死に損ないの私は孤独なネクロマンサーに拾われる

黒月白華

第38話 もう孤独じゃない

結婚式から数ヶ月経ちバプティストとアメリーも結婚した。
たまにアメリーやバプティストは森の家を訪ね、お茶をしていく。

俺が畑にいると何かしらボソボソ言っている。

「ヨハンナ様…お金大丈夫ですか?お貸ししましょうか?」
と心配するバプティストの声。
俺だってたまには仕事してるわ!!
アメリーは

「ヨハンナちゃん、診療所でも開くっすか?」

「診療所?」

「ほら。その力が有れば別に教会を作らなくても診療所を作りヨハンナちゃんが人助けすればお金稼げるよ?幸い街の人はほとんどヨハンナちゃんファンだし!ただで喜んで建ててくれるから森の家の横にでも建設してくれるよ」
と言い出した!
俺は畑から家に入り

「おい!勝手なことを!」
するとバプティストはニヤリとした。

「ヨハンナ様ともっと二人きりで暮らしたいそうですよ?」
と言うから俺は赤くなる。
ヨハンナは呆れている。

「うーん、それならこの子が産まれてからにしてほしいわ」
と少し大きくなったお腹をさする。
子供ができた時なんとも言えぬ気持ちだった。
産まれてきた子が俺みたいになったら…。ヨハンナの力を引き継いでくるのか?とか、孤独にならないか、友達はできるだろうか?と変な心配ばかりした。

しかしヨハンナは

「あのね?子供が産まれたらお父さんになるんだからしっかりしてください!」
と叱られた。それもそうだと思い、最近は街へ行ったりバプティストからの依頼も受けている。大抵はくだらない内容だが。

俺は冥界王ハデスによりとんでもない魔力量を頂いた。今や世界中の影に潜ることができ、操れる。
アメリーは半目になり

「でも…優れた力を持っていてもそんなに使わない人もいるし」

「世界中の影が動かせても主人が森でゴロゴロしてますからね!」
楽しそうにバプティストが揶揄う。
ちっ!と舌打ちした。世界のどこで犯罪が起こって影で操り助けてやっても金にはならないしな。

ネクロマンサーの仕事の方が好きだし。
その時ヨハンナが立ち上がり口を抑えて洗面所へ向かう。まだ悪阻がある。
アメリーが心配して背中をさすっていた。

「大変ですねぇ。聖女様でも悪阻になるなんて」

「そりゃなるだろ。人間だ。まぁ……最近は横になっていることが多いし家の事は俺がしている」
と言うと驚くバプティスト。
家事も少しずつで覚えて不器用なりに頑張ったり失敗したりしてヨハンナが苛々して怒るけど赤ん坊の為に我慢して耐えた。
妊娠中の女性は苛立つと聞いていたし。

アメリーとバプティストが診療所を建てる計画をしている。ついでに街とこの森へ街道も作られる予定で動物避けなども設置された。
おかげでたまに街の奴等は遠くてもわざわざヨハンナに祈りにくるし!

家事を終えるとぐったりした。
ヨハンナが紅茶を入れてくれた。

「もう少し落ち着いたら楽になるからそれまでごめんなさい。いつも苛々してごめんね?」
と謝る。別にヨハンナは悪くない。

「いい、安静にしてろ。体に障る。アメリーだって時々来て料理やら手伝ってくれるしな。俺のは不味いし」

「ふふ、そうですね。安定期に入ったらまたコロッケを作りますよ」
とヨハンナは俺の頭を撫でた。
ヨハンナをソッと抱きしめた。
自然に涙が出てが出る。

「バルトルトさん?また泣いてますね?」

「……早く子供に会いたい。俺はちゃんと父親になりたい。ちゃんと愛してやりたい。でもできるか不安だ…」
自分は父親に愛されなかったし、壊れていく子供時代の自分と重なり怖くなる。
子供を可愛がってやれる父親になれるのか不安でたまらない。
そんな時ヨハンナは優しく背を撫でた。

「バルトルトさん、大丈夫。寂しさがまだあるならたくさん子供を作り家族を増やしましょう?」
とポンポン背を叩かれる。胸の中をいつでも暖かくしてくれるヨハンナに感謝する。

俺はもう孤独じゃないんだと告げられる。勇気が湧いてくる。

「大丈夫だ。ちゃんと父親になるさ」
とお腹を撫でるとヨハンナは嬉しそうに笑った。


数ヶ月経ち私は子供を産んだ。
バルトルトは産まれる時に何故かあの大切にしまっていたローブを着ていた。
産まれたばかりの我が子を抱いた時はバルトルトはめちゃくちゃ嬉しそうな泣きそうな顔をした。

「…俺がわかるか?俺が…お前の父親だからな?」
と当たり前のことを言ってやっぱり泣きそうだった。

バルトルトは子供の夜泣きも交代であやしたりしてくれた。子供の掌にビクつきながら指でつつくと指を握り返す子供ににんまりした。

「小せえ手だな…」
と影で兎の形にして操って子供をあやす。
街の人達はお祝いに食べ物を持ってきてくれたりして有り難い。

隣に診療所もできて1日に何人と予約制で私はヒーリング治療なんかをする様になった。バルトルトがその間子供の面倒を見た。
バルトルトが仕事の依頼を受けた時は私が子供を見た。
女からの依頼はなるべく断るようにしている為中々バルトルトの仕事は無いけど幸せだった。
バルトルトが赤ん坊をあやす時頑張って笑わせようとするが上手くいかなくて結局自分が作った下手くそな木彫りのクマらしきものを見せてやったら娘のシェリルがニヤッとして笑った。

「お、俺のクマ見て笑った!そうか!俺の傑作がわかるいい子だな!シェリルは!」
とキスをする。

絶対違う意味で笑ったと思う。それクマに見えないからね。

シェリルが言葉を話し歩けるようになるとバルトルトは本を読んでやっている。内容がおどろおどろしいホラーもので

「ちょっと!シェリルに怖い本読まないでよ!」
と怒ると

「シェリルは嬉しそうにしているぞ?」
と言う。娘を見ると確かに嬉しそうにしていた。

シェリルはサラサラの黒髪美少女だ。そして霊達も視えるらしい。バルトルトに似てたまに空中に話しかけているからソッと腕輪を外して確認してみると霊達と仲良く会話していた。
このままではシェリルがバルトルトみたいになるかも!!?
と危惧して街に出かける回数を増やしてお友達を探した。

シェリルが少し大きくなる頃私はまた妊娠したりしていた。

「お母さんお腹に赤ちゃんいるの?可愛い子?」

「うん、多分可愛いよ」
とバルトルトとにこにこし、シェリルは3歳になっていた。

「じゃあシェリル…赤ちゃんのためにプレゼント用意するの!」
と言うからバルトルトが

「何をあげるんだ?高いものはダメだぞ?」
と言っていて呆れた。

「ハンバーグ作るの!シェリルウサギのハンバーグにする!!」
とシェリルが好きなハンバーグを言うが赤ちゃんがまだハンバーグを食べれない事はシェリルもわかっている。

「大丈夫凍らせて保存しとく!!」
とシェリルが氷の魔術を使おうとするから止めた。

「家が寒くなるからダメ!」
とバルトルトが叱り付けた。

「後、コロッケにしなさい!」
と言うバルトルト。相変わらず自分の好きなものしか言わないので娘にそっくりだ。
シェリルは氷の属性を持っているが闇と聖も持っている。3属性を持ち非常に将来有望な娘だ。

バプティスト様が街に学園を建てようと計画しており準備している。シェリルがまた少し大きくなる頃には完成するはずだそうだ。

日々は過ぎていくけとバルトルトも私も子供達もとても幸せだ。シェリルとバルトルトと三人でベッドに入る。真ん中のシェリルに二人でキスをし眠る。
バルトルトはもうほとんど悪夢を見なくなり時折私だけに見せる甘い顔をしている。

これからも暖かく家庭を築いて行こうと思う。

「ヨハンナ…シェリル…それにまた産まれる俺の子…。俺と家族になってくれてありがとう」
バルトルトはそう言うと私にキスをし安心して眠りについたのだった。

          

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