赤髪ハイスペック王子は神獣娘にツンデレです

黒月白華

第6話 自転車の2人乗り

婚約者披露の夜から俺はシーラと顔を合わすのが恥ずかしくなりとっとと先に学校へ行ったりした。帰りも生徒会の用事があるからと先にシーラを返す。
休日は自転車造りがあるからと断った。

シーラは心の中で

(避けられてる!?何で?ヴィル!?シーラ何かしたのかも…ううっ)
と泣いている。
全然違うけどとりあえず自転車完成させたら仲直りするか…別に喧嘩してないけどな…。
と手を動かしていたら完成した。
機械油だらけになり熱中している職人気質の王子ってのも変だけどな。俺は作業着だし。

すると父上がひょいと俺の専用工房に顔を出した。自転車を見て

「おおおおおー!!ママチャリだ!!懐かしっ!!さっすがヴィル!!天才!乗っていい??懐かしっ!」
と喜んでる。

「どうぞーっ」
と父上を実験台にして試運転させてやろう。

「誰が実験台だ!!
このやろっ!」
と心を読まれたが父上はママチャリと呼んだ俺の自転車にスイスイと乗った!!

「へえ!父上初めてなのに乗ってる!」

「そりゃ乗れるわ!こんなの!お前こそ補助輪無しで大丈夫か?」

「補助輪!?」

「そうそう、自転車に乗るにはまずバランス感覚が必要で小さい子は最初は補助輪をつけて支えて乗れるんだ。自転車補助輪無しだとこけるぞ最初」
と馬鹿にされたので俺はむっとする。
父上に乗れて天才の俺が乗れないわけないだろ!!
俺はママチャリを奪い父上がさっきやってた乗り方でペダルを漕いだ。そんで思ったよりスイスイ漕げてしまう。それ見て父上が

「えっ!!?凄えヴィル!何で乗れんだよ!!くっそー!息子に自転車教えんのちょっと夢だったのに!!ちっくしょー!」
と悔しがった。どんな夢だよ。

「ごめんね父上…俺が天才で」
とニヤリと言うと

「可愛くねええ!クラウディア呼んでこよっ!!」
と母上を呼んでくると言うので俺はギクリとして急いで作業着を着替えて待った。

そしたらハクチャーン様とローマンやシーラまでついでに連れてきたからシーラと顔合わせてドキリとした。
シーラは相変わらず俺に避けられてることを内心気にしていた。
ハクチャーン様がギラリと

「こら、ヴィル!シーラが落ち込んどるじゃないか!何した!?」

「え?い、いえな、何も」
やっば!ハクチャーン様も心読めるし。俺はとりあえず心のシャッターに鍵かけた。

「それよりクラウディア!見ろ!これがチャリ!自転車だ!!」
と父上はまたスイスイと皆の前で漕いで見せると皆おおーっ!と感嘆した。こんなの見たことないからだ。

「父上…俺の作ったのママチャリとか言ってたけど自転車っていくつか種類があるんですか?」
とこっそりと聞くと父上は

「そうだ、お前が作ったのがママチャリだろ?ああ、別名シティサイクル。一般的な奴だ。他にもマウンテンバイク、レース用のロードバイクとか折りたたみ自転車に坂道もスイスイ登れる電動自転車に一輪車」
と言ったので驚いた。同じ自転車でもそんなに型があるのか!!と。これは興味をそそられた。全部作ろうと思った。

母上はママチャリに跨ってプルプルしていた。

「ジーク!どうしますの!?これ!!怖いっ!!」
と可愛い反応している。案の定父上は

「ディアくっそ可愛いな!!」
と飛んで行き、

「まだディアには無理だよ…そうだ後ろにクッションを敷くから俺に捕まって後ろに横乗りして」
と父上が前に乗り母上が恐る恐るママチャリの後ろに乗った。そして父上は

「しっかり捕まってろよ」
と母上を乗せて走り出した!!
おおっ!2人乗りできるのか!父上は得意げにスイスイ行く。母上の方はこの素早い乗り物に驚き怖がり父上にガッシリ捕まっていた。

「原付じゃないけど素肌に風感じるだろ?馬や馬車とはまた違うだろ?」

「はっはいい!う、馬よりも安定していますけどやっぱりジーク!まだ怖いですわ!!」
と泣き出しそうだ。
それを見ていたハクチャーン様が

「ううむ、楽しそうだな!ヴィル!あれはお前が作ったのだろう?もう一台作れんのか?」

「あ、まぁ時間あれば…職人にも作り方渡して量産できるかと、ですが父上の言うには前世の乗り物だそうですからやはりこの世界の住人には最初乗り方の練習が必要だそうですよ?」
と言うと、

「ううむ!お前は乗れたのか?」
と聞かれて

「ああ、俺はまぁ乗れましたよ一発で。でも…他の人はどうかな?個人差とかあると思います」
と言うとハクチャーン様は

「お前に乗れて我に乗れぬなどないわ!ちょっとこのワンピースではダメじゃな!着替えてこよう!」
とシーラと共に乗馬用の服に着替え直してきた。そこまでして乗る気か!

ハクチャーン様は

「よし!ローマン!シーラ!見ておれ我の華麗な自転車を!」
とパッと自転車に跨り漕ぎ出したがそのままガシャン!!と倒れた。

「コホン!うむ!もう一度!」

ガシャン!!

ガシャン!!

無理だった。

「お父様乗ってみたら?」
とシーラがローマンおじさんに勧めてみる。

「お、おお!」
とローマンおじさんはハンドルを握り前を向いて背を正してよろつきながらもちゃんと進みしばらくするとコツを掴み、父上みたいにスイスイ漕げるようになった!!飲み込みいいぞ!!

「おおーっ!ハク!シーラ!すげえ楽しいぞこれ!!」
と嬉しがったらハクチャーン様は睨んだ。

「お、おのれ!何故ローマンに出来て我に出来んのだっ!!」
と悔しがり次はシーラの番になるが、

「えっと…ここに足?えっと進むの?」
とプルプルしながらハクチャーン様と同じ様にこけた。

「ダメでした…」

「ダメではないか!ヴィル!女には乗れないのか!?」

「そ、そんなばかな…バランス感覚ですよ…でもお母様も乗れないのか…馬には乗れるのに」
と言うと父上はあっさり

「自転車ってのはバランスも大事だけどやっぱり初めてだと恐怖心があるんだろうな、それ克服しないと無理だぞ!ローマンは新しいものとか好きだしな」

「だなっ!こんな楽しいのだったらどんどん作れよヴィル!」
とこっそり言う。

「俺の前世じゃこれに乗って通学する奴が一般だった」
とか言う。ふーん、これに乗って学生は学院とかに行ってたのか。今は馬車が主流だしな。貴族達が自分の足で漕ぐなんて相当先の話だろうなぁ…と俺は思った。

「そうだ、ヴィル!シーラちゃん乗せてその辺り散歩してこいよ!楽しいぞ!」
と父上に勧められる。余計なことを!!
と思うが母上が

「そうね、シーラちゃんも乗ってみるといいわ。ヴィルしっかり漕いできなさい」
と微笑まれて

「はい!判りました!母上!ではシーラ行こうか!」
とつい、母上の前ではいい子ぶってしまって後悔する。

シーラは後ろのクッションに乗り俺に後ろからしっかり捕まり柔らかいものが当たる!
くっ!!邪念を振り払い、

「い、行くぞ!」

「う、うん!!」
と自転車を漕ぎ出した。1人の時より体重がかかりバランスも少し大変だが慣れてくると平気だった。俺は自転車に付けているベルを鳴らしてみた。これは何の為にあるのか。たぶん警鐘音かな?

(ふあっ!怖いけどっ!ヴィルとくっつけれてこれ素敵!ヴィル凄い!こんなの乗れるし作れるし!!凄い凄い!)
と褒められて照れる。

「これなら街まで一気にいけそうだなぁー!今日は行かないが…そうだ!馬小屋に行って馬達に見せびらかしてこようぜ!」

「ええ?大丈夫かなー?」
と言うがシーラはそれまでやっぱり俺にしっかり捕まっていた。風が気持ちいい。

馬小屋に着くとセレドニオやアストリアやエドワードが目を丸くしていて

(つ、ついに我々馬が不必要になり我々は馬肉になる時代が!!)
と青ざめたので

「違うわ!!流石にお前達の本気走りには敵わないから安心しろよ」
と言うとエドワード達はホッとして

(まぁ、そうですよね、こんな鉄の塊のやつなんかに我々誇り高き血統の馬が負けるわけありませんからね!!)
と自転車に張り合っていた。
父上が後で言ってたが競技用のチャリだったら選手にもよるだろうがどっこいどっこいじゃね?って。それはエドワード達には黙っとこ。あいつら妙にプライド高いからな。

帰りもシーラを後ろに乗せていると

「ヴィルは一回で乗れたの?ほんと何でもできるね?」
まぁ天才だし俺…。

「でもヴィルと自転車乗れて楽しいからいい!」
とギューッとされて俺はちょっとよろけた。

「危ないからふざけんな!ちゃんとしろ!あほめ!」
と照れながら元の所に帰るとハクチャーン様が喚いていた!

「来た!!おのれ自転車め!今度こそ乗りこなしてやる!!」
と息巻いていて俺はもう一台制作することにした。

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