魔族の地に追い払われた聖女は貧乏吸血鬼一家に飼われる

黒月白華

痩せてきたタカエと結婚計画

フクロウベアの巣穴を奪っ…いや、借りてから数ヶ月。夜に建て替えの様子を父やフランツと見に行ったりした。だいぶ出来てきている!

「おお!流石ドワーフだ!装飾がなんか凝ってるぞ!!」
と父上が気に入った。

「僕の部屋どうなるかなぁ?楽しみだなぁ!!」
ドワーフ達はまだ幼いフランツが来たので

「ドワーフの血でも良けりゃほんの少しだけんど飲んでみるかい?」
と少しだけナイフで指先を切ってコップに入れてくれた。

「ありがとうドワーフのおじちゃん!!」
とフランツはニコニコ可愛らしく笑むのでドワーフ達も小さい子可愛がり発動が止まらんようだ。めっちゃゴツい手でフランツは撫でまくられている。

「そう言えば最近タカエは痩せたなぁ」
と父上のファビアンが言う。言わずがもなイケオジだ。俺は父似だから将来こんな感じになるだろう。

「まぁ…昼間は一人で運動しているようですから。確かに少し痩せたよね」

「タカエだいぶ痩せたよー。なんかちょっと可愛い!元々美少女だって聞いてたからか確かに可愛い!」
とフランツも髪撫でられまくってボサボサになったがこちらにやってきた。

「そろそろ褒美が必要だろう。ラジオタイソウの絵も溜まったぞ。私もあの動きをしてからなんだか身体が軽くなったよ。あれは中々いい。毎日やっているからすっかり覚えてしまった!

あれを他の動物とかに催眠にかけて動かしてから血を啜ると結構、血行も良くなり通常より美味いことが判った!」
と父上は言う。あんた動物達にも血を吸う前に催眠までかけてラジオタイソウさせとったんかい!この時期冬眠してない動物は少ないが。

「ところでタカエのご褒美だよぉ!木の実のネックレスはもう飽きたしタカエから教えて貰ったし。タカエから裁縫も教えてもらったしタカエは自分でお料理もできるし…僕達何もできないね…」
とフランツはしょんぼりする。

「前にタカエに宝飾品に興味あるか聞いたことがあるが全然無いらしいな。人間の女…それも異世界人となるとこちらとは価値観が違うらしい。タカエの世界は何でもあるようだしな。宝石など珍しくないのだろうな」
と父上も悩んだ。

「そうですね…困りましたね。思いつきません」
と俺が悩んでいると、休憩中のドワーフのおっさんが話を聞いていてたのか声をかけた。

「おいおい、吸血鬼一族ともあろう者が女一人の贈り物に悩んでいるとはな!」

「何ですか?いい案でも?」
一応聞いてみる。

「んなもん、花を摘んで月夜に散歩してキッスしちまえばイチコロだ!」
と言った。

「え…いや…タカエは…」
と言いかけ口を父上に塞がれた。小声で

「私達が人間を飼っていることは秘密だ!」
と言われる。確かに噂好きの妖精族にはあっという間に知られて勇者や聖女にもバレて滅ぼされかねない。

近頃、例のタカエだけ追い出された聖女二人と勇者(王子)や魔術師や後騎士とかいろいろが魔族をぶち殺す旅を始めたらしいと魔王城の偵察部隊から各地の魔族に知らされて奴らと遭遇したら弱いヤツは逃げてもいいがとりあえず力のある魔族は全力で戦って傷のひとつでも負わせるようにと命令が出たのだ。

いやもうやだよなぁ!鉢合わせたくない!絶対こっちに来ませんように!!と祈る。

そんなことを考えているとフランツが…ジーと赤い目で俺を見て言う。

「ギル兄上……どの道お嫁さんを探さないと行けないならタカエと結婚すれば?もう少し痩せたらとっても可愛いよ。今も可愛いけど。タカエは皆に血をくれるし優しいしどの道ずっとうちにいるでしょう?」

「………フランツ無理を言うな。タカエは人間だ。我々よりも寿命は短いんだから。直ぐに死ぬ」
と父上は言う。その通りだ。
人間の寿命は短い。儚い。

「僕…知ってるよ…。人間に僕らの魔族の血を逆に入れるんだ。相性が合えば吸血鬼として仲間になるんでしょ?合わなかったらそのまま死んじゃうけど…」

「そんなことをしたらタカエは人間では無くなるぞ?もう人間の血は手に入らないぞ?」
と父上は言うと…。

「人間なら…勇者達を倒せば手に入るよ。タカエを騙してた人間の女も来るかも…そいつら倒したら魔王様もお喜びになるし一人くらい人間を飼えてまた血が貰える」
とフランツはギラリと目を輝かせる。

「と言っても一応聖女とか勇者とかも強そうだぞ?遭遇して逆に殺されたら…」

「そうかなぁ?僕達…いつもタカエの血を飲んでなんか少し前より強くなってない?タカエには言ってないけど…人間の血を飲んでるからか他の魔族よりも少しずつ強くなってるよ」
とフランツが言う。
確かに俺も少し変化は感じていたのだ。
今まで使っていないだけでなんかこう溢れ出るというかそんなものが力にある。
凄く調子がいいのだ。

父上も同様だから皆そうだろう。今なら勇者とか来ても大丈夫かも?

「結婚の件はまだ保留だが、フランツの言う通りギルベルトの嫁に良いかもしれない」
と父上まで言う。

「と言うことで兄上がタカエに花束をあげてデートしてキッスしちゃえばいいんだ!ご褒美決まったね!」
とか勝手に決められた!!
おい、俺の気持ちは無視か!!簡単に言いやがって!!

「大丈夫だよ!ギルベルト!私達は曲がりなりにも容姿だけはいい吸血鬼一族の端くれ!落ちない女はいない!!」
と断言した。そうだろうか?
今更だろ?タカエももうすっかり慣れてる気するぞ?そもそも皆今までタカエをペット扱いしていたのに!いきなり嫁にしろだなんて!!
そこにフランツが追い討ちをかけた。

「ギル兄上…タカエを嫁にすれば…お金かからないよ!?タカエは器用だしドレスも作ろうと思えば自分で作れるし兄上が作ってもいい。安上がりだ!

それにうちの財政のことも知ってるしあの紙の秘密がバレることもない。お得だよ!おまけに痩せたら可愛い!兄上の好みは知らないけどオススメだよね!」

お金がかからない!
ドレスも手作り節約!
宝石に興味無しの人間!
しばらくは血が貰えるだろう!
大金が稼げる!
安上がり!お得!おまけ!オススメ!

に反応してしまった!!

タカエは元の世界に戻してやらないとなのに!
どの道それなら勇者なんかを倒さなければならない。魔王様と話が出来るとしたら功績を上げないと無理だ。その為には勇者を何とかしないとな。

でももし失敗したら俺たちは勇者たちに殺されるのでやっぱり安全性を考慮すると…タカエと結婚するのがいいのかもしれない。いずれタカエは魔族…吸血鬼として生きるか死ぬかになるだろうが…。

うう…。
と俺は悩む。

「まぁ、タカエに決めさせればいいよ。ご褒美なんだからさ!兄上に興味なかったらこの計画は無し。普通に勇者倒して魔王様にお願いしてタカエともう一人の可哀想な聖女を元の世界に帰れるよう頼んでみようよ!」
とフランツはケロリと言った。
はぁ…俺はどうすりゃいいんだよ。

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