悪役令嬢は断罪後青猫王子と国外逃亡してモフモフスローライフします

黒月白華

第17話 決闘の末に

「無駄だ!トラヴィス王子よ!諦めろ!」

「しつこいな…その女はくれてやると言ってる、お幸せにどうぞ勝手に」
と俺は応戦する。相手をするだけ無駄だし、さっさとここから離れたいがシャーロットのせいで変身魔法が解けた!

あの女!どこまでも卑怯な!
まだ俺に未練があるだと?今度は俺をキープする気か!?なんと傲慢な!

しかしそこで

「きゃあ!!」
とマティルダの声が上がる!
見るとマティルダが憲兵に捕まっている!マティルダならぶっ飛ばせた筈なのにどうして?と思っているとクリフォードが

「ははは!うちの兵士達には特別な魔法無効の装備を与えている!この案もシャーロットが提案し、研究をしていたのだ!学生の頃からな!ようやく近年実用化になった!」

「……なんだと?」

「触るなっ!!」
とマティルダは男に捕まえられ腕に噛み付いている。兵士達がニヤニヤしていた!これじゃあの時のようになってしまう!!俺はクリフォードに水の特大魔法を放った!
高速でクリフォードに向かう水鮫を創る。水だからと言って舐めてはならない。他の属性魔法と比べて地味ではあるが魔力を高めると水でも相手に斬撃を与えることができるのだ。

「うっ!」
クリフォードは応戦しようと巨大な火球を作り上げ相殺しようと必死になってる隙に俺は駆け出して兵士達を剣でなぎ倒す。

「マティルダごめん、少しだけ我慢してくれ!!」
と彼女を担いでその場から走った!

「に、逃げたぞー追え!!」
クリフォードが叫ぶ。

くっ!リュックや買ったものを置いてきた!
とにかく人がきを割り邪魔してくる奴には氷の障壁で妨害した。路地裏に潜み息を整える。マティルダを抱えたままなことに気付き下ろす。

「ごめん!素手で抱えてしまった!!気持ち悪かったろ!!?」
と言うと彼女は首を振る。

「そ、そんなこと考えてる暇なかったし。た、助かったわ。まさか兵士に魔法が効かない装備をさせてるとか…やるわねシャーロット…」

「しかも…学園の頃から研究してたとは…赤の国の王子は軍事強化の為に彼女を利用していたのか?」

「それもあるだろうけど、やはり香水で一線まで超えたのは少なからずシャーロットにベタ惚れだったんじゃない?さっきの様子を見たら判るわ」

「マティルダの言う通りだ。あいつシャーロット、シャーロット煩かった」
しかしこれからどうするか?ここにいつまでも隠れていられない。夜までまだ時間はある。宿も見張られているだろう。捕まったら…またマティルダが犯されるかもしれない!そんなことはさせれない!

マティルダがブルっと震えている!

「マティルダ!痛むか?」
心配すると

「だ、大丈夫よ…」
と弱々しい声で言う。
そこでギイと裏口から男が顔を出す。
酷く屈強な男だ!筋肉盛り盛りマッチョのおじさんだ!!ヤバイ!憲兵達に突き出される。

「お前ら…ついて来い匿ってやる」

「「へ?」」
俺とマティルダは驚いたがマッチョおじさんは

「早くしな!このグズ共が!」
と言い俺達は警戒しつつも付いて行った。

おじさんは地下室の一室に俺達を入れた。

「閉じ込めて通報する気か?」

「アホか!夜までここにいな!通報なんてしないから!静かにしていろ!」
と鍵を閉めおじさんは行ってしまった。
マティルダはドッと床にクズ折れた。

「!マティルダ!」
と駆け寄ると

「トラヴィスこそ…平気なの?傷が!」
と俺のことを真っ先に心配した!さっきの王子との戦いで所々剣による傷で血が出たり少し焦げたりしていた。

「俺は平気だ!それより兵士達に触られたか?」

「………どさくさに紛れて胸とか足とか…触ってきたかも」
と言うなり俺は立ち上がり

「ちょっと殺してこよう」
と扉を壊そうとしたがマティルダに止められた。

俺は拳を握りしめていた。また他の男にマティルダを触られた!!無力さに情けなくて!
するとマティルダが俺を抱きしめた。

「マティルダ!何を!?気持ち悪いだろう?」

「大丈夫よ。トラヴィスなら平気って前に言ったわよね?あれ?言ってなかった?ともかく落ち着いて?ね?」
と顔を上げ女神みたいな美しい顔を向けて俺は思わず赤くなる。

「言ってない!……お、俺のことを気持ち悪くない…?ほんとに?」

「入れ替わったことあるのにトラヴィスに触れるに決まってる」
と言われてそりゃそうだと気付いた。
何だったんだろ俺の苦労?
安心したら力が抜けた。ガクリと膝を落として倒れ込みそうになったからマティルダが頑張って支えている。

「トラヴィス大丈夫!?貴方…魔法を使いすぎたのよ!それに体力も。私抱えて逃げたり!バカね!」

「あのままだと牢にまたマティルダが入れられてた…また辛いことをさせられたらと必死で…」
酷く眠い。怠い。

「トラヴィス…私の為にいつも無茶し過ぎよ…」
涙声…。見上げると彼女は空色の目から涙を流している。

「俺の為なんかに泣かないでくれ。マティルダ……。好き…だよ」
と言い俺は気を失った。


また夢を見た。彼女に適当に従者に贈らせたドレスをマティルダは着てこない。従者は確か典型的な青と空色のドレスを選んでいた。まぁこの国の民はほとんど同じ髪と瞳なので大した変化はない。だから違う服を着てきたマティルダはある意味で目立っていた。

そのドレスの色は確か藍色。

彼女がそのドレスを纏っている時は確か10歳くらいで藍の国の王子は…5歳??
その頃から?判らない…。


俺は柔らかく暖かいものに頭を預けていた。
目を開けるとマティルダが上から見下ろしていて…ここがどこなのか理解した。起き上がろうとしたら頭を押さえつけられた。

「いきなり起きると脳震盪起こすわ」

「あ…いや…そうだな…でも…俺…いいの?」
って聞いてどうする?マティルダが本当は我慢してたら!でも俺と入れ替わってたことあるくらいだから本当に俺とは触れるのかも。

俺だけと?

俺とだけ…。

くっ!!何考えてるんだ!あ、嬉しいなど感じては彼女に失礼だし!こんな状況下で下心を発動してはダメだ!俺は青の国民だ!冷静になれ!

と自分を落ち着けた。

「マティルダ…俺はもう平気だ。重かっただろ?君も休んで?少し眠ったらいいよ?俺が今度は起きてる」
と膝から名残惜しく起き上がると彼女はコクリとうなづいてその後なんと!
俺にもたれかかった!!
ええ!?

いやでも!この地下室の中には物置なのか物は置いてあれど休めそうなところは無いから仕方ないか?俺はクッションとなるしかない!

そう!俺はクッションだ!クッションとしての役目を果たそう!!
しかしあああ!何と言うことか!マティルダの息が首にかかり俺はドキドキしてしまう!

いい加減にしろ!クッションはドキドキしてはダメだ!クッションは安らぎを与えなければならない!!クッションなのだから!

それから少し時間が経ち完全にマティルダは可愛い寝顔を預けて寝入った。

「…………」
無意識に彼女の頭を撫でてハッと我に返った!!おいクッション!いい加減にしろ!クッションは動くな!!

と自分に言い聞かせて耐えたのだった。

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