赤髪ハイスペック王子は神獣娘にツンデレです

黒月白華

第39話 フェイトの想い

俺は赤髪の一族のフェイトランス・バルシュミーデ…。
この国の王妃様はかつて鮮血姫とさえ呼ばれていて戦争ではわずか10歳程で敵を倒していた。その弟が俺のお父様だ。
強く、誇り高く何よりカッコよく俺は父のことが大好きで剣を従兄弟のヴィル兄と一緒に習った。でも剣の腕ではヴィル兄には勝てなかった。

しかし、俺はもう一つのお母様の血を濃く受けたようだ。お母様は旧姓レーナ・トラウトナー。トラウトナー家は怪力の能力を持ちそれも何十人かに一人の割合で能力を受け継ぐからお母様が受け継いだのは謎だが、俺もその力を受け継いだ。お母様はゴリラみたいに強いし怖い。母は強しと言うが強すぎる。何でお父様はあんな怪力の女と結婚したんだ!頭もいいお父様が…。まさかあのでかい乳に翻弄されてないよな?

お父様にそのこと聞くと口を濁すし。お母様は

「お父様が私が国を出ようとしていたら引き止めて愛を告げてくれたの!!」
と頰を染めてだらしなくニヘニヘと笑う。何でだ!?何でこんなピンクゴリラが母親なんだ!?おかげで俺は赤い髪赤目だけど【破壊魔フェイトランス】とまで言われた。

まぁ、俺に歯向かってくる馬鹿野郎達や強そうな奴を探してぶっ倒していってたのも事実だけど。俺のこの力に勝てる奴はいないのか?と探した結果、母以外やはりいないのかと落胆する。

だけど、ミリヤム姉は違った。エルネスタ公国の第二公子のカミル・リーンハルト様とその国の魔女アスカ様の娘であるミリヤム姉は幼い頃からちょくちょくヴィル兄やシーラ姉にザシャやあんまり覚えてないがミリヤム姉の妹も時々いたようないなかったようなな関係でよく遊んだが、俺は魔法を使えるミリヤム姉に興味を持った。せがんで

「魔法みたい!見せてくれ!」
と頼んだ。大きな岩を魔法とやらで粉々にしてしまう破壊の魔法や大きな炎で獣を仕留めたりとにかく無敵だった!俺でもミリヤム姉には敵わない!しかも無表情でそれをやってのけるなんてカッコいいとさえ思えてきた。魔法の反動でミリヤム姉は物凄い量の食事をするけど、全く太らない!何でだ!?と言うと

「魔力エネルギーに変換されるから」
とよく解んない答えが返ってきたがとにかくいっぱい食べなきゃいけないみたいだ。
食べないと魔法使えなくなるって聞いて俺はなら栄養もある肉が1番だと考えた。それなのにザシャは甘いものばかり与える。
絶対に肉の方が栄養価高いのに、ミリヤム姉が虫歯になったらどうすんだ!あれ痛いんだぞ!?

そのうちに俺はミリヤム姉が好きになった。最初は判らなかったが、女の子で話しをするのミリヤム姉やシーラ姉くらいだけど、ミリヤム姉の方が他の女達と違って飾らないし、女子らしくもないし気軽だし遠慮もないし一緒にいても嬉しい。恋に変わったのは…。



雨の日に俺は初等部のチャラチャラした女に呼び出され告白された。俺も顔だけはいいから。それ目当てで来る女が許せない。

「ぶっ飛ばすぞ?」
と脅したらすぐに逃げていった。
イライラしながら帰ろうとしたらミリヤム姉とザシャが同じ傘で帰宅する所を見てしまい思わず隠れた。

あ、あれ?何で俺隠れてんだろ?たぶんミリヤム姉も傘を忘れたんだろうからザシャが気を使ったんだ。それだけなのに。ズキズキ胸が痛くなった。な、なんだこれ?普通に帰ってるだけじゃん!!?

相合傘とか言うやつじゃないのに。
いや相合傘か!?あれ!!
ザシャの顔は読めない。いつも同じ地味顔でにこにこしてるだけ。ミリヤム姉もいつも通りだ。

…でもザシャはすっごくさりげなくミリヤム姉に気付かないよう傘をほんの少し動かして絶対に濡れないようにして自分は肩が少し濡れていた。何だあの気遣い!?

い、いや…あいつの家系は王族の従者だから!!それ仕込みなだけ!!あんなの普通!!

しかしなんかそれが心に引っかかるしなんとなくミリヤム姉を取られた気がしてムカついた。
そしてミリヤム姉に惚れてることも自覚した。
ザシャがミリヤム姉を好きなことも俺はヴィル兄でさえ気付かないうちから気付いた。

ヴィル兄は心が読める…。だから俺も気をつけないと…。特にミリヤム姉といる時は!と気をつけた。


そしてヴィル兄は協力してくれと言った俺を…裏切ったんだ!!ザシャの協力をすると!!許せねえ!!俺は拳を振り上げヴィル兄に向かった。

そこにシーラ姉がビリビリ光を纏いながら立ち塞がり俺の拳を止めた!少し痺れて焼ける。

「そこをどけよ!シーラ姉!女のくせに引っ込んでろ!!」
と俺はシーラ姉を力任せに持ち上げ投げ飛ばした!!

「シーラ!!」
ヴィル兄はシーラ姉を髪で受け止めて安全なとこに下ろした。

「フェイト!やり過ぎだぞ!!?」
とヴィル兄は怒った。

「敵だって言っただろ!邪魔すんな!神獣でも俺の恋を邪魔すんな!!なんならドラグー化しろよ!シーラ姉!そんで俺を喰うか?押し潰して殺すか!?」
と言うとシーラ姉は泣きそうになった。シーラ姉はそんなことできないって判るしな!

「フェイト…お前…あんまり俺を怒らすなよ?」
ザワザワとヴィル兄の髪が揺れた。あれは本気で怒ってるな。髪の毛を使われたら俺は負けるけど、俺もこの力があればヴィル兄にも勝てる!赤髪の力では俺は負けるから。

一瞬お父様の顔が浮かんだ。ちゃんと頭を使いなさいと…血統を絶やすなと。判ってるさ。でも俺には…赤髪の才能が足りない…。

シュルルとヴィル兄の髪は俺を捕らえたが俺は力でそれを引きちぎる!

「ちっ、クソ馬鹿力め!」
とヴィル兄は睨む。
ヴィル兄は髪の毛を硬い弓みたいなのに変えて何本も打ってくるが俺はそれを拳で全て叩き折りヴィル兄に突っ込む!

ヴィル兄は髪の毛で硬い盾を作り防いだけどそれが割れて頰に当たりぶっ飛んで壁にめり込んだ!

「がはっ!!」
と少し血を吐いたが、奇跡の力って奴でヴィル兄は自分を直ぐに回復させた。
ちっ!

「フェイト!てめえ!今、ちょっと折れたし内臓を損傷したぞ!治したけど痛い!」

「治せるんだからいいだろ!?別に!」

「…死んだら治せねえよ」

「ふうん?じゃあ死ねよ!俺の全力でヴィル兄倒してやる!」
と俺は赤髪の力も出して髪の毛さえも拳にして突っ込んだ!!ヴィル兄は赤髪の拳を受け止めるが俺本体の拳は受け止めれない!よしっ!勝てる!

しかしそこにシーラ姉がまた邪魔しに来て後ろから力で羽交い締めるから俺は後頭部でガツンとシーラ姉の頭を打ってシーラ姉はよろけて倒れた。

「ふえっ、い、痛い…」
と額にじんわり血を出して気絶した。

「シーラ!!」
隙ができた!!これでヴィル兄も終わりだ!!
と拳を思い切り力を込めて腹に入れようとしたその時…

黒髪が靡きナタリーが間に入る。悲しい瞳だった。俺の拳はもう止められなくてナタリーは腹に一撃を受けてぶっ飛ばされ腹や口から血を吐いた。

えっ…。思考が停止した。
ナタリーは…普通の女の子だ。
まさか喧嘩に割り込むなんて思ってなかったしビクビク影から見てるだけだと思ったのに。

その隙にヴィル兄は全くあまり痛くないけど赤髪で拳を作りバキっと俺を殴った。
おれはヘタリと地面に座って血を流すナタリーを見ているだけだった。

「女に手を出すなんて最低だな。シーラはともかくナタリーは重症だ。すぐ治さないと死ぬ」

「し…死ぬ?」

「そうだ、お前の本気の一発がナタリーに入ったんだよ!本当に死ぬ手前だ!見て判るだろ!」
とヴィル兄はナタリーに駆け寄り治療を始めた!ナタリーはヒューヒューと虫の息をしていたが、白い光に包まれ傷は塞がり安定した息に戻り目を開けた。

「ナタリー大丈夫か?どこも痛くないか?」

「は、はい…平気です。やっぱり師匠の奇跡の力って凄いんですね。私死んだかと思いました。ふふ」
と笑った。

「次はシーラだな」
とヴィル兄はシーラ姉の所にいって気絶したシーラ姉を抱き上げておでこに手を当てると光りが集中し治る。

「んっ…ヴィル…ありがとう…」

「ああ…皆無事だな…良かった…」
とほっとするヴィル兄はくたりとシーラ姉に寄りかかって目を閉じた!

「ヴィル!!」
シーラ姉は揺すったが起きない。

「無理もないよ…赤髪の力に加えて何回も奇跡の力使ったんだから…明日まで…いや、明後日までヴィル兄起きるか解んない」
と俺が言うとシーラ姉はヴィル兄を地面に優しく寝かせるとこちらにきてパチンと俺の頰を打った。泣きながら

「何でこんなことするの!!」

「何でって…ヴィル兄達が俺を止めるから…」

「友達なのに!幼馴染なのに!!フェイトくんは何でもかんでも力で解決なんだね!!レーナおばさんしか止められないからって!!そんなんじゃダメだよ!!」

「……なんだよ!シーラ姉だって俺がミリヤム姉のこと好きなのに邪魔するじゃん!!ヴィル兄もナタリーも…」

「私…ヴィルと一緒にザシャくんの話を聞いたんだ…昨日の夜だよ。寮を抜け出して三人で集まって聞いた…」

「何だよ?」

「ザシャくんは…明日の後夜祭でミリヤムちゃんに振られたらキッパリ諦めてフェイトくんにミリヤムちゃんを託して自分は親に勧められた婚約者の令嬢と婚約するんだって」

「…はあ?そんなの断ればいいだろ」

「…ザシャくんの性格を考えたらできないよ…」
とボロボロ泣くシーラ姉。

「ミリヤムちゃんにも…うっく、軍事関係の婚約者候補がたくさんお見合い話来てるし自分じゃ身分低すぎてお嫁に来てもらう事無理だから最初からザシャくんは諦めがちだよ!力じゃフェイトくんに勝てるわけないじゃない!うっ!」

「シーラ様…」
ナタリーがシーラ姉の背中を撫でた。そして

「フェイトランス様…私貴方様をお慕いしてます!後夜祭は私と出ていただけないでしょうか?」
と淑女の礼を取った。

「は?何言ってんだナタリー。お前ここの学生じゃないじゃん!」

「お母様にミセスコンテストで貰った制服を貸してもらいました。忍び込みます!私も来年はここに入るので」
と美少女が笑う。見つかったら厳罰だぞ?
それに…

「あ、アホじゃないか?お前今俺に殺されかけたじゃないか!俺は殺人未遂犯だ!憲兵に突き出されてもおかしくない!」

「そんなこと、私達しませんよ、それに私生きてますよ?」

「ヴィル兄が寝てる今、シーラ姉もお前もぶっ飛ばしたら終わりなんだぞ!?」
するとナタリーは前に出た。

「はい、では殺してお姉様の所へ告白しに行ってください!フェイトランス様の手で殺されるなら私本望です!」
と目を閉じて手を組んだナタリー。
何なんだよコイツ!!

「フェイトくん…もうやめて…。1日だけザシャくんに思い出作ってあげてよ…」
とシーラ姉はまた泣くし!

「くっ!…判ったよ!!俺の負けだ!!ミリヤム姉なんかザシャにくれてやる!!」
そこになんとザシャがヒョイっと顔を出してタイミングよく走ってきた。

「お帰りが遅いから心配しました。何してるんですか?王子寝てますし」

「てっ…てめー!絶対どっかで見てたな!!?」
ザシャめ!!

「…………」
ザシャはヴィル兄を担いで男子寮に足を向ける。

「ザシャ!一つ言っておく!この俺が譲ったんだからミリヤム姉を何としても落とせよ!?じゃないと殺すぞ?」
ザシャは後ろを向いたまま

「難しいです…」
と言い、去っていく。ピタリと思い出したように止まり

「シーラ様…すみません…明日の後夜祭…王子はこの始末で出れませんから…これ」
と袋と小瓶を投げた。

「何これ?ザシャくん?」

「何って、変装セットです。小瓶は男子になる薬です。袋は男子の制服。見つかったら厳罰ですからお気をつけて」
と言い残しザシャは去った。

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