだ!!

夕食になると自ら盆に食事を運んできて口に運ぶ。熱いからとフーフーしてくれるし優しい。
背中をさすられ労られる。優しい。
それから眠くなり少し眠ると汗が出てラファエルはその間も看病してくれたみたいだ。
起きた時に着替えもちゃんとあり、
身体も侍女を呼び拭かせた。
至れり尽せりだ。すっかり熱は下がったようだが油断は禁物と言われて大人しくまた横になる。

「ラファエルも眠って?もう熱はないんだから」
夜も更けてきたしね。
するとラファエルは

「判ったよ着替えてまた来るよ」

「えっ!?」
と言う顔をすると

「何?大丈夫だよ?何も変なことはしないよ。また熱が夜中に上がったら大変だから一緒に眠るよ」
と言う。うおおお。そりゃ、度々そういう一緒に眠るだけのやつはあった。うちのラファエルは紳士だから大丈夫なのだ。しかも絶対に婚前前にしないという誓いを立てている。

しかしラファエルは妙に色っぽい時あるものね。

ラファエルが着替えに自分の部屋に戻ってすぐにやってきて私の隣に滑り込んだ。
額に手を置かれ何度も確認される。

「本当に心配症だわ」

「愛する人が苦しむ所を見たくないんだ」
ラファエルは少し悲しげな目をする。サーラさんのことを思い出しているのかしら?育て親の死に立ち会っているのだ。敏感なのかも。

「私はきっとラファエルより長生きしなきゃね?」

「それは困る!アマーリアさんの薬は僕が作るんだ…でも長生きしてくれるのは嬉しい」
と軽くキスされた。

「お休み…アマーリアさん…」

「お休みなさいラファエル…」
しっかりと手を繋いで私は眠った。
翌朝…ラファエルはベッドから落ちていた。
私が蹴っ飛ばしたらしい。

「ご、ごめんなさい…ラファエル…」
超謝った。ラファエルは怒る様子などなく

「いいよ。アマーリアさんに蹴られたって僕は平気。元気になって良かった!朝のスムージーを作ろう!!」
と元気に笑った。
それから朝食を済ませてまた王宮に戻るラファエルを見送る時にラファエルは私の首に黒い石のネックレスをかけた。

「ごめんね。黒い石とか。気持ち悪いかな?僕の色ってほんと魅力ないよね。お給金で買ったんだ。プレゼントだよ!」
ラファエルはどこまでも優しく私を愛してくれる。

「気持ち悪くなんてないわよ!!ラファエルの色素敵よ!ありがとう!!大切にするわ!」

「ふふ…ありがとう…またすぐに戻るよ…」
ラファエルは私を軽く抱きしめ額やら頰やら目や口顔中に目一杯キスを落としてからとても色っぽい笑みを浮かべるからキュンとした。

「ラファエル…そんな顔で王宮内を歩かないでよ?貴方の色っぽさにやられる女性が続出するから!!」
と言うとラファエルは

「もう、姉様…戻りたくなくなる!」
と再び抱きしめ耳元で囁くから痺れるわ!!

「大丈夫…僕は姉様のもので姉様は僕のものだから。他の人なんて入り込ませないよ。それじゃ…そろそろ本当に行くね」

「ええ、行ってらっしゃいラファエル!」
最後にまたキスして見送った。


入れ替わりにエレオノーラ様がやってきた。
お茶会に招待したのだ。
緑の庭園の中二人で楽しくお喋りした。

「王子とは仲良くしてますの?」
と聞いて見るとエレオノーラ様は赤くなりうなづく。

「ええ、もちろん。でも…アルフォンス様ったらなんだか時々いやらしいのよ。私の胸にすぐお顔を埋められるの」
と聞いてアルフォンスあのドスケベ野郎が!
と思った。

「でも理由があるの…飼っていた猫が亡くなったとか、小鳥が逃げてしまったとか、大切な花瓶が割れてしまって悲しくて」
ああ、エレオノーラ様騙されてますよ単に貴方様の豊満なお胸に顔擦り付けたいだけのやらしい煩悩まみれの言い訳ですそれ。

うちのラファエルを見習って欲しい。赤い鋼で判るけどめちゃくちゃ我慢してるんだからね?
王子の糸最近見たけど常になんかわきわきしててやらしい手付きの糸だし。最近その辺のスケベ親父と同じ様な糸の感じである。顔だけは端正で綺麗な完璧王子なのに頭の中残念過ぎる。エレオノーラ様は純粋で鈍すぎるとこあるからなぁ。

「あら、そのネックレスは…」
エレオノーラ様がネックレスに気付いたから私は

「えへへ、ラファエルに貰ったんです!黒いから気持ち悪い?って言われたけど全然そんなことなくて!!」

「そうですよ?それ…ブラックダイヤモンドの天然石と聞きましたわ。アルフォンス王子に相談されていたのです。希少で物凄く高価ですよ!!大事になさった方がよろしいわ!」

「えっ!?マジですか?」

「マジですわ…人工のモノはただ色をつけただけのもので見た目的には変わらないでしょうけど、ラファエル様はめちゃくちゃこだわって天然石を探されたらしいですわ。アルフォンス王子に宝石商を紹介してもらっていましたの」

な、なにいいいい!!
そんな良いものだったのか!!

「ちなみに意味は幸運の守護ですわ」
詳しいな!宝石に詳しいな!エレオノーラ様!

「ああ、私の親戚に宝石商がいますの。それでよくお話されるのです」
と言い笑った。なるほど。

「最近は黒も人気ですのよ?だから気持ち悪いなんてことはありません。ラファエル様って自信ないのかしら?」

「そうなんですよぉ。あんな色気だしといてね」

「色気?それは判りませんでしたわ。いつも女性の前ではめちゃくちゃ冷めた目で見てますわよ?何なら近寄るなオーラが出ています。何でも以前メイドに夜這いかけられそうになったとか…あっ…」

「なっ、何ですってええええ!!?」
私は絶叫した。
誰だそのメイド!私の可愛いラファエルに迫りおって!!

「大丈夫ですわ。そのメイド首になったそうですから!!ふふふ…きっとラファエル様はアマーリア様の前でだけですわよ!!」
と言われて照れる。やだわ、ラファエルったら!!

「でもブラックダイヤモンドの別の逸話として【神の石に手をかける者は神の怒りに触れるだろう】というのもありましてね。つまりアマーリア様に手を出された方は……ああ!私の口からはとても!!」
と言われて私は少し青くなる。
何それ。つまり私に手を出したら殺すよって周りへの牽制もあるわけえええ!?

「あはは…そ、そうなんですかあ…」
と苦笑いした。とりあえずめっちゃ大切にしとこ!!

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