義弟の赤い糸ならぬ赤い鋼が絶対切れません

黒月白華

第3話 義弟の告白とキス

ラファエルはあの後お父様に王宮に薬師として働くことを伝えて、また週に一度は必ずお母様の薬を持ってくるからと言った。
異例の出世にお父様もお母様も私も喜んだ。
その日は送り出す前夜でラファエルの為に美味しい料理が振る舞われた。

ラファエルも出発の為に荷物をまとめていた。
明日の朝ラファエルが王宮に行っちゃうから私も早く寝ないとね!!
あの鋼も週一で見るくらいに抑えられるし!

と思って灯りを弱めて寝ようとした時だった。
ギイと扉が開いてラファエルが入ってきた。
ホットミルクを持っていた。

「姉様…少しいい?」
彼はテーブルにホットミルクを置くとこちらにやってきた。私は寝ようとしていた所だからベッドの上にいた。ヤバ!
弟の赤い鋼が不穏な動きだ!!こわっ!!まさか犯されないよな!?

「ど、どうしたの?ラファエル?早く寝なさいな?明日朝早いでしょう?」

「うん…でも少し姉様とお話しがしたくて…姉様僕が行って寂しくない?」
と聞く。

「そりゃあ、寂しいわよ、家族だもん!でも一週間に一度は帰ってくるでしょう?大袈裟よ!!全く!あ、王宮で好きな子が出来たら教えてね?」
と家族強調しておいた。
少し寂しげにラファエルは笑う。

「姉様やはり僕のこと邪魔だよね。僕…貰われっ子だし…」

「ええ?いつ私がそんなことを?」

「だって…僕が王宮に行くこと喜んでるみたいに見えた。僕は…姉様と方時も離れたくないよほんとは…」
と言う。
うぐっ!ヤバイ空気!!

「も、もうー!甘えん坊よね!ラファエル!!貴方もいい歳なんだから恋人くらい作ったら?もしかしたら結婚したっていいのよ?」
と笑うとラファエルはギッと睨んだ。
赤い鋼が私に巻き付いて行く!!ひいっ!
もちろんこれは私にしか見えないし、現実では縛られてなんかないし、普通に動けるんだけどね。
こんなにがんじがらめにされるとは!!

もう動けないと同じくらいよ!!

「姉様…行く前に僕の気持ちを伝えておくよ…好きな人はいるよ」
うん、わ、私かな?ははは。

「ラファエル?落ち着こう?何か変よ貴方??」
するとラファエルはホットミルクを差し出した。そして

「これに媚薬を入れた。本当は黙っているつもりだったけど無理。僕は姉様が好き。愛してるから本気で」
と言われてトスンと簡単に押し倒されてしまう!!
ひいい!グルグルとガッチリ巻かれた赤い鋼のせいで(いやほんとは動けるけど)ラファエルが上から見ているだけでなんとなく動けなくなってしまう。
ラファエルの黒い瞳と髪が私に近づいてきた。
何故かドキドキしてしまう。

「ら…ラファエル?あの何をしようと?してるの?ふふ。ど、どきなさい?」
悪戯っ子を諫めるように言ったが解放せずにラファエルは

「姉様が好きと言ったのに。無視しないでよ…。僕は生涯姉様しか愛さないと決めているから。姉様が他の人と婚約したら死のうと思う」

「えっ!!?」
それは何ともはや!!?

「そんなことお父様も悲しむしお母様も悲しむわ!」

「姉様が誰かのものになるなんて見ていられないから姉様を殺して僕も死ぬ」
てか私も殺されるんかーい!!
と突っ込んでるとラファエルはついに私の唇にキスを落としてしまった!!

きゃあああああああ!!
わ、私のファーストキスがああ!!義弟に奪われたわ!!

慌ててグルグルしているとラファエルはそれ以上はせずに退いてくれ赤い糸も解けた。
彼は悲しそうに

「ごめんね姉様こんな弟で。でも愛してるのは本当だよ…媚薬は捨てるね…」
とホットミルク媚薬入りを持ち、

「お休みなさい」
と普通に部屋から出て行った。
何故か胸がドッドッドって高鳴り先程軽くされたキスに真っ赤になった。思わず唇に指を当ててしまう。
ていうか明日どんな顔して見送れっつーの!?何だあいつは!!?

そして自分の指を見て仰天した!!ラファエルを追うように赤い糸が戸口で留まっていてウロウロしていた!!!

なっ!!

ダメダメダメダメ!!
するとヒュルリと糸は引っ込んだ。

無かった事にしよう!
うん、何も無かったよー??

弟は血迷ったのだ。
寝よう!!
私はバサリと毛布に潜り込んだ。



翌朝、なんとラファエルは長い前髪を切っていた!!
前髪は真ん中で分けられていて爽やか好青年と化していた。メイド達も見惚れていた。
黒い瞳がぱっちり見えて私を情熱的に見ていた。赤い鋼も名残惜しそうに私の周りをウロチョロしていた。

お父様とお母様は

「ラファエル髪を切ったのね?素敵よ!貴方顔はそこそこいいんだからもっと見せていいのよ!」
母が今日は父に支えられて笑顔で見送る。

「はい、王宮で働くので顔を覚えてもらおうと思いまして…お義母さまもどうかご無理なさらず。栄養あるものをお取り下さい」

「まぁラファエル…心配してくれてありがとう!とても嬉しいわ」
ラファエルは母に薬を一週間分渡し、また一週間後に渡しに来る事を母に告げる。

「ラファエル!こうして見ると立派だな!しっかり働くのだよ?」
とお父様も誇らしげに言う。

「はい、王宮にはたくさんの種類の温室や薬草の管理が整っていると聞きます。公爵家でも沢山ありますが世界中のを取り寄せている王宮に行くのは楽しみです」
とラファエルは楽しげに言った。それは本当なのだろう。ラファエルは薬に関しては熱心なのだ。

最後に私に

「姉様とはお茶会とかで王宮に来る事もあるだろうしまたすぐに会えるだろうけど元気でね?身体に気をつけてくださいね…」
赤い鋼が何と人型に変わり私に歩いてハグしたのは正直ビビった!!
私にハグしたいと思っているラファエルがそうしたんだろうね!!なんとも言えない。

「う、うんラファエルもげ、元気で」
と気まずさで私は目を逸らした。

ラファエルは少しだけ目を細めるとお父様やお母様にハグされ屋敷の使用人達とも1人1人握手や挨拶をきっちりした。最後に私にハグした。しかも長めに!!

皆に聞こえないようそっと耳元で小さく

「忘れないで…」
と色っぽく囁かれた時はヤバイと思った!!
ラファエルは手を振り馬車に乗り込んだ。そして視線は私に向けていた。

遠ざかる馬車に私の赤い糸が伸び始めた!!
待って!そんな!!
さ、寂しいだなんて思わないし!!
馬車を追いかける私の糸…。

ダメよ!ダメダメ!義弟なんだからっ!!
糸は止まりスッと消えた。


しかしその一週間後に何事も無かったみたいにラファエルはニコニコしながら帰ってきて母に薬を渡し、父に王宮での暮らしや薬草のことを楽しげに報告して少しお茶をして自分の部屋にあるものも少し持って行こうと用意すると消えた。

私は自分の部屋でゆっくりしているとノックされてラファエルが入ってきた。

「姉様元気??」

「ええ、もちろん!まだ一週間しか経っていないわよ?当たり前じゃない!」

「でも…毎日姉様の調子が見れないのは辛いよ。僕がいない間に病気になっていないか、害虫はいないかとか」

「害虫?大丈夫よちゃんとメイドさんに掃除してもらってるわ」

「そういう意味じゃないんだけどね…」
黒い瞳で私を見ると急にラファエルは近づきキスしてきた!!
びっくりして押し返すと彼は照れながらも自分の唇を舐めた。仕草が色っぽいわ!!

つか何すんの!??

「僕としかこういうのしないでね?」
と言われラファエルは手を振り

「じゃあまた!」
と笑顔で去った。
私はドッとクズ折れた!!
な、何なのだこれは!!?

そしてまたドキドキして私の指から赤い糸がラファエルを追っている!!
も、もうダメ、少なからず私もラファエルが好きになりかけてる!!

ヤバイよ!ヤバイよおおお!!

しかしほんとにヤバイのはそれから。
ラファエルは一週間後に帰ってくる度にこっそり私の部屋に侵入してキスだけして帰るということを繰り返していた!!

ひいいいい!!
私も警戒してるけど一瞬の隙をついてキスされるから防げないいいい!!
例えば

「あ、髪に虫がついているよ!」
と言われてえっ!?とそちらに注意がいった隙とか、

「服にシミついてる!」
と指を差された隙にとか!
いろいろと気を逸らした隙にまんまとキスされてしまうううう!!
私のばかあ!!
しかしラファエルの頰を叩くことは出来なかった。赤い手形がついたのを父と母が見たらどうなるか…。

それでもまだ触れるだけの軽いキスだったのでもう挨拶だと思ってしまうことにした!!
そうじゃないとやりきれない!!

ダメなんだってば!義弟との恋とか!!

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