赤髪ハイスペック王子は神獣娘にツンデレです

黒月白華

第4話 破壊魔フェイトランス

従者のザシャ・フーデマンと一緒に俺は馬で叔父さんのバルシュミーデ侯爵邸を目指していた。

(王子!馬車乗らなくていいのですかー?)
と俺の愛馬のエドワードが聞いてくる。白馬である。父上の愛馬セレドニオと母上の愛馬アストリアの息子の馬だ。俺は動物の言葉も解る。

「いいんだよ!さっさとフェイトのとこ行こう!」

「しかしヴィル王子…いいのですか?シーラ様…泣いてたんじゃないですかー?」

「いっ…いいんだよっ!向こうだって用事あるんだし!」
と照れて言う。それにザシャは半目で

「婚約者のシーラ様のこと好きなくせにその照れ隠し態度はどうかと…国王陛下みたいに素直になられればいいのに。陛下なんて王妃様に1日10回は可愛いとか言ってますよ?」

「母上は可愛らしい人だし美しいからな。当然だ」

「いやそれ、シーラ様にも言ってあげて?」

「シーラに言うのとはまた違う!ていうか人前で可愛いとか言えるかっ!」
とむくれつつも侯爵邸に向かう。

ちなみに先程の出来事は…


朝起きてシーラはザシャの部屋の前で俺を待ってうろうろしていた。ザシャが部屋を開けると

「あっ!シーラ様おはようございます!早いですね!王子ー!ほらっ!シーラ様来てる!!」
と呼ばれた。

「シーラ…おはよう」

「おっ…おはようヴィル…」
(ほわぁ!ヴィルカッコいいー!寝起き素敵ー!ああ!一緒に寝たかったけど残念…)
と心の声。

「今日は俺フェイトのところに行くんだ。だからお前とは遊ばないぞ」
と言うとこの世の終わりみたいな顔をした。

(えっっ!?学院も休みだから今日は一日ヴィルとベタベタできると思ったのに!!)

「俺にも予定があるんだ。まぁフェイトと言うよりテオ叔父さんに稽古つけてもらうのが目的」
と言うと

「ヴィル…強いのに…」
と上目遣いで訴える。こいつめっ!朝から俺を誘惑すんなあほ!

「シーラ…お前そんなこと言って家庭教師から逃げたいんだろう?学院に通っているがお前は一応公爵令嬢だろ?その喋り方いつまでも治らないから虐められんだぞ?」
と言うと

「だって…指導の先生怖いからやっ…ヴィル助けて」

「ダメだ…淑女らしく覚えろ!じゃあな!」
と行こうとすると服の裾野を掴まれる。ザシャは先に馬の手配してきますとピューと行ってしまう。

「じゃあヴィル…おはようのキスして?」
とねだる。俺は赤くなる。

「お前っ!それ毎日やんのか!?あほかっ!」
(だってまだいろいろ出来ないし…)
と心の中でなんか言ってるけど!

「ヴィル…シーラのことやっぱり嫌い?」
今度は泣きそうになると言うか泣いた!

「なっ!泣くなあほ!」
女の武器ずるい!!
俺はため息を吐くと…

「判ったよ…その代わり…お前…大人のキスはするなよ!?舌入れたら二度としないからなっ!俺たちまだ子供なんだから!!」

「えっ…!!?」
と本気でちょっとショック受けてやがる!
ローマンおじさんたちの見て育ってるシーラはそれが普通のキスだと思ってるし!!

「………判った…口閉じるから…キスして?」
と改めて言われて照れる。が、しないと立ち去れそうにない。
くそっ!仕方ないとばかりに内心シーラにバレないようドキドキしながらシーラの顔を下から抑えて引き寄せる。背がまだ足りないから仕方ない。
チュッと軽くキスしてすぐ離れたらシーラは

「みっ短い!!」
と文句言う。あほだ。

「俺は早く叔父さんたちのとこ行きたいんだ!じゃあな!シーラ!」
と逃げるように去ったのだった。


それからバルシュミーデ侯爵邸に着いた。
ここは母上の実家でもあるし、テオ叔父さんもいる。後で稽古つけてもらお。
バルシュミーデ侯爵家はブッシュバウムの4代侯爵家の一つ赤髪の一族だ。バルシュミーデ家は東を守る一族。北はディーバー家。西はヴァイスミュラー家。南はゼーネフェルダー家である。それぞれの侯爵家からも最近まで俺に婚約候補者がいた。断ったけど。
絶対シーラ虐めてくるよな。

すると稽古場からドカーンという破壊音が響いた!後耳をつん裂くような叫び声!

「んぎゃああああ!!」
と従兄弟のフェイトの声だ。

稽古場にザシャと向かうとフェイトはお尻をパンパンに腫らして泣いていた。

殴ったのはレーナおばさんであった!

「フェイトおおおお!また学院で威張って校舎破壊しやがったな!?てめー覚悟できてんだろうな!?」
とレーナおばさんは拳をバキバキさせている。

「だって!テッペン取れっつったの母ちゃんだろ!?」

「母ちゃんじゃねぇ?お母様だろがっ!」
バゴンと土に穴ボコができる。怪力を持つレーナおばさんの能力は凄い。そして暴走するおばさんを止められるのは

「レーナ…それくらいにしないとダメですよ」
と窓からスタリと綺麗な顔のテオドール叔父さんが舞い降りた。フェイトはババっとテオ叔父さんの後ろに隠れた。

「フェイト…お前も…侯爵家の令息として相応しくありなさい…」

「はい…お父様…」
と俺と同じ赤髪赤目の少年はしゅんとした。叔父さんの言うことは聞くんだよな。母親反抗期かなフェイト。

おばさんは俺に気付くと

「あら!ヴィル!いらっしゃい!!ザシャも!いつもフェイトがお世話になってるわね!」
と言った。

「ええ、ほんと先日も上級生と喧嘩して相手の骨を折ってたしやっぱり校舎少し破壊してましたがなんとかなりますから大丈夫ですよ」
と笑うとフェイトに睨まれた。

「ほんと…ごめんなさい…」
とレーナおばさんは謝った。

「い、今お菓子でも持ってくるわねー!」
とそして弁償するのが嫌なのか逃げた!

テオ叔父さんはため息をつくと

「フェイト…破壊ばかりではなく髪の方の練習もしないといけないよ?上級生をやる時は証拠の残らないよう髪の毛で闘った方が効率がいい。解るね?」
とフェイトに優しく諭す叔父さんはカッコいいなぁ!うちのダメ親父にも見習って欲しい。

「うん!お父様!解ったけど解らない!!」
と頭に脳味噌のない戦闘狂が元気よく返事してる。叔父さんは頭を抱えると

「二人ともでは稽古を始めますよ?華麗な動きで髪の毛を武器に変え闘うのです。このように」
と髪の毛を剣に変えていきなり蓮撃を繰り出してくる!流石叔父さん!隙を見せない!俺も髪の毛を剣に変えて応戦した。

「はっ!」

「ふっ!」
キィンと剣がぶつかる。フェイトは早くて追いつけないみたいでボーっとした。結局叔父さんと楽しく打ち合いをしてしまう。

「はぁはぁ…。ヴィルは強くなったね。フェイトは…まだまだか」
と息をつく叔父さん。

「俺剣苦手でごめんなさい…父様…。才能ないのかな…」
と珍しくしょんぼりしている。

「そんなことはないよ?フェイトはまだ速さに慣れていないだけだ。感覚を研ぎ澄まし予測するってのが苦手なんだろうね」

「まぁフェイトは脳筋だもんな、もっと頭使えよ」

「うるせー!ヴィル!ちきしょー!俺変なとこばっか母ちゃんに似て嫌だ!父様みたいにカッコよく俺はなりたいのに!」
と悔しがった。叔父さんを尊敬してんだな。

ならとにかく破壊活動はやめてほしい。
レーナおばさんはお菓子とお茶を用意した。
そこへレーナおばさんのお尻を撫でる手が現れた。
げっ!

後ろから叔父さんの殺気が溢れた!
不味いよ!

「これは神獣コンチャーン様…いえ、ビャッコル侯爵様…うちの妻に近寄らないでくださいね?」
といきなり髪の毛を短剣に変えて放った。

それを受け流すコンチャーン様。
神獣コンチャーン様は九尾の神獣であるが父上が爵位と領地を与えてその領地は何というかやらしい娼館とかが並ぶ色街みたいになっていてまぁそれなりに儲けてるらしい。

「遊びにきただけではないか!レーナも我の顔が見れて嬉しいであろう?」
するとおばさんは手を振って

「いや全く!帰って頂戴?」
と言い、コンチャーン様の耳は垂れた。
コンチャーン様はレーナおばさんを好きで昔からテオドール叔父さんと仲があまり良くないんだとか。

「ヴィルも久しいな!我の領地にもたまには遊びに来てほしい!」

「え…嫌です…コンチャーン様の領地は子供が行っちゃいけないっていつも父上や母上に止められます」
と言うとうんうんとレーナおばさんとテオ叔父さんもうなづいた。

「お、おのれジークヴァルトめ!別に良いではないか!ヴィルももう10歳だ!そろそろ女遊びが必要だろう?」

「全く必要じゃないんで!俺…一応シーラと婚約しました。昨日」
と言うと皆おおっと言う顔になる。

「ほんとかヴィル?やったな!?」
とフェイトは喜んだ。一応俺がシーラのこと好きなことはこいつ知ってるらしい。

「あのハクチャーン様の娘のシーラ嬢か…君もローマン様と同じ末路にならなければいいが」
と叔父さんは少し心配した。

「まぁねー、ハクチャーン様ガッツリ肉食女子だしぃ」
と言う。レーナおばさんも転生者と父上から聞いて俺は知っている。レーナおばさんが前世ヤンキーだってことも聞いた。だから怒ったり興奮すると喋り方変わるし。

「フェイトは好きな子はいないの?」
一応聞いてみると

「はー?別にいねえ……」

「ふむ、フェイトにもそろそろ見合い話が来そうだな…」
と叔父さんはため息をついた。

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