魔族の地に追い払われた聖女は貧乏吸血鬼一家に飼われる

黒月白華

絶対に謝らないアユカ

「ギルベルトさん…安優香と話をさせてくれませんか?」
とタカエとサオリは次の夜アユカを引き連れ別室で話し合いを行うことになり俺が一応監視役を引き受けた。

女のエルフの使用人にボディチェックをされるアユカは服の中にフォークを隠し持っていた。
こいつ…。

とりあえず没収してアユカは久しぶりの面子に機嫌が悪い。

「…貴恵…痩せて綺麗になって吸血鬼のイケメンとよろしくやってるみたいね!沙織も…モーリッツと影でいちゃついてさー…結局あんたらもおいしい思いしたくなったんでしょ?

でも1番綺麗なのは私だから!いつもそうだから!私にこんな仕打ちをしたこと…許さないわ!」
と茶髪の美少女アユカはふんと二人を見下す。

「こんな仕打ち?私を太らせて醜くしたのは安優香じゃない?」

「私にも無理矢理食べさせようとしたよね?どうしてそんなことしたの?それに私胃が小さくて食べれなくて無理って何度も吐いたのに…それでも誰も見てないところで食べさせようとしたよね」

「…当たり前じゃない…?私より美しいモノなんか要らないもの…私がこの顔や身体にいくら使ってきたと思ってるの!?

鼻には10万。胸は40万よ?他にも高級ブランドの化粧品や服…毎週ネイル磨きを欠かせない。あんた達みたいな貧乏人が天然で美少女とか許せるわけないでしょう?

だから太らせて隣に置いてペットにしてやろうと思ったのよ!!」
アユカはとんでもない事を暴露した。

「綺麗になると周りからチヤホヤされるしイケメンも私に夢中。この世界に来て王子や剣士に魔獣使いの彼らも私に夢中。モーリッツは無理だったけど…」
とアユカはそう言うと縛られた手首を出して

「さっさとこれ外してくれない?」

「「………………」」
二人とも押し黙ってしまったがタカエは

「安優香…私達ね、元の世界に帰れないらしいの。ここで暮らしてかなきゃいけなくなったの」

「は?何言ってんのよあんた。そんなわけないないでしょ?こういうのはいつか戻れるのが定番でしょ?ふざけないでよ?あんた達が余計なことしてくれたからよ!

魔王とか倒せば帰れるんだから!」
と睨むアユカにサオリは

「お話じゃないの。現実よ安優香。魔王様を例え倒したって無理なことだったの。私達は…」
とタカエはこれまでの説明をし聖女が本来この世界を守っていることなどを伝えた」

「は?生贄?聖女ってその為に呼ばれたの?
そんなの私は嫌よ!あんたらがなりなさいよ!」
サオリは

「状況がわかってないの?安優香…貴方とっくに奴隷と同じことよ?勇者一行はどの道魔族に捕まり死んだってなってるでしょうね!」

「嘘よ!今に城から増援が来るって王子だって言っていたわ!!」

「来ないわよ…。だから生贄になるのは貴方よ、安優香!死ぬ前に私達に…誤ってよ」

「沙織さん…やり過ぎじゃない?」
とヒソヒソと耳打ちするタカエ。

「そんなことないわよ。こんな時じゃないと謝らないわよ?」
とサオリが返してアユカの返答を待った。アユカは…

「は?何で謝らなきゃいけないわけ?私が何かした?二人して私を虐めようってのね?酷いわ!」

「………安優香…もういいわ。話をしても無駄みたい」
タカエは残念そうにした。
そして

「自分の胸に手を置いてしてきた事を思い出して!一言謝れば私達は貴方を許せる。だから素直に誤ってよ!」
とタカエは言い部屋を出る。俺も他のエルフと交代してタカエ達にお疲れと声をかける。モーリッツも心配そうにやってきた。

「謝ったのか?」
と聞くが首を振るサオリ。

「そんな!生きるか死ぬかと伝えても謝らないとは!異世界人はどうなってるんだ!?」

「プライドが高いお嬢様育ちだからね。安優香は。謝った所なんか見た事ないわ」
とタカエもため息をつく。
それからもアユカは食事を運んでも謝らなかった。
しまいには俺を見て

「貴方が私のものになるなら…謝ってもいいわよ?」
と胸チラや足チラをさせ誘惑するという卑怯な手を使ってきた。なんて女だ。
王子たちをもう愛してないのか?と聞くと

「だって…あいつらはもう死んだことになってるんでしょ?だったらイケメンでももう何の身分もないじゃない!用無しだわ!それにもう飽きたし」
と酷い事を言っていた。
王子たちは自分たちが死んだことにされてあると告げると流石に憔悴していたのに。
それでもアユカの事を思い彼女だけでも解放してやってくれと言ってきた。

タカエはいつまでも謝らないアユカに悩んでいた。俺は慰めて背中を撫でた。
タカエは

「たった一言なのに…どうして安優香はあんなにも…」
と涙した。

「人間て難しいな。俺なんかいつも借金相手にヘコヘコ謝ってる…。タカエはまだあいつを許そうとしてるのか…。優しいな」
タカエは俺に寄りかかり涙を流した。

「お母さんが…人間は間違うものだからって言ってた。でも素直に謝らない人間もいるって。…私明日も言って見るけど…たぶん私は嫌われているから無理だね。自信ないよ。安優香は私と向き合ってくれないから…」
俺はよしよしと頭を撫で続けた。
タカエとサオリは1週間後まで何とか謝るようアユカに毎日話しかけたがアユカは牢の中でついに背を向けて話すらしなくなった。

「死んじゃってもいいの?」
とサオリが声をかけてみるが無視され、サオリはついに

「ばか!判らずや!!」
と叫んでいた。モーリッツもサオリを慰めて困ったようにしている。因みにモーリッツが食事を運ぶと同じように媚びて誘惑してきたという。本当に顔が良くて権力があればすり寄るんだな。まぁ別にモーリッツには今権力は無いが。

結局アユカは一度も謝る事なく1週間経った。

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