死にたい聖女がやってきた

黒月白華

第25話 世界樹と真実

その朝ようやくユッキーナ様を説得してきた黒アシュとヨネモリ先生にりぼんや俺たちは世界樹の元に到着した。

世界樹の声は聖女達にしか聞こえない。
ヨネモリ先生が通訳役に出ることにした。

「世界樹は怒っている。また自身を焼きに来たのかと。…相当なトラウマのようだ。そしてこうも言っている。我を傷つけて焼いたりしたら世界どころか宇宙が一つ消える事になるとな」

「ウチュウとはなんですか?先生」
と聞くと先生は

「宇宙とは…君達には理解できんかもしれないが…例えば夜空を見上げると星が見えるだろ?あの星一つ一つは何億光年先、とてつもない距離に存在している恒星が爆発したものだ。つまり、例えるならば君達の立っている世界は丸い。私達が立っている大地は引力によってだな…」

「おいクソハゲ。授業モードに入ってんじゃねぇよ!余計分かりにくいだろ!!いい?宇宙ってのはね、お空の向こうに広がる空間だよぉ?真っ暗で、人間はそこに出ると息できないの!特殊な服着ないとね」
とユッキーナ様が補足した。

「宇宙は何でも生み出したり消したりする世界の起源。母なる宇宙とはよく言ったもの。創作だと宇宙空間でロボットに乗り戦うアニメも…」
とりぼんが言う。

「ちょっとオタ!やめてくんない!あーしの説明が1番解りやすいからね!!」
と言うとりぼんはぼそりと

「ちっ…ギャルのくせに…」
と目を逸らした。
なんでここも解り合えないのか。

「そもそも絵にした方が解りやすいな…」
とヨネモリ先生は簡単に絵を描いて説明しだした。え?何の授業だ?

丸がいくつか描かれてその周りは黒く塗りつぶされた。丸を指して

「はい、この丸の中に我々が住んでいます、そして周りの黒く塗った所が宇宙だ。宇宙の広さ形は未だに誰にも解明されとらん!この丸は長い時間をかけて爆発したり集まってまた丸になり、海ができ空ができ大地ができ、植物…そして生命が生まれて我々のような人間が生まれると言う説が我々の世界では説明されている」

両アシュトンが

「「なんと!!それはとても興味深い!!素晴らしい!世界の仕組みはそうだったのですか!!」」
と爛々と目を輝かせた!!

「我々の世界ではロケットという宇宙に飛び立つ巨大なものが作られてな。それに乗るのが宇宙飛行士という訓練された連中でつまり、娘が先ほど言った特殊な服を着て宇宙に調査に出る者のことを言う」

俺も驚いた!

「えっ!この丸から黒い空間に行ってるのですか!?りぼん達の世界の人達は!!す、凄い!!」
ハゲが光りヨネモリ先生は

「その通りだよ!諸君!」
と笑うがりぼんとユッキーナ様は白けた目で

「ドヤ顔すんなし」

「私達の世界ではもう常識だし」
と言った。

そしてコホンとダーレンが言った。

「聖女様方。伝えて貰えませんか?本題です!世界樹様はエルフの一族もを消す気なのですか?自らの子孫を」

それが切り札であった。俺も

「エルフの奴隷制度を廃止する!!何とかする!!そして必要ならまたエルフを楽園に住まわせ世界樹の世話をさせよう!もちろん人間はもう手出ししないと誓う!」

それをヨネモリ先生が通訳した。
しかしヨネモリ先生は渋い顔をした。

「世界樹はこう言ってる。愚かなことだと。例えそうしてもまた人間は裏切り私を焼こうとするだろう。今の人間には悪い奴等ばかりだ!繰り返すだけでまた神々を怒らせるだけだ…と」

そこでりぼんが手を上げた。

「世界樹さんに質問ですけど、何でそれならこの地に…楽園に人間の雌の人が来れたのです?…え?昔は世界樹さんは神々に作られてまだ成長期だった?最初の人間の雌も神々が自分の世話をする為に送られた??」

さらにユッキーナ様も

「んん?もしかしてさー、世界樹ちゃんてその人間に恋しちゃって自分の枝を人型に変えてえちえちしちゃったの?んでエルフが生まれてたりしてーーー!!!……………あれ?図星だった?ヤッベ!当てちった!!」
という。

「な、なんだと!!?世界樹って雄なのか!!?」
と俺が突っ込むとヨネモリ先生は通訳した。

「正確には雄とか雌とかは無いそうだが、送られてきたのが雌の人間で甲斐甲斐しく世話をやいてくれたものだからなんとも言えぬ意思が生まれ会話をしてみたくなったらしい。そしてそれは恋に変わったと。子供を作りたくなったようだ」
と言った。りぼんは白けた目で

「まさかの世界樹の恋バナ聞く羽目になろうとはね…」
と言った。

「やっだー!!恋バナ!あーしだいしゅきでーふ!」
とユッキーナ様は興奮した。
ヨネモリ先生ははしゃぐ娘を横目に

「それはそれ、これはこれと世界樹が言っている。そして我が愛した人間は神に頼み他の人間も楽園に送り込んで貰おうとした。繁栄させるつもりでな。だから楽園にはエルフと人間の種類が多くいたが、人間と人間、エルフとエルフは別れて暮らしていた。それぞれの種族で子を成した。

エルフは世界樹の世話をしていたが、離れた所で暮らす人間達はあまりそれをよく思っていなくてついに彼等の間で戦いが起こった」
とヨネモリ先生が言う。

「人間は…全ての生き物の頂点に立とうとした。そしてエルフの信仰とする我に火をつけたのだ。火は命がけでエルフが消したがエルフは戦いに負けた。神々は醜い争いを見て人間とエルフを楽園から追放し我は一人になった…」
そんなことが昔起きていたのか。
確かに火をつけ、エルフを支配下に置こうとした人間も悪いことにる。だが、違和感があった。

それをユッキーナ様は簡単に打ち砕いた。

「世界樹ちゃーん、それってぶっちゃけ悪いのここに人間寄越した神じゃね?そしてそれにまんまと乗せられて恋しちゃった自分じゃね?エルフ作ったの自分じゃね?でも神さまに逆らえないからって人間に全ての罪を着せたんじゃね?」
と言った。ヨネモリ先生は汗をハゲ頭から流した。

「優樹菜…やめてあげなさい。世界樹さんが泣いとるだろ!過ちは誰しもあるものだろ!?」
泣いてるんかい!!世界樹泣いてるんかい!!

「だから自分の管理下の世界を丸ごと壊して新しい世界を創り始める気だったらしい」
全ての説明をヨネモリ先生が終えた。
全員何とも言えない気持ちだった。

え?どうするこれ?誰か何とかフォローしたらなんとかなるんじゃないか?黒ライを見ると黒ライは白アシュを見て白アシュはダーレンを見た。

「えっ!私!?………そーーー…ですね……えっと…どーしますかねぇ?私も子孫ってことになるんで、まぁあのエルフ族はこちらで暮らさせてもらえませんかねぇ?せめて」
うわっ!!こいつ裏切ったよ!!人間売ったよ!!世界樹側につこうとしたよ!!

カールが
「なんて汚い神官長だ!エロいだけじゃなくて自分達の種族さえ生き残ればいいのか!?」
いや、普段金に汚いお前には言われたくないだろうな!!

パーシヴァルはもはや話を聞くのに飽きて地面にヴィヴィアン王女の顔を描いているだけだ。こいつ何しにきたんだ!!

ダーレンが叫んだ!!

「私は正直!いい身体つきの女性がいたらそれでいいんです!!」
とエロ心丸出しで叫んだ!!やめれ!!

「おい、世界樹が呆れているぞ。自分の子孫に」
ですよね!呆れますよね!!どうしようかな!これ!!と思っていたらりぼんが

「世界樹さん、人間が酷いことをして本当にごめんなさい!お辛かったでしょうね!それに判るよ。ぼっちは寂しいよね!!」
と涙を流して世界樹に抱きついた。
それに世界樹の葉が揺れて小枝が落ちた。

小枝が光り人の姿になった。
全裸の美形少年だ。

「きゃあ!!」
流石にりぼんは目を隠してしまう。
少年は

「おっと失礼!」
と喋り世界樹の葉っぱ一枚を大事なとこに当てたけど、変態感丸出しだった。

「優しい聖女よ。やはり当初の通り貴方は優しい方のようで、1番聖女に相応しい。楽園で暮らしてくれぬか?我はそこの王子の愛人でも構わない」
と言う。はああ!?

「え?嫌です。愛人なんて!私はライさん一筋ですから!!」
と世界樹は即振られた。

「……………」
世界樹落ち込んだじゃん!!何も言わなくなったし!!

するとユッキーナ様は

「世界樹ちゃんのバカ!!振られたからって何だって言うんだし!それに世界壊そうとかやり過ぎだっての!!あーしとアシュトンみたいに運命の人が見つかるまで何度でも恋しちゃいなよっ!一回は自分と愛し合った人ができたんしょ!?その人は流石に寿命で死んだからずっとぼっちだったかもしんないけど生まれ変わりとかそういうのアシュトンに呼んでもらってまた愛し合えば万事解決じゃあん!!」
とユッキーナ様は言った!!

いや、まさか世界樹がそんな単純なことに気付かないわけ…。
しかし世界樹は葉っぱ一枚で大事なとこを隠してキラキラした目でユッキーナ様を見て涙して拍手した!!何いいいい!!!
今気付いたんか!!?

「…俺たちの苦労何だったんだ?」

「死んだ人とかいたよな…瘴気で」
黒ライと俺は白目で慰め合った。

世界樹は

「そんな考えは思いつかなかった。すまぬ。昔のことをぐちぐち考えすぎていた。一人でいるのが長過ぎてネガティブになっていたんだ。…あ、今まで死んだ人は生き返らせよう」
と言ったから俺と黒ライは目を見開き突っ込んだ!!

「「生き返らせられるんかーーーい!!」」
すると大事なところの葉っぱを指して

「我の葉っぱが有れば大丈夫だ。持ち帰り死んだ者の墓に植えよ。3日くらいで墓から皆ボコボコ起き上がってくる」

「うわ、怖っ!ゾンビみたい!!というか親族どんな顔すんのかそれ!!」
とカールが楽しげに笑う。
そこでパーシヴァルがようやく声を荒げた。

「世界樹よ!!頼む!!ヴィヴィアン王女の呪いを解けないか?死んだ奴を生き返らせれるなら呪いくらい訳ないよな?」
忘れてた。このバカがいた。
世界樹は

「ん?呪いって…?えと…」
アシュトンがそれに口を塞ぎ耳元でゴニョゴニョ説明していた。世界樹は半目になった。

「いや、うん…そうだな…この魔術師の手伝いに葉を分けてやろう。呪いの解ける効果を少しくらい長引かせることくらいはできよう!!」
と話を合わせてくれたよ!!世界樹!優しい!!

「じゃ、そういうことで世界樹様の運命の生まれ変わり的な人を呼んでくれるか?アシュトン…」

「ああ、はい。また寿命縮まりますけどユッキーナ様とキスすれば戻るしいいですよ」
と言う。ユッキーナ様の能力って…。

そしてアシュトンは地面に模様を描き詠唱をしてまた地面は白く光り輝いた!!世界樹の運命の人とは一体どんな人だ!!?

すると現れたのは普通の女性だった。金髪に碧の目をした人だ。それに世界樹は素っ裸で叫んだ!!

「ケアリー!!!」

「え?きゃっ!変態!!」
と抱きつこうとした世界樹の化身を女性はぶん投げた!!

「なんと!あれ見たことあるぞ!外国人のプロレスラーのスザンナ・ノーマ・アンダーソンだ!!TVで何度かみたよ!」
とヨネモリ先生は興奮した!彼女は白い薄い服を着て腕が見えていて下も黒い短めのズボンで太腿見えており髪はうなじが見えるほどに結い上げていた。

「ここどこですか?レッスン中だったのに…」
世界樹は起き上がった。

「王子…ちょっとマント貸せ」

「あっ、はい、どうぞ。あげます」
と上着を渡した。中は全裸だから返して貰いたくない。
上着を纏い謝りようやくスザンナさんはハッとした。

「な。何かしら?この人と初めて会ったような気がしないです…胸がドキドキして止まらないわ!」
と頰を赤くした。

「スザンナ!!君は…あの頃と同じようだ!美しく優しい!!」
と世界樹は言ったが、今ぶん投げられましたよね??あんた。そして俺たちに向かって言った。

「我とスザンナは小屋で過ごす!お前らは勝手に元の世界へ戻れ!帰れ!!葉は何枚か持ってけ!」
と言い放ち俺たちは呆然とイチャイチャしながら小屋に入ってく二人を見送った。

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