赤髪ハイスペック王子は神獣娘にツンデレです

黒月白華

第48話 スキー合宿2

馬車は1日かけて北の寒い雪山ロッジを目指す為、学院からの特別防寒馬車で生徒達はいくつかの班に別れて各々乗り込んだ。10人乗り用だから広い。馬は4匹くらいで馬車を引っ張る。馬達も厚い馬着を纏った。

(ヴィルフリート王子が乗ってるんだからあんた達しっかり安定した走りにすんのよ!)

(へい!リューシカ姐さん!!)
と俺の乗る馬車を引く馬のリーダーらしき雌のリューシカとか言うのが仕切ってた。

出発前に俺は馬のリューシカと話をした。

「よぉ、あんたがここのリーダーだって聞いたぜ。他の馬達から。今回はよろしく頼む。魔物はほとんどいないだろうが、野生動物の狼や危険な動物の気配がしたら俺に知らせてくれ。俺は動物の言葉も判るから頭の中で叫んでくれてもいい」
とリューシカを撫でてやるとリューシカは驚いて

「まぁ!流石!聞きしに及んでいました!奇跡の王子ヴィルフリート様!!私達が安全にお運びしますわ!もちろん危険があればお知らせ致します!」

「よろしく頼むよ」
とリューシカに言いリューシカや他の馬達は張り切っていた。

馬車の中に乗りクッションや毛布などを取り出す。カイロの開発をしておいたから皆に配っておく。シーラは当然俺のとなりにピタリとくっついた。
そんなに?と思ったが、なんか周りみたらザシャにユストゥスもそれぞれお相手とくっついてるしな。後、女子寮監督生のリーゼロッテ・フィンケ先輩と男子寮監督生のフェルディナント・レーム先輩もいた。何で同じ馬車なのかは心を読んだらすぐわかった。

(フェルディナントと同じ馬車に乗れたわ!!やった!!)

「全く!くじ運が悪いわ!貴方がいると知ったら代わってもらったのに!」
とフィンケ先輩がツンケンし、

(リーゼロッテと同じ馬車に乗れるなんて夢のようだ!文化祭は他の生徒の手前何も話さなかったが…この合宿で親密になってやる!)

「それはこちらの台詞だ。何故お前がここにいるんだろうな?」
とレーム先輩も言った。相変わらずこの二人は態度と心の中が逆なのである。
それから生徒会長のロホス・ヴァイスミュラー先輩にロジーナ・ディーバー侯爵令嬢も乗っている。

濃密な空間だな…。

シーラとロジーナは顔を合わせるとお互いにフン!とそっぽを向いた。俺を巡って火花散りそう。ロジーナ嬢は

(きいいい!忌々しい!寒いのが苦手なら来なきゃいいのに!この神獣娘!いつもいつもヴィルフリート王子にベタベタと!!)
とか心の中で思っていた。
シーラも聞こえるのかより俺にくっついていた。

ロホス生徒会長は落ち着いており持参した本を読んでいた。だが…カバーは普通のだが、会長の頭の中はどういうわけかやらしい官能的な言葉が占めていた。
あ…会長。真面目な顔して官能小説読んでる。たぶんシーラも気づいたのが時折顔を赤くした。
カバーすげえ高そうな文学小説と見せかけてるし。メガネの奥の切れ長のオレンジの瞳が燃え上がっていた。

ザシャは相変わらずシャッターでミリヤムも概ねは食べ物のことばかりでユストゥスは馬車が揺れた時シュッツェ先生の胸にどうダイブするのが正解なのかアホなことを考えており、シュッツェ先生もユストゥスと雪山で遭難して熱い一夜とかどうだろうか?とか考えとるし…こいつら…。

昼食と休憩を兼ねて途中で馬車は止まった。

「やった!!ご飯ご飯だ!」
ミリヤムは相変わらず嬉しそうにはしゃいだがザシャは

「ふふっ、あちらで一緒に食べますか?」
とミリヤムの手をさりげなく握り大きなお弁当を持ち、ミリヤムとザシャは照れながら歩いていく。ら…ラブラブあれが…ラブラブってやつ!!ザシャ…完全にリードして大人だな!!

ちょっと前まで俺に相談してたのに!何あの変わりよう!!それはユストゥスも同じで

「………ザシャくん大人になっとる…」
と困惑していた。秋からのザシャ進化は止まらんな。

「ユストゥスはシュッツェ先生と食べないのか?」

「いや…食べるよ…僕作ってきたよ」
とランチボックスを見せる。

「えっ!お前の手作りって…」
普通女が作んのに!!?

「いや…ほらシュッツェ先生は鍋に狩ってきた獲物を刻んで入れるだけの野性味溢れたものしかしないと言うし…僕が作ることになったんだ。今は他の先生のとこにいってこれからの打ち合わせを少ししてくるから待っててって」

「そっか、あれでも先生だもんな」

「うん、ヴィルくんたち食べてきていいよ?」

「そうだな、シーラ行くぞ?」
とシーラを見るとなんか寒そうに肩をすぼめていた。段々気温は下がっているしな。

「おい、シーラ…引き返すか?今ならまだ…」
シーラは首を振り

「いっ…行く…」
と言った。全く。
俺はシーラに手を翳し暖かな膜を張る。奇跡の力を使った。

「あっ!温い!!ヴィル!私の為に力を!!」

「お前が帰らないんだから仕方ないだろ!目の前で凍死されちゃ困るからな!」
ふんと横を向きつつ一緒にランチを取ることにした。相変わらず俺の好みのものを作る。

俺は父上の言う前世料理に興味があり、父上が何とか見つけ出してきた日本に似た食材もブッシュバウムではたくさん輸入されるようになっていた。例えば大豆から醤油を作る職人も生まれたりして醤油は貴重なソース材料になった。何故なら作り方が大変らしいので。

そんで箸も当然広がっていた。だが、シーラは箸にあまり慣れなくていつも困っている。
今日も

「ヴィルにいつもあーんさせたいけどこの箸難しいよね?シーラ、いつもフォークでしか無理。ヴィルは何でもできて凄いね?」
俺が箸を使ってるのを見て言う。

「こんなの覚えれば簡単だと思うぞ」

「うーん、一部の人は箸も使えるみたいだけど…ザシャくんとかも…なんか違和感凄いよ」
箸が難しいか…。俺はシーラの手を掴み

「こうやって持つんだよ」
と教えるが結局シーラが赤くなり甘い空気になってしまう。別にそんなつもりなかったんだけどな。

「お、ウサギのリンゴ!」
と見てこれは箸でなくてもいいのでシーラは俺に

「あーんしてヴィル…」
と言う。仕草がますます色気増してきやがった!!思わずコクリと喉が鳴る。
口にリンゴを頬張りシャクシャク食べていると木陰から物凄い視線を感じた!

……ロジーナ嬢だ。

(おのれっ!!シーラ・エーレンフェスト!!ヴィルフリート王子をいつもいつも誘惑して!何なのよっ!剣なら負けないのに!!神獣だから手出しなんて出来ないし!神獣や公爵位がなきゃあんな娘に価値などないのに!!)
とギリギリと歯を噛み締める音までした。

シーラも気付いたのか落ち込んだ。価値がないと思っているのか?最近はシーラも心を読まれないようにシャッターかけるようになったしな。

「シーラ…気にすんな。ただの僻みだよ。大体爵位や神獣とかなくてもお前は…そ、その可愛いだろ?」
と言うとシーラは輝かんばかりの瞳になる。
うぐっ!!

「シーラ…可愛い?やった!!」
俺の一言で上機嫌になるシーラは食事が終わると俺の口元を布で拭いてくれる。
ロジーナ嬢はまだ諦めてないらしくギリギリと見ていた。仕方ない…。俺はシーラを膝に乗せて

「少し見せつけてやろう」
とニヤリと笑う。シーラはいきなり大胆な俺にびっくりしていたが顔を赤くして大人しくなる。俺たちはロジーナ嬢に見えるようにわざとキスした。

(ひっ!!ううっ!!ヴィル様…!!またあんな娘に誑かされて!!くううう!覚えてなさい!!シーラ!!)
とロジーナ嬢は走り去った!!

ほっとしてキスを止めるとシーラがもっとと言う顔したから赤くなりゴロリとどかした。

「いっ今のは…」

「うん…ロジーナ嬢に諦めてもらう為でしょ?でもロジーナ嬢…全然諦めてないけど」

「知らんけど歴代の俺に陶酔する中で一番しつこいな。思考が完全に俺がシーラに騙されてるとか思い込んでるからな」

「ヴィルがはっきり言っても伝わらないよね」

「前にも言ったけど無理だな。誰が言っても信じない、騙されてる、私がお救いしなければって思考の女だから困るな…」

「ディーバー家は四大侯爵家の一つだもんね。剣に物凄く優れてる一族だし元ヴィルの婚約者候補だったから自分が選ばれると思ってたのに私が先に婚約しちゃったから物凄く恨まれてる」

「別に婚約を決めたのは俺だけど言っても信じないだろう」

「うーん…難しいね。シーラは恨まれるのとかもう慣れたけどロジーナ嬢は普通の令嬢と違って信念?みたいなものある…。うーん…」

「ロジーナ嬢の父親は昔母上の剣の師匠だったみたいだし母上も師匠には剣の腕では勝てないって言っていた…。そんでストーカーみたいに母上に粘着してたから一時期父上とも拗れたみたいだけど…。あぶねー…ダニエル侯爵が俺の父になってたかもとか考えられねー…」

まぁそれ裏を返せば親子揃ってストーカー気質じゃん!!大丈夫かな?俺?
あんな父上でも一応まぁ顔だけはいいし何か面白い思考で親子というより俺のおもちゃ的な親父だからなぁ…。戦闘はアホみたいにできないけど。
小さい頃父上に剣を持たせてみたらあっさり俺に負ける。その辺の兵士より激弱だった。そっから父上のヒエラルキーはあっさり俺より下になった。因みに1番はお美しい母上だ!!



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