悪役令嬢は断罪され禿げた青年伯爵に嫁ぎました。

黒月白華

第15話 旦那様の好感度

「セシリアさん!大丈夫ですか!?」
王子が帰りぐったりしている私にローレンス様が声をかける。

「ええ…なんとか…あの王子はまだ何かの催眠にかかっているのかしら!?何故王子に興味がないことが伝わらないのかしら?おまけになんか頭剃りだすし怖い」
と言うとローレンス様は

「……それだけセシリアさんを思っていたのでしょう…。で、でも!僕も不本意ながら貴方をお慕いしております!本当に僕如きがごめんなさい!!」
と謝る。

「まぁ…ローレンス様…」
と何だか心がこそばゆくて仕方なくなる。
数多の男達になんか身体目的で近寄られてはいたが私のガードは固く自衛していたがローレンス様は心から私を好いてくれている!
正直その辺の顔だけ男より優しいし素朴だし穢れもなく好感度は抜群だ。
好きと言われても嫌な気もしない。
私がローレンス様を好きかと聞かれれば今すぐにはまだ答えが出ないが暖かいものを感じる。

手を握り見つめ合って考えているとおほんとアグネスさんが

「お邪魔でしたら退席しましょうかね」
と下がろうとする。

「あらアグネスさん。邪魔ではなくてよ?……貴方にはまだお伝えして無かったんだけど…。私実はまだ処女ですの…。旦那様も童貞でらっしゃるわ」
と言うから彼女は目を丸くして驚いた!

「ええええ!?はあああ!?で、ですが!お二人は結婚しておられるのに!?初夜は!?え?どういうことです?」

「言うのが遅れたわ。この伯爵邸に嫁いだ日から部屋は別だし夜も別なの。邸の者なら知っているわ」
と言うとポカーンとしてアグネスさんは

「ええ……そうなんですか…てっきり私毎晩愛し合っておられるのかと!」
とブツブツ言っているが何もないものはない。そこでジョルジュが包帯巻いて出てきた。お前もお休みを取れとローレンス様が言ってたけどジョルジュは首を振り自分無くして伯爵家は廻らない!とか言っていたけど普通に居なくても廻る。
ローレンス様はチラリとこちらを見て

「セシリアさんは王子の言う通り禿げが好きなのですか?」

ええ!?

「いえあの…禿げていようがいまいが私は王子はもう完全にタイプではありませんしあの結婚はお受けできませんわ。ローレンス様のことが好きかと聞かれましても…好感度はあの王子とは雲泥の差ですが…

恋愛感情となると…私恋などしたことがないので判りませんわ…」
と言うとアグネスさんとジョルジュは流石に目ん玉が飛び出るくらいびっくりして

「ええ…奥様…貴方そんなに美人なのに!?」
とジョルジュが驚いて聞く。

「仕方がないでしょう?今まで男の方に警戒して生きてきたのでね。媚薬の成分を研究していたりもしたし」
と言うとジョルジュは

「ええ?じゃあ…私にもワンチャン…」
と言うとアグネスさんがバゴーンと裏肘でジョルジュを黙らせジョルジュは気絶した。
口から魂出そうになっている。

「ほほほ。奥様…。きっと奥様もローレンス様のことを愛するようになりますよ!私応援しますわ!!旦那様ももっと頑張らないと王子に負けてしまいますよ!!」

「え…ええ…」
と久々しょんぼりする旦那様。
あの王子なら権力で私と旦那様を別れさせるかもしれない!
何とか対策を練らないとまたあいつの婚約者にされてしまう!!

「そうですわ!ローレンス様!私…もう嫁いだのですから!!私の心を奪えるようもっと自信を持ち頑張って頂かないと王子に好き勝手されてしまいます!!」

「ええ!?そ、それは嫌です…。なんか…頑張ります…。よろしくお願いします…」
と頭を下げる旦那様。
そしておずおずと言う。

「あのう…覚えておられるでしょうか?セシリアさん…前に言いました。僕の髪が生えたら…そ、その…子作りをしてもらえると……。別にそれ目的ではないですけど…ぼ、僕きっと頑張ってみます!セシリアさんにもっともっと僕を見てもらえるよう頑張りますので!!」
と赤くなり頭を下げて旦那様はダダダーっと部屋に戻って行った。

アグネスさんは

「奥様は本当に罪作りですわ。世の男性を虜にしすぎですね。まぁそんなに美人でプロポーションも完璧、性格も良しなら仕方ありませんね!」
と言う。

「でも…ローレンス様は外見ばかりに惹かれたのではないと思うけど…?」
最初なんて目すら合わせなかったし。徐々に打ち解けたから現在までこうして普通に喋れるしああ、さっき告白もされたのか。
あそこで乙女ならボウッと頰を染める所なのだろう。いまいちその感覚が鈍くまだよく判らない。そもそももう結婚しているし乙女と言っていいのかも疑問だが…乙女の定義とは…と考え出したらキリがなくなる。
一体私のどこが好きなのか今度じっくり問い詰めてやろう。

私は王子の婚約者だった頃厳しめの先生に花嫁修行とかさせられて作法なども教わった。

「女性は淑やかにして旦那様に消して逆らってはならない!発言も最小に!」
等と言い何か文句を言うと短い鞭みたいなのでビシリと手を叩かれたことがある。

そんなの結婚してもただの奴隷で妻はお飾り人形じゃない!私はそんなの嫌だった。

「妻の役目は夫に逆らわず寄り添い従い、政務にも口を挟まない!夜は旦那様に癒しを与えるため一緒に眠るのです!…乱暴にされても文句を言ってはダメです!何せ旦那様は昼間お仕事で疲れていらっしゃるのですから!包み込むのが妻としてのお役目ですわ!」
と先生は言っていたが…王子との婚約破棄後は
伯爵邸に来てその全てを逆らった。

バンバン口出すしこの家の使用人も躾けし直し政務にもきちんと調査して横領犯を見つけ出し旦那様にもしっかりしろと励まして部屋から出した。

「もし先生の言う通りに淑やかに大人しくしていたらきっとこの家は最悪な環境だったに違いないわ…」
と言う話をするとアグネスは

「ええ!奥様が変えられたのです!気取ってる貴族よりも何倍もマシですわ!旦那様も外見だけではないそんな奥様の明るくて元気な所に惚れたのかもしれませんよー?」
と言う。

「まぁ!ふふふ!アグネスさんたらお上手ね!ちょっと今月給金あげようかしら?」

「やった!!お金貰えるならいくらでも褒めちぎりますよ!!」
と現金な彼女は笑った。

          

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