魔族の地に追い払われた聖女は貧乏吸血鬼一家に飼われる

黒月白華

ラジオ体操をする吸血鬼一家

夕日が落ちてから俺は起床する。
俺たち吸血鬼一族は陽の光に弱いので昼夜逆転生活の不健康だ。基本的に体温は冷たい。

タカエは終課(午後21時)が少し過ぎた時間になると布団に入って眠る。俺たちは入れ替わりに朝と夜を過ごしているから、タカエは昼間は起きている。
起きている間は掃除をしてくれている。
今は実家改装計画中で魔族の大工やらと話をつけている最中だ。

その日も夕日が沈んだ頃起きたらタカエが

「おはようございます?皆様」
と言う。

「おはようタカエ。何してるんだ?」
と聞いた。タカエは俺が人間に化けて街でタカエ用の餌などの買い物と共に布も何枚か買って戻りタカエに渡したらタカエは自分で何とか調理を始めたり布を切り自分の服を自分で作ったりしていて驚く。俺も参考にとマジマジと見た。

少し恥ずかしそうにタカエは縫い方とか教えてくれる。ブカツはシュゲイブにいたからと言ってた。要するに何か縫ったりする裁縫が得意で自分の家も貧乏だったから服とか昔から自分で作ったりしたそうだ。

「へえ!器用なんだな!!タカエ偉いぞ!!」
とヨシヨシとペットの頭を撫でてやると嬉しそうに恥ずかしそうにした。人間とは怖いものと思って警戒してきたがタカエは丸っこくて大人しいからいい。俺たちみたいな魔族を見たってもう悲鳴をあげないし赤い目もすんなり慣れたと言う。

何でも元の世界にはコスプレイヤーとか街で見かけたりして目を赤くしている人も居るくらいだからとタカエが教えるが意味不明な異世界だ。

「私の世界は目は魔法とか魔術とかで赤くしてるんじゃなくてカラーコンタクト…通称カラコンという色のついたやつを目に入れて赤くしてんの」
という目に何か謎のものを入れて赤くするという怖いこと言ってた!!

「ふ、ふーん。わからないがなんかやっぱり異世界凄いんだな…」
と思った。

そのタカエが作った自分の服は簡単なシャツと線のある上着と線のあるズボンで変わってた。

「ジャージって言うの!動きやすいしラクだから!」
とタカエは言ってた。

そしてタカエは俺が起きたらそのジャージとやらを着て腕を振り回して動いていた。

「何してるんだ?タカエ」
と声をかけてみると…

「ああ!ギルさん!遅よう…じゃなくておはようございます!」

「うん、おはよう…で何?運動?」

「そうです!ラジオ体操です!」

「ラジオタイソウ?」
なんだかまた知らないが身体を動かすことらしい。
弟のフランツも起きてきた。それから続々と皆起きてきたのでタカエは

「丁度いいから皆さん身体を動かしてみましょう!ラジオ体操です!これを毎日やると健康になるんですよ。人間は」

「何だ人間の習慣か何かか」
と父が言うと

「でも異世界の変わった躍りやってみたいな僕!」
とフランツ。いや踊りではないだろ?

「まぁまぁとりあえずやってみましょう!」
とタカエが言うから皆その場でやってみることにした。

「息を吸いながら腕を前から上げてー…息を吐きながら腕を横から下ろします」
と実演するのを見て皆真似して腕を上げた。

「腕を振って足を曲げ伸ばす運動ー!」
と今度はその通りタカエは手足を曲げて伸ばして見せて皆もそれに習う。

一通りチャカチャカとリズミカルに運動し終わるとハッハッと皆息を切らした。フランツは

「面白かった!!タカエ凄いね!楽しいね!!」
とはしゃぐ。
するとタカエはペンを取り出してノートに何か書いてフランツに渡した。

「判子がないから私が今日の分のラジオ体操をしたって印の兎ちゃんの絵を描いたよ!」
と何か四角いマスの中に兎?らしきマークみたいのがあった。

「うわ!可愛い!!何これ!いいね!!」
とフランツは喜んではしゃいだ。

「うちの世界ではこのマス全部埋まるくらい毎日ラジオ体操したら最終日にご褒美のちょっとした景品のプレゼントが貰えるんだ。まぁ…大したものじゃないけど…ノートや文房具、お菓子の詰め合わせとか、図書券とかね。全部こっちじゃ手に入らないから無理だけど」
と言うとフランツは

「ご褒美かあ…。タカエの血は定期的に貰うし…。そうだ!このスタンプ貯まったら一つタカエの欲しいものを叶えようよ!異世界のものは手に入れられないけどこの世界の物で代用するんだ!」
とフランツが言う。
成る程。

「そうだね。タカエそれでいいかい?」
とお祖母様が聞く。お祖母様は何だか嬉しそうだ。ラジオ体操気に入ったのかな?

「ええ?でもこのうちに厄介になってるし…いいんですか?」

「ああら?貰えるものは貰っといた方がいいわよ?タカエさん!ギルちゃんお母様も新しいドレスやアクセサリーが欲しいのお!」

「黙れこの金食いババア!おめさ、贅沢しすぎだっつーの!いっつも変な壺売りつけてくる魔族に騙されていい加減にしろババア!着飾っても可愛い歳じゃねぇズラ!リスの糞でも拾って首に付けとけ!!」
と言うとフランツが

「うわぁ!兄上がまた辛辣な田舎言葉になったあ!!母上ダメだってお金の贅沢を兄上に言っちゃ!!」
とフランツが慌てる。

「リスの糞じゃないけどどんぐりとか木のみとかでネックレスを作ったりできますよ」
とタカエが言う。

「わぁ!じゃあお母様の景品はそれで良いじゃない!タイソウ頑張ろうよお母様」

「えっ!な、何で?木の実?嫌よ。私宝石がいいわ!」

「贅沢言うでねえ!!ほらしっかりタイソウすんべ!!」
と俺は叱責して母上にタイソウを促した。
その後、動きやすいようにとタカエがコツコツと全員のジャージを作ってくれたのでフランツもお祖母様も嬉しそうだった。
俺のも作ってくれたタカエ。ピッタリだ。しかも楽だ。ううむ。
そしてこのジャージを1番気に入ったのはエミ叔母さんだった!もはや家でジャージしか着てない!ソファーで寛ぎゴロゴロが酷くなった!

「やだこれ!落ち着くわぁ!!ジャージ最高ね!タカエはいい子ねぇ!!もう1着作ってくれない?」
とタカエは叔母にヨシヨシされていた。

コメント

コメントを書く

「恋愛」の人気作品

書籍化作品