死にたい聖女がやってきた

黒月白華

第14話 聖騎士と変身した王女の恋

俺様は聖騎士聖騎士パーシヴァル・エマニュエル・ボルトンだ。赤髪で碧の目を持っている。

俺様の仕事は聖女の護衛だ。もっとも今はおっさんの警護と化しているが。部屋の外で立っているだけという。おっさんは今日もメソメソしており中々浄化に行かないし王子も今日は見合いと言っていたな。

ハゲを笑ってしまったことは悪かったがヅラがフワリと飛んだ瞬間は堪えられなかった!いかなる鍛え抜かれた戦士でも予想もしなかったことが起これば隙ができる。

「まだまだ俺様には修行が必要だな…」
と呟いてるとお昼になり一時的な交代になる。護衛と言えどもきちんと食べておかねばならないし、トイレ休憩も行く。

交代の騎士に任せてさっさと食堂に向かう途中、とある部屋で綺麗な声の女性の悲鳴が聞こえた。
何だ賊か?
その部屋の前にいる衛兵は何してるんだ!?

「おい!何やってる?女性の悲鳴が聞こえたぞ?」

「パーシヴァル様!?こ、これはその!王女と王子がお見合い中でして!」

「何故悲鳴が上がるんだ!?見合い中に何をして!はっ!!まさかあの王子がついに獣と化して隣国の王女を襲っているのか!?」

「襲われるのは王子の方と思っていたのだけどなぁ…?おかしいですねぇ」
と衛兵は首を傾げる。何を言ってるんだ。

「とにかくどけ!いかに王子であろうとも!こんな所で既成事実作りなど我が国の誠意を失われる!」

「あっ!…邪魔しちゃ…」
と衛兵が止めるが扉を蹴破ると絶世の美女の背中に乗りお馬さんごっこをしている執事カール。短めの鞭をお尻に打ち美女の王女が悲鳴を上げる。首には首輪がついている!

「何してるんだ!カール!!」

「わっ!!やば!!……じゃあ!これで!!」
とひらりとカールは王女から素早く首輪を外してさっさと逃げた。

「おい、王女様か?大丈夫か?俺様は聖騎士パーシヴァルだ。もう大丈夫だが王子はどこへ?」

「わ、判りません。少し気を失って気付いたら先程のあの方が私の背に乗り調教してやろうと言い、あのようなことを!」

「何と無礼な!!俺様がいたらボコボコにしてやるのに!!」

「まぁ、騎士様ありがとうございます!!私コルナリア王国の王女ヴィヴィアン・オーガスタ・ウォルフェンデンと申します」
と俺様に微笑む。何と美しい!!この世の美を集結したかのような!!花のような匂いにクラクラすると同時に俺様はこの王女様を押し倒したい衝動に駆られていた。

いかーん!!
何故俺様はこんなことを考えているんだ!!
しかし目の前の王女が俺様の心を鷲掴みにしていた!!

その時王女は壁に掛かっていた鏡を見て目を丸くした!!

「なっっ!!?」

「どうかしたか王女よ」
王女は

「あの…私…どうやら夢でも見ているのですかね?」
すると外の衛兵が王女を見て驚いている。

「貴方はどなたですか!?王子はどこに!?王女もどこへ?」
何を言ってるんだこいつ。

「おい、王女はこの方だろうが!?王子はカールの手引きで逃げたのだろう!探せ!」

「まぁ…ライオネル様…私のことがお嫌いなのでしょうか…」
と言う。

「そんなことはない!貴方のような女性を押した…いえ、王子の見る目がないと言うか俺様なら…いやなんでも…」

「違うのです!私が醜いからですわ!!」
絶世の美女なのに気弱!!くっ!押し倒したい!!俺様はソファーに王女を座らせた。

「どこが醜いと言うのだ。貴方は美しいだろう!」
王女の瞳がキラキラと輝いている。

「そ、そんな!美しくなんてありませんわ!国の者は皆私を醜女だと…ブスだと言いますもの!でも私は女王になる定めからは逃げられないのです!王子も私の姿を見て逃げ出したのでしょう…」
何だと!?あの王子…。こんな美女を置いて逃げるとは!

「くっ!ヴィヴィアン王女!!あんな王子など忘れて俺様のものになってくれ!」
ヴィヴィアン王女の顔は火照りぼうっとなっている。俺様もイケメンと言われる類の人種だ。
権力はどうでも良かったがヴィヴィアン王女は俺様のものだ。こうなれば駆け落ちしてでも手に入れるか!?

「聖騎士様…!!本当に私で良いのですか??私なんて…本当に本当にブスなのですよ?」

「どこがだ!!」
ヴィヴィアン王女の顎をクイと上げマジマジ見つめた。どこからどう見ても美女でしかない!!

そしてこれはもう押し倒しても問題ないんじゃないか?

「ふっ…王女よ…貴方が望むなら俺様は二人で逃げてもいい」
と王女に口付けをしてみせた。

王女はとろりと溶けるような目で俺様を見ている!押し倒し間近である。

「私…先程まではライオネル様に心奪われておりましたが、騎士様の強引さも嫌いではありませんわ。ああ、どうしましょう!私…先程のドSな従者様にも少しときめいてしまったのに!ごめんなさい!こんな気の多い王女など嫌いになられた?」

「いや、…その中でも俺様が1番になれば良いだけだ!というかなってもらおう!」
よしここだ!とばかりについに俺様はヴィヴィアン王女を押し倒した!!

やった!念願の美女押し倒し!!
さてこれから甘い言葉を囁き他の奴らのことなど考えられなくしてやろう!支配欲が満ちてきて顔を近づけキスをしようとした瞬間…。

王女に異変が現れた!!

手がぼんと太くなり王女は青ざめて俺様を突き飛ばし

「いっ!!いやああああああああ!見ないでええええええ!!」
と言い、逃げ出した!!

「王女!!ま、待て!!」
俺様はすぐ様追いかけようとしてソファーに足を取られて転んだ。
逃げ出すヴィヴィアン王女の身体が太くなっていく気がした。

どういうことなんだ!?あれは?
まさか…呪いか??
それとも王子やカールが何かしたか??

結局王女はその後俺様と会うこともなく隣国へと戻って行ったと言う。

その後、王子やカールに会った時に聞いたが二人とも苦い顔をしていた。

「おのれ王子!貴様!自分が結婚に興味がないからと王女に変な薬を飲ませたのか!?あんな美しい人になんてことをするんだ!」

「うわー、めっちゃ勘違いしてるし、美女の方が本当と思ってる…本気で惚れたのかな?パーシヴァル様」

「カール…お前のせいだぞ?俺は知らんからな」

「僕も知りませーん。作ったのアシュトン様だし」
と二人でボソボソ言っていた。

なんなんだ!?

「おいさっきから何を言っているんだ?」

「「何でもないです」」
王子とカールは揃って応えた。
まぁ考えても仕方ないのでもういいか。
俺様の頭にはもうヴィヴィアン王女の美しい姿しかなかった。

「可哀想にな。ヴィヴィアン王女…。ここは俺様がアシュトンに頼んで呪いの解除薬を作ってもらうことにするか」

「「ええ」」
と王子達はまた声を揃えている。

「いや、待ってくれ。パーシヴァル!アシュトンはほら忙しいんだ!!兄上がまた聖女を呼ぶとか言っていて…」

「何いいい!?また呼ぶのか!?何人呼ぶ気だ!?まぁ俺様はもうヴィヴィアン王女しか押し倒したくないのでどうでもいいことだ。護衛騎士は他の者を推薦したい」
すると王子とカールは顔を見合わせてカールは

「ほっときましょうよ?僕はやはり最初の聖女様のような過激な方の方が好きかな…。頑張ってパーシヴァル様」
と応援された。

「任せておけ!!お前は二度と王女に近づくなよ!?カール!」

「はいはい…(元を知ってるとそんな気も大して起こりません)」
何か呟いた気がしたが俺様はもはや新しい聖女召喚などどうでも良くヴィヴィアン王女の美しい姿だけを考えていた。


うわーーー!!
パーシヴァルがよりによって、薬を飲んで変身したヴィヴィアン王女に惚れてしまった!!
あいつはバカだから王女の元の姿の方がデブスだと言うことに気付かないしそれを告げることも俺には勇気がなかった。

そんなことしたらパーシヴァルのバカは立ち直れそうにない。バカだけど真面目な奴だから!

王女もパーシヴァルに満更ではないようで後日俺との婚約話は断られ、代わりにパーシヴァルを紹介してくれと言い出して、二人は現在の所手紙でやり取りをしている。
アシュトンはパーシヴァルのバカに王女の呪いを解く薬を依頼していた。

アシュトンはバカではなく、それなりに察した。だって自分が作った薬だったからそのまま変身薬を呪い解除薬と偽り、二人でこっそり会う時用に渡しておいたらしい。

「あの…でもこれが効くのまだ数時間なんです。すみません。もっと研究を重ねます…自分が生きている間は…」
とアシュトンは暗い顔をしていた。
次の聖女召喚でまたもや寿命が減るのだ。
アシュトンも可哀想だった。

カールは金があるかないかを期待していたが。
神官長のダーレンはもはやどうでもいい。毎日見かけてるとジェシカの体調は悪くないか?とか聞いてくる。どうやらジェシカに的を絞ったようだ。柱の影からジェシカを時折見守り後をつけているようだが。

俺としては助かる。ジェシカは俺の顔が好きだし金を持っていることにも側妃狙いなのもあり野心溢れている。

そしてダスティン子爵だ。
俺がりぼんの所に転移した時に決まって部屋にいることが多い。二人で何を話していたのか。
文字を教わっているとりぼんは言っていた。
ダスティンはクールな顔を崩さないがりぼんに優しかった。変なこともせず普通に接している。読めない…。

しかし一言言った。

「ライオネル王子…ジェシカは狡猾な女だろう?昔自分もかなり金を絞られた。あいつに恋などしていた時期を殴りたい…それから…元聖女を我輩はフェリシアと呼ぶことにした」

「は?な、何でかな?」

「名前がないと呼びづらい。いづれ我輩の妻になって欲しいと思ってる。王がいらないと言うなら我輩がもらい受けたい。なので王子様。もうこの屋敷には来なくとも良いですよ?結婚に興味ない貴方には関係ないことだし」

と言われてしまう。

えっ!?何それ!?つかお前!いつの間にりぼんを妻にとか言ってんの?りぼんは了承してるの?

「いや…俺はりぼんと1日1回会うと約束を…」

「次から転移魔道具をワニの所に置いておく」

「なっ!?」
いや、本気でダスティンは俺を恋敵のように睨んでいた。そんな…もうりぼんとは会えないのか…。りぼんが了承しているならいいんだけど。ダスティンはいい奴そうだし。暗殺者だけど。

俺が王子という立場上庶民に落とされた娘と結婚するとかはどう考えても無理な話…というか別に俺はりぼんのことをそんな風には…妹みたいなもの…で…。保護対象で。

あれ?おかしいな、なんか寂しくなった。

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