死にたい聖女がやってきた

黒月白華

第3話 目覚めた聖女の勘違い

どうも。聖女様の世話をする執事のカールだよ。神官長さまが今日聖女様が目覚められると聞いたので今か今かと部屋の中を掃除しながらうろちょろしていまーす。

そして聖女様に僕を好きになってもらえるよう…もとい結婚して伯爵家の借金返せるよう僕頑張ろうと思うんだ!!

チラリと聖女様を見る。

「長い黒髪だなあ…これじゃよく顔が見えない。ドブスだったらどうしよ…」
と僕は聖女様の前髪を避けて見た。
すると中々可愛らしいお顔であった。

「ふうん…まぁブスじゃなくてほっとした。…早く起きないかな…」
するといきなり目がカッと開き僕はベッドから落ちて

「うわああっ!!」
と叫び、聖女様も

「ひっ!!?」
と叫んだ。

「あ、あ、起きられたのですね!?良かった!!」

「……………」
どうやら状況が掴めないようだ。まぁ死にかけて来たしなぁ。

「あ、あの…聖女様?大丈夫ですか?」

「………………」
聖女様はこちらを見つめているだけだ。
あっ!もしや聖女が自分だとわかってないやつだこれ!そりゃそうだよね!

「あの!えっと…」
困った。どう説明すればいいの?
いや、確か優しくとか王子が言ってた!!

「体調はどうですか?」
すると聖女様が怪訝な顔をした。そして…

「ここ…天国じゃないの?」

「えっ!?」

「死んだとばかり…」
ああ…そのことか。

「もう大丈夫ですよ。神官長が手首の傷を治してくださいましたし、これからしっかり栄養をとったりすれば回復しますよ!」
と僕は安心させるように微笑んだ。
そうだ、手でも握ってやるか。
と手を伸ばしたが…

「あんた…治したって…」

「ええ、そうです!神官長のヒーリング魔法で跡形もなく傷はないでしょう?」
と微笑むと

「余計なことを…折角死ねたと思ったのに……しかもどう見ても変な所にいる…」
とブツブツ頭を抱えている。

「あの聖女様ここはですね、王宮の客室の一つで、もっと良くなられたら別の聖女宮に移って…」
と言うとギロリと睨み

「も、も…もっと…良くなる??」

「はい!もっと良い聖女様にふさわしい所で!僕も付いて行きますのでご安心を!あ、僕はカール・デイヴィッド・ノースと言って貴方の身の回りのお世話をする物です。もう一人僕の双子の妹のジェシカが侍女に付きますよ」
と言うと

「外人の誘拐魔…撮影スタジオか変なセット部屋…手品で傷跡を消した…。何なの?私が引きこもってたからって…お母さんが私を変な施設に売り渡した??ああ、私が自殺しようとしたのを見て急遽変な所に入院させたのね?」
聖女様の言うことはよく判らない。

「それに貴方もそんなコスプレして日本語随分上手いな…演技も…」
最後の方の演技と言う言葉にギクリとする。
そりゃ聖女様を騙して結婚しようと企んでいたからね!この聖女油断ならない!
でも家の借金の為に頑張るぞ!

「あの…聖女様は状況が判っておりませんようなので説明をすると、貴方は異世界からこちらの世界に召喚されました。この国の瘴気を払う聖女として…」
と言うと何かジト目で見る。

「もういいからそう言う設定。やめてよ。人を馬鹿にするのやめてよ。散々馬鹿にされて来てもう嫌なのよね。大嫌いよ!」

「聖女様…混乱なさるのは判りますが落ち着いてください。ねっ!?僕はいつでも聖女様の近くにおりますよ!」
とりあえず興奮状態の聖女様の隣に座り背中を撫でもう片方の手で聖女様の手を握り甘い顔をして微笑んでやった。
すると聖女様が震えだした。
あるぇ?大抵の女性はこれでイチコロなのに…何か怖い。めちゃくちゃ睨んでる!!

「監視者か…クソ!四六時中私の側にいて死なないように監視!?畜生…畜生!!馬鹿にしやがって!!きいいいいい!」
ドンと僕は思い切り押されてまたベッドから落ちた。
そして聖女様がゆらりと立ち上がり僕に迫る!
そして襟首を掴んで

「出せ!」
と言った。

な、何?この迫力!!女性にこんな積極的に責められたの初めて!!うあ!どうしよう!へ、変な気持ち!!本来なら僕が少し毒を吐いてそこに痺れた女性を落とせるのに!!

「なっ…何をでしょうか?」
聖女様が僕に跨り首を絞めようとばかりに!
ああっ!何てことだ!ドキドキしてきました!

「決まってんでしょ??刃物よ…」
と言う!
刃物!!まさかのそういうプレイをお望み!?

「聖女様は…スリリングなモノがお好みなんですね!?…は、はあっはあっ!」

「!?」
聖女様が黒い瞳でキョトリとしている。
その時バンと扉が開きジェシカと騎士が入ってきてこの状況を見た。

あ、見られたやっべ!
ふふふ、いいよ誤解して!もっと!!

「どういうことだ?おい?従者!聖女に何か失礼をして首を絞められたのか?」

「むしろ私こそ絞められて欲しいわ…」
と聖女様が呟く!やはり!この人は危険なプレイが好きなのだ!!うわぁ!!ときめくうう!

と顔を赤らめてはぁはぁしているとジェシカは

「兄の変態性癖見ちゃった!…とにかく殿下や神官長をお呼びしますのでここを見ていてください、騎士様」

「判った!任せろ!」
とジェシカは出て行った。



「監視者がまた増えたのね?あら?それは模造剣?全く使えないわ!さっさと刃物よこしなさいよ!!」
と言う。
何だこの女は!?俺様の剣は本物だし刃物を寄越せってどういうことだ!?

執事は何か首を絞められて恍惚な顔をしている!変態か!
何か失礼なことを言って聖女を怒らせたのだろう!いづれにせよこの事態を何とかせねば!

「聖女よ!まず一旦落ち着いて欲しい!王子から詳しい説明があると思うがまずそいつを離してもらおうか」
とグイと聖女の手を取ると折れそうな腕は簡単に離れた!

それからヒョイと聖女を抱き上げると

「ぎゃっ!何をするの!?この変態!まさか、入院施設じゃなくてやはり変な所?誘拐?あ、AVスタジオ!?いやっ!!だから貴方達変な格好を!!そう言う設定で撮影する気ね!!?この!ケダモノ!!」
と叫んでジタバタした。

「おい落ち着け!クソ!ダメだ!」
俺は暴れる聖女をベッドに降ろして従者に魔法のロープを出してもらいひとまず縛りつけることにした!!

クソ!暴れる!

「いやああああ!縛りプレイ!やっぱりAV撮影だ!がいじんのコスプレ野郎にヤられる!!いやああああ!!その前に死にたい!!」

「大人しくしてくれ!俺様は危害など加えん!おいっ!聖女話を聞け!」
とグイと縛りベッドに横たわる聖女は涙を流しながら俺様を睨んだ。完全に俺様が押し倒した感じになっている。しかも手首縛って!!

あ…何だこれ?ドクンと心臓が跳ねた。
押し倒したのは取り押さえる為だとしても中々見ない睨みだ。俺はとりあえず落ち着かせる為に微笑んで見せるが聖女は睨んでいた。ゾクゾクして屈服させたい妙な気持ちになった。

「ちょ、騎士様…ズルイ!!」
と従者が横から言いながらこいつも聖女の上に乗ってくる!!

「いやああああ!!もう嫌!舌噛んで死ぬ!」
と言うから驚いてスカーフを口に当てて舌噛みを防止した!

「はぁ!はぁ!手こづらせやがって!」

「僕が先に聖女様を手に入れるんですからね!騎士さんは降りてください!」
と執事も訳わからないことを言い出している!

「おい、お前なんかおかしいぞ!?どけ!」

「嫌です!貴方が退いてください!」

とそこに王子や神官長が現れた。
この光景を見て

「え?お前達…何してんの?聖女襲って…」

「そんなガリガリの女性を襲ってまさかの2●」
と神官長が興奮し出した!!



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早覚え講座

第二王子ライオネル→一人称「俺」
時々突っ込む人。金髪蒼目

王宮魔術師アシュトン→一人称「自分」
人見知りビビリ。黒髪赤目

聖女の執事カール→一人称「僕」
腹黒Sだけど攻められるとM。栗色髪薄桃目

聖騎士パーシヴァル→一人称「俺様」
押し倒すことにムラムラする特殊バカ。赤髪碧目

神官長ダーレン→一人称「私」
エロいことばっかり考えてる変態エルフ。緑髪金目

          

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