死に損ないの私は孤独なネクロマンサーに拾われる

黒月白華

第23話 恐るべしホーリーアロー

どうしよう、ヤバイこれ。
バルトルトが満面の笑みでキラキラしてる!!普段と180度違うし洗濯物を畳んで掃除をしたり料理を作り私の肩を叩いている。

「いつもお疲れ様です!ヨハンナ様っ!家事ばかりさせた悪い僕のこと許してくださいねっ!」
とウインクまでしている!!
どうしよう、やだ!こんなのバルトルトじゃなーい!!

わかってるの!
原因は吸い込まれた矢を何とかしないとってことは!!ずっとこのままじゃん!!
でもどうしたら抜けるんだろう?私の属性は聖らしいけど?どうしたらいいのだろう??

料理を更に綺麗に並べて隣に座り、バルトルトは甲斐甲斐しく…

「ヨハンナ様、はいっ!あーーん?」
としてくれる。これはこれで嫌な気はない。しかも恋人になるとやりたかった私の要望の一つだ。
だって綺麗な顔で微笑まれ口に料理を運ばれるとついつい。

「あーん!」
とパクリと食べる。
食べこぼしが口につくと

「ヨハンナ様…付いてます!」
とペロリと舌で舐めてくれ鼻血出そうになった!!本当にバルトルトか!?いや私の魔法でこうなってるだけよね。

いやしかし…こうも素直で従順で可愛いバルトルトを見たのは初めてだ。
彼と言えば根暗で卑屈で引きこもりのセットのような男で照れ屋で普段はそんなに話さない。


こ、これは!!チャンスなのでは!?
恋人らしいことを思い切りできる…。いや、私からはやはりダメよ!例え今魔法にかかってもそんな好き放題なんて過去のバルトルトを襲った女やら男やらと一緒じゃないの!!

と首を振り落ち着く。
どうしたら矢が抜ける?

「あ、もしかしたら時間差かも?明日の朝には戻っていたりして!!」
と気付きさっさと眠ることにした。
するとバルトルトがあろうことか

「僕が着替えさせてあげましょう!!」

「えっ!?いいよ!そんな!!」
流石に断るがハラハラと泣かれた!!

「ううっ!やはりヨハンナ様は恋人の僕のこと信用していないのですね?」

「いや、…あの泣かないでバルトルトさん…、わ、わかったから」
と言うと輝く笑顔で

「良かった!!」
と言われ流石に私は諦めた。

観念し着替えさせられた。にこにこして頰を染め

「美しい身体ですね!背もすらりとして!下着も案外可愛い!」
やらやたら褒められてなんか…一緒にベッドに入った!!!

「お休みなさい!ヨハンナ様!!」
と唐突にキスされゴロリとすやすやと手を繋ぎ寝た!!

ひいいいいいいいいい!!!!ヤバイ!!
こんなのやっぱりバルトルトじゃない!!
困ったあああ!!


次の日寝不足で目を覚まして治ったか見ると…

「おはようございますヨハンナ様!おや?隈が!ダメですよ?睡眠ちゃんと取らなきゃ!!チュ!」
と頰にキスされた。

「ダメだ!!戻ってないいいい!!」
その後も、朝食を作り、畑に水を撒くバルトルトはキラキラしていた。

「朝、低血圧で起きないバルトルトが起きているなんて!!」
と震えた。

すると訪問者がやってきた。
バプティスト様!!



「えーと…王子どうしたんですか!?頭打ったとか?」
流石にバプティスト様も彼の変な様子に気付いた。

「ふふふ、僕は無事ですよ?バプティスト様ったら心配性ですね!」
と笑うバルトルトに青ざめた。

「何したんですか!?ヨハンナ様!!」

「じ、実は…」
と事の端末を話すとバプティスト様がポカーンとして笑い出した!!

「あっはははははは!そういうことですかっ!!くくくくく!なるほど!!聖魔法で!!!くくくバルトルト様の心が清浄されてこうなって!!あっははは!」
と笑い転げた!!
しかしなるほど!心の清浄とは!!確かにバルトルトは普段はほんと心無いことばかり言ってたしね。

「しかし珍しいですね。聖魔法が使えるとは。教会で働けますねヨハンナ様」

「えー!?それじゃあ僕と結婚できないからダメですよー!」
とバルトルトがくっ付いてきた!

「成る程確かにはは!」
バプティスト様はまた笑った。

「ちょっと!笑ってないで魔法を解く方法ないのですか!?」
と言うとバプティスト様は耳打ちした。

『バルトルト様を裸にして胸に聖痕があるはずです。胸に吸い込まれたのならその辺りかと!そこに直接手を触れて矢が溶けるイメージをしてみてください!これは術者のヨハンナ様にしかできないことですよ!』
と言われる。

『でも、バルトルトさんは身体に触れられるのはトラウマですよ?今は魔法でどうなってるかわかりませんけど』

『大丈夫ですよ、あの様子なら触っても問題ないでしょう、それに魔法が解けたら何があったか忘れてるはずですから』
と言われた。

「ちょっとー!僕の恋人に引っ付かないでください!!」
とバルトルトが私を膝に乗せひえええ!となる!

「す、すみません!ああ、それから例のー…ロイ先生の行方なんですけどね、こちらも手紙にあった通り探してはいます。どこかに潜伏しているのだと思われます。ここの場所はまだ知られていないでしょうし」

「そうですか…。わかりました。一応気を付けておきます」

「でも便利な力を得ましたね?そのホーリーアロー…奴に打てば改心するかもです」

「!!」
それを聞いて私はそうかと思った!!
バルトルトでさえこの始末だし!
これなら奴なんか怖くない!!くくく、
ホーリーアロー!!恐るべし!悪人さえも改心させてやる事ができるのね?

「では私はこれで失礼します!お二人とも仲良く!」
と手を振られ

「はい、また来てくださいね!美味しい紅茶を用意しておきます」
とバルトルトが満面の笑みで見送りバプティスト様も青ざめて手を振った。



「あのー…バルトルトさん?これ、凄いデザートですね!!」
と目の前のフルーツ盛りのパンケーキを見て驚く私。

「甘いのは好きですか?ヨハンナ様」

「あのー…ですね?バルトルトさん?」

「はい?」
彼はキラキラしながら聞いてくる。私を膝に乗せ!!

だめだ!一刻も早く元に戻さないと!!

「あの!バルトルトさん!実は貴方には今、魔法がかかっていてですね!!それを解かなきゃいけないんです!!」

「魔法ですか?どんな?」

「えっ!?いや…そ、それはその…とにかくその胸にある聖痕を私が手を当てて消さなくちゃいけないのです!」
と言うと

「聖痕?僕の胸に?付いていると?」
とひょいとシャツに顔を入れて確認してみるバルトルト。

「ああ、付いてました!」

「でしょう?それです!それ消しましょう!!」

「………でもこれ…ヨハンナ様が僕につけてくれたお印だから!!僕は消したくないです!」
とキラキラした顔で言う。
ぐわっ!!眩しい!!

くっ!ひ、ひるむな!私!!

「ダメですよ!元のバルトルトさんなんて憎たらしくて照れ屋で素直だったり素直じゃなかったり変な引きこもりで仕事もまともに出来ないし家事も下手くそだし、正直何の役にも立たないけどやっぱり元のバルトルトさんの方が好きなんですよ!!」
と言うとバルトルトは…

「……そうですか……ヨハンナ様はダメダメの僕が好きと言うのですね?」
と泣きそうな犬みたいな表情になりきゅうううんとした!!

いやああ!!そんな顔をされたら!!

「ってあかーーーん!!」
バチンと自分の頰を叩き目を覚ます!

「ごめんなさい!!本当にごめんなさい!!失礼します!!」
とバルトルトのシャツを開き胸にあった聖痕を見つけそこに手を当てて矢が消えろおおおお!!と必死に願いイメージした!!
するとスウウウと痕は光り、消えて行った。
ガクンと倒れかけたバルトルトを何とか支えてやると目を覚ます。

しかし…私が彼の膝の上に乗り、服をはだけさせていたので思い切り赤くなり震える。

直ぐ彼から退いて

「ちちち、違うんですうううう!!!襲ってるとかじゃないんですううううう!!!もういやああ!」
と私は泣いた。その様子を見てバルトルトはシャツを正し、

「一体何があった?矢が入ってから記憶が無い!!」
と言った。
その後、私の説明を聞き…発狂し恥ずかしさでベッドからしばらく出てこなくなるバルトルトだった。

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