魔族の地に追い払われた聖女は貧乏吸血鬼一家に飼われる

黒月白華

泣き出したオーク…じゃなくてタカエ

「な、何なのあんたら?目つき超怖い!!光ってるし!」
とオーク女じゃなく太った女が怯えている。
一旦落ち着いて確認するか。
俺は貴族らしく話しかけた。

「貴様…人間か?」

「そ、そうです。人間です」
と答えたので確認は取れた。

「そうか!では俺から味見を…」

「ずるい兄上!僕が連れて来たのに!」

「家長の私が先だ!」

「年長者に譲るもんじゃ!!」

「ええ、私が1番後ですか?」

「仕方ないわよ。コルネリアさん…嫁姑じゃ勝てないって。それよりー、あたしもお腹空いたあ!早く刻んで血を頂戴よ!」
と言うからオーク…じゃなくて人間の女は泣き出した。そりゃ食われるんだから仕方ないか?

「うっ!ううっ!何でこんなことに!?異世界なんてやっぱり小説だけだよ!楽しいことなんかないよっ!元の世界に帰りたい!!やっと安優香から離れられたけど…こんなこと!!」
と醜く泣いた。ことりと何か変なのが落ちた。

「なんだこれ?」
と四角い何かを拾い上げるとパッと光り、なんと!この豚女や知らない人間が笑顔で写っている。

「??魔道具か?こ、これ売ればいくらかになるんじゃ!?」
と言うと豚女はそれを取り上げた!
キッと睨み

「私の家族の待ち受けだよ!!売るなんて酷いよ!!」
と言われた。

どうしたもんか?これから食料となるからこんなもんあんたには必要なくなる。

「ちょっと待ちな!ギル坊」
とお祖母様が言い

「はい?なんでしょうか?お祖母様」
と言うと繁々と豚女を見つめて

「お嬢ちゃん…あんた今…異世界と言ったね?もしや異世界人かい?」
と聞いた。

「お祖母様?なんなのですそれは。普通の人間ではないのですか?」

「普通の人間ならこんな変な格好や変な物を持っているわけないだろ?この鞄もようく見てみな!この世界の人間だってこんな上等な鞄なんて持ってやしないよ!糸の縫い目もこんなに正確に真っ直ぐだ」
言われて見れば…。

「異世界人?どうして?他の世界から召喚されたというのですか?」
すると泣いていた豚女は

「そうですよ!私はこちらの世界の王様たちが召喚した美少女聖女二人に巻き込まれたんです!私の体型を見るなりオークだの豚だので聖女じゃないってことで魔族の地に捨ててこいって言われて本当にここの森の前に捨てられて森の中歩いてたら狼が出て来たから必死で逃げてたらそこの銀髪の美少年くんが助けてくれました。…と思ったらいきなり担がれてここに連れてこられたわ!

でも食料としてなんでしょ!?何なのよ!!」
と一気に説明した。

全員顔を合わせる。

「兄上…なんか僕可哀想になって来たよ…。人間にもいろいろあるんだなぁ?この子飼っちゃダメ?」

「ダメだよ…ペットは金がかかる!餌代もないんだうちは!貧乏なんだから!」
と言うとペット扱いされた女は

「あんた達魔族なんでしょう?血を飲むの?吸血鬼?」

「そうだ。うちは…貧乏だが一応貴族のヴィンター伯爵家だ。先代の借金で今にも没落しかけてて従者も雇えなくなってしまった落ちこぼれだがな…」
と言うと涙を吹きにこりとした。

「じゃあここで働かせてよ!」

「はあ!?」

「この子の言う通り飼われてあげるよ!飼うってことは殺さないんでしょ?あんたら人間の血はそんなに必要なの?6人もいるけど…やっぱり私の血は無くなっちゃうか?」
と言う。
フランツは

「僕人間の血を啜ったことないからよく判らないなぁ?高級品なんでしょう?」
と言うと母は

「ええそうよ。うちの実家でも私は飲んだことなんてないわ。吸血鬼一族でも野蛮な奴等は村の人間を襲ってるらしいけどそんなことをすればすぐにハンターや勇者や聖女が来て滅ぼされるから」
と言う。

「確か…数滴飲んだだけで数日は大丈夫らしい。他の生き物は死んだ血を啜るから直ぐに腹も減ってしまうが…」
とお祖母様は言った。数滴で。

「なら献血してあげるわ。注射針があれば…。ああ、無いよね。ならナイフで傷をつけてお皿に垂らすのはどう?」
と言うと皆ダッシュで皿を取りに行ったから俺は恥ずかしくなった。

「す、すまん…つい、ご馳走を目の前にして皆可笑しくなってる」

「貧乏なんでしょ?うちもそうだったから何となく判るよ」

「はぁ?貧乏な奴はもっと痩せこけているだろう?お前服もいいし良い暮らしをしてたんじゃないのか?異世界とやらで」

「これは制服だよ…。向こうには学校があるからね。これも高くて両親が頑張って働いて買ってくれた…」
と涙ぐむ。

「じゃあ?何故そんなに肥えている?」

「そ、それは…」
と女は事情を説明し出した。途中で皿を持ち戻ってきた家族も話を聞いた。



全て話終わり女はぐったりする。

「………酷い話じゃないか!私達は人間じゃないから判らんが食料を捨てるなど勿体ないにも程があるぞその女!」
と父が怒る。貧乏人を舐めた女だ。

「召喚された聖女の1人?美少女を被った悪魔じゃないの?」
とフランツ。

「そのもう1人の女の子もこっちに来て性悪女に太らせようとさせられてるんだね?こりゃちぃと許せんね!」
とお祖母様。

「女は美しくあってこそよぉ!」
と母。

「まぁ…元があんたも美少女なら痩せたらそれなりってことよね?ダイエットすればいいんじゃなぁい?健康的に!」
て叔母さん。お前はさっさと出てけ。この穀潰し!

「でも…我々の食事は彼女の血で何とかなることが判りましたが…彼女は人間です。食べなければ死ぬ。人間は食べて血を作ると本で読みましたよ」
と俺は言うと

「ギルの言う通りねぇ?」
するとガザガサと鞄を取り出して上等な書物や紙?ペン?非常に珍しい異世界の物をだした。

「携帯は売れないけどそれ以外だったらこれらを売って少しお金にしてみたら?幾らになるかは知らないけど。貴方達は人間に化けれるの?」

「もちろんだよ!」
とフランツはボンと黒髪と蒼い目の人間になって見せた。赤目は魔族の印だからな。

「おお!」
と女は拍手する。そう言えば名前を聞いてない。

「お前名前は?」
と言うと

「牛嶋貴恵…タカエが名前」

「変なのー?」
とフランツが言うが

「そうかタカエと言うのか。判った。これからよろしく!」
ととりあえず俺たちは皿を待ち、順番にタカエから血を貰うのだった。

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