死に損ないの私は孤独なネクロマンサーに拾われる

黒月白華

第33話 コンプレックスラブ

森の家に帰り相変わらず私達は仲良く暮らしている。バルトルトは相変わらずコロッケコロッケと煩い。
奴はもうコロッケがあれば生きていていける!

それに最近は料理中悪戯をされる。
後ろから抱きしめられたりしてドギマギする。

「ちょっと!コロッケの形が崩れます!」

「俺は小さい胸が好きだ!!」
いきなりそんなことを言われ

「はっ!?」
と聞いた。

「だって…今までの肉よかな女とお前全然違うし。俺はお前が小さい胸をしていて本当に良かったと思う!ありがとうヨハンナ!小さい胸でいてくれて!」
と一人で感動している。
なんかムカついてきた。

「あの……バルトルトさん?あんまり…小さい小さい言わないでくださる?失礼ですよ?私だって好きで小さく生まれたわけでもないんですよ!?……」
若干の苛々でそう言うと

「なんだと!?お前巨乳になりたいのか!?そんな!!」
となんかこいつショックを受けた!!

「なんでショック受けるんですか!女の子は胸が小さいと情けない気持ちになるんです!!」
と議論を始めた。
バルトルトは胸をチラ見しながら

「何故だ!?胸が小さいのが好きな男だっているだろう!?何故女は胸が大きいだの小さいだの気にするんだ!?ヨハンナの胸はこんなに可愛らしいだろ?」
と言うが流されてはダメだ!小さい言われて嬉しい女なんかそんなにいない。

「大きいのが好きな奴はどうかしてるんじゃないか?…」
と言う。どうかしてるのはお前だ。

「だから!女としては大きい方が誇れるんです!女性社会では胸の大きさで勝った負けたが起こるんですよ!昔社交界に出ていた時もそうでした!!胸の大きな女性に男性は群がり私には一人も声かけられなかった!」
当時の侘しさを思い出しがくりとくる!!

綺麗な人は勿論だが、それなりに地味な顔でも胸の大きな女性はとりあえず男性が声をかけてそっとホールを抜け出すところを何度か見たこともある。

「まぁ他人がどうあれ俺はヨハンナの小さいのが好きだぞ!?」
と言われると流石に照れてきた。バルトルトからしたら真剣な問題なのかもしれない。

「もう!コロッケ作れないでしょ!?」

「どうせもうあげるだけだし、少し休憩したらどうだ!?」

「ええっ!?そんなっ!もうバルトルトさんたら!仕事探してください!!」
と言うと、

「1件見つかったからまた今度出かける事になった。お前は置いてくから数日家を空ける。だからその前に……少しくらいイチャイチャというやつ?をしてもいいんじゃないか?俺はヨハンナの小さい胸が好きだ」
と言う。だからさっきから小さい小さいと言うな!!

しかし自分がコンプレックスだと思ってる部分を好きだと言われると少し嬉しい。
バルトルトが人の胸を服の上からジロジロ見ながら感動する。

「お前はデカイ胸の女と違っておぞましい感じもしない!」

「し、失礼すぎる!!ていうか過去の女のと比べるな!!」

「俺はむしろ子供の頃被害者だぞ!?お前にしかドキドキしないし!」
というから大人しくした。まぁ過去のバルトルトの女やら男嫌いはまだ引きずってるから仕方ない。

「はぁ…わかりましたよ。好きなだけ私の小さい胸で喜んでればいいわ」
と多少投げやりになる。

「お前は小さい胸にもっと自信を持つべきだな…」
嫌だよ…。

そろそろコロッケをあげないと夕食が作れない。
私は意地悪を言った。

「バルトルトさん…。実は胸を触ってると段々と大きくなるんだってアメリーさんがこないだ言っておりましたよ」

「な、何!?」

「初めから大きい人と違って小さい胸を触ってると発育が良くなるとかなんとか」
バルトルトがまたショックを受けた。

「元王子様なのにそんな勉強しなかったんですか?」

「知らん…来る女皆デカイ奴ばかりでうんざりだったし気持ち悪かった」

「じゃあ…私の胸が大きかったらバルトルトさんは私のこと好きになってなかったの!?私と胸とどっちが好きなの!?」
と言い睨んだ。もはや訳わからん喧嘩に発展しつつある。

「えっ…う、うーん…それは…わからんが…」

「わからんて…」
私は呆れてバルトルトから離れ、コロッケを揚げ始めた。もう知らん!やはり胸の大きさしか判断してないのね!?しくしく!!

「ヨハンナ!誤解だ!お前は胸だけでなく顔も地味な方だろ?俺は綺麗に化粧してる女よりも何もしてない方が好きだし!」
フォローが下手くそだろ!!なんだそれ!あんたの特殊性壁は知らないけど地味とか言われて嬉しいわけあるか!!

ギッと更に睨むとバルトルトがどうしたもんかと頭を掻く。自分は黒髪に蒼い瞳で綺麗な顔をしているが私なんてただの茶髪に緑の目という普通すぎて比較にならなくて死にそうだ。おまけに背も高い。一番そこが自分でも嫌いだが…。

バルトルトは
「ほら、背が高いから人混みでも見つけやすい!」
とやはり下手くそなフォローをする。
段々とバカらしくなってきた。

「バルトルトさんは…いいですよね。綺麗な顔にサラサラの黒髪に蒼の透き通る目でしかも肌も白くて綺麗。何も劣るところが見当たらない!!悔しい!」
と言うとバルトルトは青くなる。

「お、俺は…自分の姿が嫌いだ!こんななよっちくて筋肉もあんまりないし!黒髪は魔力量が高いとされるがお前にも届かない魔力量だし、綺麗な顔とかよりもっと逞しいいかつい顔だったら過去の奴等に狙われなかったかもしれない!こんな目立つ蒼の目も霞んだ灰色で十分だ!」
とあろうことか自分の事を全否定している!こりゃ性格も暗くなるよね!!

「私はバルトルトさんのこと好きです」

「くっ!、お前も俺の容姿だけが好きなのか?」

「違いますよ!そりゃあ顔も好きですけどそのおかしな性格も好きだから困っているんです。私もきっと普通じゃないんだわ!ああ!どうしよう!

こんなに捻くれてるしすぐ泣くし暗くなるし弱っちいくせにたまに強気な態度に出て恥ずかしがるし家事も不器用だし優しかったりそうじゃなかったり…」

「もういい…やめろ…やめてくれ頼む」
と降参した。

「じゃあ、もう無理してムキムキにならなくてもいいですからね?まぁ、バルトルトさんなら筋トレしても3日も持たないと思いますけど」

「うぐっ!!」
痛いところを突かれたようだ。

「く、そんなことはない!今からでも鍛えたら筋肉もついて…力仕事に…力しごと…」
と力仕事する自分を想像したのかどんどんとバルトルトはやる気をなくしていった。こりゃダメだ。

「おい、コロッケまだか?」
と話題すら変えてきた!!

「はいはい、お皿出してくださいよ。割らないようにね?」

「それくらいならできる」
と皿を震えながら出すからハラハラする。

「バルトルトさんは私がもし胸が大きくなったら嫌いになります?」
と聞くとガチャンと皿を割った!!

「お前が変なこと聞くから落とした!俺のせいじゃないからな!!」

「あはは、ごめんなさい…」
とりあえず皿を片付けた。

「……まぁ…その…そうだな嫌いにはならないと思う」
とバルトルトはボソリと言った。

「本当ですか?」
するとバルトルトは赤くなり

「当たり前だろ?そんなに疑うなら明日籍を入れてもいい!!」

「えっ!?」

「……もう小さいとか大きいとかヨハンナのものなら関係ない!俺はずっとヨハンナと一緒にいたいんだから結婚しろ」
となんかロマンチックとか無縁なプロポーズをいきなりしてきた。前にも下手くそなプロポーズしてきたけど…なんでだろう。なんかちょっと前よりいいなと思った。

「やっぱり納得いかないか?俺はその臭い台詞とか言うのが苦手なんだ…。バプティストとかはさらりと言えるんだろうな…」

「いいですよ。明日バプティスト様の所に行って籍を入れてきましょう。さあ、早く冷めないうちに食べて寝ましょう」
と私はにっこりした。バルトルトは聞き違いかとキョトンとしたが急に真っ赤になりバクバク食べ始めた。

夜寝る前にバルトルトは子供みたいにはしゃいでいた。

「小さくてごめんなさいね」
何となく申し訳なくてそう言ったけど

「それでいい」
とにっこりしながらキスを交わした。
そしてバルトルトは言った。

「お前を拾ってきて良かった…」
と初めて助けられた時の事を私は思い出した。義妹に捨てられ毒を飲まされ放置され狼に囲まれて怖かったけど…バルトルトが助けてくれた事。最初は何もかもが上手くいかなかったのに今私と彼はとても幸せに笑っているのだから。

「拾われて良かった…」
と言いその夜はお互い優しい愛を求め合った。

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