赤髪ハイスペック王子は神獣娘にツンデレです

黒月白華

第7話 シーラの初等部卒業式

今日はシーラの初等部卒業式だ。
シーラは朝から泣いている。

(やだあ…卒業したくない!ヴィルと離れ離れ嫌っ!!)
と馬車の中で俺にくっついて離れない!!
俺は在校生代表で壇上に上がる段取りとかあるから早く行かないとなのにっ!と言うのも来年から俺は初等部生徒会長になるからだ!

「シーラ!いい加減にしろ!いつまで引っ付いてんだ!このあほ!」

「うぐっ!ひっく!ひっ!!」
(ヴィルと離れ離れ嫌ああ!)

「あほ!初等部卒業しても中高等部の校舎はすぐ隣りだろうがっ!そりゃ、中高等部では寮生活になるだろうが…」

初等部は7歳から12歳まで皆通いで学院に来るが、中高等部は6年制で親元を離れて13歳からは寮生活になり、本格的に先輩後輩の力関係も出てくる。卒業は18歳で成人になるから、卒業と同時に結婚する奴が多く出る。

だから言うなれば庶民含めて中高等部からは本格的に婚活を始める男女が圧倒的に多く、初等部からお手つきされないよう婚約する貴族も多くいるが、他に浮気する奴もいて婚約破棄とか言う奴も多い。まさに学院とは名ばかりの恋の戦場になる。

「校舎が違うの嫌っ!!寮生活も嫌!!ヴィルがいないのっ!中高等部の校舎にヴィルの匂いないのっ!!マーキング出来ない!!」

「は?マーキングって何のことだ!?」

「…キスのことだよ…お母様が言ってたの。気に入ったオスには自分のものに毎朝キスしとけって…」
あ、あんのあほ神獣!!獣かっ!!いや獣だな…。

「あのなシーラ…我儘を言うならもう婚約を解消するぞ!?さっさと離れて出ろ!!俺はこれから打ち合わせがあるんだっ!それに後2年したらどうせ俺も入る!」
仕方なくシーラは濡れた顔を上げて離れて馬車から降りようとして

「待て!グシャグシャな顔で出るな!あほ!」
と俺はハンカチを渡してやると

(ヴィルのハンカチ!)
と涙を拭う。

俺は先に降りてシーラも続いた。

「んじゃ、しっかりしろよ?」
と俺はハンカチを渡したままさっと走った。ザシャも別の馬車から降りてきて後を追った。

「王子またシーラ様泣かせて…」

「知らん!卒業式って泣くもんだろ?」

「いや、もっと式の後じゃないですか?始まる前ですよ?」
とブツブツ言いながらも打ち合わせに向かい在校生たちは式の前に卒業生の胸に飾る花を配る為の用意とかをする。
その花は持って帰ってもいいが、好きな人に渡すと両想いになるとか変なジンクスが広まっていた。卒業式の名物だ。つまり式が終わると告白大合戦みたいなのがあちらこちらから始まるのだ。

シーラにここぞと花を渡そうとする男子生徒も多いし俺は憂鬱だ。婚約者のお披露目をしてからシーラの虐めはなくなったが、それは俺が初等部で目を光らせていたから。影でヒソヒソ言われるくらいで物理的なことは収まったが、シーラが中高等部に行ったらまた始まるかもな…。俺いないし。

そして式は滞りなく始まり在校生は胸に花を着けて入場し学院長の挨拶の後、卒業証書を渡されて行く。シーラの番になり、シーラは真っ赤な目で証書を受け取りお辞儀する。

全員が終わると俺は在校生代表の挨拶だ。

「ナターナエル初等部の先輩方、卒業おめでとうございます!在校生代表のヴィルフリート・ゼッフェルンです!来期から僕は初等部生徒会長となりますが先輩たちの教えを守り、また次に引き継げるようにしっかりと学んで行こうと思います!!卒業生の皆さん、この晴れの日に旅立って行かれることを僕たち在校生は暖かく見送ります!先輩たち卒業おめでとうございます!」
お辞儀をして顔を上げるとシーラが号泣してこっちを見ているのをチラリと見たが他の女性徒も結構泣いていた。

校舎は隣りだ。そんな泣くかあ??
卒業生代表の元生徒会長のアルヌルフ・ザーネフェルダー侯爵令息が挨拶をする。

「在校生諸君!そんなに泣くな!!もう我輩が見れなくなるからと!!初等部と中高等部は隣同士!一応連絡通路もあるから用のある時は声を掛けていいぞ!可愛いハニー達!!残念だが男子寮に女子は入れないが…。涙を笑顔に変えてごらん!虹がきっと祝福してくれるさ!では!式の後は僕の花を奪いに争奪戦になるだろうから握手会は初等部6学年の階段の下辺りで後ほど行おう!では!祝福ありがとう!!」

とザーネフェルダー元生徒会長のバカな挨拶に在校生全員は真っ白になった。ザーネフェルダー元会長は…なんていうか自意識過剰なとこがありそれを生徒達はドン引きするような奴だった。
卒業生が退場しフラワーシャワーで拍手され見送られ式は終了し、そしてこの後告白大合戦がやはり始まった!

「好きです!先輩!」

「中高等部に行っても一緒にいて!」

「お花ください!」

(シーラさんはどこだ!?)
(シーラさんの花は俺がもらう!)
(うおおおお!シーラさんどこだああ!)
との声。早よ帰れ!と思わずにいられない。

そしてゼーネフェルダー元会長が一人で階段下で待っているのをチラ見したが女生徒は来る気配ないようで無視した。


(ヴィルどこ?ヴィル…)
シーラはヴィルを探していたが見つからない。仕方ないとシーラは角を出して鼻に集中してようやく好きな人の匂いを発見し、そっちに向かうと、人気のない校舎裏でヴィルに告白している女生徒がいて

(があああ!!私のヴィルがあああ!!先を越されてる!!)
とショックを受けるがヴィルは花を受け取らず終始クールに振る舞い断っていた。ほっとしていたら後ろからいつの間にかヴィルに声をかけられた。

「おい、何してるんだシーラ。さっさと帰るぞ」

「ヴィル…あのお花っ!!」
私はもたもたして自分の花を取ろうとしてもがいた。中々取れなくて引っ張ったら制服のボタンごと弾け飛んで下着が丸見えになりヴィルは突然のことに驚きツーっと鼻血が出た!

「ヴィル!!大丈夫!?」
と駆け寄るがヴィルは鼻血を止めて

「ああああほ!胸隠せ!!」
と慌てて赤くなるがこちらに誰かの声が近付いてきて腕を引っ張られて茂みにボスリと隠れて口を押さえられた。

「シーラ嬢はどこだ!?こちらに来たと思ったが」

「くそっ!お前には負けないぞ!俺が先だ!!」

「何だと!?俺が先に決まってんだろ!」
と言い合いしてる。で、でもそれよりっ

(はわーっ!ヴィルが近いよっ!私の口を塞いで静かにしてろと見つめてるしっ!さりげなく反対側の手は肩に置かれているし密着度凄いし、ヴィルいい匂い)
と思ってるとヴィルは僅かにビクリとした。
赤くなり顔を逸らす。もっと見て欲しい…。
ようやく足跡が遠のきヴィルは立ち上がる。

そして周りを見渡すと

「胸隠してこっち来い!」
とどこかに連れて行かれる。低学年の空き教室だ。今日は低学年は出席しないから誰も来ない。

「シーラ!シャツこっちに渡せ!!ボタン付けてやる!お前には裁縫は無理だからな!この不器用が!そんな外れたシャツで帰れんだろ!」

「うん!ありがとうヴィル!」
と私はシャツを脱ごうとすると

「ううう、後ろ向いて渡せあほっ!」
と言われる。あっ…!そうなの??

それからヴィルは後ろ向いたままチクチクとボタンを全部縫ってくれた。器用過ぎるヴィル。陛下も器用だけどヴィル何でもできて凄いな。ヴィル好き…。

「出来たぞ!!ほらっ!」
とシャツを目を閉じて渡してくれる。

「ありがとうヴィル!……あれ?」
私は花が無いことに気付いた!まさか!さっき落としたの??と青くなるとヴィルがため息をつき、

「おい、花落ちてたぞ拾っといたから」
と渡す。
は!これって!逆告白!?

「何でだよ…」
と小さくぼやくヴィル。

「ヴィルありがとう…!!大切にする!!」

「元々お前のつけていた花だろうがっ!!」

「でもヴィルから貰ったから…」
と言うとヴィルはまた

「あほめ…さあ、帰るぞ!」
と言うからヴィルに飛びついた。

「ぎゃっ!」
とヴィルが私の胸でもがくけど少しだけこうしていたい。するとヴィルは少し大人しくなった。

「シーラお前…見てろよ!お前なんかいつか見下ろしてやるからなっ!」
と赤くなりながらちょっと睨まれたけどヴィルやっぱり大好き!

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